小川洋子のレビュー一覧

  • ホテル・アイリス
    少女は絶対に認めないだろうけれど恋でも愛でもなく虐待に見えてしまった。翻訳家を知った夜にどうして命令を美しく感じたのだろう。亡父が恋しかったのか。母の支配から別の支配に逃げたかったのか。翻訳家の愛は自身と甥と亡妻にしか向けられていなかったから少女をあれほど惨く扱えた。どれだけ甘言を弄しても彼の行為が...続きを読む
  • 沈黙博物館
    ある村の大きなお屋敷に住む、ちょっと気難しい風変わりな老婆に雇われた、若い博物館技師の物語です。
    屋敷には老婆と一緒に暮らしている少女と、離れには庭師と、その妻である家政婦が住んでいます。
    故郷を離れ、この村にたった一人で訪れた技師は、亡くなった村人たちの形見を集め、それらを展示、保存する博物館を作...続きを読む
  • 人質の朗読会
    見知らぬ土地で人質になり、いつ殺されるかも分からない8人が、過去の何気ない思い出を朗読していく話。
    人質たちが語る思い出に出てくる人物は、名前すら分からないような人たちばかりで、そこにドラマチックな展開があるわけでもない。でも、それを死の間際に思い出すのは、何気ない物語が、語り手の中に深く根を下ろし...続きを読む
  • 博士の愛した数式

    美しい数式

    いろいろな数式や定理について調べながら読みました(結構大変)。
    記憶が80分しかもたない博士を中心とした心温まる話に感動しました。

  • 密やかな結晶 新装版
    p.265、266
    「消滅の度に記憶は消えてゆくものだと思ってるかもしれないけど、本当はそうじゃないんだ。ただ、光の届かない水の底を漂っているだけなんだ。だから、思い切って手を深く沈めれば、きっと何かが触れるはずだよ。」というR氏の言葉が響きました。エメラルド、香水、ラムネ、バラ...
    いろいろなも...続きを読む
  • 海

    小川洋子さんの短編集を読むのは「妊娠カレンダー」「薬指の標本」に続けて3作目。
    最近は小川さんの長編を続けて読んでいたので、箸休め的に読めるものがいいなと思って、書店で何の気なしに手に取ったこの本。
    結果として私にとってはとても大事な、何度でも読み返したい本になった。
    優しいけどどこか不穏、官能的な...続きを読む
  • 完璧な病室
    終始、肉体も心もともに、グロテスクで、生々しくて、不穏で、でも静謐で、美しくて。
    筋肉、指先、感情。
    何かの始まりさえ、生々しい感情のさざなみに溶け込ませてしまう。
    なんだかんだ優しく、時に残酷に、主人公たちの、何かが欠如してしまって、死を、喪失を、心にぽっかり空いた穴を埋めていく。
    あとがきまで、...続きを読む
  • からだの美
    何気ない仕草、表情など。作家の手にかかると何故かくも魅力的になるのか。からだの美を描く珠玉のエッセイ。

    文藝春秋に連載されていたエッセイ。外野手の肩に始まり赤ん坊の握りこぶしまで。作家の方の目の付け所と筆力は素晴らしい。名文を補足する写真も良い。
  • 最果てアーケード
    生と死の間にある小さな物語たちが、小川洋子さんにしか描けない優しく穏やかで静謐な、しかしときに冷たく曖昧な描写で淡々と紡がれていきます。
    途中途中で感じられる違和感も、最終章で納得が行く形となりますが、まだまだ私が未熟なこともあって全てを理解しきれてはいないような気がします。とはいえ、全てを語らない...続きを読む
  • 完璧な病室
    デビュー作の「揚羽蝶が壊れる時」を含む、初期の四作品を収録。

    「揚羽蝶が壊れる時」の中で、「正常と異常、真実と幻想の境界線なんてあやふやで、誰にも決定できないもの」という文章に、小川作品の原点を見たような気がします。
    ものすごく優しい視点で描かれた、グロテスクさと美しさの混じり合った独特な世界を堪...続きを読む
  • 人質の朗読会
    あらすじだけ読むととんでも展開だが、いざ第1夜が始まると、不思議で切なくて温かい小話が続いていく。特にやまびこビスケットが1番感情を揺さぶられた。B談話室も、自分も真似てやってみたくなる面白さ。実際はそう都合良く1席の空いた席など無いだろうし、集まりによっては部外者が混じると絶対にバレるだろうが。
    ...続きを読む
  • 海

    ひよこトラック
    40年間町で唯一のホテルのドアマンとして働いてきた初老の男性と言葉を失った6歳の少女との交流
    あとがきより
    小さな場所に生きている人を小説の中心にすえると、物語が動き出す感じがする。
    ひとつ世代が抜けている者同士のつながり
    年齢を重ねた人は死の気配、匂いを漂わせ、若い人は現実の生々し...続きを読む
  • 余白の愛
    本を開くとたくさんの文字の音がするように感じた〜 しかも、心地よい音が〜
    小川洋子さんの作品はいつも違う世界につれていってくれるので大好き!

    ぜひ〜
  • 博士の愛した数式
    良い本に出会いました。
    日向坂46の小坂菜緒さんが推していたので読んでみたのですが感動しました
    スラスラと読みやすく、情景が頭をよぎります。
    昭和生まれの私にはどこか懐かしさを感じる部分もありました。
  • 完璧な病室
    表題作他、「揚羽蝶が壊れる時」「冷めない紅茶」「ダイヴィング・プール」収録。小川洋子さんが書かれる物語は静寂に満ちている。その中にそっと一匙の残酷さと透明な狂気が含まれていて、不思議な官能性を孕む。小川洋子さんは沢山の作品を書かれていますが、個人的に代表作を選ぶとしたらやはり「完璧な病室」を選びます...続きを読む
  • 遠慮深いうたた寝
    伊万里焼に藍色で絵付けしてあるような質感の装丁に手を伸ばした1冊。
    『博士の愛した数式』の小川洋子さんのエッセイ集でした。

    老いを感じ、ジョギングをして、ミュージカルの推しを持ち過ごす中で小説家の感性や想像力の凄まじさを感じ、この人も神様から特別に愛されてる人なんだと実感しました。
    阪神ファンで忍...続きを読む
  • 薬指の標本
    文章の美しさとか、ストーリーの儚さがものすごく好みで、読後ずっと頭の中で反芻していたい。頭の中がこの物語でぼんやりと満たされているのが快感。私の読書の1番の目的である「陶酔」が思う存分味わえる。
  • からだの美
    野球で投げる肩をみるとき、木を削る手の運びをみるとき、体操選手が空中で描く弧みるとき、画家が描く筆をみるとき、その人の意図を超えた様な、神聖と無心の宿りを感じる。この世の全ての造形は神さまが創ったのだと思い知る。小川洋子さんが綴られた物語の世界では、どれも朝露や波打ち際の泡のように、儚く美しく、得た...続きを読む
  • ブラフマンの埋葬
    ブラフマンが愛らしくて可愛くて。みたこともない動物なのに抱きしめたくなってしまうくらいかわいかった。
    うすく好意を抱いていた娘はブラフマンに全く興味を示さず、2度目に見た時も、「これ」扱い。彼の世話をすることは「面倒」と言う。そんな彼女と男との付き合いに意地悪く口をはさんだところでブラフマンは居なく...続きを読む
  • 余白の愛
    静かな、しずかな、愛の物語。
    私の中でYは永遠に生き続けるんだろうな。
    指や耳、意識しないと分からないけど、美しく繊細な器官を人間は持っているんだなぁと余韻に浸れた。