小川洋子のレビュー一覧

  • 密やかな結晶 新装版

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    話を全て理解できるわけではない。
    でも、小川洋子さんの静謐な世界観が強烈に心に残る。
    消滅する世界に順応していく人。
    消滅せずに狭い部屋に潜む人。
    この奇妙な世界に、秘密警察の存在が輪をかけて恐怖心を煽る。
    ところで消滅がやってきたら、記憶も消える。そして残された世界で生活する。となると、私にもこれまで消滅は起こってるのかな。記憶に残ってないだけで。

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    2024年01月26日
  • やさしい訴え

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    居場所を求める主人公の姿が痛々しく、悲しい気持ちになった。これまで読んだ小川洋子さんの作品の中で最も恋愛描写が濃厚だった。そして、孤独感も一層強かった。
    暴力を振るう夫との離婚、叶わない恋。次々と身の回りのものを失い、自分の存在を受け入れてくれる場所を探していく。淡々とした態度は達観してるようでもあり、しかし、嫉妬に燃え上がるほど情熱的な1面も見せる様は魅力的だった。
    やはり小川洋子さんの描く物語に常に香る切なさ、そう質感が大好きだと再確認した。

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    2024年01月24日
  • 密やかな結晶 新装版

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    この作品の読書感想文を書くには、私の文章力はとても足りない。
    それくらい圧倒されるのです。

    小川洋子さんの紡ぐ言葉たちは小川さんが作り出す物語同様、優しくて繊細で儚い。
    一文字も逃したくない洗練された文章。
    この物語の世界はとても寒くて淋しくて不安で切ないけれど、そんな状況下で蝋燭の火をぽっと灯したような、懐かしい温かさがある。
    それは登場人物たちの優しさや気遣いであったり、私自身の思い出を思い起こさせてくれる力があったりするからなのかな。
    ハッピーエンドではないしどうしたって哀しくなってしまうけど、その温もりを感じたくて、何度でも読んでしまう。

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    2024年01月23日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

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    物語とは、自分自身に現実にあるものを受け入れるもの。小説は現実に即した物語として、読み手や書き手に、そこにあるものを感じさせる。規則から生まれる合理性だけで世界は成り立っているわけではなく、そこにある偶然も含めて、その現実や矛盾をどう取り込むか、大きな流れの中で個性が現れる。(大樹)

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    2024年01月21日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

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    物語とは、自分自身に現実にあるものを受け入れるもの。小説は現実に即した物語として、読み手や書き手に、そこにあるものを感じさせる。規則から生まれる合理性だけで世界は成り立っているわけではなく、そこにある偶然も含めて、その現実や矛盾をどう取り込むか、大きな流れの中で個性が現れる。

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    2024年01月21日
  • 小箱

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    心の中の木の陰の水溜まりには日が射しているけれど、思いの外深いようだったから蒸発することはなかった。その底には祈るように、幾つかの色のあるものが呼吸をしていて、それらのものに呼吸を合わせることが、この小説を読むことだった。

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    2024年01月14日
  • 凍りついた香り

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    ネタバレ

    とても静かな最後になって、この作品にふさわしい終わり方をしたなと思う
    まだ悲しさと静けさが漂っているかのような不思議な感覚が無くならない

    結局ルーキーがなぜ自殺したのか、履歴書に嘘を書いたのか、関わった全ての人に異なった情報を与え続けたのか、答えは分からなかった。
    ただ目の前に彼が息をして言葉を操って確かに存在していたことだけが事実、死んでしまった人の事で新しくわかることなんてそうそうないし真実は分からないことの具現化みたいな小説だったな

    今現実に起こっていること、目に見えているもの、それだけがリアルでそれだけが思い出になる
    死んでしまって過ぎた過去の中で生きていた人間はもう「記憶」の中に

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    2024年01月14日
  • 口笛の上手な白雪姫

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    ネタバレ

    とても綺麗で素敵な物語でした。
    特に、『先回りローバ』、『亡き王女のための刺繍』が印象に残りました。全体的にふんわりとした雰囲気で、穏やかな気持ちになれます。

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    2023年12月30日
  • 密やかな結晶 新装版

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    温かくて優しいのに、冷たくて寂しくて残酷。
    消滅を強要されることも、それを平気で受け入れるのも寂しくて、怖しい。
    そして、私にとっての「密やかな結晶」とは何だろうかと考えてみる。

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    2023年12月20日
  • 琥珀のまたたき

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    目は口ほどに物を言うとはよく言ったものです。この本に書いてある文を読むと目で見た情報が思い起こされます。正解なんていらないし、至極シンプル。言語化レビューするのも憚られるくらい喰らっちゃったけど記憶のアウトプットに。小川洋子さんは何か特殊能力でも持ってるのかしら?

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    2023年12月20日
  • 博士の愛した数式

    QM

    購入済み

    ずっと気になっていた作品

    かなり前から存在は知っていたのですが、なるほどこういうお話だったんですね。
    博士と、男の子とそのお母さんと、3人が共に関わり合い成長していく姿に感動しました。

    #感動する

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    2023年12月19日
  • からだの美

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    イチロー選手が打球をつかみとり、ふりかえり、すぐさまホームに向かって投げる。見方のミットに吸い込まれていく。その肩をとおし、人々は記憶に刻まれた太古の肉体の美と再会する。と、いうふうに表現する小川洋子さんの文章がすごくいい。

    他には、ミュージカル俳優の声、棋士の中指、ゴリラの背中、バレリーナの爪先、卓球選手の視線、フィギュアスケーターの首、ハダカデバネズミの皮膚、力士のふくらはぎ、シロナガスクジラの骨、文楽人形遣いの腕、ボート選手の太もも、ハードル選手の足の裏、レース編みをする人の指先、カタツムリの殼、赤ん坊の握りこぶし。

    改めて考えてみると共感することばかり。一瞬のからだの美しさをとらえ

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    2023年12月09日
  • 人質の朗読会

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    “記憶”の美しさそのものを得られる物語

    なんて美しくて悲しくて儚くて確かな欠片達なんだろうと思いました。
    命や人生がそういうものなのか。

    詳細や輪郭が確実に見えるわけではないのに、
    失われる、失われたこと、が辛くて心が痛い。
    けど失われたことや、失われ方だけに意味がある訳ではない。

    相手が大切にしているものや、してきたものを
    大切にしたいというか、当然ながら相手にそういうものがある、ということのかけがえのなさを感じました。

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    2023年12月05日
  • 密やかな結晶 新装版

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    今1番好きな本。淡々と存在が消えていく事を受け入れながら生きる人、いつまでも存在が消えない人の想い。じわじわと涙が溢れる。大事にしたい一冊。

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    2023年12月03日
  • からだの美

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    小川洋子さんのフィルターを通して生身の「からだ」を観察すると、「人間と人間以外」を分けて考えることは無意味だな、とつくづく思わされる。超一流のアスリートから生まれたての赤ちゃんまで。文章も写真もすべて美しい。

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    2023年12月02日
  • 琥珀のまたたき

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    琥珀の現在も過去を織り交ぜて描かれるストーリー構成。

    琥珀たち子ども三兄弟目線で話が進むので、おかしなこと(犯罪)が起こっていることに当人たちは気づかない。それが当たり前かのように起こる。
    ただ読者の私はこれが犯罪であることがわかるのでなんかやばい…とずっと違和感を覚える。

    母親の思考が結局ずっと謎だった。いくら末娘にトラウマを抱えていても監禁をするのはよくわからない。
    でもだからこそずっと不気味で、穏やかな時間が流れているはずなのに緊張感が走っていてとても面白かった。

    一番ママに従順だったオパールが最後ママに批判的なことを琥珀に言うのはきっと外の世界の住民であるジョーから色々話を聞いた

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    2023年11月15日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

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    人間というのは物事を了承出来ると安心する。了承不可なことは人間を不安にさせる。下手な人はそういう時自分が早く了承して安心したくなる。質問する側が納得したくてなにか言ってしまう。質問する側が物語を作ってしまうのでそうならないように心がけるべし。

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    2023年11月15日
  • 犬のしっぽを撫でながら

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    『博士の愛した数式』に関連したエッセイが最初に10本も続く。
    「数の不思議」の世界をもう一度感じることができた。

    次のテーマは「書く」ということへの想いやこだわり、ワープロや机といった書くために必要な物の話題などが語られる。

    そしてごく自然に「書く」行為を問い直すためのアンネ・フランクの足跡をたどる旅の話に繋がる。
    小川洋子さんのアンネ・フランクへの想いが伝わってきた。

    後半はこんな暮らしをして来たんだよ、という雑多な日常の出来事の思い出話になる。

    犬(ラブラドールの子犬のラブちゃん)と野球(阪神タイガース)が重要な生活の一部になっている様子が微笑ましい。
    「犬のしっぽを撫でながら」と

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    2023年11月12日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

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    小川洋子と河合隼雄のキャッチボールが見事だ。河合隼雄のダジャレやわかりやすい例えが実に効果的だ。聞くことを専門にしている河合隼雄の手法が、ツッコミを入れて楽しんでいる。小川洋子は『博士の愛した数式』を読んで、なんとステキな文章と体温のある物語を書くのだろうと感心した。それ以降、あまり注目していなかったが、最近の小川洋子の言っていることが興味深いので、読み始めた。
    「生きるとは自分の物語を作ること」という言葉がいい。
    小説家は、いろいろと妄想を働かせることが仕事。河合隼雄は、「小説家と私の仕事で一番違うのは、現実の危険性を伴う。作品の中なら父親を殺すこともできるが、現実に患者さんが殺すと大変です

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    2023年10月25日
  • 薬指の標本

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    「薬指の標本」と「六角形の小部屋」の中編二作を収める。「薬指の標本」は、標本室という奇妙な職場が舞台で、火傷の痕や音楽まで標本にする中、わたし」は自分の薬指を標本にしようとする。「六角形の小部屋」には、一人で入って何かを語る六角形の語り小部屋が登場する。やがて「わたし」はその魅力に惹かれてゆく。不思議な秘めやかさと静けさに満ちた小説。

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    2023年10月21日