小川洋子のレビュー一覧

  • ボタンちゃん
    第62回青少年読書感想文全国コンクール課題図書。懐かし思い出が蘇ってくるような物語です。自分の子供たちの成長の時の流れを感じながら読みました。忘れ去られてしまった物の小さな声。そこに目一杯詰まっている思い出。優しい絵と文章で綴られています。
  • いつも彼らはどこかに
    著者の動物に対するまなざしには、ごまかしや偽善がない。その純粋なフィルターを通して、慎ましやかに生きる動物の姿が見えてくる。
    江國香織のあとがきも素晴らしい。
  • ボタンちゃん
    細かいレースのついた丸襟のブラウス。
    その一番上についているまぁるいボタン。
    表紙の絵を見たとたん、あまりの可愛らしさに本を抱きしめたくなりました。
    小川洋子さん初の童話。
    だけれど、失われて戻ることのない幸せだった時間や
    失われることのない大切な思い出の記憶、
    書かれていることの根底に流れているも...続きを読む
  • いつも彼らはどこかに
    一話目の『帯同馬』とてもよかった。

    飛行機や列車を使って、遠くに行くことの恐怖。
    このまま帰れないのではないか、
    自分の部屋に戻ることはもうないのではないか、
    そんな感情がとても共感できる。
    飛行機に乗るときは、一種の覚悟のようなものを携える。このまま死んでしまうかもれない、という可能性と不安に対...続きを読む
  • まぶた
    奇妙で、面白いという印象から、「バックストローク」から圧倒を抱き始めた。詩人の卵巣、リンデンバウム通りの双子も圧倒的。死に触れるからこそ生を感じる。喪失、欠損から、いま、ここがあることが分かる。だから文学は偉大だ。
  • 偶然の祝福
    一人の女性の身に起こる、日常と非日常の間を行き来するような奇妙な出来事が時間軸がばらばらのまま織り成される。全てに通じて感じるのは、どこかひっそりとした喪失の匂い。
    捉えどころのないたおやかな空気の静謐さ、小説にしか描けない時間と空間の切り取り方、手触りに引き寄せられました。
  • 刺繍する少女
    著者の作品はいくつかのジャンルに分かれると思うのですが、これは色んなタイプの話がバランスよく収録された短編集。
    ちょっと不思議な感じのもの、グロテスクで残酷なもの、きれいで悲しいもの、感動的なものなど色々。
    個人的には「地道な作業にひたすら専念する人の話」と「妄想癖があって少しヤバイ感じの人」の話が...続きを読む
  • 犬のしっぽを撫でながら
    『博士の愛した数式』の著者によるエッセイ。自身の執筆活動についてや、日常生活でのエピソード、また、アンネ・フランクへの想いもつづられている。

    どんなことにインスパイアされて作品を生みだすのか、その礎となるものは何か…作家の裏話を聞いているようで、興味深かった。筆者のこれまでの作品の誕生秘話について...続きを読む
  • 原稿零枚日記
    小川洋子版、洋子in wonderland.
    赤ん坊にまつわる描写が、まるで赤ん坊のむっちりした太ももを触っているかのようにリアルで生々しく、思わず傍らの我が子を見直してしまった。
  • 沈黙博物館
    幻想的な長編小説。「博士の愛した数式」以来、小川洋子の長編はあまり読んでこなかったのだけれど、すごく良かった。

    博物館技師の「僕」が訪れた幻想的な村。そこで「僕」は形見を陳列する「沈黙博物館」を作ることになる。形見を収集してきた「老婆」と、その娘だという「少女」、屋敷に代々仕えている「庭師」と「家...続きを読む
  • 心と響き合う読書案内
    好きな作家さんの一人、小川洋子さんのラジオからの
    読書案内本。ラジオ、聴きたかった。。

    まだ読んでいない本も読んだことのある本も載っていました。
    読んでいない本は読みたくなるしすでに読んでいる本は
    小川さんはこんなことを考えるんだなぁと思ったり…。

    読みたくなった本は複数あるけれど、川端康成「片...続きを読む
  • とにかく散歩いたしましょう
    上手い、の一言。
    元々新聞の連載だったと言うこともあり、一つ一つがほど良い長さで、シンプルな表現が多く、それでいて濃度が高い。
    日常の些細な出来事や作家活動の一環としてのあれこれ、愛犬の話。ふとした出来事を深く、でも、深過ぎて読み手が迷子になることがない程度に掘り下げて書いてくれているので、心にすん...続きを読む
  • カラーひよことコーヒー豆
    犬好きでタイガースの熱狂的なファン、どこにでもいそうなどちらかといえば垢抜けないおばさん。
    レジに並ぶときはもたもたして後ろの人に舌打ちされないように万全と小銭の準備をし友達と食事した後に喋りすぎたのでは?と不安になる。
    なるべく世間の端っこで生きるよう努力しながらおこがましい気持ちで小説を書いてい...続きを読む
  • カラーひよことコーヒー豆
    毎日の中でスルリと零れてしまいそうなひとコマを
    大切に丁寧に書かれたエッセイたち。

    不平不満をこぼさず、たくさんのことを
    じっと我慢して超えてこられたお料理の先生の
    謙虚な笑顔と誠実な人柄のお話。

    大好きな須賀敦子さん、堀江敏幸さん、
    柴田元幸さんの話もうれしく、
    「枕草子」に対する想いに、そう...続きを読む
  • 世にも美しい数学入門
    ホント、美しい!!

    学校教育としての算数&数学と、数学者たちを魅了する数学との齟齬はなんだろう。
    本来、そっちへ進むべき人たちが、学校の数学で多く淘汰されてしまってる気がしてならない(><)

    あきゅFBで、どなたかがオススメしてた本。
    すっごい!すっごい!面白かった♪
  • 刺繍する少女
    酒井駒子さんの装画が素敵すぎて衝動買い。写真と実物は異なります。奥付の日付が今年の1月だったので、どうやら新装版になったようだ。

    冷たい気配が漂う短編集。
    あまりにも美しいものが、時に近寄りがたい雰囲気を纏っているのと同じような感覚だろうか。
    ページを捲るたびに、行間に漂っている「死」の気配がぽろ...続きを読む
  • 世にも美しい数学入門
    面白かったなあ。数学解くのは嫌いだけど、見るのは大好きです。谷山・志村予想の話はすごい良かった。数学が虹をかける。そして、神様の手帳。理系は、特に数学が専門の人達は、ロボットみたいで感受性に欠ける、みたいなことを言っている人たちがいるだろうと思うけど、間違いなくそれは間違いである。それをこの本で確認...続きを読む
  • やさしい訴え
     楽器職人とか調律師にあこがれがあるのでそのモチーフの面白さで読み進めた記憶がある。
     音楽を介した繋がりと身体を介した繋がり。どちらも言葉を使わない。
    「音楽」が、第三者の踏み込めない関係や空間を作るけど、音楽自体は、人対人だとお互いに遠慮して距離を取ってしまうところを埋められる。
    踏み込めないは...続きを読む
  • アンネ・フランクの記憶
    小川洋子さんが、ものを書くということの力を見出す源となった、アンネ・フランクの日記。そのアンネの足跡を辿ってゆく旅の記録。小川洋子さんの視線から、アンネを捉え直すことができて、とても興味深い。日記をもう一度読み直そうと思う。
  • とにかく散歩いたしましょう
    最初は、なんとなぁく好みじゃないなぁと生意気な感想を抱いて読んでいたのに、
    気がつけば夢中になっていた。
    静かでなエッセイで突拍子もないエピソードで読者を驚かせるということは一度もなかった。
    それなのに中毒になったように読み続けたくなるのは、
    ひとえに文章そのものの魅力なんだろうと思った。
    文体や選...続きを読む