伊万里焼に藍色で絵付けしてあるような質感の装丁に手を伸ばした1冊。
『博士の愛した数式』の小川洋子さんのエッセイ集でした。
老いを感じ、ジョギングをして、ミュージカルの推しを持ち過ごす中で小説家の感性や想像力の凄まじさを感じ、この人も神様から特別に愛されてる人なんだと実感しました。
阪神ファンで忍
...続きを読む耐力を養ったあたりも活かされてるような。
犬派なところはちと距離を感じるのですが・・
この人を前にして感想を書くなんておこがましすぎる。
そんな思いに、「ふと」の2文字を使ってみたくなる暴挙にも出たくなる。あまり使った事ないので、ふとの女王の蟻地獄に滑り落ちる価値もないのかと卑下したりです。
とにかく、文章の至るところに神経を張り巡らせている緊張感、浅はかな者が触れたら火傷しそうです。
官能とユーモアの共存についてのエッセイは観察眼に震えてました。
特に心に響いたのは、「答えのない問い」なのですが小説を読んで、退屈、共感できない、意味不明など様々な言葉から本を閉じてしまう行為。私はよくありますけど、それは芸術を否定する行為との厳しいご指摘が迫ってきました。
分かる分からないかにこだわる行為は実に勿体ないと、自分が理解できる範囲はたかが知れており、その狭い枠を取り払って広大な世界に足を踏み入れなければ真実にたどり着けないとおっしゃってました。
なんと気高い志であろうか、そんな境地に行けばもがき苦しむ事になるとは思うのですが、それは死すら受け入れる行為に等しいのではないかと・・・完全に打ちのめされました。
彼女の「ことり」と「小箱」も読んみたく思いました。
そうそう、彼女の偏愛書「西瓜糖の日々」何度読み返しても読みおわり感のない小説らしいのですがこれも開いてみたい。