小川洋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ2回読みました。1回じゃ正しく理解できなかった。
○妊娠カレンダー
単純に言ってしまえば復讐譚なのだけど、そんな単純な言葉で表現しきれないのがこの作品。
印象的だったのは、匂いに過敏になった悪阻中の姉に配慮して、主人公は庭で夕飯を作るのだが、食べられない姉をあざ笑うかのように、主人公は炊飯器の湯気が立ち上ってゆくさまを心安らかに眺め、大きな口を開けてシチューと一緒に「夜の闇」を飲み込むところだ。主人公は夜の闇とともに、心の闇を飲み込み自分のものとする。
かたや、悪阻が終わった姉は「彼女の存在そのものが、食欲に飲み込まれてしまったように」食べつくす。その姉のお腹には主人公がDNAを壊す(と信 -
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ネタバレ海外旅行先で襲撃を受け、人質となった8人。8人は亡くなってしまったが、後に犯人グループの動きを探るため、録音された盗聴テープが公開された。人質たちが自ら考えた話を朗読している様子が録音されたテープである。
1話毎の終わりに、誰が朗読したのかが記載されている。淡々と書かれているのが、その人たちが亡くなっているんだということを強調しているように感じた。
小川洋子さんの本を初めて読んだが、とても読みやすかった。ほかの本も気になるものがあったら読んでみたい。
表紙の「小鹿」は彫刻家の土屋仁応(つちや よしまさ)さんが造られたそう。
調べてみたらほかの作品も素敵だった。 -
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ネタバレ本を読んでいて良くあるのが「この一文に救われた」などの特定の一部分を取り上げて、それが印象に残ること。
でも小川洋子さんの本の場合、作品の中の一部分というよりも、その作品単位でお守りのようになるので不思議だ。胸が温かくなり、絵筆を水につけた時に一気に色が広がるように、そして水につけることで絵筆に絵の具がついていたことにようやく気づくような、そんな心の存在を強く感じた。
とても抽象的な感想になってしまった。
作品全体が好きなのはもちろんだけれど、この中でも印象的な文章はp158の槍投げの話で
「こうして合わせた両手から次々と水がこぼれ落ちてゆくように皆が遠ざかってゆくのを、私はただ黙って見 -
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8つの短編の中で『亡き王女のための刺繍』は小川洋子さんならではの妖しい毒っ気が美しかった。『かわいそうなこと』も良かったなあ。敏感なアンテナを大人になっても持ち続けている作者は日々の中で辛くなることはないのだろうかと心配になると同時に羨ましい。
でも、一番好きだったのは『一つの歌を分け合う』。同じ時代を生きる人たちは大縄跳びみたいに次々この世を抜けていく。だけどそれはおしまいじゃなくて、帰れる、焦がれた人たちに合流できるという優しい気持ちで越えられる一線。レミゼラブルから受け取れるうちのそんなひとつを、たった二十数ページで表せられるのがすごい。 -
Posted by ブクログ
小川洋子の書くお話ってどこかすいすいと夢を見ているようなんだけど、最後のインタビューに「短編は短い妄想」と書いてあって安心した。妄想は最も自発的で積極的な夢といえるからね。「そこにしか居場所がなかった人たち」。そういえば『猫を抱いて象と泳ぐ』もそうだったな。
本当に小川洋子は均衡感覚に優れている。本書でもそう感じさせられた。生と死、理性と感性、温かさと冷たさ、それぞれが拮抗しているラインのたったひとつの交点にその小説がある。それより少し右でも左でも上でも下でもない。文字数もこれ以上多くも少なくもない。この完璧主義的でさえある小説を、なんというか無意識的に書いてそうなところがますます恐ろしい。