小川洋子のレビュー一覧

  • 海

    一番初めの表題作が最も印象に残っている。
    海風によって鳴ることのできる不思議な名前の楽器と表紙の海のブルーが合わさって、海の中にいるような静謐さと美しさを感じた。
  • 妊娠カレンダー
    姉が妊娠した妹の、歪んだ考えや行動に不思議と引き付けられてしまった。
    登場人物のキャラクターの温度差がはっきりと伝わってきて、淡々と綴られる日常の変化が印象的だった。
    全てはグレープフルーツジャムに集約され、姉は無事に出産できたのかどうか気掛かりな終わり方だった。
    妊娠という現象を、こんな風変わりな...続きを読む
  • 最果てアーケード
    「この世界では、し、ではじまる物事が一番多いの。し、が世界の多くの部分を背負ってるの。」という台詞で、死を連想して不思議な気持ちになった。生という漢字はたくさんの読み方があるが、死は1つしか読み方がないという話は有名だ。
    どの短編にも切なさがあり、それらも日常として、アーケードに吸収されていく。特に...続きを読む
  • 約束された移動
    6編の短編それぞれに、独特の世界観があり小川ワールドに引き込まれた。映像なしに文章だけで、異次元空間を体験できた。
  • 人質の朗読会
    わたしがもし異国の地で、生きるか死ぬかの状況に置かれたら、何を思い出すのかな…そんなこと思いながら読んでいた。

    8人の人質と1人の政府軍兵士が思い出したのは、決して派手な話でも、人生が順風満帆な時期の話でもなかった。むしろ世界の片隅で孤独や死の気配を感じながら生きている、そんな一場面だった。
    でも...続きを読む
  • 琥珀のまたたき
    埃被っていて薄暗くて好きな世界観。御伽噺ってやっぱりどこか怖いよなと思った。飛蚊症からここまで世界を創ることができるなんて素敵すぎる。
  • ブラフマンの埋葬
    タイトルからしてブラフマンが死ぬこと、残りページがほんの少ししかないことから娘の車の練習に付き合ったことでブラフマンは死ぬと想像できた。溺れて死ぬのかな〜と思っていたが娘が轢き殺してしまった。

    娘に好意を持っている僕に反して、娘は僕に対してなんの興味も感情すらも示さず、挙句僕が大事にしているブラフ...続きを読む
  • 最果てアーケード
    「紙店シスター」と「人さらいの時計」が好きだった
    こんな商店街があったら行きたい、というよりは
    この商店街の中の人になりたいと思った

    登場人物は皆、一様に優しくて温かいのに、何故か物語全体は少し薄暗くて冷たい印象があって不思議な本だった。
  • 沈黙博物館
    スリルのある小説です。見事に感情がぶつかり合い、不思議なパズルを完成させます。主人公が戸惑い、躓いたりして沈黙と戦います。謎めいた小説の好きな方におすすめです。何か返事があるかもしれません。
  • 海

    短編集形式。

    ★バタフライ和文タイプ事務所:が最高だった
    ・あとがきの後の講評を記載していた人も唸っていた内容で、タイプライターの活字を介して顔の見えない活字の管理人?職人?への慕情を伝えている表現が堪らなかった。

    ・「ことり」もそうだが、小川洋子さんの作品の中でも「言葉」や「コミュニケーション...続きを読む
  • そこに工場があるかぎり
    小川さんの目を通すとただの機械も美しく息づいている。ただの機械、ただの工場なんてひとつもないんだなと気づかされる。
  • 遠慮深いうたた寝
    小川洋子さんのものの見方とか出来事の捉え方、表現の仕方が本当に好きで、こんなふうに自分の周りの世界を感じ取れるようになりたいと読むたびに思う。
    本作は日常生活のなんてことない瞬間とか、推しを推す楽しさとか、好きな本や作家さんのこととか、より身近な内容が多くて面白かった。

    応援熱年齢比例説、わかりみ...続きを読む
  • 密やかな結晶 新装版
    この島では、大事なものが一つずつなくなっていく。
    それらは私たちの知っている他愛のないものばかりで、そんな日がほんとうにやってくるのかと思うと、背筋がゾクゾクしてくる。
    そして、ニ、三日もすれば、何をなくしたかさえ思い出せなくなっている。
    なくすということは、忘れるということ。

    小川さん独特の美し...続きを読む
  • 夜明けの縁をさ迷う人々
    丸い部屋で眠るのって、どんな気分なのかしら。 きっと深い安らぎに包まれて、小さな心配事なんて全部消え去ってゆくんでしょうね。
    だって丸い部屋で眠る時の自分は、円の直径になるのよ。
  • 猫を抱いて象と泳ぐ
    “少年は詩がどんなものかよくは知らなかったが、アリョーヒンの棋譜から立ち上る朝霧のような静けさ、風に震える花弁の可憐さ、一瞬を貫く稲光、大地を吠えさせる風のうねり、暗闇に浮かぶ月の孤独、などを詩と評するのならば、詩というものは素晴らしい宝石であるに違いないと確信した。”

    「大きくなること、それは悲...続きを読む
  • 遠慮深いうたた寝
    2022.11

    陶器のようなつるんとした表紙と
    「遠慮深いうたた寝」という
    タイトルに惹かれて買った本
    やさしくてまろやかで上品さを感じる雰囲気
    "P228答えのない問い"でぽろぽろ泣いた
    本棚に迎え入れて良かったです

    好きだった作品
    P23 小人か妖精の仕業(切符の紛失)
    P55 生きる力
    (...続きを読む
  • 琥珀のまたたき
    アンティーク調の美しい情景が浮かぶ文章で、読んでてうっとりするような物語だけど、現実は狂気を帯びた実の母による監禁事件。良い.....危険な美しさ。
  • 琥珀のまたたき
    「読書の愉しみ」を思う存分味わえる作品。
    文字を目で追っていくうちに、頭の中に想起されてくるイメージの数々。その濃密さ、細やかさ。言葉から紡ぎ出されるイメージは既視感のあるものではなく、この作家の手によって初めて掘り出されたと感じられる全く新しいもの。見たことがない世界が広がっていく。
    一方で母性の...続きを読む
  • ゴリラの森、言葉の海(新潮文庫)
    生まれた時から、言葉が当たり前にある環境だから、言葉ですべての物事を定義してしまうこと自体の意味や、不可解さについて考えたことなかったな
    言葉遣いなど、言葉に達者な人でありたいなあとは思っていたけれど、そのマイナス面についてもあるのね、やっぱり物事って全て両面性がある。。当たり前って危険ね

    普段よ...続きを読む
  • 琥珀のまたたき
    世間的には虐待である。
    それを、こんなに静かで柔らかくて、外から壊してはいけない優しい世界に描きあげるなんて。
    強固に護られた壁の中が、琥珀にとってのすべてた。欠けたもの、足りないものは、姉弟のたちが作るお話や歌や絵で補填され、それ以上の充実をもたらす。ママの狂気が生んだ忌むべき空間のはずなのに、紛...続きを読む