小川洋子のレビュー一覧

  • ブラフマンの埋葬

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    美しく、そして悲しい物語だ。
    森、泉、果てしなく広がる草原。これ以上ない大自然の中に「創作者の家」があり、あらゆる芸術家がそこを訪れては楽器を演奏し、小説を書き、編み物をしては帰って行く。「僕」はそこに住み込みで創作者達のお世話係をしている。ある日、母親からはぐれて傷ついた動物が迷い込んできたのを保護し、「ブラフマン」と名付けた。そこからが僕とブラフマンの濃密な生活の始まり。僕はこよなくブラフマンを愛し、かわいがり、ブラフマンは僕を慕い甘える。寝る時は存在を確かめるように尻尾を絡め、姿が見えないと不安がる。もう可愛くて仕方がない。犬とおんなじ。でも犬じゃないんですよね。犬のように賢いけど水かきがあって水に潜れる。足が短く尻尾が太く長い‥なんだろう。最後までわからない。わからないからいいのかも。
    ブラフマンはいたずらっ子で家の中をめちゃくちゃにする。僕が説教をするとき、ブラフマンは目をそらさない。僕が言葉を発するとき、目が合っていなければ、その言葉は宙をさまよって、どこにもたどり着けない、と信じている。ブラフマンの目をできるだけ長く見つめていたくて、僕はいつまでも喋っている。‥わかる〜!人間の言葉を理解しようと努める犬の顔って本当に愛おしいですからね。犬じゃないけど。
    二人の関係が深ければ深いほど悲しみは増す。だってタイトルからすでにブラフマンは死ぬんだって知らされているんだから。こういうのってずるいですよね。

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    2026年05月24日
  • 科学の扉をノックする

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    もっと早く読みたかった!素晴らしい本です。

    私も文学部出身なので、科学者の方々の思想や思考にはとても興味がありつつも、きっと自分には理解できない範疇なんだろうって、諦めていました。伝記を読むくらいしかしてこなかったかな。
    そりゃあ土台も何も無いのにいきなり論文を理解しようなんて無謀ですが、今回小川洋子さんのアプローチで見事に私も科学の扉まで辿り着けた気がしています。(そう思い込む事がきっと大事だし楽しいです♪)

    7人の方々の好奇心、探究心、そして人間はまだまだという謙虚な姿勢、とても感動しましたし、お話の一つ一つも本当〜に面白かった。
    虚数の話、高校一年の時に聞きたかったです、数学を敬遠しなくて済んだかも。(大学に入ってから「博士の愛した数式」を読んだ時も同じように思いました。笑)
    それからUFOはあり得ないよね、の具体例を出していただきまして、仰る通り、どうしちゃったのアメリカ人は、と最近のニュースを見て思いました。笑
    小川洋子さんの謙虚なお人柄と、たっぷりの知的好奇心、いつもながら惚れ惚れしています。

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    2026年05月23日
  • 密やかな結晶 新装版

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    引き込まれてどんどん読んでしまう、怖い童話のような物語。でも、不思議とすべてが美しく、静かで、怖ろしくない。いや、あたたかささえ感じる。

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    2026年05月20日
  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    ネタバレ

    生まれつき唇に不具合を持つ少年がチェスに光を見出す。

    デパートの屋上の象のインディラ、プールの水死体、バスの家に住むマスター、そこかしこに死が纏わりつく中で少年は体格は少年のまま青年に、チェスで生きていくようになる。

    現代のおとぎ話のような。圧倒的。

    文庫の裏表紙に「小川ワールドの到達点を示す傑作」とありますが本当にそうなのかもしれない。ずっと積んでおいたんですがとうとう読んでしまった。読んでしまったね…、と思わせてくれる作品。個人的にこれを超える作品ってそうそう無さそう。

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    2026年05月20日
  • 海

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    静かで無駄のない
    まっすぐな
    文章が読みたくなって選んだ本。
    間違いなかった。
    大きな出来事は何もなく
    ただ人と人の交流を
    冷静に見つめ
    簡素な言葉で
    そのまま紡いでいるだけなのに
    記憶という
    やさしい毛布に
    くるまれているような心地だった。
    「ありふれた言葉にこそ
    真実が宿っているんだ」
    そんな言葉たちに
    背筋をしゃんと伸ばされる。

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    2026年05月19日
  • 科学の扉をノックする

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    素晴らしい一冊でした。

    科学に対する小川さんの姿勢が素敵すぎる。
    テーマは「宇宙」、「鉱物」、「遺伝子」、「スプリングエイト」、「粘菌」、「遺体科学」、「肉体生理」。
    それぞれの専門家に小川さんがインタビュー。
    わかりやすい解説だけれど、それだけでは終わらない。
    科学を通して、それぞれの人生、生き方が描かれている。
    これからの自分の生き方が変わってきそう。

    この本もみんなに読んでもらいたい一冊です。

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    2026年05月14日
  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    窮屈な場所で限りの無い思考の世界に入り込むお話。

    おばあちゃんの布巾や唇の脛毛など
    みんな少し気になるポイントがあるけど
    それが愛着に変わるのが不思議。

    響いた。

    2026.05.04-64冊目/年

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    2026年05月12日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

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    「生きる意味」は?と聞かれて「死ぬまで生きる」と答える人生を歩んできました。多分そこには「自分らしい人生」をおくる、という物語があった気がしました。
    人の命は短く、ままならない。その中に自分だけの物語を紡ぐことが全ての人に、必要なのだと、改めて考えさせられました。
    そして、架空の良質な物語を紡ぎ出す、小川さんをはじめとする文筆家の魔法で、我々は日々生きているのだと、感謝です。

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    2026年05月10日
  • ブラフマンの埋葬

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    小川洋子先生。今回も小川フレグランスが
    まかれまくりです。オサレな読みモノ( ´ ▽ ` )

    日常の世界にファンタジーのエッセンスが、
    ほんの少し振りかかっているんです、ほんの少し、それがいい。不思議の国のアリスまでのファンタジーは私には楽しめない。装画を愉しめたらめっけもんくらいです。

    本作の舞台は、モノづくりをする人が
    ゆっくり創作できる「創作者の家」。
    主人公はそこの管理人。
    この舞台が海外のヴァカンスをイメージさせて、読み手からしたら非日常な空間。
    極めつけは、登場人物に名前がない。
    なのに、不思議と存在感があり
    読みやすいし、魅力的。

    そして謎の生き物「ブラフマン」。
    犬、猫ぽいですが、全く違う架空の生物。
    モフモフでかわいい、
    みなまで語らないことで読み手の頭の中を
    ブラフマンが駆け巡るぅ!
    ぴょんぴょん、スーイスーイ!

    アンニュイな空気感♪(´ε` )
    サラサラしたり、じっとりしてたり
    小川さんの世界観を愉しむ作品でした。
    ラストの淡々とした描き方はロス感が
    否めませんが読後感は悪くないです。

    初夏に読むのにいい作品ですね。
    170ページの中編、一気読みがオススメです。

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    2026年05月11日
  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    冒頭2ページで本書との出会いに感謝した。これほど優しく、力強く、美しく、哀しく、心に染みるような不思議な魅力を持つ小説はまれ。勝負よりも美しい棋譜を残す大切さ。チェスを知らずとも小説の世界に没頭できる。ただ、チェスを打つ人が羨ましい

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    2026年05月09日
  • ことり

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    恵比寿の有隣堂で、鳥の本の特設コーナーがあり、ことりが好きなので購入。
    ことりのおじさんとおじさんのお兄さんが静かに二人暮らしをしているわ。おじさんが園の鳥小屋を丁寧に掃除する。どうかこのまま誰にも邪魔されない暮らしが続きますように、と祈るような気持ちでページをめくりました。

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    2026年05月09日
  • 凍りついた香り

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    ネタバレ

    静寂の中で研ぎ澄まされる、記憶の断片
    イヤホンを忘れ、電車の騒音の中でページをめくり始めた。しかし、読み進めるうちに周囲の音は消え、脳内には物語が持つ「ひんやりとした空気感」だけが満ちていった。音楽がないからこそ、一文一文が驚くほど滑らかに頭に入ってくる、贅沢な読書体験だった。
    物語は、亡くなった調香師の記憶を辿る旅。劇的な恋愛に発展するわけでも、大きな事件が起きるわけでもない。ただ、人はこの世を去っても、誰かの中に「記憶」として残り続けるのだという事実を、小川洋子さんらしい静謐な筆致で描き出している。
    特に印象的だったのは、西日がガラスに反射する温室の描写だ。土と葉と花が混じり合った、湿り気のある密やかな香り。プラハの洞窟やスケート場の冷気。時系列が不思議に混じり合う構成は、まるで霧の中を歩いているような感覚に陥るが、その「わからなさ」すらも心地よい。
    「彼はいつでもわたしが望むだけの沈黙を与えてくれる」
    この一節の通り、この本を閉じるとき、心には深い沈黙と、形のない香りのような余韻が残る。1ヶ月半という時間をかけてじっくりと読み進めたが、返却期限を延長してまで手元に置いておきたかった理由は、この静かな世界から帰りたくなかったからかもしれない。
    何も起こらない。けれど、確かに何かが心に刻まれる。そんな一冊だった。

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    2026年05月09日
  • 海

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    短編集だけあってノイズなく読みやすかったし穏やかな気持ちになれて良かった。バタフライ和文タイプ事務所は言葉遊びが面白い上品な官能小説だし、銀色のかぎ針は短くてシンプルなのに情景が浮かんで素敵、ひよこトラックの夜明け前の描写は息を呑むくらいの美しさだし、ガイドはストーリーとして完成されすぎていて脱帽した。小川洋子の作品は何作か読んできたけどやっぱりうつくしいなー。

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    2026年05月08日
  • 人質の朗読会

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    ネタバレ

    あ〜〜好みぶっ刺さり小説。江國さんのひとりでカラカサさしてゆくに読後感が似てる。冒頭で、凄惨な最期を迎えた人々が残した物語であることが明かされるので、言いようのない切なさが全編漂う。わたしが好きだった話は、

    •大家の偏屈おばあさんとビスケット並べる話
    •公民館で細々と行われている集会や会合に参加する男性の話
    •おじいさんが作るヤマネのぬいぐるみをお守りにしている男性の話

    自分で書いててなんだそりゃと思ったけど本当にそういう話なんです笑
    どんな最期を迎えた人にも、きっとその人の心にずっと残り続ける大切な記憶や思い出があったんだなと、そう思って泣きたくなる宝物みたいなお話たちだった。

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    2026年05月06日
  • 薬指の標本

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    静かで、官能的で、狂気すらも感じる不思議な物語。
    「わたし」が「弟子丸氏」に靴をプレゼントされるシーンからどんどん不穏な空気が流れてくる。
    読後の余韻が好きでした。宝物。

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    2026年05月04日
  • 遠慮深いうたた寝

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    いちいち良い。作品にも滲み出ている気がするけど、物事の良い面を見つけてあげるのがとても上手な人なんだなとしみじみ思う。
    新米ママだった作者が、『紙おむつで育てると子供の情緒に影響する』という根拠のない噂を信じて、洗濯が大変な布おむつにこだわっていたというエピソード。「楽をするとそのツケが全部子供に回りそうで、怖かったのだ。」ってつづられていて、すごく愛だった。作者がすきな本もぜんぶ読んでみたくなった。やっぱり、小川洋子は言葉を扱うのがすごく上手だよね。

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    2026年05月03日
  • 密やかな結晶 新装版

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    失う事が怖い人は間違いなくしんどくなる。
    でも、普段から私たちは常に何かを失っていることに気付く。
    だけどそれでも次の日が来る。

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    2026年05月02日
  • 人質の朗読会

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    反政府ゲリラの襲撃を受けて人質として捕らえられた8人。
    捕らえられてる時に語られた8人の過去の忘れられない物語と人質救出作戦通信班の政府軍兵士の過去の忘れられない物語を描いた作品です。

    ただの日常の中でも、心に残ることはあり、それを言葉にすることで、日常が面白くなるのかなと感じました。
    印象に残った話はやまびこビスケットでした

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    2026年04月29日
  • 密やかな結晶 新装版

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    個人的に、小川洋子先生を読むならこの本を読んでくれ、と言いたくなる作品。
    世界観がしっかりと描かれており、すぐに没入することが出来る。大人向けのおとぎ話のようで、ひっそりと静かに、それでいて美しい文章に惚れ惚れしてしまう。
    世の中のあるものが消滅していく人と、消滅していかない人。それぞれの想いがきちんと描写されていて、胸が苦しくなる。苦しくなるのにどこか心地よい読後感がたまらない。

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    2026年04月25日
  • 耳に棲むもの

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    補聴器の営業マンを主軸にした連作。どんな生活をしていたらこんな話を思い浮かぶのだろうと思う。初期のグロさも感じられて面白かった。

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    2026年04月25日