小川洋子のレビュー一覧
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"博士の記憶は80分しか持たない"
つまり80分経ってしまうと思い出が上書きされて無くなっていく儚さがあるが、数学者の博士は数式を通じて想いを残す事で、記憶が塗り替えられたとしても何度でも気持ちは蘇る。
博士の愛情に心が揺さぶられました。
私が学生の頃、祖母が認知症で大変なことも多くありました。
だけど、孫である私の事を1番に可愛がってくれていて、私が孫であることすら忘れてしまった時でも変わらずに可愛がって接してくれる祖母の言動がなんだか愛おしくて好きでした。
認知症と本書を照らし合わせるのは少し違うのかもしれないけど、読んでいたら祖母との記憶思い出させてくれて嬉しい気 -
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「わたし」が暮らしている島では、ある日突然に物事が消滅する現象が起こっていた。
玩具、貴金属、本などの物的な物だけではなく、言葉、記憶、そして人体までもが消滅の可能性がある社会なのだ。
「わたし」は父親を早く亡くし、母親と二人で暮らしていたのだが、母親は消滅現象が起こっても記憶を消失しない能力があったために秘密警察に連行されてしまう。
それ以降、「わたし」は小説を書いて一人で暮らしている。
「わたし」には二人の大切な人がいる。
一人は「わたし」の両親のもとで色々と働いてくれていたお爺さんで、常に「わたし」の側に立って助けてくれていた。
もう一人の大切な人は編集者のR氏で、「わたし」の小説を常 -
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本作は、声にならない声をすくいあげる物語だった。
兄は人間の言葉からは静かにこぼれ落ちてしまう存在だが、ことりのさえずりだけは正確に受け取ることができる。その姿は、社会から取り残されているようでいて、同時に誰よりも純粋な世界に触れているようにも見える。
弟は兄の言葉を翻訳し、現実とのあいだをつなぐ細い橋となる。兄の世界を守ろうとするその姿は献身的で、けれどどこか、常に風にさらされているような不安を帯びている。二人の暮らしは小さく閉じているが、その閉じた空間のなかにだけ流れる時間は、外の世界よりもずっと澄んでいる。
ことりの声は、救いであると同時に隔たりでもある。羽ばたきは自由の象徴でありながら -
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小説家・小川洋子さんと心理学者・河合隼雄さんの対談本。
最近、私のなかで対談本が、アツい。
この本を読む前に、村上春樹さんと河合隼雄さんの対談本を読んだ。
宙をただよう概念が、思いもよらぬところで、ふっとつながるような体験が、なんとも快感だった。
その熱量をそのままに、今回この対談本を手にしたのである。
個人的には、次の一節が、心に響いた。
「世界中にあふれている物語を書き写すのが自分の役割だとすれば、私はもうちっぽけな自分に怯える必要はないのです。物語は既にそこにあるのですから。」
小説家・小川洋子さんが、河合隼雄さんとお話しして得た気づきである。
書くときに、人はものを作り出そう -
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主人公はごく普通の中学1年生・朋子。家庭の事情で伯父さんのもとで暮らすことになります。
この伯父さん、飲料メーカーの社長でお金持ち。芦屋の洋館で過ごす1年はまさに絵に描いたような夢の暮らし。
しかも母親がドイツ人の伯父さんはイケオジ、その息子・いとこのお兄ちゃんももちイケメン!シャンデリアのお屋敷、池のある広大なお庭…まさに少女マンガの世界。
そしてもう一人のいとこ・ミーナは小学6年生。美少女でか弱くまさに蝶よ花よ。あ〜ハイハイ知ってますこういうの、やっぱマンガだね。と思いきや!
ミーナはバリバリ関西弁、お屋敷の池に住むのはコビトカバ。そしてミーナはそのカバ「ポチ子」に乗って登校(!)するの -
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言葉は、人の心を救い、生きる支えになるもの
そのことを強く感じた
アンネにとって隠れ家での生活は、不安と恐怖に満ちた毎日だった
その中で日記は、誰にも言えない本音を打ち明けられる大切な存在であり、アンネの心を救っていたのだと思う
ユーモアを忘れず、時には厳しい言葉で感情をあらわすアンネの姿から、彼女が必死に生きていたことが伝わってきた
また、反抗期の影響で母親とうまくいかなかったことなど、人間らしい一面を知ることができた
私はアンネの話は知っていたが、実際に日記をきちんと読んだことがあったのだろうかと考えさせられた
アンネが日記を書き残したからこそ、私たちは彼女の気持ちを知ることができる
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7人の科学者に、彼らの研究についてインタビューをする小川洋子さん。改めて、サイエンスの果てしなさを思い知ることになった。
小川洋子さんの作品の原石を見ているような思いだった。『最果てアーケード』『琥珀のまたたき』『博士の愛した数式』など、それらの登場人物がみな魅力的なのは、彼らが収集したり、探求したり、愛を捧げていたりと、科学の美しさを一身に纏っていたからだったのだ。
サイエンスの美しさが含まれていることを意識しながら、彼女の作品をもう一度読み直してみたくなる。
小川洋子さんが科学者とお会いする前に、想像されていた科学者像が、小川ワールド全開でくすりと笑えてしまう。
続編も出してほしい。
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こってりとした『BUTTER』の後はさっくりと読める短編集を。実は初めて、小川洋子さんの本を読破しました。
ずっと憧れはあった。何冊か手に取ってはその言葉の美しさと静謐な世界観に、ある種の格式高さ、ハードルの高さのような感想を抱いて、もう少し読書慣れしてからにしようと挫折していた。
だから今回、あえて短編という形で再挑戦をした。ゴールが近いからこそ、あまり怖がらずに読み進められたし、自分の中で感じていた高嶺の花のような文体も実はとても柔らかく、ひんやりとした手のひらの中に温かな小さな命が握られているような繊細さが感じ取れた。
誰だって、この温かさに触れてもいいんだよ、でもそっとね、と言われて