小川洋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「人質たちが暇つぶしに、
何か一つ思い出を文に書き出して朗読し合おうとする。
今必要なのは、
じっと考えることと耳を澄ませることだ。」
冒頭のこの文を読んで、
小川洋子さんが「物語の役割」で、
辛い現実を乗り切るための手段として物語がある、
と語られていたのを思い出した。
杖
子供の頃足を怪我した太った下っぱ工員さんに、
のこぎりで切った枝を渡して助けてあげた。十数年後、
交通事故で意識を失っていたわたしの頭の中に、
工員さんがバーナーと立派なお面を持って現れて、
足を治してくれた。
目覚めたら、切断寸前だったらしい足は、
どうにか持ち堪えてくれていた。バーナーとお面は、
世界を壊すのでは -
Posted by ブクログ
すごい。すごすぎる。こんなに美しい文章に出会ったことはないんじゃないかな。
途中から、完全に作者の虜になってしまった。
理不尽に消滅していく世界、受け入れる主人公と拒むR氏。
受け入れちゃいけない、と頭では分かっていても、心が追いつかない。
主人公の心がゆっくり消滅していくのと同時に、読んでいる私も理不尽を受け入れているように感じた。
消滅の前に書き上げたタイプライターの小説。途中までは分からない事もあったけれど、最後が見事だった。消滅してゆく著者が、消滅を受け入れる小説を書き残したこと、悲しかったな。
おじいさん……。優しくて大好き。 -
Posted by ブクログ
小川洋子さんの記憶の消滅に関する小説。
『博士の愛した数式』でも80分しか記憶を持たない数学者がおり、今回の小説と「記憶」というテーマで共通するところがある。
儚く自然と涙がこぼれるような物語。
モノが人々の記憶から消滅していくということは、モノに宿る人々の想いさえも無くしてしまうことなのかもしれないと感じた。
私自身も数々の記憶を忘れてしまっているのだろう。
ただ、今回小説を読んだことで、その時の想いや感情などできる限り日記に留めておきたいと感じた。
それが記憶、その時の感情・情景を思い出すことに繋がると思うから。
解説で、記憶しているがゆえに、迫害され、粛清される。そこで、ユダヤ人差 -
Posted by ブクログ
毎日、夕方の5時になると町役場からの放送で「家路」が流れる。
あまりにも自然に溶け込んだ歌声のため、人々は熱心に聴きいる事もなく、1日の区切りとして耳にしているだけで、誰が歌っているのかなどの関心を抱く者は誰もいなかった。
この地域に、ちょっと変わった人々が暮らす集団が存在していた。
彼らは極端な内気の性格のため、言葉を交わす人との関わりを避け、沈黙を優先した生活を営んでいた。
その地域に、おばあさんと孫娘リリカの二人が雑用係として加わることになる。
おばあさんはリリカを育てるために、この変わった人々が暮らす地域に職を得て、外部の人々との接触を担当する雑用係として働くことになる。
リリカの