小川洋子のレビュー一覧

  • 世にも美しい数学入門
    「すぐに役立つものはすぐに役立たなくなる」の反対が数学。
    なかなか役立つ時が来ないし、その時が何千年後だったりする。
    そもそも役立つことを目指さない、美しさと感動だけを求めるのが数学。ただその一心で取り組んでるのが数学者だというのは、世間の数学者へやイメージとだいぶかけ離れている気がする。
  • 夜明けの縁をさ迷う人々
    小川洋子さん「夜明けの縁をさ迷う人々」、2007.8発行、9つの短編小説が収録されています。どれも味わい深いです。興味深い話、怖い話、奇妙な話。興味深く強く印象に残ったのは、「ラ・ヴェール嬢」と「お探しの物件」。「涙売り」と「教授宅の留守番」は怖い恐い話でした。奇妙な話の中には、彼岸と此岸の交差する...続きを読む
  • 生きるとは、自分の物語をつくること
    2019.9月。
    河合隼雄さんと小川洋子さんの対談。素晴らしい。河合隼雄さんの懐の大きさ。人間力。包容力。すごいなあ。こんな方がいるんだなあ。もっともっと生きて、今の時代にいて欲しかったなあ。大切なお話。手元に置いておく。

    人を助けに行く時はずっと相手と同じ強さになる必要がある。
    キャッチボール...続きを読む
  • 凍りついた香り
    小川ファンなので冷静に星がつけられません。

    亡くなった恋人をたどる心の旅のお話です。物語が始まった時に既に恋人は亡くなっていて不在です。不在だからこその存在感は小川さんの作風の特徴であり、一貫しているので心地よく読みました。

    取り留めもないと言えば取り留めもないと思うのですが、だからこその哀しみ...続きを読む
  • 言葉の誕生を科学する
    言葉はどのようにして、うまれたのか。自分にとっても子供の頃からの疑問を、好きな作家さんが脳科学者の方と考察していく様子が、とても興味深かった。歌うのは、鳥とクジラと人間だけ!なんてロマンティックなんでしょう。科学なのに。科学だから?
    デバやジュウシマツに向けるお二人の優しい目線も、読み進めていて温か...続きを読む
  • 余白の愛
    静かな空気感と清潔感がずっと漂ったお話。
    耳を病んだ主人公の記憶と現実をめぐって物語は進んでいきます。

    どこか、何かが狂っているけれども淡々としている。登場人物たちもそれらには気に留めることはない。

    穏やかな愛がとても心地よかったです。
  • 小箱
    『今初めて、自分の顔がこんなふうだったと知ったかのような気分を味わう。園児たちの鏡に、私の姿が上手い具合にちょうど収まっている』

    小川洋子は「喪失」ということに拘っている作家だと思う。何かが決定的に失われてしまった世界を描いていると言ってもよい。そして、いつもその失われたものは、直接的には描かれな...続きを読む
  • 心と響き合う読書案内
    小川先生の書評には、登場人物や作者に対する親しみを感じます。なんというか、本の読み方から純文学というものにどう向き合うかまでを教えてもらったような読後感でした。
    僕にとっては通学や仕事の合間という自分だけの世界で、本好きのおばあさんのお話を語り聞かせてもらうひととき。そんな感覚を味わって楽しんでいま...続きを読む
  • 生きるとは、自分の物語をつくること
    小川洋子さんも河合隼雄さんも、お話を聞くのが抜群にお上手なのだなと感じる。ひと文ひと文が心にしみて、癒される。
  • ボタンちゃん
    小川洋子さんをチェックしているので買いました。ボタンを擬人化するのはわかるけど、ボタンホールを擬人化するのは目からウロコです!
    幼児のブラウスから転がり落ちたボタンちゃんは、部屋の中を探検して、持ち主の小さな女の子が使い古した、スタイやぬいぐるみと出会う。みんな女の子に忘れられてかわいそうだけど、で...続きを読む
  • やさしい訴え
    人はそれぞれに収まる居場所がある。新田さんと薫さんはチェンバロという共通の世界の中で幸せを共有する2人でありその世界に瑠璃子が入ることはできない。不倫で分かれた旦那と不倫相手にもそんな世界があったのだろう。奪われた側は呆気なく感じるが、奪う側に立つとなかなか共通の世界に入り込むということはできない瑠...続きを読む
  • 生きるとは、自分の物語をつくること
    再読。
    クライアント自身のもつ力を信じて
    ただ、寄り添いアースとして存在する。
    そんな存在に近づいていきたいです。
  • 小箱
    語り手が住むのは廃園になった幼稚園。
    そこの講堂には、ガラスケースが整然と並んでいて、
    その中には、亡くなった子どもたちに見立てたの人形が納められている。
    親たちは子どもたちのあちらの世界での成長を、人形に移して一緒に生きていく。
    語り手はその管理をしている。
    折々に訪れる親たちの静かに時が進んでい...続きを読む
  • 博士の愛した数式
     作者は数学の美しさに対して、心をひかれていて、それを博士を通して表現しています。
     博士と家政婦とその子供との交流はとても暖かいものを感じます。
     博士は長時間記憶を保つことができません。それは、異形なものであり、そのような不具者を描くところに作者の真骨頂があります。
     この作品では不具者を...続きを読む
  • 人質の朗読会
     人質になった日本人たちが極限状態の中で自らのエピソードを語っていく物語です。

     とても平易な語り口調で綴られる物語は彼らがもう亡くなっていることもあり、セピア色の写真を見るようです。

     小川洋子の作品の中でも、その完成度の高さからもっとも好きなものの一つです。

     小川洋子の特徴の...続きを読む
  • 不時着する流星たち
    面白かったです。文庫で再読しました。
    何度読んでも、このモチーフでこの物語を描くのか…と驚いてしまいます。
    カタツムリのお話がパトリシア・ハイスミスだったり、肉詰めピーマンのや文鳥のお話は最後の方にモチーフが少し出てきたり。小川さんの視点、不思議で惹かれます。
    単行本の時には恐らく読み飛ばしていた、...続きを読む
  • 余白の愛
    素晴らしかったです。
    本書はフォロアーさんからのおすすめだったのですが。
    はい。大好きです。もう、大満足でした。

    小川洋子さんの本はまだ4冊目ですが、もう大ファンになってしまいました。

    この儚げな描写。全てがごくごく薄い鶯色のベールに包まれたような静寂。一人称の「わたし」で綴られる出来事のかずか...続きを読む
  • 世にも美しい数学入門
    三角形の内角の和は180度。
    平べったい三角形もとんがった三角形も…。
    そしてそれは100万年前も100万年後も変わらない。こんな真理はない。
    →「三角形の内角の和が180度だという美しさを
    どれだけ情熱的に語ってくれたかで、小学生の数学への興味は変わる」
    →本当にその通りだ。
    この本を読み終わった...続きを読む
  • 世にも美しい数学入門
    再読であることをインドの天才数学者ラマヌジャンの話で気づいた。よっぽどこの人の人生が可哀想だと思ったからだろう。
  • 原稿零枚日記
    小川洋子が、数々の体験を日記という形で表現する不思議な雰囲気の小説。

    宇宙線研究所の見学の後、F市の旅館の近くで不思議な苔料理を食べる。盆栽祭を見に行って、チャボを見る。近所の運動会に紛れ込み、父兄でもないのに観戦する。現代アートの祭典を見に行き、バスの集合時間に集まれなかったメンバーがひとりひと...続きを読む