小川洋子のレビュー一覧
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最初に読もうと思ってから20年以上経った不思議な縁のある小説。
何度か人から勧められたが、数学が嫌いだったのでなんとなく敬遠していた小説。
第一回本屋大賞。
読んでいたとてもノスタルジックで幸せな気持ちになった。
今読んでもそこまで作中の生活が昔過ぎることもなく違和感は少ない気がするが。。
基本的には終始やさしい。ただ随所にみえる悲しみの要素が登場人物の背景に隠されていて、それが作中でクローズアップされることもないためやさしさのスパイスのようになっている。
この悲しみの部分に物語の主軸を置かなかったため、博士は最初から最後までまったくブレないキャラクターとして読み手に愛されるようになっているのだと思う。 -
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孤独を育てる。
孤独が悪いこと、解消するためにはどうすればいいか、という議論が多くなされている今、この考え方は目から鱗だった。
愛が絡むとややこしくなるというのもその通りだなと。
この人のために頑張ろうというのは大事なことなのだけれど、それが裏切られたと感じた時、とてつもなく虚無感に襲われ、傷つく。
でも、愛がないと人間的な喜びは得られない。
この矛盾の中で私たちは日々生きているのだと思うと、人間はひとりで生きれないのだと改めて実感させられる。
◾️心に残った文章
良い孤独を持てることが、人間の自由なんだと思う。
孤独を消すよりも、孤独を持てるようになること。
孤独をどう引き受けるか、どう安全な形にするか。
孤独を育てる。
繋がりを経て、言葉を経て、怒りや愛を経て、それでも最後は自分の部屋に戻り、そこで静かに何かが熟すのを待つ。
その時間を持てるかどうかが人間にとって決定的なのだと。
職場でも家庭でも愛が絡むとややこしくなる。
部下が上司のためにと必要以上に頑張ると愛が強すぎると傷つきも満ち溢れてしまう。
愛が絡まなければ人はもっと機械的に、効率よく生きられるのかもしれない。
でも実際はそうならない。
職場でも家庭でも教育でも、愛のようなものが介入した時に、関係はややこしくなる。
けれどそのややこしさの中でしか、人間らしい喜びや人間的な成長ができない。
愛の問題と孤独は接続している。 -
Posted by ブクログ
この本は小説家の小川洋子さんと
臨床心理士の東畑開人さんが
「孤独」について語り合った内容が書かれています。
「孤独」には種類があり、それぞれの「孤独」について
2人が選んだ本を元に語り合っていくのですが
「孤独」の種類による違いがとてもよくわかりました。
語り合う本の1つ、『ガラスの動物園』において
登場人物のジムに対する印象が2人の中で違いがあったのが
面白かったです。ローラのユニコーンのくだりも良かったです。
「孤独」は全員が持っているもの。
深く知る事で自分、家族、他者それぞれの
繋がりと大切さがより理解できると
この本を読んで分かりました。
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小川洋子さんの世界観を存分に堪能できる作品です。静かで寂しげな空気感をまといながら、単なる暗さや哀しさとは異質の、凛とした厳かさや美しさを感じさせる物語でした。どこまでも優しく、ただただ余韻に浸れます。
小さなアーケードの商店街が舞台で、10編それぞれに商店の店主と客のエピソードが描かれる連作短編集です。1話ごと話は完結しますが、商店が連なるように少しずつ重なる構成です。
各商店、扱っている物、店主、訪れる客など、失われた命や過去の断片が紡がれ、全てアーケードに収束されていきます。アーケードの大家(父)の娘が語り部となり、生と死が交錯する世界が、思い出の痕跡を辿るように描かれます。
「最果て」は、華やかさや賑わいとは真逆で、行き止まりを象徴する場所なのでしょう。生と死、現実と幻想の境目が曖昧な場所は、死の気配がありながらも敬いと優しさにあふれ、最後は父も愛犬も語り部さえも取り込んでいくのだと解釈しました。
小川洋子さんが創り出す世界は、まるで深い森のように静寂さと神秘さを連想させながら、ときおり優しく差し込む木漏れ日など、森の豊かさを実感させてくれます。小川さんが描く物語に引き込まれる理由は、この辺にあるのだなと改めて思いました。 -
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小川洋子さんが作り上げた世界を堪能できる作品。それは小さなものと静寂のなかでかすかに聞こえる音をすべて表現するかのように思えた。
元幼稚園で暮らす私。講堂にガラスケースを運ぶ、歌でしか話せないバリトンさん。遺髪で竪琴の弦を作れる美容師。亡くした子どもを持つ人が自らのために行うグリーフケアを、静かに優しく支える様子がえがかれていた。
そして亡くなっても心のなかで成長していく子どもへの愛情が伝わってきた。「一人一人の音楽会」は一人一人にとって何よりも大切で愛おしい時間だということも伝わってきた。
「質素な親子工作展覧会」も「あの子の結婚式」にも温かいものをかんじた。
子どもは一人も出てこないのだけれど、子どもを思う気持ちに満ちた静かな物語。この世界観がとても好き。 -
Posted by ブクログ
奇妙なタイトルだけで、小川洋子さんの世界を想像してしまう。
とは云え、凡人の想像を遥かに超える世界が繰り広げられるのが常だ。
この一冊の短編8話も不思議な世界に誘われ、読書後には独特の余韻を楽しむことができた。
中でもお気に入りの一編を紹介。
⚫︎口笛の上手な白雪姫
公衆浴場の目立たない場所に、「小母さん」はひっそりと存在しながら浴場に同化していた。
入浴中の母親に代わって乳児を預かり、最新の注意力をもってあやし続ける。
その「小母さん」が、乳児だけに聴こえる音量の口笛を吹くと、乳児たちは口笛とその腕にすっかり身を委ねる。
がしかし、乳児の成長とともにいとも簡単に離れていってしまい、「小母さん」の存在は忘れ去られてしまう。
浴場の壁には深い森の絵が描かれていて、どうやらその世界を「小母さん」は知っているらしいのだ。
私は8話中最短の短編だった「口笛の上手な白雪姫」に魅入られた。
この「小母さん」と乳児の関係は、「善」だけが存在している。
しかし乳児の成長と共に純粋な「善」は影を潜めて行く。
そんな侘しさと悲しさが、繊細な雰囲気で綴られていた。
小川洋子さんの世界はちょっと複雑で物悲しさが伴うのだが、読書後には清涼感ももたらしてくれるのが不思議なのだ。
まあ、お話自体が不思議な世界を醸しているので、不思議な感覚を覚えるのは当然なのかもしれない。
この一冊も小川ワールドを十二分に味わえた。