小川洋子のレビュー一覧

  • 密やかな結晶 新装版

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    記憶が少しずつ消滅していく島
    何かがなくなって
    それらを処分して
    適応していく
    秘密警察が記憶が消滅しない人々を
    連行していく
    次第に自由が奪われているはずなのに
    なんの疑問も持たずに生きる人々
    すべて
    もう初めからなかったかのように
    記憶がなくなっていくのだから
    疑問をもつわけもない

    何か独裁者が徐々に
    自由を奪っていくような感じかもしれない
    かつての戦時中の日本もこんな感じだろうか
    今もどこかでこんな思いをしている人々が
    いるのだろうか
    と、思ってしまう

    小説家である主人公が小説を奪われてからは
    さらに衝撃的に状況が進んでいく
    最後に書いた小説がまた
    物語を彩っていく
    せつない中にも

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    2025年06月17日
  • そこに工場があるかぎり

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    ものを作ることは人間にしかできないこと。
    それは人間に想像力があることとイコール。

    穴を開ける、お菓子、乳母車、ボート、ガラス、鉛筆。
    派手ではないけれど、なくてはならないものを作る人々。
    それを見て、文章を書く小川さんの視点がよい。
    小川さんの工場のチョイスもいいし、大変楽しい工場についての本でした

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    2025年06月16日
  • 人質の朗読会

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    ネタバレ

    海外旅行先で襲撃を受け、人質となった8人。8人は亡くなってしまったが、後に犯人グループの動きを探るため、録音された盗聴テープが公開された。人質たちが自ら考えた話を朗読している様子が録音されたテープである。

    1話毎の終わりに、誰が朗読したのかが記載されている。淡々と書かれているのが、その人たちが亡くなっているんだということを強調しているように感じた。

    小川洋子さんの本を初めて読んだが、とても読みやすかった。ほかの本も気になるものがあったら読んでみたい。

    表紙の「小鹿」は彫刻家の土屋仁応(つちや よしまさ)さんが造られたそう。
    調べてみたらほかの作品も素敵だった。

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    2025年06月08日
  • ミーナの行進

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    ほっこりしました。誰でも子どもの時にあるような家族の経験なのに、小川さんの手にかかればまるで詩のような美しい物語になってしまう。素晴らしい話だった。ミーナがきちんと大人になれるかハラハラしたが、ドイツまで行進できて、無事に仕事にも就けて安心した。いつまでも仲の良い2人でいて欲しい。

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    2025年06月01日
  • 耳に棲むもの

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    小説と並んで、装幀、装画・挿絵もすばらしい。群像に掲載された短編を集めた作品集です。なかでも『骨壷のカルテット』の世界観と描写は、これぞ小川洋子さんというもので、これから私は何かにつけて「耳に棲むもの」に思いを馳せることになりそうです。

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    2025年05月31日
  • 人質の朗読会

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    ネタバレ

    本を読んでいて良くあるのが「この一文に救われた」などの特定の一部分を取り上げて、それが印象に残ること。
    でも小川洋子さんの本の場合、作品の中の一部分というよりも、その作品単位でお守りのようになるので不思議だ。胸が温かくなり、絵筆を水につけた時に一気に色が広がるように、そして水につけることで絵筆に絵の具がついていたことにようやく気づくような、そんな心の存在を強く感じた。

    とても抽象的な感想になってしまった。

    作品全体が好きなのはもちろんだけれど、この中でも印象的な文章はp158の槍投げの話で

    「こうして合わせた両手から次々と水がこぼれ落ちてゆくように皆が遠ざかってゆくのを、私はただ黙って見

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    2025年05月30日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

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    対談の柔らかくあたたかい雰囲気が良い。
    カウンセリングと物語の話もとても興味深いが、個人的には、河合隼雄さんの著書や対談を通して小川洋子さんが「なぜ小説を書くのか」という、若い頃には答えるのが苦痛だった問いに対して、「誰もが物語を作っているのだ」という気づきを得て答えを見つけていった、というあとがきの文章がとても素敵だった。

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    2025年05月22日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

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    タイトルに惹かれて。金言だらけだった。人間はつらいときにその人なりの物語として落とし込んでいる。「個」は自分の知ってる範囲内。人間は矛盾しているから生きている。

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    2025年05月17日
  • 世にも美しい数学入門

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    数を転がして、ころころと手のひらで弄ぶこと、美しい文章を暗唱したり、思い出して口ずさんだりすることが独創に良い影響をあたえる。

    何の役にも立たないけれどただただ「美しい」数学のおもしろさに気づいた。

    数学者の「ひざまづく心」を私も大切にしたい。

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    2025年05月17日
  • 口笛の上手な白雪姫

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    8つの短編の中で『亡き王女のための刺繍』は小川洋子さんならではの妖しい毒っ気が美しかった。『かわいそうなこと』も良かったなあ。敏感なアンテナを大人になっても持ち続けている作者は日々の中で辛くなることはないのだろうかと心配になると同時に羨ましい。
    でも、一番好きだったのは『一つの歌を分け合う』。同じ時代を生きる人たちは大縄跳びみたいに次々この世を抜けていく。だけどそれはおしまいじゃなくて、帰れる、焦がれた人たちに合流できるという優しい気持ちで越えられる一線。レミゼラブルから受け取れるうちのそんなひとつを、たった二十数ページで表せられるのがすごい。

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    2025年05月17日
  • 博士の愛した数式

    購入済み

    博士の愛した数式

    何度読み返ししても、博士と家政婦さんとルートの絆に温かい感情が湧いてきます。映画もこの作品の品格を損なわない素晴らしいものでした。

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    2025年05月15日
  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    一般的にはマイナスや負のイメージを抱くような対象に対しても、温かく、親しげに描写する点に
    感銘を受けた。ひだまりのような本だと思った。

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    2025年05月11日
  • 薬指の標本

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    小川洋子さん初読み
    二作とも、主人公との人間関係が第三者に介入できないほど、親密になった後の切なさを感じました。
    これは独特の世界観。
    文字だから、表現できるのですね。

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    2025年05月10日
  • 薬指の標本

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    小川洋子さんが作る、どこかにあってほしい、ひょっとしたらどこかにあるんじゃないかと思うような不思議な世界が大好きです。

    「標本」や言葉として切り離すことで、整理したり忘却したいことってありますよね。
    逆に、自分から切り離してしまうことが怖かったり、あえてもやもやしたまま残しておきたいものもある。
    標本室や語り小部屋があったら自分はどんなものを切り離していくのだろう。

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    2025年05月07日
  • 海

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    小川洋子の書くお話ってどこかすいすいと夢を見ているようなんだけど、最後のインタビューに「短編は短い妄想」と書いてあって安心した。妄想は最も自発的で積極的な夢といえるからね。「そこにしか居場所がなかった人たち」。そういえば『猫を抱いて象と泳ぐ』もそうだったな。

    本当に小川洋子は均衡感覚に優れている。本書でもそう感じさせられた。生と死、理性と感性、温かさと冷たさ、それぞれが拮抗しているラインのたったひとつの交点にその小説がある。それより少し右でも左でも上でも下でもない。文字数もこれ以上多くも少なくもない。この完璧主義的でさえある小説を、なんというか無意識的に書いてそうなところがますます恐ろしい。

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    2025年05月05日
  • アンネ・フランクの記憶

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    今度オランダ旅行へ行くので、『アンネの日記』を読み始めました。
    そこからアンネに興味が出て調べていたところ、こちらの本を発見。
    アンネの足跡を辿るエッセイという事で、旅行前にピッタリだと思い読んでみました。
    実際にアンネの日記に登場する方にお会いしていて驚き。小川さんの繊細な言葉遣い、描写に涙が出そうになる場面もありました。
    旅行関係なく、すごく好きなエッセイになりました。

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    2025年05月05日
  • 遠慮深いうたた寝

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    エッセイを久しぶりに読んでいます。昔好きだったのは、向田邦子さん、伊集院静さんのエッセイ。小川洋子さんのエッセイも面白い。一つのお話から得るものがいくつもある。

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    2025年04月27日
  • 海

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    様々な物語が収録されているが中でも私がオススメしたいのが『ひよこトラック』


    初老のドアマンが元々住んでいたアパートの大家と揉め事になり引っ越す事から物語が始まってゆく、
    海老茶色の屋根に煙突が一つある家に住む事になった。
    そこには七十の未亡人と無口な少女が住んでいて、1年前に少女の母が亡くなり未亡人が娘の引き取り同居していた。

    無口な少女と初老のドアマンが関わっていく中で化学変化が起き、今まで無口だった少女が最後にドアマンにあるプレゼントを贈る。それは読んでからのお楽しみ♪

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    2025年04月19日
  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    主人公の閉ざされた世界の中に広がる深く青い海原を共に泳いだ感覚。読み進めるのにエネルギーがいるという感想を目にしていたが納得。小波は一緒に漂い、荒波は飲まこまれてしまうような、本のパワーを体感できた作品。

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    2025年04月18日
  • 薬指の標本

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    標本にしたいものってあるかなぁ 
    語り部屋に入ったら何を語ろう

    村上春樹のよう
    読み終えて、どういうことかなぁってのがいい

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    2025年05月17日