小川洋子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
独特の世界観と丁寧な描写で読む手が止まらなくなる1冊。
本のタイトルにもなっている薬指の標本が特に好きでした。タイトルからしてグロ注意作品なのかな、と少し気構えて読み始めましたがグロさは感じられなかったので安心して読めます。
テンポが良く、描写が秀逸なのに難しい表現がないため読みやすい。ついつい読む手が止まらなくなる作品でした。
薬指の標本がどういう意味なのか、それを考えながら読んでいましたが私個人としては標本に興味を持ちながら、何よりも少し変わった恋を覗き見てしまった気がするようなお話でした。若いフレッシュな感じの恋愛ではなく歳を重ねたからこその少し重ためな愛の形を知れた気がします。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ読者を選ぶ内容だと思いますが
すごく主人公に共感しました
変わらない日々、どうしようもない嫌悪と、母親(他人)殻否定される主人公、だけど今現状の世界から出ていくことはできない少女
そんな少女はたまたま老人に恋をした、それが汚い罵り言葉から始まった事だが、きっとどこに彼女の希望があったのだと思う。
罪を抱え最後にしたいと考えていた老人、そして変えられないけど終わりにしたい認めて欲しいと望む少女。
二人が認め合える、愛し方というのは「破壊」しかないのかもしれない。
自分がどこか消えてしまいたい、破壊されたいと望んだ時に読むと救われた本です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ自分にはスッと入ってきてとても好きな話でした
一つ一つ思い出が消えていく街の中で、主人公は抗うすべもなく運命に誘われていく
消えることは「死ぬ」事を一緒だと
時代と一緒に主人公は消えていく
そして忘れることのできない運命を持つR氏は、地下へ幽閉されそして最後には外を飛び立つ。
まるで死者を想うのと同じ気持ちだと思いました。
思い出大事にしようと改めて思った一冊です。
余談ですが、
「アンネフランクっぽいな」と思って読んでいたら著者の小川洋子さん自体が、その本やそれを取り巻く歴史的事情を意識して書かれていたと後書きでみて、ストンと胸の中に落ちました。
たしかに言論の自由や抑制そう言う要素 -
-
Posted by ブクログ
ネタバレ2回読みました。1回じゃ正しく理解できなかった。
○妊娠カレンダー
単純に言ってしまえば復讐譚なのだけど、そんな単純な言葉で表現しきれないのがこの作品。
印象的だったのは、匂いに過敏になった悪阻中の姉に配慮して、主人公は庭で夕飯を作るのだが、食べられない姉をあざ笑うかのように、主人公は炊飯器の湯気が立ち上ってゆくさまを心安らかに眺め、大きな口を開けてシチューと一緒に「夜の闇」を飲み込むところだ。主人公は夜の闇とともに、心の闇を飲み込み自分のものとする。
かたや、悪阻が終わった姉は「彼女の存在そのものが、食欲に飲み込まれてしまったように」食べつくす。その姉のお腹には主人公がDNAを壊す(と信