小川洋子のレビュー一覧

  • 口笛の上手な白雪姫

    Posted by ブクログ

    表題にもなっている「口笛の上手な白雪姫」は、公衆浴場の片隅で、入浴中のおかあさんから赤ちゃんを預かって子守りをするだけのために存在しているおばあさんのおはなし。
    「ただひたすら赤ん坊のためだけに我が身を捧げている」というシンプルながらもそれを全身全霊で成し遂げるおばあさんの潔さと尊さに心を打たれる。

    小川洋子の小説はいつもそう。
    たったひとつの大事なことを狂信的なまでに守り抜く高潔さがとても美しい。すごくいいよね。

    0
    2024年10月16日
  • 約束された移動

    Posted by ブクログ

    「元迷子係りの黒目」はデパートで迷子になった子どもを見つけ、そっと手助けする女性が登場する。

    「彼女はいきなり大きな声で話しかけたりはしない。まずは。目配せを送る」

    これが彼女の思慮深い子どもへの声掛けの仕方で、なんて慎ましやかなんだろうかと感嘆する。

    小川洋子さんの紡ぐ物語には、誰も気にしないようなちいさなちいさな世界の片隅で、ただひたすらにひとつの役割を果たす人々が描かれていて、読むたびに「わたしもこんなふうに淡々と自分の役割を全うする人生を送りたいな」って思ったりする。

    0
    2024年10月16日
  • アンネ・フランクの記憶

    Posted by ブクログ

    作家の小川洋子さんが、アンネ・フランクの足跡を辿りに隠れ家や親友を訪ねて取材する。
    彼女は、ユダヤ人虐殺やナチスの蛮行のシンボルとしてではなく、純粋にアンネの文章を楽しみ、友人として接する。
    強制収容所では、「何百万人が」とか「無数の人が」と言ってひとまとめにしてしまうのではなく、一人一人の遺品、旅行カバンや、メガネや、靴や、子どものおもちゃやおしゃぶりなど…
    一人一人を尊重し、想いを馳せる。

    大雑把にまとめて、分かった気になるのはよくあることだと思う。
    「戦争になったらたくさんの人が死ぬ」
    そこには、人一人が死ぬということの恐怖が宿らない。
    だから、こうやってアンネフランクという一人の少女

    0
    2024年10月09日
  • アンネ・フランクの記憶

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    また素晴らしい本に出会ってしまった…
    アンネフランクを辿る小川さんの一週間の旅の紀行文。

    アンネの日記=戦争のことを知る読みものとしての浸透の仕方をしているけど、作者の小川さんは違う。
    ″純粋な文学として読んだ″と記されていて、それは、ナチスの犠牲者という歴史的事実とは別のところで、ただただアンネが書く文章に親しみを持ち、一人の友人が生きた歴史や受けた影響を知りたくて彼女のルーツを辿る旅に出ているのよ、という純粋な気持ちが、文章の節々から伝わる。

    小川さんの旅の進め方、アンネに携わる人々へのインタビューのスタンス、ホロコーストやユダヤ人への理解、全てが、大きな歴史を知るというより、アンネと

    0
    2024年09月08日
  • ブラフマンの埋葬

    Posted by ブクログ

    小川洋子らしい、静謐で穏やかだけれど、そこに世の中の秘密というか、簡単には触れられない大事なものがそっと置かれているような世界。
    死は悲劇でもネガティブなものでもない。生の対極にあるものじゃなくて、生のそばにただあるものなのかなと思える。
    ブラフマンの愛らしさの描写が卓越している。

    0
    2024年09月07日
  • まぶた

    Posted by ブクログ

    不穏で美しい。例えるなら廃墟の遊園地みたいな本だと思います。
    私は特に匂いの収集からのバックストロークの流れが大好きです。しん、とした閑けさと、現実ではありえないような情景がありありと浮かぶ繊細な描写は、ページを読まなくても思い浮かぶくらい何度も読みました。
    私にとっては誰もいない夏休みの、湿っぽいでも冷ややかな図書室を想起させる本です。

    0
    2024年09月04日
  • ミーナの行進

    Posted by ブクログ

    例に漏れず小川洋子さんの美しい言葉選びと静かななストーリー展開が至高の物語だった。
    『薬指の標本』や『妊娠カレンダー』のようなひんやりとした静けさではなく、『博士の愛した数式』のように柔らかくて暖かな静けさだった。
    阪神芦屋駅、須磨海岸、天王寺動物園と馴染みのある場所を舞台にこんなに素敵な物語が紡がれて嬉しい。
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    美しくて、かよわくて、本を愛したミーナ。あなたとの思い出は、損なわれることがない――懐かしい時代に育まれた、ふたりの少女と、家族の物語。谷崎潤一郎賞受賞作。

    0
    2024年08月20日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

    Posted by ブクログ

    優しい、柔らかい言葉の中に散りばめられたメッセージ。
    分けられないものを分けてしまうと、大事なものを飛ばしてしまうことになる
    噛み締める。

    0
    2024年08月19日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

    Posted by ブクログ

    河合隼雄さんが入院する2ヶ月前の対談で、最後の対談と言われている。
    相手が作家の小川洋子さんだからかもしれないが、河合さんがリラックスして喋っている。
    以下の小川さんの追悼の話が、どうも私の頭から離れません。

    『対談の途中、先生は一度、深い悲しみの表情を見せられました。御巣鷹山に 墜落した日航機に、九つの男の子を一人で乗せたお母さんの話が出た時でした。 心弾む一人旅になるはずが、あんな悲劇に巻き込まれ、お母さんは一生拭えな い罪悪感を背負うことになったのです。その瞬間、先生の顔に浮かんだ表情、 思わず漏れた声、 宙の一点に絞られた視線、それらに接した私は、失礼にも「先生は本物だ」と確信しまし

    0
    2024年07月28日
  • 最果てアーケード

    Posted by ブクログ

    この物語は「小さい時の思い出から」と、エッセイ『遠慮深いうたた寝』に書いてあった。
    だから、このアーケードでの出来事を語る「私」とは小川洋子さんだ。

    小川洋子さんは、岡山市中区森下町で生まれ育ち、11歳に祇園町に引っ越している。
    岡山市のどのアーケードの思い出なのだろうと思っていたが、パリのパサージュをイメージしていたそうだ。

    日常の「とるにたらないものもの」への想いを綴った、江國香織さんの作品を思い出したが雰囲気は違った。
    「最果てアーケード」は、だれがそんなものを必要とするの?という品物を扱っている商店の人々の物語だった。

    『ブラフマンの埋葬』でもそうだったが、本書も人の名前が出てこ

    0
    2024年07月15日
  • NHK「100分de名著」ブックス アンネの日記 言葉はどのようにして人を救うのか

    Posted by ブクログ

    アンネは自分と年が近いので共感する部分が多かった。時代が違えば彼女は幸せになってただろうと思うと切ない。

    0
    2024年07月03日
  • 人質の朗読会

    Posted by ブクログ

    人生を彩り形作るのは、
    心の底から泣いたり笑ったりするような特別な瞬間だけでなく、些細だけど確かな記憶として残るような出来事で、
    そういった思い出を大事に温めて心の温度を保つことができれば、
    避けられない悲しみや別れを乗り越える糧にきっとなるだろうと感じた。

    辛い現実という背景で語られる自己の物語は、
    平常時に語られるそれとは違って、虚栄や妬心を含まず、
    まっすぐで純度が高いものだった。

    私が語る物語は、どんな物語だろう。

    0
    2026年05月20日
  • まぶた

    Posted by ブクログ

    この不穏さが大好き。
    どの話もどの人物も何にも自分に共通点が無いのに、なんでかわからないけど地続きで、逆に全部自分事みたい。
    難しい表現は何一つない、スッと心に入ってくる書き方も好き。
    しばらく小川さんにはお世話になりそうですり

    0
    2024年07月02日
  • 最果てアーケード

    Posted by ブクログ

    ささやかな生活と、死
    年を重ねて変わるもの、変わらないもの

    アーケードの住人になったような気持ちになる

    0
    2024年06月02日
  • 密やかな結晶 新装版

    Posted by ブクログ

    絶対に文庫で読んでほしい。解説があったから救われた。
    とても恐ろしい話だった。
    ミステリーではなく、作者からの警告文である。
    人に流され、世に流され、大切なことも手放してしまうならば、どんな結末が待っているだろうか、というファンタジーだ。

    どんどん大切なものが失われていく物語の展開を、どう受け止めたらいいかわからない。

    少し変わった話や世間を批判したような物語を読みたいときにすすめたい。

    0
    2026年02月12日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

    Posted by ブクログ

    とても良い。常々思っていた疑問の答えがここにあった。
    小川洋子氏との対話形式なのでストンと心に落ち着く。
    もっともっと対談して欲しかった。小川洋子氏の長いあとがきが良い。繰り返し読んでいこうと思う。

    0
    2024年05月11日
  • 凍りついた香り

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    何が面白かったかとか、
    どこが良かったのかとか、
    言葉にするのはとても難しいけど、
    読んでいてただただ心地良かったです。
    敢えて言うなら文章が心地良い。言葉選びとかリズムが好きです。

    最愛の人を突然失った女性のお話。
    調香師の彼からオリジナルの香水をプレゼントされた翌日に彼は自殺…
    それだけでもかなりの喪失感なのに、彼が死んでから彼に関する新事実がどんどん明らかになっていくので、物理的にそばに居ないという喪失感に加えて心の中にあった彼がどんどん崩れていく様な精神的な喪失感が積み重なっていきます。
    彼が死んで"私の中の彼"を大事に手で包んでそれを拠り所に自分を支えたいのに、

    0
    2024年04月27日
  • 薬指の標本

    購入済み

    孤独と不思議な他者

    自然に滑らかに読めてしまうけれど、いろんな細かいところまで神経が
    行き届いている描写が好きです。どちらの語り手も孤独な女性で、内面
    や身体的な感覚の一部まで読んでいるとこちらが同化一体化してしまって
    いるよう。傷ついた自分がもしかするともっと危ない世界に引き込まれる
    ような感覚、逆に自分の中にある悪い部分に気づきつつ、それ以上の進展
    はないけれど癒されるような感覚、そういったものを味わいました。
    静かに自分と向き合う、死やエロスとも静かに向き合う。

    #深い

    0
    2024年04月24日
  • 最果てアーケード

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    小川洋子はいつ読んでも小川洋子を感じられて安心する
    会いに行った先で幸せに過ごしていることを願います

    0
    2024年04月19日
  • NHK「100分de名著」ブックス アンネの日記 言葉はどのようにして人を救うのか

    Posted by ブクログ

    辛かった時期に読みたかった。言葉にすることで人はこんなにも救われるのだということを、希望が持てるのだということを、もっと早く知りたかった。

    0
    2024年04月18日