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出産を間近に控えた姉に、毒に染まっているだろうグレープフルーツのジャムを食べさせる妹……妊娠をきっかけとした心理と生理の繊細、微妙なゆらぎをみごとに描く、第104回芥川賞を受賞した「妊娠カレンダー」。住人が消えてゆく? 謎に包まれた寂しい学生寮の物語「ドミトリイ」、小学校の給食室に魅せられた男の告白「夕暮れの給食室と雨のプール」。透きとおった悪夢のようにあざやかな三篇は、すべて小川洋子の独特な静謐な世界を堪能できる珠玉の短篇集です。
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Posted by ブクログ
いや〜不穏、不穏。不気味でパンチ効いてる。 『妊娠カレンダー』『ドミトリィ』『夕暮れの給食室と雨のプール』の三つが入った短編集。『妊娠カレンダー』は芥川賞受賞作。 あらすじと感想 『妊娠カレンダー』 王道の日記文学。主人公の「わたし」は、同居する姉の妊娠発覚から出産までの240日間を、カレンダー(...続きを読む日記)に記録し始める。姉は激しいつわりで日常のあらゆる匂いを拒絶し、のたうち回るが、つわりが明けた途端、取り憑かれたように異常な食欲を見せ始める。 特に、妹が作るグレープフルーツジャムが大好物なのだが、米国産のグレープフルーツには防カビ剤が使われており、胎児には良くないんじゃないかと思い始める。しかし……。 いや〜、だいぶ衝撃だった。妊娠といえば出産、新しい命、未来のようなポジティブな未来を想像させるが、全く違う。妹はあくまで観察者として、苦しんだり楽になったり、お腹が大きくなったりする姉を、生き物を見るように描写する。そこに愛情があるのかどうか、あまりに伝わってこない。そして姉も姉で、一種の冷徹さを持って生活している。普通なら「お腹に赤ちゃんがいるの!」と怒りそうなところを「私は妊娠してるの、ニ・ン・シ・ン」と声を張り上げるシーンはおぞましかった。グレープフルーツのくだりは、悪意とも好奇心とも読み取れず、なんでそんなことをするのかわからない、でも、なんかわかるという気持ち悪さがある。 まさに芥川賞の系譜。社会が求めるお約束、つまり妊娠はおめでたい、家族は素晴らしい、食べ物は美味しい、青春はアツいなどといった価値観に疑問を投げかけ、全く新しい感覚を世に提示したから評価されたんだと思う。『太陽の季節』(石原慎太郎)、『限りなく透明に近いブルー』(村上龍)『コンビニ人間』(村田沙耶香)のように。発売当時は、社会の倫理を覆す「新しい世代の新しい感覚」を書いた文学、みたいな。 あと文章が本当に美しいし、五感と結びついているから、共感ゼロなのに読めてしまうのも良かった。 『ドミトリィ』 個人的には、こっちの作品の方が衝撃が強かった。妊娠カレンダーの「不穏さ」が感覚的なものとすれば、こっちはも少し俗っぽい。だからこそリアリティがある。 あらすじ。 主人公・私は、夫が長期の海外出張に出ており、一人暮らし中。そんなある日、大学へ進学するために上京してくるいとこから、十五年ぶりに連絡がある。「かつて住んでいたドミトリイ(下宿)を紹介して欲しい」と。主人公は快諾して、久々に訪れるも、かつての活気を失い、間もなく廃寮になることが決まっていた。管理人と再会し、いとこは下宿を決め、暮らし始める。しかし大学入学後、いつ訪れても部活の合宿などで会うことができない。ドミトリイは昔、失踪した学生もいて……。 ラストは完全に騙されてしまった。それと、管理人の秘密が途中で明かされてからの展開がなんともいえない切実さ。
初めての小川洋子さんの作品。大昔、博士の愛した数式は映画だけ見たことがあったのだけど、小説は読んだことがなくて、今回初めて読みました。 全体を通して、とにかく無駄な言葉がなくきゅっと密度の高い、それでいて透明感のある文章が本当に素敵。物語全体が常に不穏な空気を纏っているはずなのに、それが不思議と和...続きを読むらぐ感じ。それでいて温度感を感じさせないから、描かれる空気を自由に解釈できるような。 妊娠カレンダーは、日常に潜む隠れた狂気の描かれ方がとても印象的だった。姉もそうだけど、姉の旦那もかなり私とは波長が合わない。つわりで気分が悪いという姉につられてしまう旦那も、めかしこんで受診に行く姉も、とにかく全てがちょっとずつずれている。積み重なる不和に、こちらの気も滅入りそうになった。この2人とリアルに生活していて、グレープフルーツのジャムだけで済んでいるの、ある意味すごいかも。 ドミトリイはかなり印象的だった。私は、天井裏にあったのは本当に蜜蜂の巣だと思っていて、先生のことをつい殺人犯かと疑ってしまった自分の気持ちが愚かしいとすら感じたのですが、それは幻覚で実は…という意見も多数あったのが面白かった。それにしても、先生のことを何処か聖人のように感じていそうな主人公にも終始違和感があった。私はもしかして、その違和感にすっかり取り込まれてしまったのかもしれません。 夕暮れの給食室と雨の日のプール。こんなに全てを投げられた、委ねられたと感じたのは初めてだった。色鮮やかな風景が浮かぶ中で、問題の親子だけはどうしてもセピアでしか想像できなくて、常にうっすら気持ち悪い世界でした。なぜそれを話したの?それで終わりなの?と思わせる父の語り草に、ある種健常ではないような、ほんの少し何かがずれている奇妙さを感じました。 小川洋子さんの文章がとにかく好きだと感じたので、また別の作品も読もうと思います。薬指の標本が気になる。 2026/7/20
小川洋子さんの「博士の愛した数式」をあまり好きになれず、そこから疎遠になっていたけれども、これはとても良い!好き!妊娠カレンダー、姉に赤ちゃんができ、その母体の変化に翻弄される妹。悪阻という形で姉を捉えた赤ちゃん、でもその母体の変化ばかりでどこに赤ちゃんがいるのか不明、という妹から見た妊娠の不気味さ...続きを読む不思議さ。超おもしろすぎたー!あと新人っぽい、世の中に、は?を突きつけてやる!という気鋭さがある。
私は妊娠をしてみたいと思うことがある。 読みながら、白と緑しか思い浮かばなかった。 解説に完全自殺マニュアルのこと書いてた。あれそんな昔からあるんか
妊娠カレンダー
なにか怖いと思うシーンが何回かあり、思わぬ方向に話が進んでいくのではという冷静な興奮を与えてくれるストーリーだった。
掴みどころのなさが夢に似てるけど、 狭いところの描写が深すぎて一生覚めない気がするので、本でよかった。
不気味な作品集でした。自分の理解力がなくてこれって結局どういうことなの?と思った部分があるのでもう一回読み直そうと思いました。
純文学の王道みたいな作品。 特に2つ目と3つ目の話はそう思った。 個人的には中でも2つ目のドミトリイがおもしろい。状況としてはかなり不気味な話になりそうなのに、表現によって優しい柔らかな心地に捻じ曲げられてる感じ。
自分が妊娠したのをきっかけに手に取った。 「妊娠カレンダー」 妹目線で、姉の妊娠について書かれた作品。妊娠の、得体の知れなさが表現されていた。自分自身、これからの身体の変化をどこか恐ろしく感じていたので、その感情とリンクして面白かった。ちょっと不気味に書かれているのがまたいい。女性ならではの作品だ...続きを読むと思った。 「ドミトリィ」 もう妊娠の話ではないのだなと、最初はあまり興味がなかった。でも、読み進めていくと、止まらなかった。先生の身体と、寮の存在が、どんどん悪い方向へ進んでいく。どうなってしまうのだろう、と怖かった。結局、怖さは消えたものの、なんとも言えない気味悪さが残った。後味は決して良くないけど、なんだか心に残る作品。 「夕暮れの給食室と雨のプール」 不気味、の一言。自分の周りにも、こんなに不気味なことが潜んでいるのかもと思うと、どうしようもなく気持ち悪くなった。でも、不気味さでこんなに心が動くなんて面白いな、とも感じた。自分の学生時代はどうだったかな、とすこし考えた。 情景が浮かぶような、丁寧な表現が魅力的。普段抱かないような感情が生まれて、文学作品の面白さに改めて気づいた。小川さんの他の作品も読んでみたいな。
芥川賞を読みたくて買いました。小川洋子さんはやはり有名ですしタイトルのインパクトが凄かったのですが、やはり感心させられるばかりでした。大衆文学ばかり読んでいる私にとってこの純文学はまた違った読後感と高揚感を与えてくれて最高でした。
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小川洋子
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