小川洋子のレビュー一覧

  • 密やかな結晶 新装版

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    小川洋子さんの記憶の消滅に関する小説。
    『博士の愛した数式』でも80分しか記憶を持たない数学者がおり、今回の小説と「記憶」というテーマで共通するところがある。

    儚く自然と涙がこぼれるような物語。
    モノが人々の記憶から消滅していくということは、モノに宿る人々の想いさえも無くしてしまうことなのかもしれないと感じた。

    私自身も数々の記憶を忘れてしまっているのだろう。
    ただ、今回小説を読んだことで、その時の想いや感情などできる限り日記に留めておきたいと感じた。
    それが記憶、その時の感情・情景を思い出すことに繋がると思うから。

    解説で、記憶しているがゆえに、迫害され、粛清される。そこで、ユダヤ人差

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    2026年03月17日
  • サイレントシンガー

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    毎日、夕方の5時になると町役場からの放送で「家路」が流れる。
    あまりにも自然に溶け込んだ歌声のため、人々は熱心に聴きいる事もなく、1日の区切りとして耳にしているだけで、誰が歌っているのかなどの関心を抱く者は誰もいなかった。

    この地域に、ちょっと変わった人々が暮らす集団が存在していた。
    彼らは極端な内気の性格のため、言葉を交わす人との関わりを避け、沈黙を優先した生活を営んでいた。
    その地域に、おばあさんと孫娘リリカの二人が雑用係として加わることになる。
    おばあさんはリリカを育てるために、この変わった人々が暮らす地域に職を得て、外部の人々との接触を担当する雑用係として働くことになる。

    リリカの

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    2026年03月16日
  • カラーひよことコーヒー豆

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    題名に強烈に惹かれて手に取った。小川洋子のエッセイ。どの作品も読みやすい。印象的なのは題名と同じ話。ほんわかした内容かと先入観を持って心躍らせながら読み進めると「そうきましたか!」と膝を打っていた。発想力が素晴らしい。

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    2026年03月15日
  • まぶた

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    再読。静かにそこに佇む死。それはこれみよがしなメメント・モリとも違う、小川洋子にしか出せない空気感だと感じる。昔読んで印象に残っていた「バックストローク」ここに収録されてたのか。一押しは「お料理教室」

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    2026年03月14日
  • 薬指の標本

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    再読。初期の小川洋子はけっこうエグみが強いなぁと思ったけど「妊娠カレンダー」「密やかな結晶」のほうが前なのね。喪失とインモラル。カタリコベヤ。

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    2026年03月10日
  • いつも彼らはどこかに

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    動物がモチーフの短編集。
    登場人物たちは何かしら大事なものを失っているし、そしてどこか狂っている。
    現実と非現実の境目が曖昧で、気づけばどこか別の世界に自分も連れて行かれている。

    短編集なので一作一作は短くて、しかも言葉が美しいので軽く見えるのだけど、とても重たくて。
    まるで海の中に潜って水底の神秘的な世界を見ているよう。ときどき顔を出して息継ぎするみたいに、合間に明るい外国作品などを読まないと、その圧倒的な力に押し潰されそうになりました。

    安心できる場所をちゃんと確保して、静かな夜に、一話ずつ。そーっとのぞき込むように。
    そんな読み方がおすすめの作品です。

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    2026年03月09日
  • 海

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    小川洋子さんの小説をちゃんと読んだのは今回が初めて。非常に良かった。特に好きなのは下記3編。恋人の弟と鳴鱗琴について話す「海」。孤独なホテルドアマンと話せない少女の交流を描いた「ひよこトラック」。最後にひよこを守るため言葉を発した少女の台詞がとても大人びてて驚いた。題名屋と観光ガイドの母を持つ少年の交流を描いた「ガイド」。巻末のインタビューもとても良かった。小川さんの描く歳の離れた人同士の交流が本当に素敵な関係性で良い。どこか懐かしく繊細で温かな気持ちになる物語ばかり。あやしい職業、不思議な世界観も好き。

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    2026年03月09日
  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    こんなに美しいレンズで世界を見れたなら、と思わされる。綺麗な世界を綺麗に演出して綺麗な文章で届けてくれる。チェスの駒を動かす静かな音が頭の中で響くような、静謐な小説。読み終えて現実に戻ってきた時に、周りの人や自分に対して少しだけ優しくなれる。世界の輪郭を柔らかくしてくれる。

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    2026年03月09日
  • 密やかな結晶 新装版

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    人間は失っていく生き物だと日々感じていた頃に手にとった。
    育児をしている自分。自分と向き合う時間がない中で、必死に子供の命を守ろうとしている自分。日々ささやかな幸せを噛み締めながらも、自分の描く自分がガタガタと崩れていく感覚があった。

    情景描写がものすごく緻密で、こんなにも情景描写に優れた作品は初めてだった。
    消滅の物語だが、消滅しないものについて考えている自分がいた。

    最近喉元が詰まる感覚があった。産後だからか、頭の回転も遅くて、うまく言葉がでてこないことも多かったからだ。でもこの物語を読んで、身体が消滅しても残るものはあると知って、自分の中の蜜やかな結晶はなんだろう、と思えるようになっ

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    2026年03月01日
  • 最果てアーケード

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    アーケードの人は、下世話な噂ばなしはせず、みんなひそかに、お互いを温かく見守る。お父さんと「私」のことも、輪っか屋さんの恋模様も。

    「私」ももう亡くなっていて、霊のようにゆらゆらと出てきては思い出を語っているのかな。小さいもの、目立たないもの、死んだものに視線を向ける。このアーケードでは、そういうものが大切にされ、尊重されている。

    目立たないけど、役に立つかどうかわからないけど、そのままでいいよ、と言ってもらえるような物語だった。

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    2026年02月28日
  • サイレントシンガー

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    小説は読者の精神の状態によって響き方が変わる。また読まれる環境によっても受け取り方は変わる。こんなにうるさくてせっかちな世界に生きる私にとって、鎮静剤のような物語だった。一枚の舌より二つの耳を重視する人々に囲まれてリリカは美しい声で歌い、それを認められた。ずっと彼女の『家路』が流れる町であってほしいけど、いつかは新しく明るく賑やかな歌と取って変わるのだろう。それでも小川作品の愛読者は、静かなシンガーを求める少数者がいることを知っているだろう。時折こんな世界に触れて心を落ち着けたいものだ。

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    2026年02月24日
  • ことり

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    ネタバレ

    1人の小父さんの人生を読んだ。
    一見波瀾万丈で、第三者から憐れみの目を向けられそうな人生にも見えるが、小鳥とお兄さんとの揺るがない繋がりがあり、穏やかに最期を迎えることができ、とても彩りのある素敵な人生に思えた。

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    2026年02月23日
  • とにかく散歩いたしましょう

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    小川洋子さんはエッセイでも文章が静謐で丹念で素晴らしいです。でも書かれている内容はフレンドリーで、小川さんにもこんな面があるんだ…!と楽しくなってしまう。文鳥やコビトカバの章では、ことりだ!ミーナだ!と盛り上がれるのも嬉しい。

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    2026年02月23日
  • まぶた

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    バックストロークは何回読んでも感動する。どんなに荒んだ心でもぐんぐんしみこむ小川洋子の言葉はすごいと思う(i_i)

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    2026年02月17日
  • 密やかな結晶 新装版

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    「わたし」が暮らしている島では、ある日突然に物事が消滅する現象が起こっていた。
    玩具、貴金属、本などの物的な物だけではなく、言葉、記憶、そして人体までもが消滅の可能性がある社会なのだ。

    「わたし」は父親を早く亡くし、母親と二人で暮らしていたのだが、母親は消滅現象が起こっても記憶を消失しない能力があったために秘密警察に連行されてしまう。
    それ以降、「わたし」は小説を書いて一人で暮らしている。
    「わたし」には二人の大切な人がいる。
    一人は「わたし」の両親のもとで色々と働いてくれていたお爺さんで、常に「わたし」の側に立って助けてくれていた。
    もう一人の大切な人は編集者のR氏で、「わたし」の小説を常

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    2026年02月16日
  • ことり

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    本作は、声にならない声をすくいあげる物語だった。
    兄は人間の言葉からは静かにこぼれ落ちてしまう存在だが、ことりのさえずりだけは正確に受け取ることができる。その姿は、社会から取り残されているようでいて、同時に誰よりも純粋な世界に触れているようにも見える。
    弟は兄の言葉を翻訳し、現実とのあいだをつなぐ細い橋となる。兄の世界を守ろうとするその姿は献身的で、けれどどこか、常に風にさらされているような不安を帯びている。二人の暮らしは小さく閉じているが、その閉じた空間のなかにだけ流れる時間は、外の世界よりもずっと澄んでいる。
    ことりの声は、救いであると同時に隔たりでもある。羽ばたきは自由の象徴でありながら

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    2026年02月15日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

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    小説家・小川洋子さんと心理学者・河合隼雄さんの対談本。

    最近、私のなかで対談本が、アツい。
    この本を読む前に、村上春樹さんと河合隼雄さんの対談本を読んだ。
    宙をただよう概念が、思いもよらぬところで、ふっとつながるような体験が、なんとも快感だった。
    その熱量をそのままに、今回この対談本を手にしたのである。

    個人的には、次の一節が、心に響いた。

    「世界中にあふれている物語を書き写すのが自分の役割だとすれば、私はもうちっぽけな自分に怯える必要はないのです。物語は既にそこにあるのですから。」

    小説家・小川洋子さんが、河合隼雄さんとお話しして得た気づきである。

    書くときに、人はものを作り出そう

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    2026年02月14日
  • ミーナの行進

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    主人公はごく普通の中学1年生・朋子。家庭の事情で伯父さんのもとで暮らすことになります。
    この伯父さん、飲料メーカーの社長でお金持ち。芦屋の洋館で過ごす1年はまさに絵に描いたような夢の暮らし。
    しかも母親がドイツ人の伯父さんはイケオジ、その息子・いとこのお兄ちゃんももちイケメン!シャンデリアのお屋敷、池のある広大なお庭…まさに少女マンガの世界。
    そしてもう一人のいとこ・ミーナは小学6年生。美少女でか弱くまさに蝶よ花よ。あ〜ハイハイ知ってますこういうの、やっぱマンガだね。と思いきや!

    ミーナはバリバリ関西弁、お屋敷の池に住むのはコビトカバ。そしてミーナはそのカバ「ポチ子」に乗って登校(!)するの

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    2026年02月14日
  • 続 遠慮深いうたた寝

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    久しぶりの小川洋子さんの文章。エッセイはもしかしたら初めてか。
    まず、書かれた媒体の幅広さに圧倒され。高校生に読書の魅力を伝えた文、想像力を働かせる登場人物たちへの愛、見知らぬ迷子への愛、そして本書のラストはアンネの日記を例に挙げつつ文章を書くということへの賛美。
    本のあちこちに著者の優しさ温かさを感じられた。洋子さんの愛情深さに触れ、だいぶ久しぶりに著者の名著たちを再読したくなりました。何から読もう。

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    2026年02月12日
  • NHK「100分de名著」ブックス アンネの日記 言葉はどのようにして人を救うのか

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    言葉は、人の心を救い、生きる支えになるもの
    そのことを強く感じた
    アンネにとって隠れ家での生活は、不安と恐怖に満ちた毎日だった
    その中で日記は、誰にも言えない本音を打ち明けられる大切な存在であり、アンネの心を救っていたのだと思う
    ユーモアを忘れず、時には厳しい言葉で感情をあらわすアンネの姿から、彼女が必死に生きていたことが伝わってきた
    また、反抗期の影響で母親とうまくいかなかったことなど、人間らしい一面を知ることができた

     私はアンネの話は知っていたが、実際に日記をきちんと読んだことがあったのだろうかと考えさせられた
    アンネが日記を書き残したからこそ、私たちは彼女の気持ちを知ることができる

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    2026年02月08日