ブックライブでは、JavaScriptがOFFになっているとご利用いただけない機能があります。JavaScriptを有効にしてご利用ください。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで100万冊以上配信中!
来店pt
閲覧履歴
My本棚
カート
フォロー
クーポン
Myページ
3pt
キリコさんはなくし物を取り戻す名人だった。息も荒らげず、恩着せがましくもなくすっと――。伯母は、実に従順で正統的な失踪者になった。前ぶれもなく理由もなくきっぱりと――。リコーダー、万年筆、弟、伯母、そして恋人――失ったものへの愛と祈りが、哀しみを貫き、偶然の幸せを連れてきた。息子と犬のアポロと暮らす私の孤独な日々に。美しく、切なく運命のからくりが響き合う傑作連作小説。
アプリ試し読みはこちら
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
また好きな本に出会ってしまった。 悲しみや寂しさ、影が通奏低音として流れている文章が好きだな。 お手伝いのキリコさんの話が好きです。
何度読んでもひっそりとしたお話たちが好きです。 小説家が主人公で、彼女の書くお話が小川洋子さんが書かれてきたお話なので、私小説のような空気です。 「時計工場」の最後の一文に、今回は目が留まりました。素敵な一文です。 小川洋子さんと同じくらい大好きな川上弘美さんの解説も良かったです。川上弘美さんも、小...続きを読む川洋子さんの新刊が出たら必ず買うのか…わたしもです。
一人の女性の身に起こる、日常と非日常の間を行き来するような奇妙な出来事が時間軸がばらばらのまま織り成される。全てに通じて感じるのは、どこかひっそりとした喪失の匂い。 捉えどころのないたおやかな空気の静謐さ、小説にしか描けない時間と空間の切り取り方、手触りに引き寄せられました。
細かい描写を読み進めていると、いつのまにか物語のなかに入り込んでいる感覚。そして、思わぬ方向に連れていかれている。『盗作』もまさにそんな感じだった。 『失踪者達の王国』の伯母さん、『キリコさんの失敗』のキリコさん、『エーデルワイス』の弟、それぞれが大切にしているものや事柄と、それに対する思いを、私...続きを読むはちゃんと感じとれたか、と思ってしまった。 『涙腺水晶結石症』は、一番好きだった。ひどい雨のなか、ベビーカーと40キロのラブラドールのアポロを連れ、歩く。孤独を感じながらも、大切なものを守りたい思いに後押しされ、頑張る気持ち、そして訪れる絶望、希望。小さな白い結晶がそれらの全てをもたらした。アポロが元気になって、本当によかった。 読後感がもやっとするときもあるが、小川さんが小説のなかで意図するものを感じ取れる読者になりたいな、と思う。 他『時計工場』『蘇生』
博士の愛した数式の作者だから。そんな軽い気持ちで手に取ってしまったが、とても裏切られた。第一話から仄暗い雰囲気が漂い、後半はドロリとした感触が胸に残る。飼い犬のアポロの存在が無ければ凍えていたかもしれない。そう思わされるくらい引き込まれた。 一生懸命生きてる人にきっと響く作品だと思いました。
久しぶりに再読 【失踪者たちの王国】 “さよならも告げず、未練も残さず、秘密の抜け道をくぐってこちらの世界から消えていった、失踪者たちが住むという王国。誰でもたやすく足を踏み入れられるという訳でないらしい王国” 『嘔吐袋』の話はこの話だったかと再確認。 どこかで読んだと思っていても短編は何に入っ...続きを読むていたか忘れがち。失踪する側は理由や事情があって、日常の延長で自覚なく失踪するものだが、失踪される側は特別な事になってしまうという事実が不思議な感触。 【盗作】 「あれ? この話……」となる作品。 他の短編集にある話とリンクしているから、混乱しがち(『三月は深き紅の淵を/恩田陸』と同じ感触の掴みきれない感覚が好き 【キリコさんの失敗】 キリコさんがチャーミングで実に魅力的! 【エーデルワイス】 穏やかなのに不穏で良い。 【涙腺水晶結石症】 絶望的な状況で判断を誤る人や助けを求められない人が苦手で、その種の話には苛立ちを感じやすいがが、作品が淡々とししていて、その悲劇的な状況に悲壮感がないから神経を逆撫でされる手前でとどまる。スッと終わるから後味は悪くない。 【時計工場】 指揮者、果物を背負う老人、愛犬、果物、マンゴー色の蝶……短編集だけと連作だし、連作だけど分断されていて「おや?」と登場人物の作品内の時間軸を探す作業が発生する。逃げ出したいくらいの湿度が心地良い。 【蘇生】 短くてスッと消えていく最後の短編。湿度の高い短編の後にカラカラに乾燥した短編が来て、潤いが欲しいと感じた辺りでストンと断ち切られる。 【変化の段階/川上弘美】 解説じゃなく新聞読書面からとのこと。文庫本の裏面解説も魅力的。 “失われたものたちの世界、と私は小川洋子の世界を呼んでいる。”の一文に共感しかない。 最初に小川洋子作品を手にしたのは『薬指の標本』だった。ゴシック調の表紙に惹かれて、何冊か読むあちに気がついたら「取り敢えず読む」作家リストにインしていた。今のところ『沈黙博物館』が自分内ベストな気がしているけど、結局のところどの作品も違和感はあるのに好きなんだよなあ。
小川洋子の世界。 短編連作。 裏表紙から。 失った物への愛と祈りが、哀しみを貫き、偶然の幸せを連れてきた。 なるほど、なのでタイトルが「偶然の祝福」なのか。 読み終わって、詳細をしっかり覚えているかというと、すごくあやふやな記憶しか残っていなかった。 だけど哀しみの中に、息子と犬のアポロが寄り...続きを読む添っている。 じんわりと幸せを感じる一冊。 とくに「キリコさんの失敗」と「涙腺水晶結石症」が良かった。 それにしても解説の川上弘美さんが一番好きな小川作品が「ホテルアイリス」というのがびっくり。 英訳されている洋書もつい買ってしまったけれど、ちょっとついて行けない世界。 もっと読み込んで小川洋子の世界に入り込まないといけないのか? 徐々に小川作品も読んでいこうと思います。
以前は、女性作家と日記、手記などは読まなかった。読書は空いた時間に、それも出来るだけ現実から遠いものを選んでいた。海外の小説が多いのも当時の気持ちや環境から距離があったからかもしれない。 時間に少し余裕が出来てベストセラーなども読むようになり、時間があまって来ると、本来の好奇心からかさまざまなジャン...続きを読むルのものを読み、手に取ったことがなかった女性作家のものが心に響くことに気がついた。 小川さんは長い間記憶の中で「博士の愛した数式」を書いた人だった。それがほかの作品も読んでみたい、と読んだ途端好きな作家に入ってしまった。 どの作品も独特の味があって、ちょっと変わっている。 余りたくさん読んでいないので、この作品に限って思うことは、たとえでも身近な描写でも大胆で奇妙な現実の雰囲気が纏わりついている。 なにかが消え、なきかがあらわれる。消滅していく流れがあり、そこには深い悲しみが沈んでいる。そして再生は全く違った形でありながら、稀にその悲しみを埋めるような現象が起きたりする。 別れていくことが当然の人の営みのように、消えて行く。奇妙な現象が手を繋いで輪を作り、その中に作者の現実や、生身の姿を髣髴とさせる、低いベース音のように、そんな姿が奥底に流れ続けているような、短編集だった。 「失踪者たちの王国」 これは何かで読んだことがあった。それ以後ニュースや、ドキュメンタリー番組は気になってよく観ていた。年間8万人前後の失踪者(または行方不明者)がいると言う。私の身近なところでも昨年一人が、家を出たまま行方が知れない。事業に失敗していなくなったのだがその後見つかったという話を聞かない。 ミステリなども家出の後行方が知れないという書き出しや、事件の始まりになっているものも多い。 ここでは、知っている人がふっといなくなったという。帰って来ない友達の叔父さん、歯医者さんに行って入れ歯を置いたままいなくなったおじいさん、先生の婚約者は「ちょっと行ってくるよ」と言ったままいなくなった。 叔母さんは一人になっても働かないで、家財を売って暮らしているようだったが、嘔吐袋を集めていた。そして何も言わず綺麗に失踪した。 失踪した人は、垢を落として生まれ変わったように楽になるのだろうか、反対に現実の重みが降りかかってくるのだろうか。 一度踏み込んでみたい気もするが、こちら側にいるとあちらは陰の中にいるようで薄ら寒い。 不思議にも彼らは私を慰めてくれる。王国ははるか遠いはずなのに、彼らは洞穴に舞い降りてきて、いつまでも辛抱強く、そばに寄り添ってくれる。その吐息を私は頬のあたりに感じることができる 「盗作」 聞いた話を書いて賞を貰った。将来を嘱望された水泳選手が片腕が上がったまま動かなくなってしまったという。その後病棟の談話室に英語版の「BACKSTROKE」と書いてある古い本を見た。 背泳ぎの選手だった弟が、左腕から徐々に死に近づいていく話だった。私が書いたのと、彼女が語ったのと同じ話がそこにあった 「キリコさんの失敗」 なくしたものを見つける名人のキリコさんの話。リコーダーをなくしたら木で作ったのを持ってきてくれた。海外旅行の土産の万年筆で毎日いろいろなことを書いた。インクがなくなってうろたえているとキリコさんが町の文房具屋さんで補充のインクを買ってきてくれた。 ある日キリコさんの自転車にパンが置かれていた。毎日それを分けて食べていたが、パン職人が自殺した。そこにキリコさん宛ての手紙があったという。キリコさんはすっかり元気をなくしてしまった。 無くした万年筆は、むいた栗の皮に紛れて捨てられ焼却炉で溶けた。 キリコさんは、骨董の壷を頼まれて渡しに行って人違いをした。サインをしているのを見るとなくなった万年筆と同じものだった。買い取ると言うとキリコさんの手に乗せてくれた。だがその万年筆を持っていた買い主は偽者だった。 キリコさんはパン屋さんのことや、だまされて盗られた骨董品が気にかかったのか去っていった。 「エーデルワイズ」 私の本のファンで、衣服にポケットを作り体中に本を入れて歩いている男に出会った。手紙をもらったが、本の一部を寄せ集めた意味不明の奇妙な文章がぎっしり詰まっていた。男は私の困惑にも構わず「エーデルワイズ」の歌を歌ってくれた。付きまとわれていたが、雨の日に転んで本を全部だめにした。そしていなくなった。 「涙腺水晶結石症」 飼い犬が病気になったので、医者に見せようと雨の中を歩いていた。 車で通りかかった男が犬と一緒に乗せてくれたが、獣医だといった。 犬を見て涙腺水晶結石症だと言ってまぶたをしぼって石を取り出してくれた。 「さあ・・・・・」 よく見えるように彼は掌を私に近づけた。それは白く半透明な結晶だた。ちいさな金平糖状の粒がいくつもくっつき合って、一つの精密な形を成していた 「時計工場」 旅行記の取材で行った島で、籠に一杯の果物を背負った老人に合う。首に黄色い蝶のあざがあった。ホテルの図書室で識者の男に出会う。彼の首にも黄色い蝶のあざがあった。 小説を書くという苦しみが象徴的に語られている。 「蘇生」 息子の睾丸がはれていた。そこには水の入った袋があるという。 手術のために入院したが、同室になったおばあさんは、「アナスタシア」という名前だといって、家系や歴史や親族についてとうとうと語る。どう見ても彼女は日本人だった。周りにはAの文字を飾った刺繍が溢れていた。退院のとき刺繍糸のセットをあげるととても喜んで写真を撮ってくれた。切り取った袋は貰って帰った。 今度は私の背中に腫れ物が出来た。水が溜まっていると言う。簡単に袋を取って手術が終わった。その袋も貰って帰った。 ある朝突然言葉が出なくなった。言語療法士にも見てもらったがよくならない。 原稿用紙の前に座ると、言葉の壁が見えた。積みあがっているのは私が書いた言葉のようだ。 言語療法室に行ったらアナスタシがいた、喋り続けるので、言葉の繭にくるまれているように見えた。「アナスタシア」は「蘇生」と言う意味だという。 干からびた二つの袋を飲み込んだ「蘇生よ、蘇ること」アナスタシアの言葉が聞こえてきた。 「アポロ」と呼んだら犬の耳がぴくっと動いて言葉が戻ってきた。 なにかもの悲しい、人の営みとささやかな願いと、不思議な出来事が溶けあった作品。やはり好きだなぁと思う
孤独な女性小説家の過去、日常を描く連作小説。 間違いなく日常が描かれているが、そこにあるのは、ミステリアス、生々しい神秘性、非現実感、虚構。 最初はエッセイ?と勘違いしそうになりました。ご自身の経験も多かれ少なかれ盛り込まれてるとは思いますが。 小川洋子さんは静謐な文章を書かれる方、と紹介されるこ...続きを読むとが多いが、その通り喧騒とは正反対のところにいる。 流れている時間がすべらかで秒針の音ひとつしないのだ。 主人公の人生は穏やかなものではなく、しかし落ち着き払っている。 終わり方はストンときたし好みだが、その後主人公にとってやさしい時間はやってくるのだろうか、という読後感が残った。 暗い話が好きな私にとっては良い余韻だった。
小川洋子の小説は、博士が愛した数式しか読んだことがなかったけど、この人のほん。面白い。 ほんの少しの非日常をこんなうふうに淡々とミステリアスに、そして、ささやかな幸福に、ほんの少しのラブストーリーに、不思議なホラーに、少しづつ姿を変えて読ませてくれる、身近によくある話のようで、なかなかないんだけど...続きを読む、なんか自分でも経験したような気になるような日常風景の中に取り込まれる世界。 ふとした瞬間に、今の自分と本の中の主人公が簡単に入れ替われるほど普通の日常の出来事が、どんどん読ませてくれます。 ゾクっとしたり、え!?そうくる!?って思ったりオチも完璧なのに、なぜかとても日常的。 そんな不思議なもう一人の自分の人生のような一冊です。 ハマるかも。小川洋子!
レビューをもっと見る
新刊やセール情報をお知らせします。
偶然の祝福
新刊情報をお知らせします。
小川洋子
フォロー機能について
「角川文庫」の最新刊一覧へ
「小説」無料一覧へ
「小説」ランキングの一覧へ
カラーひよことコーヒー豆
試し読み
生きるとは、自分の物語をつくること
海
アンネ・フランクの記憶
アンネ・フランクをたずねて
いつも彼らはどこかに
犬のしっぽを撫でながら
NHK「100分de名著」ブックス アンネの日記 言葉はどのようにして人を救うのか
「小川洋子」のこれもおすすめ一覧へ
一覧 >>
▲偶然の祝福 ページトップヘ