素晴らしかったです。
本書はフォロアーさんからのおすすめだったのですが。
はい。大好きです。もう、大満足でした。
小川洋子さんの本はまだ4冊目ですが、もう大ファンになってしまいました。
この儚げな描写。全てがごくごく薄い鶯色のベールに包まれたような静寂。一人称の「わたし」で綴られる出来事のかずか
...続きを読むず。
耳を病み、夫の不義を知って夫との別れを決意した「わたし」。そんな「わたし」の前に現れた速記者Y。Yの紡ぎ出す暗号の様な速記字とその独特の指に惹かれた「わたし」は…。
読むにつれ、『現実』と『過去』と『妄想』と『想像』が少しずつ区別できなくなっていく浮遊感。
どこかでこの感触は感じたことがあるな・・・と思ったら、何となくこの世界観は村上春樹的な世界観に似ているのですね。
村上春樹ほどファンタジーの世界には足を踏み込ませないし、村上春樹お約束のセックスの描写もないし、あの特徴的な比喩の使い方もないのですけれど、小川洋子さんの小説を読んでいると、なんとなく感じるこの心地よさは村上春樹作品に通じるところがあるのです。
こういう言い方をしたら小川洋子さんには失礼なのかもしれないですけど、僕的には小川洋子さんの作品は「女性版村上春樹作品」といってもいいのではないかとも思います。
それにしても小川洋子さんの小説に登場する主人公の「わたし」は可愛い人ばかりです。
小川洋子さんはあまり主人公の「わたし」の外見の描写をしないので、外見的には「美人」なのか「可愛い」のかは分かりませんが、彼女達の心の中身がみな「素敵」なのです。
ああ、好きすぎるこの小川洋子さんの描く「わたし」。
本書は、1991年発表で小川洋子さんの初期の作品と言ってもよいのですが、ものすごく完成度が高いですね。
『純文学』とはなにかと言われたら、代表作として僕は本書を挙げたいくらいです。
今後もさらに小川洋子さんにのめり込んでいきそうです。