小川洋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
作家の小川洋子さんが、アンネ・フランクの足跡を辿りに隠れ家や親友を訪ねて取材する。
彼女は、ユダヤ人虐殺やナチスの蛮行のシンボルとしてではなく、純粋にアンネの文章を楽しみ、友人として接する。
強制収容所では、「何百万人が」とか「無数の人が」と言ってひとまとめにしてしまうのではなく、一人一人の遺品、旅行カバンや、メガネや、靴や、子どものおもちゃやおしゃぶりなど…
一人一人を尊重し、想いを馳せる。
大雑把にまとめて、分かった気になるのはよくあることだと思う。
「戦争になったらたくさんの人が死ぬ」
そこには、人一人が死ぬということの恐怖が宿らない。
だから、こうやってアンネフランクという一人の少女の人生と関わって、友だちになった小川洋子さんが書いたようなエッセイには、途方もない価値があると思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレまた素晴らしい本に出会ってしまった…
アンネフランクを辿る小川さんの一週間の旅の紀行文。
アンネの日記=戦争のことを知る読みものとしての浸透の仕方をしているけど、作者の小川さんは違う。
″純粋な文学として読んだ″と記されていて、それは、ナチスの犠牲者という歴史的事実とは別のところで、ただただアンネが書く文章に親しみを持ち、一人の友人が生きた歴史や受けた影響を知りたくて彼女のルーツを辿る旅に出ているのよ、という純粋な気持ちが、文章の節々から伝わる。
小川さんの旅の進め方、アンネに携わる人々へのインタビューのスタンス、ホロコーストやユダヤ人への理解、全てが、大きな歴史を知るというより、アンネという少女のことを知りたいという敬愛の気持ちからくることが分かる。
それってすごくしあわせなことだと思うし、アンネが生きていたらきっと小川さんみたいな受け止め方を望んでいたのでは、と想像する。
何気ない箇所だけど、小川さんがアウシュヴィッツから出ておいしくチョコレートを食べれることを不思議に思っているシーン、とても好き。
だってそういうこと、わたしたちの日常に転がっている。悲惨なニュースを見た後に、誰かが亡くなった後にでも、なぜだかお腹は空くし、おいしく食べれて笑って過ごせる。そういうものだから。
わたしも、戦争の読み物としての先入観を捨てて、アンネの文章の節々からあえて戦争の悲惨な様子を考察したり勝手に意味を歪曲せずに、彼女の日記を″純粋な読みもの″として読み直したいなと思えた、とてもとても大切な本になった -
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河合隼雄さんが入院する2ヶ月前の対談で、最後の対談と言われている。
相手が作家の小川洋子さんだからかもしれないが、河合さんがリラックスして喋っている。
以下の小川さんの追悼の話が、どうも私の頭から離れません。
『対談の途中、先生は一度、深い悲しみの表情を見せられました。御巣鷹山に 墜落した日航機に、九つの男の子を一人で乗せたお母さんの話が出た時でした。 心弾む一人旅になるはずが、あんな悲劇に巻き込まれ、お母さんは一生拭えな い罪悪感を背負うことになったのです。その瞬間、先生の顔に浮かんだ表情、 思わず漏れた声、 宙の一点に絞られた視線、それらに接した私は、失礼にも「先生は本物だ」と確信しました。』
という小川さんの話です。
河合さんは、いろんな著書で「ほんとうの父性を日本の父親は持たなければいけない」と啓蒙している張本人なのに、やってること(カウンセリング)はまったくの日本人的対応でやさしすぎるということが、わかるエピソードですよね。西欧の父性的理論は熟知していても「三つ子の魂、百まで」ということでしょうか。 -
Posted by ブクログ
この物語は「小さい時の思い出から」と、エッセイ『遠慮深いうたた寝』に書いてあった。
だから、このアーケードでの出来事を語る「私」とは小川洋子さんだ。
小川洋子さんは、岡山市中区森下町で生まれ育ち、11歳に祇園町に引っ越している。
岡山市のどのアーケードの思い出なのだろうと思っていたが、パリのパサージュをイメージしていたそうだ。
日常の「とるにたらないものもの」への想いを綴った、江國香織さんの作品を思い出したが雰囲気は違った。
「最果てアーケード」は、だれがそんなものを必要とするの?という品物を扱っている商店の人々の物語だった。
『ブラフマンの埋葬』でもそうだったが、本書も人の名前が出てこない。
舞台となるお店が違う10篇の物語でできているので、"店主さん"と呼べばどの店の店主さんか分かるのだ。
人物が多人数登場する小説が苦手な私にとってはありがたい。
名前で呼ばれるのは飼い犬の べべ だけだ。
登場人物は、
物語を語る「私」。私の「父」。
レース屋の店主、かつて衣装係だった老女。
百科事典のセールスマン、同級生のRちゃん。
義眼屋の店主、(店主の)婚約者さん、兎夫人。
輪っか屋(ドーナツ屋)さん、元体操選手。
紙店の店主(レース屋の姉)、雑用係のおじいさん。
ドアノブ専門店の店主"ノブさん"。
未亡人の勲章店の店主。
遺髪レース編み師。
軟膏屋さん。
大学の助手。
どんな商品を扱っているお店かは、登場人物の呼び方でわかると思うが、
こんな(商売になりそうもない)お店が連なっているアーケードなどあり得ない風景だ。
だが、昔はアーケードの中のどこかに、似たような雰囲気のお店が紛れ込んでいた記憶がうっすらとある。
その品物が必要で探し求めてくるお客さんと店主さんのこだわりや想いが伝わってきます。
さり気ない動作や心情の描写がうまい小川洋子節が堪能できる物語だと思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ何が面白かったかとか、
どこが良かったのかとか、
言葉にするのはとても難しいけど、
読んでいてただただ心地良かったです。
敢えて言うなら文章が心地良い。言葉選びとかリズムが好きです。
最愛の人を突然失った女性のお話。
調香師の彼からオリジナルの香水をプレゼントされた翌日に彼は自殺…
それだけでもかなりの喪失感なのに、彼が死んでから彼に関する新事実がどんどん明らかになっていくので、物理的にそばに居ないという喪失感に加えて心の中にあった彼がどんどん崩れていく様な精神的な喪失感が積み重なっていきます。
彼が死んで"私の中の彼"を大事に手で包んでそれを拠り所に自分を支えたいのに、どんどん指の間からこぼれてしまって気付いたら手の中には最後にもらった香水しか残っていなかった…そんな感じ。
ルーキーの自殺の原因が結局分からないこともそうだけど、これだけの存在感がありながらルーキーの「人となり」というか「本質」というかルーキーという人が最後まで掴めません。周りにいる人はみんなルーキーに吸い寄せられるように惹かれながら、ルーキーを理解していた人はいなかったんでしょうねきっと。
香りって本当に過去の記憶を呼び起こします。
安心するにおい。
元気になるにおい。
泣きそうになるにおい。
良いにおいとはちょっと違う、自分だけの好きなにおい。