小川洋子のレビュー一覧
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小説家・小川洋子さんと心理学者・河合隼雄さんの対談本。
最近、私のなかで対談本が、アツい。
この本を読む前に、村上春樹さんと河合隼雄さんの対談本を読んだ。
宙をただよう概念が、思いもよらぬところで、ふっとつながるような体験が、なんとも快感だった。
その熱量をそのままに、今回この対談本を手にしたのである。
個人的には、次の一節が、心に響いた。
「世界中にあふれている物語を書き写すのが自分の役割だとすれば、私はもうちっぽけな自分に怯える必要はないのです。物語は既にそこにあるのですから。」
小説家・小川洋子さんが、河合隼雄さんとお話しして得た気づきである。
書くときに、人はものを作り出そうとする。
けれども、作り出す必要はない。
なぜなら、物語は既にそこにあるのだから。
引用するのも畏れ多いくらい、私はとてもそんなレベルにはたどり着いていない。けれども、この言葉を読んで、スッと心がラクになる感覚が、確かにあったのだ。
書くことを考えたいときに、また読み直したいと思った。 -
Posted by ブクログ
主人公はごく普通の中学1年生・朋子。家庭の事情で伯父さんのもとで暮らすことになります。
この伯父さん、飲料メーカーの社長でお金持ち。芦屋の洋館で過ごす1年はまさに絵に描いたような夢の暮らし。
しかも母親がドイツ人の伯父さんはイケオジ、その息子・いとこのお兄ちゃんももちイケメン!シャンデリアのお屋敷、池のある広大なお庭…まさに少女マンガの世界。
そしてもう一人のいとこ・ミーナは小学6年生。美少女でか弱くまさに蝶よ花よ。あ〜ハイハイ知ってますこういうの、やっぱマンガだね。と思いきや!
ミーナはバリバリ関西弁、お屋敷の池に住むのはコビトカバ。そしてミーナはそのカバ「ポチ子」に乗って登校(!)するのです。
まてよ、確かおぼっちゃまくんもカメに乗って学校行ってたし、マンガはマンガでもそっち系?
いやいや。
舞台は1972年。昭和47年の空気感が漂う中、朋子とミーナの日常のあれこれがまー愛おしいこと。
登場人物もみんなどこか共感できちゃう。
ミーナが途中で語る物語も、それだけで一冊作ってほしいくらい好みだし、カラーの挿絵も贅沢。
ラスト、そこに至るまでを想像させるポイントがちょこちょこある気がして、思いを巡らせるのも楽しかった。このラストでよかった〜。 -
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言葉は、人の心を救い、生きる支えになるもの
そのことを強く感じた
アンネにとって隠れ家での生活は、不安と恐怖に満ちた毎日だった
その中で日記は、誰にも言えない本音を打ち明けられる大切な存在であり、アンネの心を救っていたのだと思う
ユーモアを忘れず、時には厳しい言葉で感情をあらわすアンネの姿から、彼女が必死に生きていたことが伝わってきた
また、反抗期の影響で母親とうまくいかなかったことなど、人間らしい一面を知ることができた
私はアンネの話は知っていたが、実際に日記をきちんと読んだことがあったのだろうかと考えさせられた
アンネが日記を書き残したからこそ、私たちは彼女の気持ちを知ることができる
しかし、姉のマルゴーや、隠れ家で共に生活していたペーターが日記を書いていなかったため、彼らの思いは分からない。そのことから、言葉として残すことの大切さを感じた
アンネは「わたしの望みは、死んでからもなお生きつづけること」と書いている
この言葉を読んだとき、私はアンネが自分の未来を予言していたのではないかと不思議に思った
収容所では日記を書くこともできず、どれほど苦しかったのだろうか
しかし、アンネの日記は今も世界中で読まれ、彼女の言葉は生き続けている
アンネの日記は、言葉が人を救い、そして人を死後も生かし続ける力を持っていることを教えてくれた -
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7人の科学者に、彼らの研究についてインタビューをする小川洋子さん。改めて、サイエンスの果てしなさを思い知ることになった。
小川洋子さんの作品の原石を見ているような思いだった。『最果てアーケード』『琥珀のまたたき』『博士の愛した数式』など、それらの登場人物がみな魅力的なのは、彼らが収集したり、探求したり、愛を捧げていたりと、科学の美しさを一身に纏っていたからだったのだ。
サイエンスの美しさが含まれていることを意識しながら、彼女の作品をもう一度読み直してみたくなる。
小川洋子さんが科学者とお会いする前に、想像されていた科学者像が、小川ワールド全開でくすりと笑えてしまう。
続編も出してほしい。
宇宙の謎はダークと名付けられ、サムシング・グレードによって我々は構築されている。 -
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こってりとした『BUTTER』の後はさっくりと読める短編集を。実は初めて、小川洋子さんの本を読破しました。
ずっと憧れはあった。何冊か手に取ってはその言葉の美しさと静謐な世界観に、ある種の格式高さ、ハードルの高さのような感想を抱いて、もう少し読書慣れしてからにしようと挫折していた。
だから今回、あえて短編という形で再挑戦をした。ゴールが近いからこそ、あまり怖がらずに読み進められたし、自分の中で感じていた高嶺の花のような文体も実はとても柔らかく、ひんやりとした手のひらの中に温かな小さな命が握られているような繊細さが感じ取れた。
誰だって、この温かさに触れてもいいんだよ、でもそっとね、と言われているような優しい文体に、気付けば小川洋子さんの世界観にどっぷりと浸っていました。
七つの短編、そのどれもが気付けばぐんぐんとのめり込み、煩わしかった周りの音や話し声もまるで遠くに行ってしまったような錯覚を覚えながら読み進められました。
短編というものが読み慣れていない私にとってもその終わり方はどれも優しくふんわりと着地して、心がすうっと軽くなるような余韻を残すものが多くて、改めて小川洋子さんの文章の上手さに静かに圧倒されました。
全部が好きだけど、特に好きなのは「風薫るウィーンの旅六日間」「缶入りドロップ」「ガイド」です。
「ひよこドロップ」も入れたかったけど、穏やかで優しい世界観の中にそっと差し込まれた残酷さという名のえぐみを上手く味わえるほど、私はまだ成熟してなかった。でも好き。
「海」
この本の表題作。主人公とその彼女の弟、男二人の静かな一夜。「小さな弟」の少し異質な背景が滲み出していながらもそれを踏み躙らない静かな夜を共に過ごしたような感覚が残った。
「風薫るウィーンの旅六日間」
控えめなフリしてちゃっかりしてる未亡人のおばさん、琴子に、主人公の二十歳の女性が振り回され、彼女の四十五年前の異国の恋人の最期を看取る話。自分の旅行の計画を潰されてもそっと琴子に寄り添ってあげている主人公が優しい!最後のオチが全部の短編の中で一番好き。
「バタフライ和文タイプ事務所」
個人的に一番硬い単語が多くて読み難いなと思いながら読み進めていたけど、途中からあれこれ、もしかして高度な言葉遊びを用いた官能小説か?と気付き始めてから一気に面白くなった。あまりにレベルの高い官能加減にくらくらした。純文学×官能もっと読みたい。
「銀色のかぎ編み」
短さにびっくりしたけど、短い中にも主人公の中に宿る祖母の記憶と現実の景色が混ざり合う感覚が心地よかった。
「缶入りドロップ」
これも短いけど好きな作品。子供を持ったことのない不器用な大人が、子供という未知なる存在を自分なりに攻略するための術が、側から見たらとても優しい心配りのように見える構図が面白くて心がぽかぽかした。
「ひよこトラック」
母の死をきっかけに喋れなくなった少女と、孤独なドアマンの男性のお話。男性が少女とのコミュニケーションにあえて言葉を用いない方法を取ったおかげで生まれた二人だけの優しい時間。二人が目を奪われたカラフルなひよこの残酷な末路、それを知らない少女の清らかな心の描写がとても素敵だなと思いました。
「ガイド」
バスガイドの母を持つ少年と"題名屋”を営む初老の紳士のお話。小川さんの描く、歳の離れた二人の交流が好きだなぁと再確認した作品。私も消えてほしくない思い出に題名をつけてみようかなと考えさせられました。
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Posted by ブクログ
普段、腕や首や血が飛び散ったり井戸から貞子が出たりするものばかり読んでいるので、文字通り心が洗われた気持ちになった。
たまには心をお洗濯しないとだめですね…。
ささいな日常を(もちろん練りに練られた内容なのだけども)繊細で丁寧で厳選された言葉で綴られると、こんなにも濃密な世界になるんですね。
どの話も素敵なだったのですが、個人的には「B談話室」と「コンソメスープ」が好きでした。
この物語を語った人々がどうなったかは、冒頭で語られているので、だから余計に最後のエピソードの「この朗読会が終わらなければいいのに」という一文が胸に応えました。
読み終わってため息です。余韻引きずるわー。 -
Posted by ブクログ
冒頭、黒電話の描写で一気に引き込まれた。ほんとうに美しい文章。一つ一つの物語を、言葉を、時間をかけて味わいたいと思いつつ、ページを捲る手が止まらなかった。何度でも読み返したい。全部の話が好きだと言える短編集に出会えて嬉しい。読み終わった後この本を抱き締めたくなった。
「
形容しがたい丸み、暗号めいたダイヤル、耳にフィットするよう計算された受話器のカーブ、可愛らしげにクルクルとカールするコード。そうした何もかもがどこかしらおもちゃめいていたが、僕は最初からそれが、ただものでないことにちゃんと気づいていた。
とにかくその黒色は特別だった。一点の濁りもなく、濃密で、圧倒的で、気高くさえあった。両手に載るほどの大きさなのに、何を企んでいるのか分からないふてぶてしさと思慮深さを併せ持っていた。そこに一つの黒い塊があるだけで、階段裏の薄暗さが奥行きを増すようだった。
」
黒電話一つでここまで書ける小川洋子さんすごい。著者の作品は『博士の愛した数式』以来でしたがまた再読しようと思ったし、他の作品も読みたいと思いました。