小川洋子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ「あの子」の「死」から子どもたちを守り生きていくため、逃げるために壁の内側に閉じ込め、「生」の息付く童話の世界かのように仕立てたはずなのに、家の中と庭には「死」の香りが満ちていた。子どもたちは父親の作った図鑑という時の止まった本の中にのみ存在し、庭には様々なものを「埋葬」する。オパールの王冠と死体、茸、ママのツルハシ、ジョーからの手紙…ただの儀式であったはずだが、気付けば過去のものや見たくないものを葬り去るためのものとなった。
オパールは行方知れず、瑪瑙は里子へ行き生き別れ。ママは死の香りから逃れられず、あるいはこちらの世界に戻れず。琥珀は左眼の中に当時と「あの子」を閉じ込めて愛している。
美 -
Posted by ブクログ
小川洋子の書く文章がやっぱり好きだ、の再認識
涼子がルーキーに初めて会った時に感じた、彼がいる世界といない世界の落差をもし前から伝えていれば彼は生きてくれたんじゃないだろうか
正解不正確を求め続けられてきた彼が、そんなもの関係なく存在してくれていることを伝えられていたら
涼子の視点なのだから多少なりとも彼女に都合の良い脚色があるのだろうと考えても彼はしっかり彼女を愛していたと思うし、だからこそ身体だけでなく言葉もかけて欲しかったのだと考える
終盤で涼子があの頃のルーキーと会話を交わす場面がとても心苦しい
涼子がいつかまたあの香水瓶の蓋を開けられる日が来て欲しいと願ってしまう -
Posted by ブクログ
遠い異国の地にて反政府ゲリラにより人質となった人々が、捕らえられている間に退屈な時間を潰すため、それぞれの過去にあった印象的な話を語り合う。犯人の動きを探るために仕掛けていた盗聴器に、その録音テープが残されており、数年後ラジオにて放送されることとなった。
その八人の人質と、実際に盗聴を行っていた特殊部隊の兵士による9編のお話。
異国の地で捕らえられ、いつ日本に帰れるか分からない環境の彼らが語るお話なので、さぞや悲しいものかと思いきや、日常にどこかしらでありそうなエピソードが語られる。
子どものころに怪我をしたおじさんに会った話、若いころに住んでいた大家さんとの交流、公民館の談話室の話、謎のぬい -
Posted by ブクログ
日本に亡命したロシア人の女性が、突然に先立った夫の遺した膨大な剥製のコレクションと広大な洋館での暮らしを、姪となる「私」が語り継ぐ物語だ。
「私」の伯父とロシア婦人ユーリの二人は、伯父が51歳、ユーリが69歳の時に結婚した。
相思相愛だった二人だが、伯父は突然亡くなってしまう。
一人残されたユーリ伯母さんは、膨大な数の剥製に囲まれながら、その一つ一つに「A」の刺繍をして暮らす日々だった。
何故に「A」なのか、「私」を含めて誰もその理由を知らない。
「私」の父も突然亡くなり、大学生だった私は伯母と同居して身の回りの世話をする代わりに、伯父の遺産から学費を出してもらうことにした。
暮らしている洋 -
Posted by ブクログ
ネタバレ博士は自分だけの世界観を強く持っている人。その世界は時に周囲とのコミュニケーションを遮る結界のようにも見えるが、周りの人たちは博士自身だけでなく、その空間ごと受け入れ、愛しているように思えた。その温かい関係性がとても印象的だった。
また、「私」と博士を繋ぐ友愛数の存在も心に残った。数字は本来、言葉よりも冷たく機械的で、感情とは遠いもののように感じていた。しかしこの作品では、数字がむしろ人と人との絆を深める役割を果たしている。感情だけではなく、絶対に変わらない数学的な根拠があるからこそ、二人の繋がりがより特別で温かいものに感じられた。数学が苦手な私でも、博士が語る数式の美しさや、数字に宿る特別 -
Posted by ブクログ
六遍が収録。どのお話にも
特別な才能がある人がでてくる。
前回、「完璧な病室」を呼んだばかりで、
重たい気分だったけど優しいお話が多くて良かった。
六遍とも、毒を持つ人より優しい人が多い気がした。
ちゃんと自分の幸せを自分のやり方で守れる人たち。
完璧な病室は逆に、
自分の幸せのために周りを巻き込んで
自滅する人たちが多かった感じがする。
最後のお話で、絶滅した鳥たちがデザインされた
メリーゴーランドに乗るシーンが素敵だと思った。
古びたメリーゴーランドとか、髪のレースとか、
自作のドレスとか。そういう些細なことで
幸せになれる人たちを見守る安心感。
約束された移動
ロイヤルスイートの -
Posted by ブクログ
ネタバレ現代には数多くの文学賞が存在するが、その中で唯一、本屋大賞は全くと言っていいほど外れがない。読み手、買い手が評価する文学賞ならではだと思う。当たり障りの無い万人受けする作品と言ってしまえばそれまでだが、皆が面白いと思える作品はそれだけで価値がある。
この作品はその本屋大賞元祖ということで、数学者といういかにも取っつきにくそうな主人公像を、違和感なく、かつ美しく文章に溶け込ませており、すべての人がのめり込める作品になっていると思う。
初版発行から二十年以上が経過し、登場人物の会話等には時代を感じさせるものや、もはや現代の若者は知らないのではないかという内容も散見されるが、それでもなお多くの -
Posted by ブクログ
カズオ•イシグロ氏の日の名残りの作品に近い人の深さを感じる作品だった
他の誰も入り込めないようなまるで本当に海の中で物語が進んでいくそんな静けさでとても神秘的な催しのように感じる作品
物語後半、猫と鈴のシーンがあるのだがとても尊さみたいなものを感じた。古い鈴の音を久しぶりの遠慮深いと表現し相棒につけてあげるのだ。
時に難しく感じる作品でもあったように思う、内容がではなく、受け止める自分側が漂う物語の面白さを飲み込めれてない点にあった。少年が叫びたい場面に叫んで欲しかったし、我慢が続く場面に何か助けを示してほしかったし、インディラやミイラ、家族はいたものの孤独感が強く映り、またチェスが緩和してい