小川洋子のレビュー一覧
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どの本も読みたく&読み直したくなりますが、中でも武田百合子「富士日記」と「山月記」。
「100万回生きたねこ」の章で、佐野洋子さんの言葉として「どんなに幼くして死んだって、それはその子の人生なのよ。それで完結しているのよ」と担当の出版社の人が綴っている、と紹介していますが、ほぼ同じことを確かサルトルが年若い友人が亡くなった時に言っていた、と私は記憶しているのですが。私の記憶が違っているのか、それとも洋を越え時間を越えて、佐野洋子さんとサルトルが同じことを思っていたのか。
いずれにせよ、「100万回生きたねこ」は「生と死を全うした存在として人を見送る」こと、そして生は死を含んで成り立っているこ -
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ネタバレ[ 内容 ]
人間が虫になることよりも、さらに不気味な不条理を描いている『変身』(カフカ)。
言葉では書けないことを言葉で書いた『風の歌を聴け』(村上春樹)。
「自分のために詠まれたのでは」と思える歌が必ずある『万葉集』…。
小川洋子さんと一緒に、文学の喜びを分かち合いませんか?
本書では未来に残したい文学遺産を52編紹介します。
若い方にとっては最高の文学入門。
「本の虫」を自認する方にとっては、新たな発見が必ずある作品論です。
人気のFM番組「Melodious Library」、待望の書籍化。
[ 目次 ]
第1章 春の読書案内(『わたしと小鳥とすずと』金子みすゞ-一個人の感情を越えた -
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ゆっくりとした本が読みたくなってチョイスしました。
ずっと積読していたのですが。
アンネフランクにまつわるエッセイは
『アンネ・フランクの記憶』が蘇ってきて
涙腺がゆるみました。
とにかく静かで、壊れ物を扱うように
大切なものを取り出してくれるような文章であって、
その文体と相まって「失われたもの」が描かれるので、
どんな文章でも読んだ後に失くしたものを思って
泣きたくなります。
確か『アンネフランクの記憶』を読んだのは
大学4年の夏、恐山に行く最中で、
大湊線で…というところまで、こと細かに思いだせます。
緑なすススキ畑と海の中をひたすら電車が進んでいったなあという
時間とか情景とか、不 -
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心と響き合う読書案内 (PHP新書)
(和書) 2009年09月19日 08:28
小川洋子さんがラジオ番組で本を紹介ものをエッセイ風にまとめたものです。
50冊ほどの本が取り上げられています。
このうち私が読んでいるもの、知識があるものを羅列してみました。
教科書的な作品。
「山月記」中島敦
「羅生門」芥川龍之介
「檸檬」梶井基次郎
「こころ」夏目漱石
「銀河鉄道の夜」宮沢賢治
「走れメロス」太宰治
「たけくらべ」樋口一葉
古典文学。
「おくのほそ道」松尾芭蕉
「万葉集」
「枕草子」清少納言
現代作家の作品。
「蛇を踏む」川上弘美
「窓ぎわのトッ -
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一冊の本を読んで、この人の書いた本をもう一度読み返したい、それもすべて、なんて思える小説家は少ないのではないだろうか。やっぱり好きだなぁ、ぐらいで本を閉じることはあっても、そうそうこのかんじ、もっと味わっていたいのにもう終わってしまったものだから、別のあの世界にも飛び込みたい、と思えるような。小川洋子は自分にとってそういう小説家だ。
そもそも、わたしは好きな小説家のエッセイを読むことがほとんどない。好きではないのだ。エッセイストで小説も好き、ならばあるのだけれど、好きな小説家のエッセイを読むと、だいたいがっかりしてしまう。そして、ああこの人の書いた小説が読みたいのに、と思うのだ。だから、 -
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アンネ・フランクという女の子が少し前、この空の続きの中で生きていた。小川洋子さんはひそかな心の友人でありつづけたアンネの、彼女の息づかいをしっているひとたちを訪ねていく。
アンネは片方の髪がいつもうまくいかなくて気にしてた。
隠れ家の階段をマルゴーと足音をしのばせて登る。
幼い女の子がこっそり生きなければならなかったことを、ミープさんはよく憶えている。
一家の世話をしつづけたミープさんがアンネ家にドイツ軍が踏み込まれたあと、守るようにアンネの日記を抱えてからふと化粧ケープもなにげなく一緒に助けた。ミープさんは手で触れてそばに置いている。アンネの手にしていた化粧ケープを小川さんが手で触れて感 -
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薄水色の妄想の世界をずっと歩かされているような気分になる。官能的なものであれ、少し笑えるものであれ、すごく淡くて遠い。小川洋子といえば薄気味悪い表現で、わたしはそれが大好きなんだけど、この短編はそのエッセンスは少し弱いかな。
「バタフライ和文タイプ事務所」は読んでいて感嘆の息を漏らすくらい好きだった。薬指の標本と同じ空気。
全体として、純粋な者との交流というのが一貫してあったと思う。「海」の弟、「風薫るウィーンの旅六日間」の琴子さん、「缶入りドロップ」の子ども、「ひよこトラック」の少女…。「バタフライ和文タイプ事務所」と「ガイド」はメインの登場人物2人ともに純粋さを感じた。その純粋さには現実 -
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「博士の愛した数式」と過去形になっているように、また"私"が時々回想するように語るのでどこかの時点で博士なる人物がいなくなることは予想していた。でもその消失は心に重く刺さるものではなく、流れの中の必然と受け止めることができた。
日々の彩りをこんなに鮮やかに描けるものかと感嘆してしまう。数字を通したつながりは彩りに満ちたものだった。残念ながら私は数字に弱く、計算なんてもってのほかな人間であるので計算式や数字の関係性について、美しさを見出すことが出来なかった。そしてまた野球に対しての情熱も数字と同じような熱量である。それでも博士と私、ルートのと間にあった偶然の数字達はかけがえの