小川洋子のレビュー一覧
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博士の愛した数式が良かったから他の読も〜と思って、小川洋子が好きという人からおすすめされて読んだ。短編です。けど、4つあるうちの3つは苦手だった。(冷めない紅茶は良かったよ)
はっきり言うと胸くそ系だと思う。でも、主人公の心の中で思っていることや自分が嫌悪する世界を見る視線の残酷さ、悲しいことに、認めたくないんだけど、それはどこかで知っている気がする。それを言語化して突きつけられると、だとして何?って言いたくなってしまう。自分の中に心当たりがあるが故にこうやって怒りのような気持ちが湧いてくるんだと思う。不快感、というか不愉快感?
はぁ〜、まじでここまで変態性を描かれてしまうと暗い気持ちになるよ -
Posted by ブクログ
ネタバレ消滅を受け入れていく人々に、悔しさからくる怒りのような感情が湧いた私はR氏側なのだと思う。
でも、年老いていつか記憶というものが不確かになって、身体が自分のものではないように感じた時、すべてを静かに受け入れていくというのもまた1つの方法なのではないかとも思った。
そうなるまで、消滅のない私は、忘れてしまったことを時々思い出しながら、記憶を大切に日常を送ろうと思った。この先の人生で何かを失ったら、「密やかな結晶」は誰にも奪えないことを思い出したい。
ナチスやコロナ禍の社会を元に込められた壮大なメッセージはもう少しじっくり考えてみたいと思う。 -
Posted by ブクログ
『博士の愛した数式』『猫を抱いて象と泳ぐ』『ブラフマンの埋葬』を過去に読んだことあり。ブラフマンがかなり純文系で、以降あまり手に取らず。久々に手に取った。
いい本だった。やはり作家の書く文章に限る。半端な訳者の文とは読みやすさが違う。
西の魔女よろしく、田舎での素敵な思い出が綴られた形式の作品。日常のちょっとした所作や会話に光を当てて、美しさを感じさせる文章だった。
ちょっと自分でもやってみる。
好きな季節というものが決まっていなかったのだが、今年で明確に「秋」になった。
仕事から逃げるように、金曜日の午前中に、メトロにのって江戸川の汽水域に。太陽光をキラキラと跳ね返す川面を眺めな -
Posted by ブクログ
内気な人々が集まり生活する集落で、赤ん坊の頃から育った女性が主人公。
一般社会の騒々しさに疲れ、言語を操ることなく、特別な指言葉で必要最低限のコミュニケーションをとる人たちの生活は、極端に慎ましく静かだ。
自分の色を出さない、どこにでも自然に溶け込んでしまう歌声をもつ主人公は、そのコミュニティが心地よく自分の居場所と感じている。
『新潮11月号』に、小川洋子と角田光代の対談があり、本作品を話題にしていた
興味深かったのは、作者が金光教の信者であるり、幼い頃は教会の離れで暮らしていたという点。作中の野辺のように、血縁に頼らず安心できるコミュニティに憧れがあると言う。
この作品に限らず、作者の -
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ネタバレヘンリー・ダーガー他、過去の人たちのエピソードから
インスパイアされ書かれた10の作品。
とても小川さんらしさに溢れた短編集。
母乳ババロアをこんなにさらっとそこに自然にむしろ必然的に
あるように書けるのは小川さん以外いない、と思います。
過去の人たちのエピソード自体も面白く
装丁もとても良かったです。断然文庫派なので
文庫待ちですが違う絵になってしまってたら
ハードカバーを買うかも。。
2025年10月7日再読
結局文庫を購入しました。
1度目のときに書いた「母乳ババロア」が書かれた作品で
「再読だわ…」と思い出しました。
誘拐の女王
主人公よりお姉さんのその後が気になります
散 -
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朋子が過ごした立派なお屋敷ではないけれど、子どものころ、一時期祖母の家で過ごした日々が、今でも色濃い思い出となっていることを、改めて感じました。
朋子にもミーナにも、伯父や伯母、ローザおばあさん、米田さんに小林さんにも、朋子の母にも、そしてポチ子にも心のどこかに影はあって、それでも、温かく過ごした日々を想像すると涙が滲みます。
そして、いつか来るお別れも、すべてが消え去ってしまうわけではなくて形をかえるだけなのだと思うと、私自身にも必ずいつかは訪れる様々な人との別れ、自分自身との別れ(本作を読んだあとでは、別れという表現は違う気がしますが)が、恐ろしいものではないのかも知れないなと思うこと