小川洋子のレビュー一覧

  • 海

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    短編でも、密度が変わらない。長編を読んでしまったかのような濃密さがある。
    『ひよこトラック』は特にお気に入り。

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    2026年02月14日
  • 妊娠カレンダー

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    ほっこりしない、ほのぼのしない、じんわりしない、ほろりとしない、ぽかぽかしないこんな感じの文章が、私の陰に寄った感情にピッタリとくる。

    無機質なのに美しい文章。
    現実からほんの少しずれた世界。
    感動を求めない静寂。
    無理に明るい場所へ引っ張り出されない安心感。

    この世界観に浸り過ぎると、抜け出せなくなる怖さもあるね。

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    2026年02月14日
  • やさしい訴え

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    ネタバレ

    瑠璃子の嫉妬が生み出した物語。

    新田は薫を大事で愛していて、薫も新田を大事で愛しているとしても。
    2人に恋愛的な描写はなく、それは、精神的な繋がりや師弟愛のようなものと私は感じたけれど、瑠璃子の目を通すとものすごくドロドロとした嫉妬の感情が乗っかってくる。

    仕事なのに、犬を脅しに使って、新田に薫と一緒に行かないでって怖い。
    瑠璃子、マジ怖いよ。
    あんな行動されたら、冷める。
    それまでは、新田も「瑠璃子ってステキ」だったと思うよ。
    なのにねー。
    残念だ。

    夫と揉め事が絶えなかったというのは、はじめは夫の不倫が原因だと思っていたけれど、度重なる揉め事が不倫に至らせた可能性あるね。暴力ふるって、最悪な夫には違いないけど。
    そういえば、はじめのオムレツのところに、瑠璃子の妄想的な性質がしっかりと描かれていたじゃないか。

    思考は物語。

    霊媒師のおばあさんの自叙伝はなかなか破天荒だったけれど、それもおばあさんの思考から作り上げられたストーリーなんだろうな。
    事実と答え合わせすると、全然違ってんだろうね。

    薫の目を通した物語も読んでみたい。
    実は薫も嫉妬に狂った物語だったら面白い。


    グラスホッパーの奥さんがいい人で癒される。
    私にもグラスホッパーの奥さんがいて欲しい。


    小川洋子さんの物語らしく、最後は何ともいえない喪失感で終わっててよかった。
    瑠璃子は、これから仕事頑張れ。

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    2026年02月13日
  • 耳に棲むもの

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    タイトル通り、「耳に棲むもの」、静寂の中にある音を聴く人々の物語であった。「骨壷のカルテット」「耳たぶに触れる」「今日は小鳥の日」「踊りましょうよ」は補聴器のセールスマンを軸に描かれているが、最後の「選鉱場とラッパ」にだけセールスマンが登場しない(ながらにも関わりがあることが直前の「踊りましょうよ」の中で記されている)のが少し不思議である。
    いずれも小川洋子作品らしく、静謐の中に意思や言葉を持たない生き物·体の一部、あるいは無生物たちの声を感じられる。

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    2026年02月12日
  • サイレントシンガー

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    読みながらタイトルの意味を考えていた
    〈サイレント〉とは
    言葉を必要としない「アカシアの野辺」の人たち
    自分が歌っていることを知られていないリリカ

    結末に驚愕
    こんな終わり方なんて!

    料金係さんのリリカへの気持ちは本物だった?
    「アカシアの野辺」の興味があってのような気もする

    リリカの歌
    聞いてみたいな

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    2026年02月10日
  • 続 遠慮深いうたた寝

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    静かな暖かさに満ちた優しいエッセイ。小さなものへの愛や、弱いものへの思いやりが感じられる。また、学生時代の鬱屈した気持ち、当時の自分への優しさにも共感。上からではない観察眼による洞察が、あの優しい物語に繋がっているのかも。

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    2026年02月10日
  • 薬指の標本

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    何か現実には存在しない幻想的なものを通して、メタフォリカルに何かを伝えようとする作風で、とても好きでした

    取り扱っているテーマ的には、六角形の小部屋の方が好きだった

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    2026年02月06日
  • とにかく散歩いたしましょう

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    小川洋子さんが新聞に月一連載していたエッセイを一冊にまとめた本
    表紙にもいるラブラドールのラブとのお話が印象的な一冊です

    ・本の模様替え
    一度読んだ本でも中身をきちんと覚えていないことはもちろん、何なら内容を改変して覚えてしまっていることもあるよね、というお話
    『走れメロス』のストーリーを180度反対に覚えていたお話がおもしろかった。

    ・キャベツ共有の和
    家庭菜園を始めた小川さんが作物につく虫やナメクジを観察して気づいたことを書かれたお話
    自分のことを思い返すと子供の頃は虫が平気だったのに、大きくなるにつれて苦手になり、最近また平気になりつつある。じっくりと虫たちの動きを観察する余裕が自分の中にできたのかも。そうしてしゃがみこんで自分の足元で繰り広げられている攻防を見るのが楽しい思った体験を思い出した。

    ・ブヒ
    小川洋子さんがハダカデバネズミの研究室がある理科学研究室を訪れたお話
    ここに出てくる岡ノ谷一夫先生の本を読んだばかりだったので「タイムリー!」と思った。本を読んでいると、全然関係ないと思っていたものが急に結びつく瞬間があって楽しい。

    ・自らの気配を消す
    校閲者や翻訳者についての考察
    「役目を終えれば、何の痕跡も残さないまま静かに立ち去る」けれど、確かにそこに存在している仕事、だなと感じました。同じようなことを宮田ナノさんの「すてきな退屈日和」でも読んだので余計にジーンときました。

    ・早くお家に帰りたい
    「帰る」ということに関してのあれこれ
    「明日は一日、どこへも出掛けなくていいな、と思いつつ寝床へ入れる夜は、心が安らかですっきりしている」という一文にものすごーく共感。これが行き過ぎて、私は外で働くことが困難になったため在宅で仕事をしている。たまに出かける用事があるとワクワクする気持ちと「早く帰りたい」という気持ちが出発前からせめぎあっている。私は坂口安吾の「帰宅感」にはあまり共感できないよう。

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    2026年02月05日
  • 人質の朗読会

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    人質として、いつ処刑されるか分からない状態の中で、自分の人生の一部を文章にして朗読し合う話です。
    緊迫した状況下で、ほのぼのした話、切ない話、楽しい話が発表します。
    牢獄の中で生きる糧を見つける人質の心情を上手く掴んでいて、その発想が面白かったです。

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    2026年02月02日
  • 人質の朗読会

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    こんなにも生と死、いつも通りの生活の有り難みを感じられる小説はあまり読んだことはありません。

    極限のなか感謝、後悔、恐怖、様々な感情を押し殺して朗読会を行います。

    8人の人質は偶然その場に居合わせただけで、皆それぞれの生活があり、家族や友人がいる。年齢や性別も違っているお話がとても身近に感じられます。9人目の、通訳の政府軍兵士が語った「彼らは祈りにも似た行為であった」の一文には涙が出そうになりました。
    悲しいけど、素敵な短編小説です。

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    2026年02月01日
  • ブラフマンの埋葬

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    どんどん残りのページが減っていく。
    ほとんど無くなるページに焦らされる。
    紙の本で読む良さを味わった気がする。

    結末は、そうなりますか。
    小川洋子さんの静かな物語。

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    2026年01月31日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

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    「物語」は今年少し強めに関心を持ってみようかなと考えているテーマの一つ。まずは導入ということでこちらの本から。何の気なしに手に取りましたが河合隼雄さんの最後の対談本で、しかも途中で終わってしまっていたものだったのですね。『ブラフマンの埋葬』を題材にした会話はぜひ読んでみたかったので残念ですね。
    物語というものが持つポジティブなパワーについては既に学んでいたり実感している部分もあるのでそういう意味では心理師としての河合さんのいう物語の効用についてはまぁそうだよね、という感じで、むしろ小川さんの物語ることに対しての使命感のような感覚や創作についての感覚が面白かった。今後探っていきたいのはむしろ物語の力が持つ負の効能や影響面について。それがあったとして物語の効能を使わないということはそもそものホモサピエンスとしての認知の構造としても無理だと思うが、考えどころや工夫のしどころについて色々な観点から考えてみたい。

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    2026年01月28日
  • 続 遠慮深いうたた寝

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    前作に引き続き、小川洋子さんのエッセイは
    なんだか心地良くて不思議な楽しさがある。

    月、おじいさん、通りすがりの人、
    子供のゴリラ、少年、
    フィギュアスケートの高橋大輔も出てくる。

    本の紹介は実際手に取ったことがない本が多くて、なかなか難しそう。。
    でもいくつかメモはしました。

    真冬の眠れない夜にホットミルクを飲みながら
    読むのがピッタリ。静かで穏やかで染み入る言葉たちに囲まれて私もうたた寝。
    なんとも幸せな読書時間でした。

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    2026年01月29日
  • 貴婦人Aの蘇生 新装版

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    ネタバレ

    もしかしたら伯母はアナスタシアの使用人で、革命によって理不尽に命を奪われた彼女を悼むために自らがアナスタシアと名乗り、剥製のように永遠を生きようとしたのではないか、、途中まではそのような想像を巡らせながら読んでいた。しかし、作者の静謐な文章や生々しさをも美しさへと変容させる描写に、伯母が誰であろうと〝今ここで慎ましやかに幸せを感じて暮らしている〟その事実だけで充分だと感じさせられた。

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    2026年01月22日
  • 人質の朗読会

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     ずっと心の中にあり、人に話す程ではない、落ちもない話だけど忘れられなくて、思い出すたび、鮮やかさを増す記憶。私にもそんな話があるだろうか。
     語り手一人一人の、その人となりが、息遣いが、ひとつひとつの話に感じられる。
     お気に入りは、『死んだおばあさん』。

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    2026年01月22日
  • サイレントシンガー

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    沈黙を愛する人たちとともに育ったリリカは、やがて歌で多くの人や動物たちとのつながりを増やしていく。けれどその歌声は持ち主を問われない、聞く人や生き物たちの内側に積もっていく、かたちのないもの。むしろかたちがないからこそ、説得力を持ち、心に残りつづける。

    そんな歌をうたえる彼女はとても清らかだけれども、まるで音にあふれた現世とそれを受け入れられないものたちとの橋渡し役かのようでもあり、ずっと寂しい存在のようにも感じました。奉仕するような愛に満ちた彼女そのものが、作者の描く世界を体現する美しさのみで構成されていて、ひとのかたちとしての集大成かのようにも思えました。

    絡みあったふたつがひとつになった骨、ポーズを決めたままの人形、回転するテーブルで疎通する意志、語られない物語の断片たち。いろんな要素の、少しずつのさびしさと硬質さ、そして毅然とした汚されない美しさそれぞれが、静かに沁みていく物語でした。

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    2026年01月18日
  • 沈黙博物館

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    ネタバレ

    「今日は何日だ?三月三十日か。野ウサギの受死日じゃないか。いかん、私としたことがうっかりしておった。野ウサギの関節付きもも肉を食べねばならん日じゃった。日も暮れてきた。私はもう行く」p16

    という序盤の台詞に、なんだその意味の分からない日は!?なんだこの婆さんは!?と笑った。

    それはもう窃盗じゃないか、というやり方をしてでも収集してきた形見の数々。誰かが死ぬ事に登録番号をつけて増えていく。

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    2026年01月14日
  • ミーナの行進

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    大きな事件が起こるわけでもなくただひとりの生活を物語にした小説。
    ゆっくりとした時間のなかでの追体験は読んでいて心地よい作品でした。

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    2026年01月14日
  • からだの美

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    ハードル選手がハードルを飛び越える瞬間に見せる足裏、石川佳純さんのボールを見つめる視線、羽生善治さんが駒を指す中指、等。
    筆者により、思いがけない身体の美しさが浮かび上がる随筆です。

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    2026年01月13日
  • 海

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    するすると読めるけれど、小川洋子独特のひんやりとした感触、奇妙で意地らしく温かい視線、現実から少しだけずれた、しかし不思議と安らぐ読後感。それと、この短編集は少し気軽でユーモラスな話も入っていて愛らしい。
    やっぱり小川洋子は良いなと満たされた気持ちになりました。

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    2026年01月12日