小川洋子のレビュー一覧

  • 約束された移動

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    「約束された移動」「ダイアナとバーバラ」「元迷子係の黒目」「寄生」「黒子羊はどこへ」「巨人の接待」“移動する”物語、六篇。

    ここに収められている作品に登場する老人たちの、穏やかな立ち居振る舞い、言葉づかい、仕事ぶり、そして、熱帯魚、子羊、小鳥、子供たちとのふれあい、そのどれもすべてが美しい。
    それらは、人目につかず、ひっそりとした佇まいなのだけれど、普通と違ってどこかずれてしまっている、その哀しさがまた美しいと思える。
    一旦この物語に足を踏み入れてしまうと、読み終わるのがもったいないとさえ思ってしまう。

    濃密で不思議な魅力のある、独特な世界。

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    2023年01月15日
  • 掌に眠る舞台

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    舞台×小川洋子×ヒグチユウコ。よりによって私の大好きな芸術3種の恐るべき盛り合わせに、私のために作ってくださったのですか?!と問いたくなる短編小説。どの短編にも舞台が必ず登場するのだが、趣がそれぞれ異なるだけでなく、小川洋子さんが書くとこうなるのか!という驚きに満ちた珠玉の8編…(まだ余韻が)。虚構と現実が同時に確かに存在し、共鳴しあい、たとえ終わりが来ようとも心に宿り続ける尊い灯火(ともしび)。それが私をあたため、寄り添い、明日を照らす。死と生の循環。舞台の魅力がこの1冊に詰まってる。

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    2023年01月09日
  • 凍りついた香り

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    ネタバレ

    結局夫がなぜ死んだのか明確な答えは記されずに終わるの、ふつうだったらそこにめっちゃモヤモヤしちゃうだけなんだけど、何故かすんなり受け入れられた。とにかくずっと漂う閉鎖的な雰囲気が大好きでラストもこれ以上はないなって思う

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    2023年01月08日
  • 約束された移動

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    ため息出る。。

    「約束された移動」は、大きな人生のうねりだけではなく。
    不特定多数のうちのたったひとり、
    自分だけに差し出される手によって(しかしそれさえも錯覚なのだけど)
    あらゆる移動は約束され、人々は自分の還る場所に還ってゆける。

    喪ったものを少しの間だけ愛でて、そっと閉じて、また還る。今は無くても、愛でていた事実について、あなたと私が証人になる。
    『薬指の標本』でも思ったけどそんな描き方をしているかんじがする

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    2022年12月29日
  • 妊娠カレンダー

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    どれも余韻を残した終わり方 その余韻が心地良い。

    2024.12.28 再読
    「何事も定義しようとするとたちどころに、本当の姿を隠してしまうものですね。」

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    2024年12月28日
  • NHK「100分de名著」ブックス アンネの日記 言葉はどのようにして人を救うのか

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    小川洋子さんといえばアンネの日記。
    時代背景も踏まえて日記の記述を紐解きながら、アンネ・フランクという一人の才能ある少女が生きた軌跡を丁寧に追う作品。
    久しぶりにアンネの日記の文章に触れたけど、大人になってから読むと確かに印象が違うなあと感じたので改めて読み返したくなったし、ホロコースト文学にも興味を抱いた。
    当時の時代背景についても平易なことばで簡潔に分かりやすく説明されており、小川洋子さんのさすがの文章力を感じる。
    これ、NHKの番組として放送されてたということ?観たかった………!!

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    2022年12月18日
  • 約束された移動

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    小川ワールド全開。
    不思議で残酷で懐かしくて愛おしくて切なくて。
    絵本を読んでいるような小説。
    素晴らしすぎです。

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    2022年11月07日
  • まぶた

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    「飛行機で眠るのは難しい」を初めて読んだのは高校の授業。教科書に載っていた。
    静かな雰囲気、淡々と描かれる死、生々しい人間の見栄、人生、さみしいような、切ないような、
    ずっと忘れられなくて、本を買った。

    この話が小説の中で一番好きな私のたからもの。

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    2022年10月30日
  • 最果てアーケード

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    ネタバレ

    「この世界では、し、ではじまる物事が一番多いの。し、が世界の多くの部分を背負ってるの。」という台詞で、死を連想して不思議な気持ちになった。生という漢字はたくさんの読み方があるが、死は1つしか読み方がないという話は有名だ。
    どの短編にも切なさがあり、それらも日常として、アーケードに吸収されていく。特に父を、よりにもよって約束していた映画館で、火事で失ってしまうのは辛すぎる。ラストは不思議な終わり方だった。父の元に行くといいながら、雄ライオンのノブの暗闇に入っていく。その頃、人さらいの時計も止まっている。父と、アーケード、それらの思い出から一歩踏み出す。

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    2022年11月29日
  • 約束された移動

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    6編の短編それぞれに、独特の世界観があり小川ワールドに引き込まれた。映像なしに文章だけで、異次元空間を体験できた。

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    2022年10月07日
  • 琥珀のまたたき

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    埃被っていて薄暗くて好きな世界観。御伽噺ってやっぱりどこか怖いよなと思った。飛蚊症からここまで世界を創ることができるなんて素敵すぎる。

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    2022年09月21日
  • 最果てアーケード

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    「紙店シスター」と「人さらいの時計」が好きだった
    こんな商店街があったら行きたい、というよりは
    この商店街の中の人になりたいと思った

    登場人物は皆、一様に優しくて温かいのに、何故か物語全体は少し薄暗くて冷たい印象があって不思議な本だった。

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    2022年09月15日
  • 沈黙博物館

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    スリルのある小説です。見事に感情がぶつかり合い、不思議なパズルを完成させます。主人公が戸惑い、躓いたりして沈黙と戦います。謎めいた小説の好きな方におすすめです。何か返事があるかもしれません。

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    2022年08月31日
  • 薬指の標本

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    世界観なんて書いてしまうと非常に安っぽいけれど、この世界観が好き。
    この小説を原作としたフランス映画もおすすめ。舞台がフランスの田舎町で、却って無理なく映像化出来てます。

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    2025年06月07日
  • 夜明けの縁をさ迷う人々

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    丸い部屋で眠るのって、どんな気分なのかしら。 きっと深い安らぎに包まれて、小さな心配事なんて全部消え去ってゆくんでしょうね。
    だって丸い部屋で眠る時の自分は、円の直径になるのよ。

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    2022年05月30日
  • 琥珀のまたたき

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    アンティーク調の美しい情景が浮かぶ文章で、読んでてうっとりするような物語だけど、現実は狂気を帯びた実の母による監禁事件。良い.....危険な美しさ。

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    2022年03月27日
  • ゴリラの森、言葉の海(新潮文庫)

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    生まれた時から、言葉が当たり前にある環境だから、言葉ですべての物事を定義してしまうこと自体の意味や、不可解さについて考えたことなかったな
    言葉遣いなど、言葉に達者な人でありたいなあとは思っていたけれど、そのマイナス面についてもあるのね、やっぱり物事って全て両面性がある。。当たり前って危険ね

    普段よく人間で(笑)話題になる恋愛、結婚、親子関係その他、人間も動物の一種と考えるとなんだか単純化された

    今は特に戦争について考えさせられることが多いから、争いのテーマの部分も納得しながら読みました

    共存、想像力は私にとって永遠のテーマ!

    戦争が存在する理由:言葉 死者 共感性 (トーテム 農耕社会

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    2022年03月14日
  • まぶた

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    さて、なぞなぞです。顔の中で鏡を見ても見ることのできない部位はどこでしょうか?

    う〜ん、鏡に顔を映せば顔の中は全部見えるし、どこなんだろう…改めて考えるとすぐには思い浮かびません。とはいえ、こんな冒頭で時間を取っていたら長いレビューがさらに長くなってしまうので、とっとと答えにいきましょう(笑)。はい、それは『まぶた』です。この作品の書名でもあるので、ピンときた方も多いと思います。私たちが外の世界を見るのになくてはならない”目”。そんな”目”を守る『まぶた』は、その役割の大きさの割にはあまり注目されることはありません。顔の部位の話をしたとしても、”私は『まぶた』が魅力的なんです”とか、”私

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    2022年02月14日
  • とにかく散歩いたしましょう

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    ・ハンカチは持ったかい
    ・本の模様替え
    ・散歩ばかりしている
    ・がんばれ、がんばれ
    ・オクナイサマが手伝ってくれる
    ・機嫌よく黙る
    ・自らの気配を消す
    ・夕食におよばれしてみたい人

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    2022年02月12日
  • ゴリラの森、言葉の海(新潮文庫)

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    タイトルや表紙からは、ゴリラの生態やコミュニケーションに関する本のように見えるかもしれないが、それに留まるものではない。

    言葉を使わないコミュニケーションを実践してきた山極氏。言葉で表せないものを言葉で伝えるという難題に常に取り組む小川氏。霊長類学者と小説家が、言葉という接点を通じて、人類の来し方行く末を考える対談である。

    人間はどういうわけで自然界から逸脱してきたのか。特に、人間が言葉を得たことの功罪について考えさせられる。

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    2022年01月10日