【感想・ネタバレ】凍りついた香りのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

何が面白かったかとか、
どこが良かったのかとか、
言葉にするのはとても難しいけど、
読んでいてただただ心地良かったです。
敢えて言うなら文章が心地良い。言葉選びとかリズムが好きです。

最愛の人を突然失った女性のお話。
調香師の彼からオリジナルの香水をプレゼントされた翌日に彼は自殺…
それだけでもかなりの喪失感なのに、彼が死んでから彼に関する新事実がどんどん明らかになっていくので、物理的にそばに居ないという喪失感に加えて心の中にあった彼がどんどん崩れていく様な精神的な喪失感が積み重なっていきます。
彼が死んで"私の中の彼"を大事に手で包んでそれを拠り所に自分を支えたいのに、どんどん指の間からこぼれてしまって気付いたら手の中には最後にもらった香水しか残っていなかった…そんな感じ。

ルーキーの自殺の原因が結局分からないこともそうだけど、これだけの存在感がありながらルーキーの「人となり」というか「本質」というかルーキーという人が最後まで掴めません。周りにいる人はみんなルーキーに吸い寄せられるように惹かれながら、ルーキーを理解していた人はいなかったんでしょうねきっと。

香りって本当に過去の記憶を呼び起こします。
安心するにおい。
元気になるにおい。
泣きそうになるにおい。
良いにおいとはちょっと違う、自分だけの好きなにおい。

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2024年04月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

とても静かな最後になって、この作品にふさわしい終わり方をしたなと思う
まだ悲しさと静けさが漂っているかのような不思議な感覚が無くならない

結局ルーキーがなぜ自殺したのか、履歴書に嘘を書いたのか、関わった全ての人に異なった情報を与え続けたのか、答えは分からなかった。
ただ目の前に彼が息をして言葉を操って確かに存在していたことだけが事実、死んでしまった人の事で新しくわかることなんてそうそうないし真実は分からないことの具現化みたいな小説だったな

今現実に起こっていること、目に見えているもの、それだけがリアルでそれだけが思い出になる
死んでしまって過ぎた過去の中で生きていた人間はもう「記憶」の中にしか存在しないものになってしまう、それ以上でもそれ以下でもない
ただ、今までが嘘みたいに " そうであった、そうだったと思う、きっとそうだった " に変わってゆくだけなんだろうなと思った
記憶は書き換えられていくし人によって濃度も記憶する種類も異なる、一度過去になってしまったら最後 突然薄っぺらい写真のように紙のように平面になるだけ、それが記憶
人は死んだら最後、なにも残らず更新されずその瞬間で全ての時が止まるのだと改めて実感した

周りの人間しかり、死んだ人間しかり
ただそこにはちゃんと一人の人生があって思いがあって記憶がある、生活があった環境があった好きなことがあった
その全てが文字通り「凍りついた」ものになるの興味深かったな いつか私もそうなるんだし

人間、人生、不条理、冷淡、事実、って感じだった

私はこれから、これを超える作品に出会えるかな

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2024年01月14日

Posted by ブクログ

調香師の卵であった恋人の弘之が、“記憶の泉”と名付けられた香水を残して突然亡くなる。
一緒に暮らしていたフリーライターの涼子は、どうしても彼の自殺の理由が知りたくて、幻影を追い求めるように彼の過去を辿っていく。

淡々として美しく、上品な雰囲気で、外国の映画を観ているようだった。
スケート、数学、物事を分類する能力など、静かな物語の中に隠された彼の秘密を知るたびにどきどきしてしまう。

プラハでの不思議な体験はまるでファンタジーのようで、街の風景が頭の中で映像のように映し出され、いつまでも浸っていたくなった。

優しいため息をついてしまいたくなるような、みごとな結末だった。

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2023年02月23日

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ネタバレ

結局夫がなぜ死んだのか明確な答えは記されずに終わるの、ふつうだったらそこにめっちゃモヤモヤしちゃうだけなんだけど、何故かすんなり受け入れられた。とにかくずっと漂う閉鎖的な雰囲気が大好きでラストもこれ以上はないなって思う

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2023年01月08日

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小川ファンなので冷静に星がつけられません。

亡くなった恋人をたどる心の旅のお話です。物語が始まった時に既に恋人は亡くなっていて不在です。不在だからこその存在感は小川さんの作風の特徴であり、一貫しているので心地よく読みました。

取り留めもないと言えば取り留めもないと思うのですが、だからこその哀しみを感じます。

恋人の仕事が調香師というのもこの物語にぴったりで、香りは目に見えないけれど香りというものの背景には必ず思い出があるのだと思う。

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2020年06月02日

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なんと魅力的な主人公だろうか。視覚を塞ぎ、嗅覚、聴覚、触覚に生きた。
誰かが損なわれることに我慢がならず、自分を失った弘之。ルーキー。
プラハのジェニャックも魅力的。言葉を超えた世界。
最後の算数を教える場面の描写で泣いた。
自殺の理由なんて外からは分からない。それがメッセージ。
ただ彼は受け入れたんだな、死を。

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2017年01月24日

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よく知っていると思っていた恋人のことを、実は何も知らなかったと知ることは、どれだけ悲しいことだろうか

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2016年09月25日

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ネタバレ

香りはどうしようもなく儚いくせに怖いくらいに記憶に残る。愛した人が去れど、その人の香りは消えない。小川洋子、好きだ…

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2023年02月13日

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たまにはこの様な物語もいいではないか。

ある日突然恋人を失い、その生きていた証を訪ねていく物語。
生前の彼のことを、実は何も知らなかった自分に少なからずショックを受けながらも、彼の弟と共に軌跡を追い彼の実家で過ごす。そして異国の地へ向かい、そこで出会うガイドと共に。

彼が存在していた記憶を思い出し、考え、それにどっぷり浸かりながら、いない事実を受け入れていく様がよく書かれていて、ページをめくる手がとまらなかった。

少しは楽になれただろうか?時間が解決とは良い言葉だが、どっぷり浸って溺れながら、でもゆっくり浮かんで生きていくのも悪くないと思った。
無性に好きな人に会いたくなった。

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2022年07月17日

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なぜ、夫は死んでしまったか?謎を解くために旅をするけど謎は簡単にはとけなくて・・・。主人公と一緒にチェコを旅している気分になりました。(チェコに行ったことはないのだけど。)

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2022年04月08日

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香りが記憶を表す、洗練されたお話。
数学、スケート、香水瓶の棚、どれにおいても綻びのない綺麗な完璧さをもっており、ただただ美しかった。
どうして彼が間違いを選んだのか、最後まで語られることはないが、それすらも神秘的と言わざるを得ない物語。

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2022年02月23日

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死者の記憶を辿る過程で現実と空想の曖昧な境目を往来する涼子。夫の過去や死の輪郭が少しずつ明確に認識されていく一方で、その中身は何処まで行ってもぼやけたまま。予め用意された”間違い”へと突き進む彼の姿は理解はできても共感はできず、その掴みどころの無さに儚さ/畏ろしさのような物を感じた。
”過去は損なわれず記憶は保存される”という幸福な事実に縋り付くようにして読み終えた、静謐な語り口で紡がれる喪失と救済の物語。

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2022年02月07日

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★3.5、が相も変わらず全く覚えていない再読のおまけで★4。
本作が発表された年を考えると、この作家の志向は既にこの時点でしっかり確立されていて、この空気を良しとするか否かで読者を選別しているようにも思われまする。
この観点で小川洋子という独自性は唯一無二なんだろうと。

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2021年12月30日

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謎解きと書かれてますが、ミステリー小説ではありません。
答えは用意されてないので、読むならそのつもりで。

突然もたらされた調香師:弘之の死。
記念日のプレゼントは「記憶の泉」と名付けられた香水。
フロッピーに残された言葉の断片から
彼の軌跡を辿る旅をする決意をするのだが・・・

「猫を抱いて像と泳ぐ」を連想しました。
本作では、香りの表現に強く惹きつけられました。
色んな記憶を掘り起こしてくれるから、
小川作品は大好きです。

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2021年02月07日

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救われないって読み終わって1番に感じた。大切なものをなくしてぽっかり空いた隙間を日常生活の中で、時折感じながら今後生きていくって思ったら、凄くリアルでズシンと来て、ため息が出てしまった。

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2021年01月30日

Posted by ブクログ

『瓶を揺らしただけで香りが漂った。それは奥深い森で、シダの葉に宿った露の匂いだ。雨上がりの夕暮れに吹く風の匂いだ。あるいはジャスミンのつぼみが、眠りから覚める一瞬の匂いだ』

視覚、聴覚、触覚、味覚、そして臭覚、“動物やヒトが外界を感知するための感覚機能”の五つを我々は”五感”と呼んでいます。そんな”五感”の中でも臭覚は記憶を呼び起こす作用が強いと言われています。ある『香り』を『奥深い森で、シダの葉に宿った露の匂い』と表現するためには『奥深い森』に赴いた経験が必要です。『雨上がりの夕暮れに吹く風』と表現するためには、やはり『雨上がりの夕暮れ』を経験する必要があります。一方で、そんな表現でその『香り』を語れるということは、それを表現した人の過去の記憶の中に、『奥深い森』に行ったあの日の想い出や、『雨上がりの夕暮れ』を目の前にしたあの日の記憶があるとも言えます。具体的にその人の頭の中にふっと思い浮かぶ記憶が『香り』に結びついてそのような表現が生まれたとも言えます。逆に言えば、その経験をしていない人には決して結びつかない、理解することができない、そして共有することができないのがその『香り』であるとも言えます。『香り』を理解するということは、その『香り』を表現した人を感じることなのかもしれません。

そんな『香り』を書名に含んだこの作品。いなくなった恋人の姿を『香り』の中に追い求めていく主人公・涼子の物語です。

『ウィーン・シュヴェヒャート空港からプラハへの乗り継ぎ便は、五時間遅れた。どうしてそんなことになるのか、誰に尋ねても本当のことは教えてくれなかった』、『外はもう真っ暗だった』という中、空港で途方に暮れる『私』。そんな時『日本を出発してからどれくらい時間がたったのか、自分はいったい何時間眠っていないのか』と計算しようとしても上手くできない『私』は弘之のことを思い出します。『いつだって正しい答えを出すことができた』弘之。『58、37400、1692、903…』と答える『彼の答えはただの数字』、しかし『それをつぶやく瞬間を何より愛した』のが『私』。そんな『私』は過去を振り返ります。『弘之が死んだと、病院の看護婦から電話があった時、私はリビングでアイロンをかけていた』というその瞬間。『仕事場で、自殺をはかられました。無水エタノールを飲んだんです。すぐいらしてください』という看護婦の声。『無水エタノール。それなら知っている。調香室の棚の一番下に置いてあった』と記憶を辿ります。『確か一センチくらいしか減っていなかったと思う』と細かいところまで記憶に残る『私』。『霊安室は地下にあった』とその場所へ着いた『私』。『朝仕事に送り出した時、変わった様子はなかったはずだ』、『昨夜の夜は二人でささやかなお祝いをした』とさらにその前の二人の時間を振り返ります。『私たちが一緒に暮らしはじめてちょうど一年の記念日』に『初めて私のために作った香水を、プレゼントしてくれた』というその香水。『”記憶の泉”と名付けられていた』香水は『素朴なボトルとは反対に、蓋には精巧な透かし模様が彫ってあった』という蓋に彫られた孔雀。『孔雀は記憶を掌る神の使いなんだ』と語る弘之。『そんな大事な夜を過ごした次の日に…自殺なんてするはずがない』と改めて思う『私』の前に『香水工房の玲子先生と、もう一人見知らぬ若い男が立っていた』という霊安室。『ごめんなさいね。もっと早く気づいていれば』と弘之に留守番を頼み、帰ったら倒れていたことを詫びる玲子先生。『どうしてそんな、美味しくないものを飲んじゃったの…』と呟く『私』に『今日が父の命日なんです。僕に早く知らせるために、この日を選んだのだろうか』と語ったその男性は弘之の弟・彰でした。そんな彰との出会いが今の『私』をプラハへと向かわせました。そして、今の『私』はようやくウィーンからプラハに辿り着きました。しかし『プラハの空港で私を出迎えたのは、まだ少年と言ってもいいくらいのあどけない顔をした、若い男だった』という展開。日本語のできるガイドを依頼したのに…と言葉が通じず途方に暮れる『私』。『名前は何?私は涼子。分かる?』と語る涼子に『ジェニャック』と名前を語るその男。そして、弘之の過去の足跡を探す涼子のプラハの旅が描かれていきます。

1998年に刊行されたこの作品。そして、この5年後に代表作である「博士の愛した数式」が刊行されることになります。わざわざ「博士の」の話題を出したのは、この5年前の作品にも数字、数式、そして数学の記述が多々登場するからです。弟・彰との出会いから弘之が語った過去の虚飾と真実について知ることになる涼子。その中で、高校時代の弘之が『全国高校生数学コンテスト』で優勝するなど数学に飛び抜けた才能を持っていたことを知り驚きます。『弘之が数字に敏感なことには、もちろん気づいていた』という涼子。弘之が『しばしば物事を、数字を通して理解しようとした』ことを思い出します。二人の会話の中で数式が話題になった時『数式ってきれいだわ。神秘的なレースの模様みたい』と語る涼子に『こんなもの、ただの記号さ』と語った弘之。そんな弘之の高校時代のことを、”弘之探しの旅”の中で出会った杉本史子はこんな風に語ります。『彼の書く数式は美しかった。ごくありふれた定理でも記号でも、彼の指から紡ぎ出された途端、別の種類のものに次々と生まれ変わってゆくようでした』という、数式の美しさをこんな比喩で表現していく小川さん。『例えば、ピアノのワンタッチワンタッチがソナタになってゆくような、あるいはバレリーナの身体が一瞬一瞬白鳥になってゆくような、そんな感じです』。数式というものが神々しく昇華されていくこの表現。だから『彼のそばにいられることと、彼の数式を見つめることは、私にとっては同じ意味を持っていたのです』と当時を語る史子。そんな過去を振り返る場面で、弘之の神童とも言える数学の飛び抜けた才能が様々に描写されていきます。しかし、「博士の」で見られる数式の洗練された美しさを感じる描写とは少し異なり、数学の面白さを読者に伝えようという表現ではありません。唯一、おっ!これは!と感じたのは、テレビに出演した弘之が、そこで出された計算問題を『計算する必要はありません。正方形を作って考えれば簡単です。こんなふうに…』と実際に彼が書いた手書きの正方形の図を使って描写する箇所でした。これは「博士の」には見られなかったアプローチで、小説というより、数学の教科書に載っていそうな雰囲気さえ感じる良問+解です。思うに、小川さんにはこの作品で数学を文学として描いていく可能性が見えたのだと思います。そして、5年後の「博士の」では、数学の中でも特に数式の美しさにこだわりぬいた世界観を生み出し「博士の」という傑作が生まれたのではないか、そんな風に思いました。そういう意味では、この作品は「博士の」誕生前夜の小川さんの数学へのアプローチを垣間見ることができる貴重な作品とも言えます。私はたまたま連続してこれら両作品を読みましたが、偶然とは言え、まさかの出会いにとても良い読書ができたと思いました。

そして、なんと言ってもこの作品で外せないのは書名にも出てくる『香り』です。涼子と付き合っていた時代の弘之は、調香師という職業に就いていました。私はこの作品を読んで初めてその仕事を知ったのですが、小川さんは涼子先生の説明を通してその仕事をこんな風に説明します。『いかにたくさんの香りを記憶しておけるかが大事なの』という調香師の仕事。『なにせこの世の中には、四十万種類の匂いがあるんだから、形のない香りにイメージと言葉を与えて、記憶の引き出しに順序よくしまって、必要な時、必要な引き出しを開けられないと、やっていけない』というその仕事。確かに臭覚というものは、視覚、聴覚、味覚以上に、その表現が難しいと思います。それを数学と同じように類稀なる才能で文字に表現していく弘之。『岩のすき間からしたたり落ちる水滴。洞窟の湿った空気。締め切った書庫。埃を含んだ光。凍ったばかりの明け方の湖。緩やかな曲線を描く遺髪。古びて色の抜けた、けれどまだ十分に柔らかいビロード』というこの作品のキーワードとも言える、まるで幻想的な詩を読んでいるような錯覚にも陥る表現を使って、目に見えない『香り』を視覚化する弘之。謎めいた詩の中から一つの情景がふっと浮かび上がってくるようなその表現。『匂いのイメージはとても内面的なものだし、その人の記憶と深く関わっている』という玲子先生の言葉もあって、涼子がその『香り』をヒントに”弘之探しの旅”へと心惹かれていくのはとてもわかる気がしました。『香り』に関する表現には過去の記憶が封じ込められている。このことを小川さんは、孔雀の番人の言葉を通してこのように語ります。『過去はそこなわれません。決定されたことが覆せないのと同じように、誰かが勝手にいじることなんてできません』という、かつての思い出、過去の記憶。『そうやって記憶は保存されてゆきます。たとえその人が死んだあとでも』、といつまでも残り続ける記憶。それが『香り』の表現の中に埋め込まれていることを強く意識して、『香り』の記憶に弘之の姿を追い求め続ける涼子。そして、結末に向けて、ある『香り』と遭遇することになる涼子。『香り』というものの奥深さにとても感じ入った結末でした。

涼子が『一緒に暮らしはじめてちょうど一年の記念日』に弘之からプレゼントされた香水『記憶の泉』。それは『瓶を揺らしただけで香りが漂った』という『奥深い森』の、『雨上がりの夕暮れ』の、あるいは『ジャスミンのつぼみ』を思い起こさせる『香り』のするものでした。調香師としても才能を発揮した弘之。そんな弘之の短い人生の記憶がいっぱい詰まった『香り』の表現の中に、死してもなお弘之は生き続けているのだと思います。そんな『香り』を手がかりに弘之の姿を追い求める涼子を描いた物語。それは、数学への憧憬、『香り』の探求、そしてプラハへの旅情をも感じさせる物語でした。

とても静かで、とても香り高く、そして神秘さをも纏った世界観を感じさせてくれる物語。小川さんの世界観にどっぷりと浸れた素晴らしい作品でした。

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2020年10月26日

Posted by ブクログ

死んだ彼の過去を追う女のお話
彼の過去について何も知らなかった
彼の家族から知らされたことなどから
海外へまで足をのばし・・・
今さら知ったからどうなるものでもないのだけど
それでも彼のことを知りたい
そして知らされる事実
とくにびっくり展開でもないですが
読んでいてこちらも彼の過去が気になっていきました

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2020年09月23日

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ネタバレ

死んだ恋人の影を追っていく、記憶を辿る旅。
残された者の孤独と苦しみが美しい。静かな悲しみが芯から伝わって、長い走馬灯を見ているみたいだった。

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2019年07月30日

Posted by ブクログ

小川洋子さんの小説で共通して言えるのが、誰もが日常で出会うふとした瞬間を的確だけどほんの少し美しく代わりに表現してくれる、そんな一文との出会いが必ずあること。物語の世界に入っているはずなのに、と同時にその一行と出会うためにページをめくっている自分がいる。

トロフィを磨く、ドライブ、お料理、、、そんな日常も小川さんらしく丁寧に細やかに一瞬も取りこぼさず描写されていて、読者としても一行も逃せない。

ノンフィクションっぽいけれど、時たまダークなファンタジーなフィクションの世界と行き来する。その揺らぎがたまらなく好き。

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2018年08月16日

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突然の恋人の自殺をキッカケに恋人の過去を辿り、改めてその思い出に浸る…それがいつもの小川洋子さんらしい優しく不思議な空気感の文章で綴られている。
弘之の世界観は予定調和的なのか?記憶の泉を作り自らの命を絶つ事で永遠に記憶として生きる、というのが究極の整理・分類なのか?逆に彼に触れた人が全て彼の世界に整理されていくのか?孔雀の番人を通じて行き来できる記憶と現実のどちらに私たちは生きているのか?
突然の死によって逆にその人の事を深く知るようになる事を通して、人と人がわかりあう事の難しさとだからこそ相手の事をあたまで理解するのではなく「匂いとして」受け入れる、そんな受け止め方もできるのかな?って思いました。

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2018年07月16日

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『匂いは過去に向いて漏れている』

小川洋子の作品を読んでいる時、私の身体は薄い膜に覆われて、現実の中に確かにいるはずなのに、ひんやりと凍りついた空気の中に閉じ込められてしまう。

寒くないのに、身体が冷え切ってしまったような感覚に陥って本を閉じては何度も腕を摩る。そしてその摩る自分の手のひらが、指先が思いのほか熱くてその生暖かさを気持ち悪いと感じてしまう。

匂いを感じている。夜の匂い。メレンゲ菓子の喉に残るような甘い香り。サボテンの花が咲いている。雨の音が一度遠ざかる。

小川洋子の作品を読むという事。それは普通の読書体験ではない。自分がどこにいるのか感じることができる。私がここにいるということがわかる。そして物語も確かにここにある。

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2018年05月08日

Posted by ブクログ

面白かったです。ひっそりと匂い立つような世界が好きです。
数式をレース編みのように感じるところや、記憶は損なわれない、というところは、小川さんの他の作品にも通じるところがあるなと思いました。
とてもひっそりと、恋人の死を受け入れる主人公が哀しくも、最後は前を向けたのかなと思います。

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2017年12月18日

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ネタバレ

「あらかじめ用意された間違いを犯すために、身代わりになった。」
「『どっちだって、大して変わりないさ。僕が行く場所はもう決まっているんだから。誰かが決めてくれているんだ。僕が生まれるずっと前にね』」

ルーキーは、“正しい答え”が見つけられない事柄に対して、“分類”ができなかった。「僕が行く場所」、つまりいつか死ぬことは、「あらかじめ用意」されていて、「もう決まっている」ことであって、ルーキーはそれをきっと“正しい答え”としたのだろう。こうやって死の動機をたった一つの“答え”として考えるのは恐らくこの小説の本意ではないのだろうが、そう感じた。
きっとルーキーの「香り」は涼子や彰や母親の中で凍りついていて、もう溶けない。

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2016年06月28日

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ネタバレ

主人公の夫が序盤から自殺してしまうが、亡くなった夫に対する悲しみや愛がひしひしと伝わる。読み進めていくうち胸が締め付けられる。さすが小川洋子さん!といった作品だと思う。

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2023年12月03日

Posted by ブクログ

ある日突然恋人は命を絶った。理由が不明なその死を受け止めきれず、恋人の生きた軌跡を辿る主人公の物語。
恋人そっくりな弟や母親から、自分より前の恋人(元カノ的な何か)から、そして異国の街で、その記憶や記録の断片を辿って恋人の過去を構築していく。結局のところその理由は不透明なまま、でもなんとなく美しい感じで物語が終わる。
不穏な湿度を含んだ母親とのやり取りにぞわぞわし、終盤に至ってはもはや自分が何を読んでいるのか分からなくなってくるあの感じ、読んでいると引き込まれ現実世界をちゃんと忘れることができて、結構好きだった。

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2022年09月17日

Posted by ブクログ

小川氏の作品にしては輪郭がはっきりしていた様に感じた。
しかし透明感のあるゼリーにコクのあるバターを包んでる感じはしっかりある。

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2022年02月23日

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弘之が自殺して、彼女の涼子がなぜそうなったかを探す話。
静かなんだけど、どこか息苦しさが隠れてる感じがする。

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2021年05月03日

Posted by ブクログ

亡くなった彼の真実を探す旅。孔雀の羽根、記憶の泉、調香師、数学の問題…幾つかのキーワードから死者を訪ねる謎解きが始まる。
小川洋子さんの作品は、五感を研ぎ澄まして読むとより一層楽しむことができる。全ての物に対して存在を認めることが、この世界の入り口のチケットでもある。だから体調不安の時は馴染めない。

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2020年11月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自殺した調香師、弘之のこれまでの人生をたどる恋人の涼子の話。

ただただ静かな時間が流れる小説だった。引き込まれるでもなく、でも文字を目で追うのが心地良い感じがした。小川洋子さんの読んだ作品は博士の愛した数式に続いて二作目だが、どちらも愛しいという言葉がピッタリの小説だった。
調香師なんて職業があるんだ…

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2018年03月10日

Posted by ブクログ

調香師の彼が自殺。その彼の弟を通じて、あるいはその彼が高校時代に数学日本代表として訪れた外国をめぐる、不思議な物語。

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2016年08月16日

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