小川洋子のレビュー一覧

  • 沈黙博物館
    小川洋子さんの静謐で美しい文章が、話の内容と組み合わさり、静かな不気味さとあたたかさを持った作品でした。博物館に集められていくモチーフはどれも少しぞっとするようなもので、それでもだんだんと収蔵物が増えるにつれて、博物館になっていく。沈黙の伝道師たちも印象的。こんな世界があればいいのにと思う。
  • やさしい訴え
    静かな別荘地でチェンバロ作家と離婚寸前で別荘に家でしてきた女性の静かな交流を描く、あまり起伏もオチもないストーリーだけど、この作者らしい、静かな心落ち着く雰囲気がある。
  • ボタンちゃん
    ボタンちゃんは、アンナちゃんのたいせつなブラウスのいちばん上。
    ある日、なかよしのボタンホールちゃんとはなれて、たびに出ることになって・・・・。
    ++++++++++++++
    食べ物の話ではないのですが、絵がとても素敵で、思わず購入しました。
    少し大きくなって、自分で読めるようになった子どもたちに、...続きを読む
  • やさしい訴え
    こんなにも徹頭徹尾「苦手かもこの人」と思う主人公がかつていたかしら。
    という感想を主人公の女性・瑠璃子にもった。

    とにかく視野が狭くて、自分のことしか考えていないのだ。
    好きな人とセックスに持ち込むことをねらい、持ち込めたら
    それを恋敵にチラつかせてマウンティングする。
    形成が不利になってきたら飼...続きを読む
  • 心と響き合う読書案内
    数冊読んだことがあって、基本的には好きな小説家の手による書評集。とはいえ、最初から書評という形を取られていたものではなく、ラジオで話したものの字起こしってことだから、ちょっとニュアンスが異なる。ラジオで流れるってことは、読書家ってよりはもう少し一般寄りの相手が対象となる訳で、それもあってか、選ばれて...続きを読む
  • 夜明けの縁をさ迷う人々
    多感な時期に読んで一番心に染みたのが小川洋子の作品だった。
    優しいのに残酷、綺麗なのに歪んでいて、何処か切なくて美しい。
    ずっとこの世界に浸り続けていたかった。
  • まぶた
    一見、日常的な風景なのに、いつのまにか非現実な世界に入っていることに気づいた。
    小川洋子さんが描く静謐な雰囲気は変わらず。
  • いつも彼らはどこかに
    何度読んでも好きです。
    癒し系ではない動物の短編集ですが、仄暗い世界に癒されました。
    「帯同馬」と「ビーバーの小枝」が好きです。
    「帯同馬」で、ディープインパクトとピカレスクコートという固有名詞が出てくるのが小川作品では珍しい感じがしました。あ、でも数式の江夏もそうか…。帯同馬、という関係性も密やか...続きを読む
  • いつも彼らはどこかに
    世の中の片隅でひっそりと暮らしているひと。静かに寄り添う動物、または動物のかたちをしたもの。かなしみと小さなよろこび、現実かからそうでない場所に広がっていく、静謐な、著者ならではの世界。
    ディープインパクトとともに海を渡ったピカレスクコートに自らを重ねる冒頭の「帯同馬」、亡くなった弟を心の片隅におき...続きを読む
  • 夜明けの縁をさ迷う人々
    タイトルの「夜明けの縁をさ迷う人々」の場面を想像してみる…夜明け。眩しい光が差し込めるがそれを嫌い闇を求めてさ迷う人々。小説はその場面を切り取り彼らは永久に日の目を見ることがない。小川さんの作品から感じる世界にはどれも独特の時間軸が存在し時間がゆったりと流れるている事。人と人との微妙な距離感。見事な...続きを読む
  • 原稿零枚日記
    日記風の小説ですが面白かったです。
    作家の「私」の奇妙な日々と、ひたすら原稿が進まないのがかわいいです。
    再読なのですが、今回は、好きなエピソードの、現代アートの祭典を見に行くお話が、西岡兄妹さんの作品のように脳内再生されて、更に好きになりました。ガイドさんのしわしわぶりが千晶さんの独特な老人で表れ...続きを読む
  • 科学の扉をノックする
    理系の知識を付けたいと思い、色々読んでたけど、文系の私に一番しっくりきたのがこの作品。数式や原理原則がつらつらと書かれているのではなく、物語的に宇宙とか鉱物などの自然科学のことが語られています。ロマンティックです。
  • まぶた
    とてもするすると読んでしまうのですけれど、この短編集も確かに小川ワールドでした。
    何度読んでも大好きな「詩人の卵巣」の眠りの描写が、心にひたひたと染み込みます。軽くはなりましたが、不眠症でもあるわたしの眠りの召し使いは何処に…。
    どのお話も死の予感がするのですが、「匂いの収集」の猟奇的な感じも好きで...続きを読む
  • ホテル・アイリス
    何気なく幾度となく読み返した作品。ふと読みたくなる。小川洋子さんの描くこの質感が好きなんだと思う。
    最初に読んだときは高校生だった。翻訳家の老人とおとなしい女子高生の関係はいわゆるSMというものなんだろうけど、高校生のわたしになにかが引っかかった。最近の再読で、ああ、それはその裏にひそむ二人にしかわ...続きを読む
  • いつも彼らはどこかに
    時間を忘れて一気に読破したくなるサスペンスフルな小説もいいけど、
    不思議でシュールでユーモラスな1つの短編の世界に
    1日の終わりにじっくりと浸るのも読書の醍醐味だ。

    本書はまさに寝る前に1話ずつ
    ゆっくりと読んで欲しい短編集。


    たちまち非日常にさらってゆく魔力と甘美な陶酔。
    残り香のように漂う...続きを読む
  • 沈黙博物館
    すごくしんとした気持ちになりました。
    爆弾事件と殺人事件のくだりは忘れていたので、こんなにミステリな作品だったっけ…と思いましたが好きです。
    沈黙の伝道師も好き。わたしもかれらにひっそりと語りたいです。
    遺品を展示する沈黙博物館、訪れてみたいです。
    わたしなら一体何を展示されるのだろう…。
    解説が、...続きを読む
  • 偶然の祝福
    何度読んでもひっそりとしたお話たちが好きです。
    小説家が主人公で、彼女の書くお話が小川洋子さんが書かれてきたお話なので、私小説のような空気です。
    「時計工場」の最後の一文に、今回は目が留まりました。素敵な一文です。
    小川洋子さんと同じくらい大好きな川上弘美さんの解説も良かったです。川上弘美さんも、小...続きを読む
  • 刺繍する少女
    何度目かの再読ですが、今回も面白かったです。小川洋子さんは長編も短編も大好きです。奇妙さや狂気が、どのお話からも静かに漂ってきます。時に残酷な描写でも、ひっそりと感じられます。これまで書いてこなかっただけで、「ケーキのかけら」が大好きなのを発見しました。「森の奥で燃えるもの」の、時間から離れた不思議...続きを読む
  • 妖精が舞い下りる夜
    再読です。小川さんの「書きたい」という思いをあらためてしみじみと強く感じるエッセイでした。初期の頃のエッセイなので、あの小説はこんな思いで書かれたのだ、というところが興味深いです。出産と子育て、阪神タイガース…阪神タイガースの応援日記が、なんだか小川さんを身近に感じました。日々の切り取り方が、エッセ...続きを読む
  • ホテル・アイリス
    年老いた翻訳家と少女の倒錯愛の物語
    冒頭の娼婦と翻訳家が揉めるシーンの
    ホテルの娘がマリ
    乱れた姿で逃げるように部屋から這い出て口汚く罵る娼婦に「黙れ、売女」と明瞭な言葉で圧した翻訳家に心が惹かれたマリ

    二人は再開するが彼はあの時の威圧はなく貧相で力なく弱々しかった
    彼女に送ってきた手紙の
    翻訳家...続きを読む