あらすじ
魔犬の呪いから逃れるため、パパが遺した別荘で暮らし始めたオパール、琥珀、瑪瑙の三きょうだい。沢山の図鑑やお話、音楽に彩られた日々は、琥珀の瞳の奥に現れる死んだ末妹も交え、幸福に過ぎていく。ところが、ママの禁止事項がこっそり破られるたび、家族だけの隔絶された暮らしは綻びをみせはじめる。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
母親から与えられた壁の内側の生活は色んな愛溢れた暖かい生活だと思いながら読んでいましたが、後から恐ろしい内容だったなとじわじわ気づかされました。それくらい言葉が優しく美しいです。
オパール、琥珀、瑪瑙が成長するにつれて隠し事が増えていく度に、母親に愛されていたい、母親が好きなこどもでいたいという想いを感じてしまい切なくなりました。
小川洋子さんは私の知らない感情を引き出して満たしてくれます。とても大好きな作家さんです。
Posted by ブクログ
目は口ほどに物を言うとはよく言ったものです。この本に書いてある文を読むと目で見た情報が思い起こされます。正解なんていらないし、至極シンプル。言語化レビューするのも憚られるくらい喰らっちゃったけど記憶のアウトプットに。小川洋子さんは何か特殊能力でも持ってるのかしら?
Posted by ブクログ
琥珀の現在も過去を織り交ぜて描かれるストーリー構成。
琥珀たち子ども三兄弟目線で話が進むので、おかしなこと(犯罪)が起こっていることに当人たちは気づかない。それが当たり前かのように起こる。
ただ読者の私はこれが犯罪であることがわかるのでなんかやばい…とずっと違和感を覚える。
母親の思考が結局ずっと謎だった。いくら末娘にトラウマを抱えていても監禁をするのはよくわからない。
でもだからこそずっと不気味で、穏やかな時間が流れているはずなのに緊張感が走っていてとても面白かった。
一番ママに従順だったオパールが最後ママに批判的なことを琥珀に言うのはきっと外の世界の住民であるジョーから色々話を聞いたんだろうな。
小川洋子流、ミステリー。
Posted by ブクログ
小川洋子さんの小説を読むのは、「薬指の標本」「猫を抱いて象と泳ぐ」「妊娠カレンダー」に引き続き、四作目です。
見栄えのするスイーツを食べたことがあるでしょうか。全く違った要素を組み合わせてみたり、バーナーで表面を焙ってキャラメリゼしてみたり。中には、綿菓子を盛った上にソースをかけて溶かすようなものも、世の中にはあるそうです。
本作『琥珀のまたたき』では、そんな全く違った側面を組み合わせた、“一味違う物語”が楽しめます。シリアスとファンタジー、ポップとダーク、光と影が織りなす、「美しくてキラキラしているのに、ちょっと油断をしたら怪我をするオモチャ」のような味わい。
夫と別れたママ。彼女は元夫の残した別荘地に子どもたち3人を連れて引っ越します。お話の時系列としては、ここが始まり。
3人の子供たちはそこで新しい名を与えられて、それぞれ、オパール、琥珀、瑪瑙の名を図鑑から選び取ります。元の名を忘れ、外に漏れない小さな声で生活することを強いられるきょうだいたち。それは、母からの言いつけであり、今は亡き末の四女の命を奪った「魔犬」の呪いから逃れるためでした。
ファンタジックに紡がれるきょうだいたちの穏やかな日常ですが、裏旋律として流れているのは薄暗い母親の思惑です。これだけ書いてもネタバレに含まないとしてレビューしているのは、本作の魅力が筋書きに留まらず、小川さんのキラキラ味溢れる文体や筆致に拡大しているからと言えます。あっとおどろく仕掛けはないけれど、魅せる文章と感じる雰囲気で楽しむ系統の物語です。
母は何故、きょうだいを匿うことになったのか?
琥珀の左目は一体なんだったのか?
オパールはその後、どうしているのか?
などなど、明らかにされていないことが多いのも本作の特徴ですが、これは殺人事件でもなければ、七不思議でもないので、あとはご想像にお任せします……ということなのかなと思いました。
解説を除いて323頁なのですが、その内容の濃密なことといったら。チョコレートケーキをチョココーティングしたよりも甘く、喉を通る時には軽い抵抗を感じるほどです。
小川洋子ワールドがお好きな方は是非。
ある意味、「一見さんお断り」な世界観がここには詰まっていると感じました。
Posted by ブクログ
アンティーク調の美しい情景が浮かぶ文章で、読んでてうっとりするような物語だけど、現実は狂気を帯びた実の母による監禁事件。良い.....危険な美しさ。
Posted by ブクログ
「読書の愉しみ」を思う存分味わえる作品。
文字を目で追っていくうちに、頭の中に想起されてくるイメージの数々。その濃密さ、細やかさ。言葉から紡ぎ出されるイメージは既視感のあるものではなく、この作家の手によって初めて掘り出されたと感じられる全く新しいもの。見たことがない世界が広がっていく。
一方で母性の持つ残酷さや狂気を抉り出してはいるものの、そんな言葉では表現しきれない美をたたえている。
読み進めるのが怖くて、予告されている崩壊がどんな形で訪れるのか、息を呑むような気持ちで読み終えました。
Posted by ブクログ
世間的には虐待である。
それを、こんなに静かで柔らかくて、外から壊してはいけない優しい世界に描きあげるなんて。
強固に護られた壁の中が、琥珀にとってのすべてた。欠けたもの、足りないものは、姉弟のたちが作るお話や歌や絵で補填され、それ以上の充実をもたらす。ママの狂気が生んだ忌むべき空間のはずなのに、紛れ込んで囁きながらひっそりと暮らしたくなる。
Posted by ブクログ
読み始めた場所が、たまたま
〈大きな声を出してはいけないよ〉という高円寺の読書館だった事もあり、読み進めるうちに自分も5人目の兄弟のような気持ちで、ひそひそと確実に他の兄弟と絆を深めていった感覚でした。
読み終わってしばらく経つのに、ふと
物語の中の情景や空気感が頭の中に流れ始めて、過去の出来事がふわっと突然蘇る感覚に近く、実際に目で見た景色ではない想像に過ぎない頭の中の景色なのに、なぜ?と不思議な感覚になります。
忘れられない本になりました。
ーー以下ネタバレ含みますーー
それがどういうことなのか疑問も持たずただただ、兄弟達と壁の中の暮らしを楽しみ、新しい遊びにわくわくして、思い出が増えてきた感覚になっていた時、現在を描いているであろうアンバー氏の部分、最初に出てくる〈救出〉の文字を見てから、心
がざわつきました。
この暮らしを続けていきたい気持ち(見守っていきたい気持ち)と、
壁の外では未来の私たち兄弟はどうなっていけるのか、今の状況ってどういう状況?という疑問が湧いてくるなど、
この兄弟達と近い感覚で読み進められる不思議な作品でした。
最初に、瑪瑙がいない。となった時の何かを予感させるどうしようもない不安が衝撃的で、
初めは美しく感じていた庭の様子は、読み進めるうちにどことなく不穏な空気が漂い始め、
散髪の後髪の毛を捨てに行った時の様子は
何かの終わりを感じて少し寂しく恐ろしく感じました。
救出された時の、壁の外の人から見た
子供らの様子は明らかに異常で、歪んでいるのに、
母親を悪として見れないのは、壁の中での暮らしが
3人、4人、5人にとって、大切な時間でもあったからなのかなと。複雑な気持ちです。
兄弟達の秘密を読んでいる時、
私自身の妹との秘密や、幼少期の2人にしかわからない遊びを思い出したました。
兄弟にしかわからない世界観てありますよね。
琥珀が最後図鑑を抱いて1人になる瞬間は
とてつもなく寂しい気持ちになりました。
Posted by ブクログ
この母親を毒と見倣すかどうか、これはなかなか難しい。我が子を失う事の辛さは、それを経験した人でなければ分からないし。でもやはり世間の目は冷ややかで。
そんな中でも子供の発想力というのはやっぱり凄い。あんな閉塞的な場所でもあらゆる遊びを考え、実行する。オリンピックごっこ、楽しそう。
とは言え、子供らしく、無邪気に、自由に遊ぶ。そんな環境に身を置けなかった彼等がどうしても不憫でならない。
Posted by ブクログ
ハラハラドキドキ胸が掻き回される。かと思えばふわふわとなぜか包まれている気分になる。
母の言いつけを守り、3人寄り添い必死に生きる姉弟。ロバのボイラー、よろずやジョーそして嘘を抱えるようになる。
琥珀の図鑑の中で生きる末の妹が家族をささえ、
夢の中で生きる日々
不思議なお伽話のような話の中に、現実的な琥珀の今が語られる。
琥珀は姉は、弟はいつが幸せだったのだろうか?
Posted by ブクログ
著者ならではの閉ざされた空間の話。
不気味さと美しさが同居する不思議な世界。
壁の中で閉ざされたまま生きるか、未知の世界へ飛び出すのか。
兄弟とママの幸せの形って何だろうと考えながら読み進める。
散髪の場面、兄弟3人の容姿の描写に少し驚く。
Posted by ブクログ
「星の子」を読んだときにこの本の話が出てきて、昔買って読んでなかったなと思って読み返しました。過去の地層を掘り返すための琥珀の瞬き、小川洋子は唯一無二だなあとやはり思った。書影がまた、みっつの石なんですよね…
Posted by ブクログ
制覇したわけではありませんが、小川洋子さんの作品で「ことり」に次いで好きな作品。静かで仄暗く、埃っぽい(けなしてません)世界が美しい言葉で綴られています。
それぞれの結末が放りっぱなしなのもたまりません。読後は自由に思いを巡らせてくださいと委ねられている気がして好きです。
Posted by ブクログ
琥珀のまたたき 小川洋子
壁の中の邸にひっそりと暮らす3人の子供と母親。
壁の外に出ることは許されていない。
そんな生活を描いた作品。
そんな生活だから些細な出来事が彼らにとっては一大イベントと感じる。その様子を繊細に描いてる。
読み進めると、実際に起こっている出来事なのか、琥珀の描いた絵の中の出来事なのか、分かりにくい場面もある。
けど、絵は琥珀の目に写った世界を描いたもの。つまり、琥珀にとっては実際の出来事になる。
これまで読んできた小川洋子さんの作品の中でも特段に静かな世界観を感じる。子供が3人もいれば、賑やかで派手になりそうなものだが。そうならない魅力。
Posted by ブクログ
この人の空想の世界は小さな世界で広がって、どんどん広がる。今回もそんな感じで、母親に家に監禁されて生活している姉オパール・弟琥珀・弟瑪瑙の生活とその山の中の別荘だった家で過ごす図鑑を基にした空想の遊び。
オリンピックごっこや事情ごっこなど、楽しそうな遊びが繰り広げられる。この作家の子供の時の遊びは頭の中でこのように繰り広げられたのではないかと思われるような遊び。そしてオパール、琥珀、瑪瑙それぞれが編み出した独自の遊び。琥珀は図鑑の下の空白に亡くなった妹を1つの糸くずのようなものから次々と活き活きと動くように描く。それが老後の琥珀に繋がるのが文の合間に現在として挟まれて話が進む。終わりがどのようになるのかわからないまま同じ感じで進んでいくけど、ラストの急展開はちょっとドキドキ。
この人の作品の中では上の下くらいかな
チェスのが良かった
Posted by ブクログ
小川洋子さんの書くお話は、「現実のようだけどどこにもない話」が多かったような気がするのですが、これは「非現実のようだけど、どこかにありえそうな話」にも感じ、そこが不気味で怖くて、でも大好きです。
幻想的で美しく、儚く頼りない日々の物語。
あと、この表紙がとても素敵。
オパールに琥珀に瑪瑙。崩れそうな本からのぞく「あの子」の姿。この本の世界のすべてがあるようで、見とれてしまいます。
個人的な印象ですが……。
このお話が好きなら服部まゆみさんの『この闇と光』が好きな方とかも好きなんじゃないかなと思います。
Posted by ブクログ
温泉地にある別荘に暮らす3人の子供たち
彼らには決して破ってはならないルールがある
家の外に出てはならない
誰かと会ったり話したりしてはならない
「外の世界」で使っていた名前を言ってはならない
名前を忘れるため3人の子供に与えられた鉱物の名
一番上の女の子、オパール
真ん中の男の子、琥珀
末子の男の子、瑪瑙
学校に行くことも TVも携帯も
友達と遊ぶこともない3人だけの世界
それは耳をすませないと聞こえてこない小さな世界
全てを飲み込む沼の中に
膨大な数の図鑑の余白に
音のならないオルガンの音に
彼らのいた証はひっそりとたたずんでいる
彼らの愛らしい遊び
繊細な感情の襞の一つ一つに
心を動かされる
愛おしい一瞬の命の瞬きが確かにそこにある
それは彼らの「監禁生活」の中で生まれた
ママの心理描写はほとんど出てこない
ただ、彼らと亡くなった末娘を心から愛している事は痛いほど伝わってくる
こんなに美しく、残酷な物語を私は知らない
小川洋子さんにしか描けない世界
琥珀の目線で語られるこのストーリーの顛末は
凄まじい切なさで胸が苦しくなる
脱帽としか言いようがない
Posted by ブクログ
怖いお話でした。でも風景が目に浮かぶようでした。ワンオペ育児と最近は言うそうですが、やはり育児を一人で行うのは良くないですね。父親や先生やご近所さんなど色んな人が関わっていかないと、母親ひとりの偏った考えに子供もなってしまうだろうし、母親も責任が大きくて追い詰められてしまうでしょう。また緊急事態宣言が出ていた頃のことを思い出しました。今でも学校行事ができなかったり、大きな声で合唱やおしゃべりしながら給食を食べたりができなかったり、分散登校やオンライン授業なんてこともあるそうですが、お子さんたちの心に悪い影響がないかと心配してしまいます。
Posted by ブクログ
静かな環境でないとなかなかこの本の世界観に入り込めず読むのに時間がかかってしまった。
壁の中で外の世界から閉ざされて、閉塞的な場所で身を寄せ合い、それでも楽しみを生み出し密やかに暮らしていたこの姉弟は幸せだったのだろうか…
壁から出だ後のそれぞれの人生はどんなものだったのだろう…
母は何を守りたかったのだろうか…
Posted by ブクログ
現実世界で起これば母親は親としての在り方を非難されるに違いないが、小川洋子の世界の中では誰も糾弾されることはない。いろんな人にとっての真実がただそこに存在している。
他の作品でも登場人物や小川洋子の世界観が強く存在していることは多々あるが、この作品は他のどの作品よりも絶対に自分は入り込めない、触れてはいけない世界だと感じた。
そして、その世界、家族の在り方は宗教に通ずるものを感じた。ムスリムの友人は宗教で自由になれると私に語った。ある視点から見れば戒律に縛られた自由のない世界。別の視点から見れば従うものがあるからこそ迷いなく守られながら自由でいられる世界。そんなものを彼らの壁の内にも感じた。
化石としての琥珀がそうであるように、彼の瞳は外部ではなくその内側に深く潜む彼らの記憶を見ている。では、オパールと瑪瑙は?考えてみたが、いまいち腑に落ちる解釈が浮かばなかったのでまたいつか再読してみたい。
Posted by ブクログ
滑らかな言葉、誰にも侵せない世界。一歩踏み出せば、異質でしかないと気づくそこが、琥珀にとっての全てになる。荒々しい描写も怒涛の展開もないのに、じわじわと衝撃が染み入ってくる作品だった。
Posted by ブクログ
この本の世界観が独特で全く意味がわからなかったが、解説を読んでなんとなくわかった。
時間が止まっている表現であったり、この閉塞感、視点の移り変わり、すべてが難しいが読み終わった感想としては、その人の境遇だけで決めつけることをしないということ。
Posted by ブクログ
ちょうど気持ちが下を向いている時期に読んだので、この閉塞感が苦しくて読むのに苦労した。息も苦しくなった。
外から見るとママのしたことは考えられないけれど、琥珀にとってはそんなに悪いものでもなかったのかもしれない。4人一緒にいられるなら。
ママの、オパールの、瑪瑙の、ジョーの話も聞きたい。文字という声あるものだけの話では見えない。オパールや瑪瑙がこの日々を愛しく思い出す時間がありますように。
Posted by ブクログ
幼い娘を亡くした母と姉弟がその子のことを思う愛情が伝わってきた。しかし少し常軌を逸した形ではあったが、そのくらい深い愛があったのだなと。描写が繊細でほんの微かな変化にも敏感で想像力豊かな作品だった。
Posted by ブクログ
小川洋子さん、いつも目に見えない心の中を深く伝えてくれます。末娘を失った母親の狂気、外との世界を遮断し母の望むように生きようとする三姉弟。
オパール、琥珀、瑪瑙。名前の言葉選びも奥深い。母との関係を精算した父が作った百科事典。その中で生きる末娘。琥珀の目に映る世界は幻想か希望か。百科事典の中で生きる家族だけは永遠であり続けて欲しい。
Posted by ブクログ
静かでひそひそ声が聞こえてくるような、古い宝箱を開けたときのような雰囲気は良かったけど間延びして飽きてしまった 睡眠導入剤としてはとても良かった。。スミマセン 私には合わなかったようです
Posted by ブクログ
四人の兄弟の一番下の妹が亡くなった後
母親が思った事は もうこれ以上子どもを失いたくない。
という事で 家の中に閉じ込めて(=外に出さなければ守れる)
三人の子ども達を生活させる。
テレビなどの情報は全くないけど
沢山の図鑑や書籍が子ども達の情報源だった。
三人いるので 遊びも色々工夫して成長していった。
話の 構成が 主人公の琥珀(アンバー氏)の 子ども時代と現在とを 交互に描いているので
最後は 家から出たのだろうけど
どういうきっかけで 出るようになったのか
摩訶不思議な 世界を 描いてる 本でした。