小川洋子のレビュー一覧
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美しく、そして悲しい物語だ。
森、泉、果てしなく広がる草原。これ以上ない大自然の中に「創作者の家」があり、あらゆる芸術家がそこを訪れては楽器を演奏し、小説を書き、編み物をしては帰って行く。「僕」はそこに住み込みで創作者達のお世話係をしている。ある日、母親からはぐれて傷ついた動物が迷い込んできたのを保護し、「ブラフマン」と名付けた。そこからが僕とブラフマンの濃密な生活の始まり。僕はこよなくブラフマンを愛し、かわいがり、ブラフマンは僕を慕い甘える。寝る時は存在を確かめるように尻尾を絡め、姿が見えないと不安がる。もう可愛くて仕方がない。犬とおんなじ。でも犬じゃないんですよね。犬のように賢いけど水かきがあって水に潜れる。足が短く尻尾が太く長い‥なんだろう。最後までわからない。わからないからいいのかも。
ブラフマンはいたずらっ子で家の中をめちゃくちゃにする。僕が説教をするとき、ブラフマンは目をそらさない。僕が言葉を発するとき、目が合っていなければ、その言葉は宙をさまよって、どこにもたどり着けない、と信じている。ブラフマンの目をできるだけ長く見つめていたくて、僕はいつまでも喋っている。‥わかる〜!人間の言葉を理解しようと努める犬の顔って本当に愛おしいですからね。犬じゃないけど。
二人の関係が深ければ深いほど悲しみは増す。だってタイトルからすでにブラフマンは死ぬんだって知らされているんだから。こういうのってずるいですよね。 -
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もっと早く読みたかった!素晴らしい本です。
私も文学部出身なので、科学者の方々の思想や思考にはとても興味がありつつも、きっと自分には理解できない範疇なんだろうって、諦めていました。伝記を読むくらいしかしてこなかったかな。
そりゃあ土台も何も無いのにいきなり論文を理解しようなんて無謀ですが、今回小川洋子さんのアプローチで見事に私も科学の扉まで辿り着けた気がしています。(そう思い込む事がきっと大事だし楽しいです♪)
7人の方々の好奇心、探究心、そして人間はまだまだという謙虚な姿勢、とても感動しましたし、お話の一つ一つも本当〜に面白かった。
虚数の話、高校一年の時に聞きたかったです、数学を敬遠しなくて済んだかも。(大学に入ってから「博士の愛した数式」を読んだ時も同じように思いました。笑)
それからUFOはあり得ないよね、の具体例を出していただきまして、仰る通り、どうしちゃったのアメリカ人は、と最近のニュースを見て思いました。笑
小川洋子さんの謙虚なお人柄と、たっぷりの知的好奇心、いつもながら惚れ惚れしています。
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Posted by ブクログ
小川洋子先生。今回も小川フレグランスが
まかれまくりです。オサレな読みモノ( ´ ▽ ` )
日常の世界にファンタジーのエッセンスが、
ほんの少し振りかかっているんです、ほんの少し、それがいい。不思議の国のアリスまでのファンタジーは私には楽しめない。装画を愉しめたらめっけもんくらいです。
本作の舞台は、モノづくりをする人が
ゆっくり創作できる「創作者の家」。
主人公はそこの管理人。
この舞台が海外のヴァカンスをイメージさせて、読み手からしたら非日常な空間。
極めつけは、登場人物に名前がない。
なのに、不思議と存在感があり
読みやすいし、魅力的。
そして謎の生き物「ブラフマン」。
犬、猫ぽいですが、全く違う架空の生物。
モフモフでかわいい、
みなまで語らないことで読み手の頭の中を
ブラフマンが駆け巡るぅ!
ぴょんぴょん、スーイスーイ!
アンニュイな空気感♪(´ε` )
サラサラしたり、じっとりしてたり
小川さんの世界観を愉しむ作品でした。
ラストの淡々とした描き方はロス感が
否めませんが読後感は悪くないです。
初夏に読むのにいい作品ですね。
170ページの中編、一気読みがオススメです。
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ネタバレ静寂の中で研ぎ澄まされる、記憶の断片
イヤホンを忘れ、電車の騒音の中でページをめくり始めた。しかし、読み進めるうちに周囲の音は消え、脳内には物語が持つ「ひんやりとした空気感」だけが満ちていった。音楽がないからこそ、一文一文が驚くほど滑らかに頭に入ってくる、贅沢な読書体験だった。
物語は、亡くなった調香師の記憶を辿る旅。劇的な恋愛に発展するわけでも、大きな事件が起きるわけでもない。ただ、人はこの世を去っても、誰かの中に「記憶」として残り続けるのだという事実を、小川洋子さんらしい静謐な筆致で描き出している。
特に印象的だったのは、西日がガラスに反射する温室の描写だ。土と葉と花が混じり合った、湿り気のある密やかな香り。プラハの洞窟やスケート場の冷気。時系列が不思議に混じり合う構成は、まるで霧の中を歩いているような感覚に陥るが、その「わからなさ」すらも心地よい。
「彼はいつでもわたしが望むだけの沈黙を与えてくれる」
この一節の通り、この本を閉じるとき、心には深い沈黙と、形のない香りのような余韻が残る。1ヶ月半という時間をかけてじっくりと読み進めたが、返却期限を延長してまで手元に置いておきたかった理由は、この静かな世界から帰りたくなかったからかもしれない。
何も起こらない。けれど、確かに何かが心に刻まれる。そんな一冊だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレあ〜〜好みぶっ刺さり小説。江國さんのひとりでカラカサさしてゆくに読後感が似てる。冒頭で、凄惨な最期を迎えた人々が残した物語であることが明かされるので、言いようのない切なさが全編漂う。わたしが好きだった話は、
•大家の偏屈おばあさんとビスケット並べる話
•公民館で細々と行われている集会や会合に参加する男性の話
•おじいさんが作るヤマネのぬいぐるみをお守りにしている男性の話
自分で書いててなんだそりゃと思ったけど本当にそういう話なんです笑
どんな最期を迎えた人にも、きっとその人の心にずっと残り続ける大切な記憶や思い出があったんだなと、そう思って泣きたくなる宝物みたいなお話たちだった。