小川洋子のレビュー一覧

  • 口笛の上手な白雪姫

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    冒頭、黒電話の描写で一気に引き込まれた。ほんとうに美しい文章。一つ一つの物語を、言葉を、時間をかけて味わいたいと思いつつ、ページを捲る手が止まらなかった。何度でも読み返したい。全部の話が好きだと言える短編集に出会えて嬉しい。読み終わった後この本を抱き締めたくなった。


     形容しがたい丸み、暗号めいたダイヤル、耳にフィットするよう計算された受話器のカーブ、可愛らしげにクルクルとカールするコード。そうした何もかもがどこかしらおもちゃめいていたが、僕は最初からそれが、ただものでないことにちゃんと気づいていた。
     とにかくその黒色は特別だった。一点の濁りもなく、濃密で、圧倒的で、気高くさえあった。

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    2026年01月15日
  • 博士の愛した数式

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    小川洋子の書くお話は決まってぴったりと終わる。果てしなく連綿と続いていくようで、しっかりとその1行前でも後でもない位置で、確かに終了の合図が打たれる。決まってじんわりと胸が温かくなる。

    小川洋子の文体は時に私たちや博士やルートたちを抱き寄せるようで、と思うと時に突き放すようで、そのバランスが美しい。それらを足し合わせると必ずイコールゼロになるようになっている。美しい。

    「本当に正しい証明は、一分の隙もない完全な強固さとしなやかさが、矛盾せず調和しているものなのだ」。彼女自身が書いたこの1文が、奇しくも彼女の書く文章のすべてを見事に言い表している。

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    2026年01月12日
  • サイレントシンガー

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    小川洋子の世界の捉え方をなぞると、いつも今生きている世界の見え方が少しだけ変わる気がする。
    きっとわたしが見落としてしまうもの、気付けないことを彼女は丁寧にやさしく拾い続けている。

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    2026年01月16日
  • 密やかな結晶 新装版

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    恥ずかしながら、これまで小川洋子さんの作品を読んだことがなかった。

    そして本作『密やかな結晶』が、25年も前に刊行された作品だということにも驚かされた。
    これほど時代を超えて読み継がれている理由は、読み終えた今ならよくわかる。

    物語の舞台となる島では、ある日を境に、人々の記憶から「もの」や「概念」が、ひとつずつ消えていく。

    島の人々は戸惑いながらも、その消滅を受け入れ、忘れるべきものとして手放していく。
    そこには秘密警察の存在があり、記憶を失わない者は連行されてしまうという恐怖が、常に影を落としている。

    この構図は、読みながら何度も、
    ナチス・ドイツ下で迫害を受けたユダヤ人の歴史を思い

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    2026年01月10日
  • 博士の愛した数式

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    数学は理系に分類されるが、突き詰めればそれは文学と言えるのではないかと思わされた。
    記憶が正常な頃の博士の人間性も知りたかった。

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    2026年01月22日
  • 海

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    誰にでもあるようなありふれた生活の一場面を切り取ったような短編集です。
    それでも無国籍で御伽話のように感じるところが、著者の本領なのでしょうね。
    変わりのない日常だと思っている日々の中にも、かけがえの無い何かが有るのだと思わせてくれます。
    日々の暮らしが愛おしくなるように生きていかねば。

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    2026年01月07日
  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    主人公は、幼少期の中でデパート屋上で死んだ象のインディラ、バスのマスター、そしてミイラとの関わりを通じ、「大きくなること」への恐怖を感じ、成長を止めた。
    そこから、からくり人形「リトルアリョーヒン」の中でチェスを指すようになっていき。。

    主人公含め、全ての登場人物に名前があてられてないが、それが気にならないほど丁寧な作品だった。
    様々な登場人物との出会いの中でも、主人公のチェスへの思いは、「その人自身」で、「海を泳ぐ」と比喩されているのは、とても印象的だ。
    山崎努氏の解説にもある通り、静かで優しい世界だった。

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    2026年01月01日
  • ホテル・アイリス

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    老翻訳家と少女の性。倒錯的でありつつも美しい愛の物語の結末は残酷で、とてもよかった。老翻訳家に躾けられた少女は、これから先、セックスで満たされることはあるのかな。

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    2026年01月01日
  • サイレントシンガー

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    またしても独特の世界観を体験させてくれた。おばあさんと主人公リリカは野辺に住む。無口で手話と異なる独特の指言葉を使って会話する野辺の人たちの売店で仕事をするようになる。その売店も独特。客と顔を見て接客することはない。そこに通い続ける料金所の男性と親しくなる。リリカはボイトレを受け、その講師から仮歌の仕事が紹介される。その仕事は音程通り、依頼者が望む通りに歌う必要がある。歌手のように上手く歌うことを求められることはないが、表に出ることのない影のような存在であり続けるリリカの慎ましさ、そしてたくましさがある。

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    2026年01月01日
  • 海

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    鳴鱗琴ってすごく美しい漢字。
    どれも小川洋子さんによる異国のお話しのように感じられて、小川洋子さんの描く世界観と文章がとても好きなんだなと新たな発見になった。
    自分の思い出にも題名をつけてほしいな。

    次に読みたい本も決まりました。

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    2025年12月30日
  • サイレントシンガー

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    「内気な人たちの会」を称する男の人ばかりの共同生活の場、「アカシアの野辺」で育った女の子リリカの話。リリカは歌を歌う。名もない、後世にも残らない、誰もリリカぎ歌ったとは気づかない空気に溶けていく歌を歌う。おばあさんと、介護人と、羊の毛刈り係と、歌の先生と、羊と人形たちと、料金係さんとリリカの、静謐を旨とする生活の物語。

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    2025年12月25日
  • ミーナの行進

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    ネタバレ

    小川洋子さんらしさはあるのだけど、今までに読んだ作品とは少し雰囲気が違う印象。ほかの作品で共通して感じるのは、薄暗くてどことなく埃っぽい空気感。『ミーナの行進』はもっと明るい陽だまりのなか、物語が展開していくようなイメージだった。

    日本とドイツ、歳の近い2人の従姉妹(ミーナと朋子)、広くて豪華な芦屋の洋館。少女たちが一緒に暮らしたのはほんの1年にすぎないが、2人にとって忘れることのできない思い出になる。華やかな容姿を持つがなぜか家に帰ってこない伯父さん、一人でじっと何かに耐えるようにウィスキーと煙草を燻らせる伯母さん。双子の妹と家族を哀しい理由(ナチスの迫害)で亡くした過去をもつローザおばあ

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    2025年12月18日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

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    知人のおすすめで手に取った、小川洋子さんと河合隼雄さんの対談本『生きるとは、自分の物語をつくること』。

    この本はまさに、私の「読み、聴く」という営みが深く意味づけられる内容でした。

    対談されているお二人は、小説家と臨床心理学者であり、「物語をつくる」という共通点をお持ちです。

    臨床心理では、人々が自分の物語をつくるのを手助けする。
    小説家は、意識的に物語を生み出し、それを読んで人が救われる。

    「もしや私がやっていることは、本を読むことで、物語を豊富にストックし、他者の物語化の材料として差し出すことではないか」と自らの行いに輪郭をもらえた心持ちです

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    2025年12月17日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

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    物語は既にそこにある。
    小川洋子さんにかけられる「なぜ小説を書くのか」という問いは、私が人に「なぜ山に登るのか」と問われる時と似ているものかあった。「なぜ登るのか」と聞かれるのは「なぜ生きるのか」と問われるのに等しい。説明できないからこそ、自分は山に登っている……。なんて、私における山の存在って、小川洋子さんにとっての小説くらい、知らぬ間にこんなに大きくなっていたのか、と驚いた。

    河合隼雄さんのトークセンスが光に光っていており、一気に大好きになった。今まで存じ上げなかったことがもったいないくらいに素敵な方。谷川俊太郎さんとバカ飲みしたエピソードだけでも面白かったのにその勢いは留まることを知ら

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    2025年12月17日
  • 耳に棲むもの

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    小川洋子さん大好きですが、読むのは久しぶり。
    静謐でフェティッシュな世界観が全開で、小川洋子さんだ!って感じの本だった。
    小川さんの「音」に対して持ってる感覚が好きなので、個人的にかなり満足度が高い。

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    2025年12月09日
  • 人質の朗読会

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    命は尊いものであり、生きていると色んなこと起こってくるけど、感動を大切にしたいと、この本を通して感じた。

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    2025年12月09日
  • 人質の朗読会

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    ネタバレ

    戦争やテロ、災害などでたくさんの人が亡くなる悲しい出来事が起きたとき、私たちはつい、その出来事の大きさを「量」で測ろうとしてしまう。十万人が亡くなった、数百万人が被害にあった――そんな数字のインパクトで、悲劇の大きさを捉えようとしてしまう。

    『人質の朗読会』は、冒頭で「テロによって人質に取られていた8名は全員亡くなった」と告げられるところから始まる。彼らの死後に発見された、朗読会の様子を収めた記録テープがラジオで放送されることになり……という導入で、読者は最初から「登場人物のいく末」を知らされたまま、物語を読み進めていくことになる。

    そこで強く感じるのは、「彼らは確かに生きていた」という、

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    2025年12月07日
  • 妊娠カレンダー

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    小川洋子さんの「博士の愛した数式」をあまり好きになれず、そこから疎遠になっていたけれども、これはとても良い!好き!妊娠カレンダー、姉に赤ちゃんができ、その母体の変化に翻弄される妹。悪阻という形で姉を捉えた赤ちゃん、でもその母体の変化ばかりでどこに赤ちゃんがいるのか不明、という妹から見た妊娠の不気味さ不思議さ。超おもしろすぎたー!あと新人っぽい、世の中に、は?を突きつけてやる!という気鋭さがある。

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    2025年12月07日
  • NHK「100分de名著」ブックス アンネの日記 言葉はどのようにして人を救うのか

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    アンネを慕い想い憧れている小川洋子さんが素敵。
    アンネが生還していてくれていたらと、私も本気で思いました。本当に悔やまれます。

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    2025年12月05日
  • サイレントシンガー

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    この本を読んでしずかでいること、それを自分に許せた。感情を何かで表現したり、人に分かりやすく話をしたり。そうでなくても、自分の中でしずかに感じること。あらたな道がひらけた気持ち。

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    2025年12月03日