小川洋子のレビュー一覧

  • ブラフマンの埋葬

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    小川洋子らしい、静謐で穏やかだけれど、そこに世の中の秘密というか、簡単には触れられない大事なものがそっと置かれているような世界。
    死は悲劇でもネガティブなものでもない。生の対極にあるものじゃなくて、生のそばにただあるものなのかなと思える。
    ブラフマンの愛らしさの描写が卓越している。

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    2024年09月07日
  • まぶた

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    不穏で美しい。例えるなら廃墟の遊園地みたいな本だと思います。
    私は特に匂いの収集からのバックストロークの流れが大好きです。しん、とした閑けさと、現実ではありえないような情景がありありと浮かぶ繊細な描写は、ページを読まなくても思い浮かぶくらい何度も読みました。
    私にとっては誰もいない夏休みの、湿っぽいでも冷ややかな図書室を想起させる本です。

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    2024年09月04日
  • ミーナの行進

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    例に漏れず小川洋子さんの美しい言葉選びと静かななストーリー展開が至高の物語だった。
    『薬指の標本』や『妊娠カレンダー』のようなひんやりとした静けさではなく、『博士の愛した数式』のように柔らかくて暖かな静けさだった。
    阪神芦屋駅、須磨海岸、天王寺動物園と馴染みのある場所を舞台にこんなに素敵な物語が紡がれて嬉しい。
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    美しくて、かよわくて、本を愛したミーナ。あなたとの思い出は、損なわれることがない――懐かしい時代に育まれた、ふたりの少女と、家族の物語。谷崎潤一郎賞受賞作。

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    2024年08月20日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

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    優しい、柔らかい言葉の中に散りばめられたメッセージ。
    分けられないものを分けてしまうと、大事なものを飛ばしてしまうことになる
    噛み締める。

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    2024年08月19日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

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    河合隼雄さんが入院する2ヶ月前の対談で、最後の対談と言われている。
    相手が作家の小川洋子さんだからかもしれないが、河合さんがリラックスして喋っている。
    以下の小川さんの追悼の話が、どうも私の頭から離れません。

    『対談の途中、先生は一度、深い悲しみの表情を見せられました。御巣鷹山に 墜落した日航機に、九つの男の子を一人で乗せたお母さんの話が出た時でした。 心弾む一人旅になるはずが、あんな悲劇に巻き込まれ、お母さんは一生拭えな い罪悪感を背負うことになったのです。その瞬間、先生の顔に浮かんだ表情、 思わず漏れた声、 宙の一点に絞られた視線、それらに接した私は、失礼にも「先生は本物だ」と確信しまし

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    2024年07月28日
  • 最果てアーケード

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    この物語は「小さい時の思い出から」と、エッセイ『遠慮深いうたた寝』に書いてあった。
    だから、このアーケードでの出来事を語る「私」とは小川洋子さんだ。

    小川洋子さんは、岡山市中区森下町で生まれ育ち、11歳に祇園町に引っ越している。
    岡山市のどのアーケードの思い出なのだろうと思っていたが、パリのパサージュをイメージしていたそうだ。

    日常の「とるにたらないものもの」への想いを綴った、江國香織さんの作品を思い出したが雰囲気は違った。
    「最果てアーケード」は、だれがそんなものを必要とするの?という品物を扱っている商店の人々の物語だった。

    『ブラフマンの埋葬』でもそうだったが、本書も人の名前が出てこ

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    2024年07月15日
  • 海

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    夢か現か分からなくなる感覚を味わえる文体の作家はそこまで多くない。言葉にならない思いを文字として示し、徐々に空想に浸らしてくれる。
    作者久々の短編集はそういった現実で起きているにも関わらず、どこか現実ではない空気感が魅力の物語で、浮遊感を感じた。
    表題作『海』、『ガイド』や『風薫るウィーンの旅六日間』等、年齢差を超えた関わり合いはどこか滑稽で、あまりに魅力に満ちている。もう今はない失われてしまった日常を描く作家小川洋子さん、まだまだ読み続けていきたい。

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    2024年07月15日
  • NHK「100分de名著」ブックス アンネの日記 言葉はどのようにして人を救うのか

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    アンネは自分と年が近いので共感する部分が多かった。時代が違えば彼女は幸せになってただろうと思うと切ない。

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    2024年07月03日
  • まぶた

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    この不穏さが大好き。
    どの話もどの人物も何にも自分に共通点が無いのに、なんでかわからないけど地続きで、逆に全部自分事みたい。
    難しい表現は何一つない、スッと心に入ってくる書き方も好き。
    しばらく小川さんにはお世話になりそうですり

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    2024年07月02日
  • 最果てアーケード

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    ささやかな生活と、死
    年を重ねて変わるもの、変わらないもの

    アーケードの住人になったような気持ちになる

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    2024年06月02日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

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    とても良い。常々思っていた疑問の答えがここにあった。
    小川洋子氏との対話形式なのでストンと心に落ち着く。
    もっともっと対談して欲しかった。小川洋子氏の長いあとがきが良い。繰り返し読んでいこうと思う。

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    2024年05月11日
  • 凍りついた香り

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    ネタバレ

    何が面白かったかとか、
    どこが良かったのかとか、
    言葉にするのはとても難しいけど、
    読んでいてただただ心地良かったです。
    敢えて言うなら文章が心地良い。言葉選びとかリズムが好きです。

    最愛の人を突然失った女性のお話。
    調香師の彼からオリジナルの香水をプレゼントされた翌日に彼は自殺…
    それだけでもかなりの喪失感なのに、彼が死んでから彼に関する新事実がどんどん明らかになっていくので、物理的にそばに居ないという喪失感に加えて心の中にあった彼がどんどん崩れていく様な精神的な喪失感が積み重なっていきます。
    彼が死んで"私の中の彼"を大事に手で包んでそれを拠り所に自分を支えたいのに、

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    2024年04月27日
  • 薬指の標本

    購入済み

    孤独と不思議な他者

    自然に滑らかに読めてしまうけれど、いろんな細かいところまで神経が
    行き届いている描写が好きです。どちらの語り手も孤独な女性で、内面
    や身体的な感覚の一部まで読んでいるとこちらが同化一体化してしまって
    いるよう。傷ついた自分がもしかするともっと危ない世界に引き込まれる
    ような感覚、逆に自分の中にある悪い部分に気づきつつ、それ以上の進展
    はないけれど癒されるような感覚、そういったものを味わいました。
    静かに自分と向き合う、死やエロスとも静かに向き合う。

    #深い

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    2024年04月24日
  • 最果てアーケード

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    ネタバレ

    小川洋子はいつ読んでも小川洋子を感じられて安心する
    会いに行った先で幸せに過ごしていることを願います

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    2024年04月19日
  • NHK「100分de名著」ブックス アンネの日記 言葉はどのようにして人を救うのか

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    辛かった時期に読みたかった。言葉にすることで人はこんなにも救われるのだということを、希望が持てるのだということを、もっと早く知りたかった。

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    2024年04月18日
  • 小箱

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    不思議な話、というのが一番の印象
    詳細があまり語られない出来事が多く、ほとんどの謎が残ったまま最後まで進んでいく。人によっては物足りないと感じることもあると思う
    ただ、不思議でありながらも、美しい雰囲気によって、自分は終始涙ぐんでしまっていた
    続きが気になって眠れない、というような話ではなく、日常に寄り添うような、噛み締めながら読みたくなるような作品

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    2024年03月06日
  • 余白の愛

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    この小説で卒論を書いた同期がいる。小川洋子作品の中でもトップで好きな小説だな、と思う。タイトルである「余白の愛」がなんなのか、いまだに答えを出せていない。突発性難聴、耳の中にある蝸牛と呼ばれる器官と関連して、ぐるぐる回る、渦や螺旋のモチーフを見つけてみるとおもしろい。ヒロが大好きで仕方ないんだな…

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    2024年02月17日
  • からだの美

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    こういう観点からのものを読ませてもらえるから、小川洋子を読んでいるんだなあと思った。
    バレリーナの爪先について、折に触れ考えてしまうだろう。赤ちゃんの握りこぶしが一番染み入りました。

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    2024年02月12日
  • まぶた

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    「飛行機で眠るのは難しい」「中国野菜の育て方」「まぶた」「お料理教室」「匂いの収集」「バックストローク」「詩人の卵巣」「リンデンバウム通りの双子」を収録した短編集。
    いずれも滑らかで柔らかく丁寧な感触の中に一点、針で、あるいは指の先で突いたかのような闇を含んだ、小川洋子さんらしい作品。個人的に「匂いの収集」が1番わかりやすく好みであった。

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    2024年02月07日
  • ブラフマンの埋葬

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    「謎」の生物、ブラフマンが本当に愛くるしい。⁡
    ⁡⁡
    ⁡この物語の、登場人物は
    干渉せずただ、静かに各々の時を過ごしています。⁡
    ⁡⁡しかし、干渉しない物語から足を1歩踏み出してしまった「僕」。⁡
    ⁡その先に訪れるのは…。⁡
    ⁡⁡
    ⁡なぜ「僕」はあんな行動をしてしまったのか⁡
    好意か嫉妬か、愛すべきものを否定された仕返しなのか。⁡
    ⁡⁡
    鼻の奥がツンとするような作品を読んだのは⁡
    ⁡久しぶりでした。

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    2024年02月05日