小川洋子のレビュー一覧
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記憶が80分しかもたない博士と、派遣されてきた家政婦とその息子のルート。
博士が敬愛する数字と数学に魅入られ、いつしかコミュニケーションのひとつとなる数字。そして阪神の江夏豊。
家政婦とその子供という立場だけでなく、孤独の博士にできた“友達”として、関わっていく様子は、とても温かいものでした。
80分しか記憶がもたない博士になるべく混乱を与えないよ話を合わせ、なるべく心地よい空間になるよう努めた二人。
ルートをはじめ、子供には無償の愛を注ぐ博士、そして記憶が持たないながらも家政婦にだんだんと信頼を寄せる博士。気難しいようにみえてとても温かい博士。
人との関わりについて考えさせられるストー -
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ネタバレ〈備忘録・ネタバレあり〉
小学生の頃にアンネフランク物語を読んだことがあったが、アンネの日記は未読。
アンネの日記がこれほど引き込まれる理由や、日記がアンネにとってどのような存在であったかの考察が書かれており、興味深かった。そして書く、という行為の尊さも改めて感じた。
▼引用
日記は本来、自分以外の読者を必要としません。しかしアンネは自分自身の感情をノートにただぶつけるのではなく、苦しい事柄でも楽しい出来事でも、そこからあえて距離をとって言葉を紡ぎ出し、読者たるキティーに手渡すという構図をとりました。客観的な視点を確立したことで、この日記は文学にまで昇華したのです。 そして、キティーの存在 -
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ネタバレとてもほっこりとしていて読みやすかった、、。「博士」という人物像が非常にユニークで面白い。暖かくもあり、少しの儚さをも含んでいる作品。題名に数式とあるように数学に関する知識が多く出てきた。そこの表現が綺麗。また博士に対するルートの質問。質問の内容の難易度等は関係ない。ただそこにある真理の導き方。導くまでの過程。そこのみが博士の関心。この博士の感じがすごく好きな描写。また主人公に「そのままで」「料理している君が好きなんだ」あのシーンの書き方がすごくすき。博士の無頓着でありながら、子供や数学、阪神タイガース等とある一点にのみ執着やこだわりを見せる点がとても愛おしい作品。
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ずっと作品の存在は知っていたが、小説も映画も触れたことがなかったので、やっと読めて満足。
美しい情景描写が多く、登場人物たちのそれぞれに対する慕情や嫉妬などの感情は、はっきりと描かれないが、丁寧な語り口の奥からじわじわ伝わってくる感じが心地よかった。
数学者・藤原正彦の解説もよくて、
「くっきりした輪郭に、ぼんやりした暗示が縦横に張りめぐらされていて、墨絵のような静謐をかもし出している。(p.289)」
という批評に共感した。
高校を中退し、シングルマザーとして奮闘する「私」と80分しか記憶がもたない「博士」の交流は哀しみを避けられないけれど、「私」の息子「ルート」や、阪神タイガースといった要 -
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帝国劇場を愛する方にオススメしたい1冊です。
巻末の1文をお借りしました!
ですが、劇場、歌劇がお好きな人に響く「愛」を感じれるストーリーです。
短編なので、演目を含めて観客、係り員、役者、縁の下の力持ち、それぞれの関係性が楽しめます。
上演された演目も誰もが耳したことがあるタイトルで、観劇された方は場面も思い出される事、間違いないでしょう
読む度に、劇場の重厚な造りの外観、ロビーの絨毯に階段の手摺…
あの日に感じた場面が思い出され、感慨深い気持ちになります。
是非、休館があけたら、足を運びたい場所です。その時は、駅から少し迷ってしまいそうですけど(笑
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ネタバレすごく昔に読んだことがある本を再読。僕が数学を美しいなと初めて感じたのは、大学で論理学を受講した時で、おそらくその後にこの本に触れています。数学の美しさを見せるこの本に、すごく親近感をもった記憶がぼんやりとありました。
この作品は、文体が優しく、描かれる情景も押し付けがましくない。というか作中の博士が愛した静寂をそのまま形にしたような作風でした。
数学と少ない登場人物のほかに、野球、特に阪神タイガース、江夏豊選手がキーになる話だが、それらに全く知識がなくても問題ありませんでした。
オイラーの公式のことについての解釈が、綺麗だなと思ったので記します。
“果ての果てまで循環する数と、決して -
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善意という名の支配。
薄気味悪い、不気味な、気持ち悪さが残る小説でした。
不穏な空気感に、途中、挫折しそうになりましたが、終盤にかけて小川洋子さんらしい展開があり、最後まで読めてよかったです。
主人公の「小説家の女性」と、その小説家が執筆する作中小説の「声を失ったタイピスト」が、リンクしましたね。
愛情、束縛、監禁、依存、支配がテーマでしょうか。
その後、R氏は、どこへ向かったのでしょう。
『夜と霧』を彷彿させてしまいます。
私も日々、いろいろなことを失いながら老いています。
消滅は、異常なことでしょうか。
そのうち、カレンダーを失う未来もあり得ると思うのです。
左足も失うし、声も失 -
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小父さんが切ない。
自分の目が、
庭に差し込む光になるのか、井戸を覗き込む人間の目になるか、
読み終えて悩まされました。
鳥籠を抱え亡くなった小父さんの生涯を見る物語。
鳥の言葉を理解し鳥の言葉しか話さない兄と、
二人で暮らし続ける小父さんもまた
鳥の言葉を理解し、鳥の言葉で話し始める。
この手の物語を読むと、大抵いたたまれない気持ちになる。
人を羨やむことが、
自分を落ちこぼれと認識させる。
そんな自己嫌悪に入るぐらいなら、
手に入るものを有難いと感謝する。
そういうもんかなと思いつつも
自分は、そんな上手いこと変わらないというか
なんというか。
大抵、不貞腐れながら、なんとか生きてる