小川洋子のレビュー一覧

  • 琥珀のまたたき
    琥珀の現在も過去を織り交ぜて描かれるストーリー構成。

    琥珀たち子ども三兄弟目線で話が進むので、おかしなこと(犯罪)が起こっていることに当人たちは気づかない。それが当たり前かのように起こる。
    ただ読者の私はこれが犯罪であることがわかるのでなんかやばい…とずっと違和感を覚える。

    母親の思考が結局ずっ...続きを読む
  • 生きるとは、自分の物語をつくること
    人間というのは物事を了承出来ると安心する。了承不可なことは人間を不安にさせる。下手な人はそういう時自分が早く了承して安心したくなる。質問する側が納得したくてなにか言ってしまう。質問する側が物語を作ってしまうのでそうならないように心がけるべし。
  • 犬のしっぽを撫でながら
    『博士の愛した数式』に関連したエッセイが最初に10本も続く。
    「数の不思議」の世界をもう一度感じることができた。

    次のテーマは「書く」ということへの想いやこだわり、ワープロや机といった書くために必要な物の話題などが語られる。

    そしてごく自然に「書く」行為を問い直すためのアンネ・フランクの足跡をた...続きを読む
  • 生きるとは、自分の物語をつくること
    小川洋子と河合隼雄のキャッチボールが見事だ。河合隼雄のダジャレやわかりやすい例えが実に効果的だ。聞くことを専門にしている河合隼雄の手法が、ツッコミを入れて楽しんでいる。小川洋子は『博士の愛した数式』を読んで、なんとステキな文章と体温のある物語を書くのだろうと感心した。それ以降、あまり注目していなかっ...続きを読む
  • 薬指の標本
    「薬指の標本」と「六角形の小部屋」の中編二作を収める。「薬指の標本」は、標本室という奇妙な職場が舞台で、火傷の痕や音楽まで標本にする中、わたし」は自分の薬指を標本にしようとする。「六角形の小部屋」には、一人で入って何かを語る六角形の語り小部屋が登場する。やがて「わたし」はその魅力に惹かれてゆく。不思...続きを読む
  • 妊娠カレンダー
    第104回芥川賞受賞作の「妊娠カレンダー」と受賞後に書いた「ドミトリィ」、「夕暮れの給食室と雨のプール」を納める。「妊娠カレンダー」では妊娠した姉を不思議なものを観察するように見つめる妹が、防かび剤入りのグレープフルーツのジャムを作り続ける。「ドミトリィ」では、かつて暮らした学生寮が入居者の失踪を機...続きを読む
  • NHK「100分de名著」ブックス アンネの日記 言葉はどのようにして人を救うのか
    知ってるけど読んだことのない、アンネの日記。

    読んだあと、今世界で起こっている戦争を思うと、複雑な気持ちになった。

    自分は同じ場合に、こう強くあれるか、とも思う。
  • 洋子さんの本棚
     平松洋子さんと小川洋子さん、2人の洋子さんが、各章のテーマに沿った心に残っている本を挙げて対談する対話集。本の紹介のようにもなっていて、読みたい本リストがまた増えました。
     特に心に残っているのは、「人生のあめ玉」の章。親と子どもとの関係で、子どものかわいらしさの記憶、そう言うものが5つでもあれば...続きを読む
  • 約束された移動
    "移動する"物語六篇からなる短編集。職業、年齢、性別も様々な人々が登場する。かつては有名だったけれど落ちぶれてしまったハリウッド俳優とロイヤルスイートの客室係。元市民病院の案内係と孫娘。元迷子係と遠い親戚の少女。虫博物館で出会った男女。村で唯一の託児所の園長。バルカン半島の小国の作家とその希少言語の...続きを読む
  • 夜明けの縁をさ迷う人々
    「曲芸と野球」「イービーのかなわぬ望み」
    「パラソルチョコレート」「ラ・ヴェール嬢」が好き
    小川洋子さんらしく野球に始まり野球で終わる9つの短編集だった
    特別な寂しさの風が通りすぎてゆくような
    心もちになる
    月虹をみるひとたちの物語
  • 薬指の標本
    最初から最後まで、不思議な小説だと感じました。
    音や、きのこや、骨や、傷が標本になり、その一方で靴は脚にぴったり馴染みました。
  • 夜明けの縁をさ迷う人々
    『女が死ぬ』松田青子さんや今村夏子さんが好きな人にはオススメできる作品。文章はお上手でいかにも純文学的な雰囲気なのだけど、けっこうシュールなお話が多くて思わずくすっと笑ってしまった。

    一番笑ったのが『再試合』という作品。数十年ぶりに甲子園に出場することになったとある高校に通う女子高生が主人公で、彼...続きを読む
  • 密やかな結晶 新装版
    結末としては救いのない物語だった。小川洋子さんの物語は何か悪い状況が降りかかってきてもありのままを受け入れるような物が多いように感じる。

    すごく感じることはいろいろあるがR氏不倫すなよ
  • 人質の朗読会
    海外で反政府ゲリラに襲撃され人質になった8人がそれぞれの物語を綴り行った朗読会の話。緊迫した状況の中紡がれる物語が胸に響く。空気感が好きで静かに流れていくこの朗読会がずっと続いてほしくなる。もし私がこの場にいたら、語れる物語はあるのだろうか。
  • 密やかな結晶 新装版
    長濱ねるちゃんのエッセイを読んで、購入。「糸」ぶり2作目。
    一週間という、十分すぎる時間をかけて読みました。

    洋画を観ているかのような小川洋子さんの文体。
    ページをめくる度に物語に傷をつけてしまわないか…と不安になるほどの繊細すぎる本作。

    しばらくは、「言葉」がわたしにとって一番消滅してほしくな...続きを読む
  • 海

    素敵な短編集。

    一つひとつの作品世界に引き込まれていきますよ。

    「たとえ一瞬でも自分のことを思い出してくれる人がいるなんて、うれしいじゃありませんか。」
    本も同じで、私のなかにまた素敵な言葉と物語、作者の想いが刻まれいつでも思い出せる幸せを感じさせてくれました。

    ぜひ〜
  • からだの美
    6ページの文章と1枚の写真から成る16編のエッセイで、それぞれが完全に独立しているので好きな所から読める。
    文章は短いけれど視点が鋭くて無駄がなく、エッセンスがギューッと濃縮された感じだ。

    最初は「外野手の肩」…外野手とはイチローのこと。
    外野からホームベースへの返球を見て、これだけの表現ができる...続きを読む
  • 薬指の標本
    「薬指の標本」と「六角形の小部屋」。どちらも水晶のように透き通った文体で生々しさこそ無いが、重たくて目を背けたいものがしっとりと染み込んでくるような気がする。密やかなおとぎ話のような二篇だった。
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    楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡……。人々が思い出の品々を...続きを読む
  • 余白の愛
    ああー…読み終わってしまった…
    Yに最後に速記をしてもらった時のような終わりを見たくない気持ちがあって、残りのページを捲りたくなくてなかなか読み終われなかった。
    いい意味で薬指の標本のような小説だった。薬指の標本は記憶を消してもう一度読みたい小説なので、読み進めていくたびに懐かしさと新しさをいっぺん...続きを読む
  • 密やかな結晶 新装版
    存在と消失ってなんだろ…って考えてた そこにあっても認識できなかったら存在してるとはいえないのかもしれないし、そこになくても想いを馳せることができたら消失と言わなくてもいいのかもしれない