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Posted by ブクログ
冒頭、黒電話の描写で一気に引き込まれた。ほんとうに美しい文章。一つ一つの物語を、言葉を、時間をかけて味わいたいと思いつつ、ページを捲る手が止まらなかった。何度でも読み返したい。全部の話が好きだと言える短編集に出会えて嬉しい。読み終わった後この本を抱き締めたくなった。
「
形容しがたい丸み、暗号めいたダイヤル、耳にフィットするよう計算された受話器のカーブ、可愛らしげにクルクルとカールするコード。そうした何もかもがどこかしらおもちゃめいていたが、僕は最初からそれが、ただものでないことにちゃんと気づいていた。
とにかくその黒色は特別だった。一点の濁りもなく、濃密で、圧倒的で、気高くさえあった。両手に載るほどの大きさなのに、何を企んでいるのか分からないふてぶてしさと思慮深さを併せ持っていた。そこに一つの黒い塊があるだけで、階段裏の薄暗さが奥行きを増すようだった。
」
黒電話一つでここまで書ける小川洋子さんすごい。著者の作品は『博士の愛した数式』以来でしたがまた再読しようと思ったし、他の作品も読みたいと思いました。
Posted by ブクログ
8つの短編の中で『亡き王女のための刺繍』は小川洋子さんならではの妖しい毒っ気が美しかった。『かわいそうなこと』も良かったなあ。敏感なアンテナを大人になっても持ち続けている作者は日々の中で辛くなることはないのだろうかと心配になると同時に羨ましい。
でも、一番好きだったのは『一つの歌を分け合う』。同じ時代を生きる人たちは大縄跳びみたいに次々この世を抜けていく。だけどそれはおしまいじゃなくて、帰れる、焦がれた人たちに合流できるという優しい気持ちで越えられる一線。レミゼラブルから受け取れるうちのそんなひとつを、たった二十数ページで表せられるのがすごい。
Posted by ブクログ
奇妙なタイトルだけで、小川洋子さんの世界を想像してしまう。
とは云え、凡人の想像を遥かに超える世界が繰り広げられるのが常だ。
この一冊の短編8話も不思議な世界に誘われ、読書後には独特の余韻を楽しむことができた。
中でもお気に入りの一編を紹介。
⚫︎口笛の上手な白雪姫
公衆浴場の目立たない場所に、「小母さん」はひっそりと存在しながら浴場に同化していた。
入浴中の母親に代わって乳児を預かり、最新の注意力をもってあやし続ける。
その「小母さん」が、乳児だけに聴こえる音量の口笛を吹くと、乳児たちは口笛とその腕にすっかり身を委ねる。
がしかし、乳児の成長とともにいとも簡単に離れていってしまい、「小母さん」の存在は忘れ去られてしまう。
浴場の壁には深い森の絵が描かれていて、どうやらその世界を「小母さん」は知っているらしいのだ。
私は8話中最短の短編だった「口笛の上手な白雪姫」に魅入られた。
この「小母さん」と乳児の関係は、「善」だけが存在している。
しかし乳児の成長と共に純粋な「善」は影を潜めて行く。
そんな侘しさと悲しさが、繊細な雰囲気で綴られていた。
小川洋子さんの世界はちょっと複雑で物悲しさが伴うのだが、読書後には清涼感ももたらしてくれるのが不思議なのだ。
まあ、お話自体が不思議な世界を醸しているので、不思議な感覚を覚えるのは当然なのかもしれない。
この一冊も小川ワールドを十二分に味わえた。
Posted by ブクログ
みんな少しずつ偏っていてそれはある意味孤独なんだけど、寂しさよりも静かな強さ、したたかな美しさを感じる短編集。
物語たちそのものもとても素敵。特にそれぞれの余韻たっぷりな終わり方がいい。
ただ何より、心情や状況の描写、比喩のひとつひとつがときめく程美しくてたまらなかった。
「亡き王女のための刺繍」と「一つの歌を分け合う」が特に好き。でも選べないくらいどれも良かった。
色々な方が小川洋子さんの文章はうつくしいと言っている意味が、読み始めてすぐに理解出来た。
淀みなく流れるようで、でも確実にひとつひとつがきらめいていて虜になってしまう。
博士の愛した数式をかなり昔に読んだはずだけど、それ以外の著作にまだ触れたことがなかったから、
これから沢山小川洋子さんの言葉を浴びることができると思うと楽しみです。
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