小川洋子のレビュー一覧
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素晴らしかった。大切に、大切に読み進めた小川さんのエッセイ集。エッセイ集と言っていいのかわからなくなるほど、短めの深い思いで唯一無二。いろいろなところで書かれたエッセイを章に分けて載せている。1、2章あたりのエッセイがたまらなかった。日常や、家族の幸せが美しく切なく心に響くエッセイがたくさんあった。亡き両親との思い出。よその子や赤ちゃんとふと、些細なきっかけで顔見知りでないその子たちと触れる中で思い出す、自分の子供との思い出。想像するということ、読書ということとは何か。と思えば、少し抜けた感じのクスッと笑えるエッセイもあり…ということで絶妙なバランス。小説も美しく、エッセイも美しく、すごい、小
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帯に、「270万人が泣きました。伝説の第1回本屋大賞受賞作」とある。本屋大賞の最初の受賞作であり、映画化もされ、270万部を売り上げている作品ということは、傑作と言ってもよい。私は映画を観ていないが、博士は寺尾聰、家政婦は深津絵里が演じた。
家政婦はシングルマザーで、博士は、子供の名前に、頭の形が数式の√に似ているからルート君と名付ける。博士は数学博士だが、交通事故で記憶が80分しかもたない。この記憶障害があることから、家政婦は色々と難しい対応を迫られる。しかし、この家政婦がとても優しいので博士は幸せに生活できる。この作品の特徴として、博士の専門分野である数学が物語を引き締めている。博士は -
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ネタバレ帯にある語~異界、奇跡
これって日常用語ではないが、考えて、発語するだけで独特の異空間へ足を踏み入れた気持ちにさせる。
小川洋子全開のワールドに彷徨った
収められている8編、舞台・・ステージに纏わる場面、時間、心象
その脳密度は作品によって微妙に高低あるけれど、読み進むにつれ、或るホラー感覚に襲われて行く様な内容もある
個人的に響き、慄きすら覚えたのは「装飾用の役者」
ラストで【∼どのような要望でも お応えする自信がございます。採用して頂ければ 誠心誠意お勤めさせていただきます】
2000年になって、特に介護という業種が膨らむにつれ 酷く多用されてきた語感∼寒気を覚えました。
彼女という人 -
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地球の裏側のどこか知らない国、
8人の日本人の乗ったマイクロバスがバスごとゲリラにより拉致される。
世間には、一通りのゲリラの実態なども報道されるが、100日を超える膠着状態になり、世間からは少しづつ忘れ去られていく。
その危機の真っ只中の彼らは、生きて帰れるのか死ぬしかない中で、一人一人の朗読会が始まる。
短編小説みたいだ。
一人一人の物語を静かに、淡々とみんな聞いている。その話は子供の頃のことや若い時のこと、人が聞いても感動も何もないお話。
何なんだろうな。
何かしら、薄暗闇の中で静かに瞑想のような感じすら受ける。
心が透明になりそうだ。
私は「冬眠中のヤマネ」が好きだ。
いったいこん -
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ネタバレ不思議な手触りの小説。
まずブラフマンが人間ではないこと。でもどんな種類の生き物かは明かされない。
「僕」が何歳ぐらいなのか、どんな過去があってどうしてそこで働いているのか、そもそもどこの国のいつ頃の話なのか、すべてがはっきり語られない。
この手掛かりの少なさにも関わらず、ブラフマンの生き生きとして描写に冒頭から引き込まれる。
何と言ってもほとんど犬っぽいブラフマンの仕草の描写が可愛い。タイトルどおり「ブラフマン」は「埋葬」されてしまうという予測ができていたが、あまりの愛らしさに、ブラフマンが無事に元気なまま終わるように願いながら読んだ、
時々現れる、「僕」のブラフマンに関する観察日記のよ -
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2025.21
遠慮深いうたた寝をコロナ禍に
家の屋上で寝っ転がって読んでから
小川洋子さんの文章が好きなことに気付き
あの頃救われた気持ちになったので
特別な本だったのだけど、
"続"が出て嬉しい。
あの時本屋でつるんとした装丁に惹かれたけど
"続"も陶器のようなデザインでかわいい。
小川洋子さんの文章は心が穏やかになる。
これからも遠慮深いうたた寝が続いてほしい。
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P23 精いっぱい仕事を頑張る、というその頃合いが分からない。私は今、ぎりぎりまで自分を追い込んでいるか?もうこれ以上は無理だ、というところまで這い上がろうとしているか