小川洋子のレビュー一覧

  • 耳に棲むもの

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    閉じられた静かな孤独で満たされている世界をひたすらにたゆたえる味わい深い本。小川洋子さんはこれまで何冊か読んで来たものの私個人の好みとは微妙にズレていることが多かったのですが、これは一瞬で恋に堕ちてしまった。心と身体に染み渡る静けさを深く堪能出来た。

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    2025年05月23日
  • 沈黙博物館

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    ネタバレ

    博物館技師は、田舎に新しい博物館を建てる依頼を受ける。依頼主の老婆は、犯罪ギリギリの方法で手に入れてきた、亡くなった村人たちの形見を展示する博物館を建てようとしていた。

    いいな、私が求めたのは、その肉体が間違いなく存在しておったという証拠を、最も生々しく、最も忠実に記憶する品なのだ。それがなければ、せっかくの生きた歳月の積み重ねが根底から崩れてしまうような、死の完結を永遠に阻止してしまうような何かなのだ。(p49)

    老婆の言っていることは、恐ろしくもあるように思う。彼女は、亡くなった人々の形見を保存することで、「死の完結を永遠に阻止」しようとしているのである。
    なぜ、彼女はそんなことをする

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    2025年05月20日
  • 口笛の上手な白雪姫

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    みんな少しずつ偏っていてそれはある意味孤独なんだけど、寂しさよりも静かな強さ、したたかな美しさを感じる短編集。

    物語たちそのものもとても素敵。特にそれぞれの余韻たっぷりな終わり方がいい。
    ただ何より、心情や状況の描写、比喩のひとつひとつがときめく程美しくてたまらなかった。

    「亡き王女のための刺繍」と「一つの歌を分け合う」が特に好き。でも選べないくらいどれも良かった。

    色々な方が小川洋子さんの文章はうつくしいと言っている意味が、読み始めてすぐに理解出来た。
    淀みなく流れるようで、でも確実にひとつひとつがきらめいていて虜になってしまう。

    博士の愛した数式をかなり昔に読んだはずだけど、それ以

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    2025年05月16日
  • 妊娠カレンダー

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    女性ならではの感性が、女性の私でも驚くほど鋭く反映されていて、もうそれだけで大変恐ろしく感じた。結婚して妊娠している姉と、姉の夫と、自分というなんとも居心地の悪い同居は行き場のない、名前のない悪意を生み出しているように見えた。『妊娠』という行為や母親という役割は時に女性の足枷となるが、本作や湊かなえの「蚤取り」においては独り身でいる身近な女性の劣等感を引き起こすものとして描かれる。女性としてこれまで求められてきた役割を、出来るけどやらない、と、出来ない、では大きな違いがある。そうした心の柔らかく弱い部分に触れる作品は、自分の隠してきた部分や見ないようにしてきた部分がそのまま映し出されるようで、

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    2025年05月13日
  • 耳に棲むもの

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    ある意味、童話的でメルヘンでもあり残酷でもあり、時代や地域(国)を超えた普遍性がある作品だと思う。ある補聴器販売員を軸とした物語。

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    2025年05月11日
  • 心と響き合う読書案内

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    自分にとって、こういう読書案内を読む楽しみは2種類ある。1つは、次に読みたい本を見つけること、自分が読んだことがない本で、面白そうな本を見つけること、それが1つ。もう1つは、自分がかつて読んだ本が、どのように紹介されているか、小川洋子さんのような書き手が、それをどのように読んだのかを確かめること、これが2つ目の楽しみだ。
    この読書案内で、前者、すなわち、これから読んでみたいな、と思ったのは、大岡昇平の一連の著作、カズオ・イシグロの「日の名残り」、「おくのほそ道」、宮本輝の「錦繍」、島尾敏雄の「死の棘」、アリステア・マクラウドの「冬の犬」、中上健次の一連の著作といったところ。
    後者、すなわち、自

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    2025年05月11日
  • 夜明けの縁をさ迷う人々

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    奇妙で怖さもあるけれど、どこか滑稽さも漂う短編集。野球の話2つとエレベーターに住む「イービー」の話が記憶に残る。文章と描写が美しくて小説なのに映像を見ているような感覚。全面帯を見て選んだ一冊、心に残る素敵な読書体験になりました。

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    2025年05月10日
  • やさしい訴え

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    小川さんの作品の中でも、ファンタジー要素がかなり少なく、ただ、そこには小川さんらしい透明感や静けさがきちんとあって、痛みを伴う男女関係の中にも澄んだせせらぎのような愛の流れを感じられるお話だった。

    チェンバロとカリグラフィー、目と耳、犬と猫、男と女。象徴的なもの達が作中で、自分の役割を行儀よく待っている。
    小川さんは誰よりも愛が失われていく様を美しく書く人だと思うので、この作品はそれがすごく表現されているように感じた。

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    2025年05月10日
  • 最果てアーケード

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    ネタバレ

    確かインスタグラムで紹介されていた本。
    小川洋子さんの文体が本当に好き。柔らかで優しくて丁寧に読まないと壊れてしまいそうな文体。
    そこから紡ぎ出される物語もやはり柔らかで誰かを包み込むような作品。
    あるアーケードの配達員さんのお話。不思議な店ばかりでそこにやってくるお客さんもなかなか癖がある。
    でもさも普通ですよ、というように商売をしている店主たちと当たり前ですよ、というような顔をしてやってくるお客さんたちには違和感を覚えつつも優しい気持ちにさせられる。小川洋子マジック。
    一番好きだったのはラビト夫人。
    一番理解できなくて一番幸せになってほしいお客さんだった。

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    2025年05月10日
  • 妊娠カレンダー

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    ラランドのニシダが紹介していたので読んでみた。
    気味悪いのに描写の精巧さや文体が心地良い。比べるつもりはないけど、村上春樹を読んでいるみたいで、読書そのものの時間を楽しめた。
    ストーリーというか、内容は不気味で懐かしくてよくわからない感じだったけれど、あとがきで急に現実に戻され、その感覚がエンタメとしてめっちゃ爽快で読み応えがあった。

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    2025年05月07日
  • 耳に棲むもの

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    今回はちょっと残酷な場面が幾つかあって、ザワザワしたが読み始めるとあっと言う間に小川洋子さんの世界に入っていけてやはり好き。

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    2025年05月06日
  • 耳に棲むもの

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    骨壺の中の骨。
    その骨は、生前、補聴器のセールスマンでした。
    骨壺から始めて、彼の物語を遡っていきます。

    耳の奥で誰かが音楽を奏でています。補聴器で塞げば、耳に棲むものがこぼれ落ちる心配はありません。
    そんな小さな世界の奥へ奥へと導かれながら、人としての原点へと帰っていくような感覚になりました。

    歳を重ねるにつれ「死」と「死に至るまでの苦痛」への恐怖が少しずつ増しているような気がしています。それでも、このような小説に触れることで、生死についての漠然とした不安がギュッと縮小されて手の中に収まり、穏やかな気持ちにもなるのです。
    孤独を描くことで孤独を癒し、心に寄り添ってくれるような作品でした。

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    2025年05月05日
  • 約束された移動

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    ネタバレ

    小川洋子の短編小説を初めて読んだ。

    小川洋子作品に流れる静けさや文字の美しさは、文字や小説という体系を超え、感じたことのない感覚にさせてもらえる。

    ここで好きだった作品は、「寄生」と「巨人の接待」。
    この2作品に感じたのは、一見不快感を抱く言葉やものが見方を変えただけで、大切で重要なものに見えてくるという点だ。

    寄生する、亡くなる、枯れるという言葉は、あまりいい思いはなかったが、小説の中で違った角度で照らされており、大切に感じることができた。
    小説家って凄い。

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    2025年05月01日
  • 遠慮深いうたた寝

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     まとまった小川洋子さんのエッセイを読むのは初めてでした。素晴らしい小説世界の創作秘話や素顔がうかがい知れ、小川さんの日常にそっと触れられた感があって興味深かったです。

     小川さんの描く世界観が腑に落ちたり、語りかけられ考え思わず納得したりと、気にも留めない自分の日常を、新たな視点で見直すきっかけにもなりました。各編の内容がいかに深いことか! 「言葉を捨て去る」「答えのない問い」の前段などは、惚れ惚れします。

     2012年から続く「神戸新聞」の連載、他に約10年間のエッセイから厳選された作品の数々…。日々の出来事、思い出、創作、野球やミュージカルなど、物語の裏側が描かれます。
     ミュージカ

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    2025年04月29日
  • 海

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    短編集。
    「バタフライ和文タイプ事務所」は『薬指の標本』の結末と重なるような展開で毒気と淫靡さがあってよかった。

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    2025年04月28日
  • 耳に棲むもの

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    補聴器といえば、聞こえづらい外の音を伝えてくれるものだ。
    だが、小川洋子さんの魔法がかけられると、耳の奥で鳴っている、かすかな音楽を聴き取るための道具に思えてくる。
    そして、泣きたくなるような悲しみや苦しみに満ちた秘密が、思わずこぼれ落ちてしまわないように、そっと封印するための御守りのようにも感じられないだろうか。

    補聴器の移動販売員だったお父さんは言う。

     ”閉じ込められ、誰からも見捨てられ、忘れ去られたものを救い出すのと、閉じこもっていたいものに、それが求める小さな空洞を与えてやるのは、私にとって同じことです。”

    お父さんの骨壺の中から、かつて耳に棲んでいたものたちが四つの欠片として

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    2025年04月27日
  • 夜明けの縁をさ迷う人々

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    初小川洋子さん。奇妙でユーモラスな人たちのお話がどれも面白かった。夢の中の世界みたい。短編集は時間かかるものが多いけどこの作品は数時間で一気読みした。

    「曲芸と野球」
    スポーツの話は中々入り込めないから心配したけど、僕と曲芸師の不思議な絆が面白くて引き込まれた。最後の方でなんだか怪しくなってきて。最後は幻覚なのか…?

    「教授宅の留守番」
    まず舞台設定が面白い。部屋の中にどんどんお祝いの花が届いて埋もれてその中でお腹いっぱい食べ物を食べまくる。

    「イービーのかなわぬ望み」
    このお話とても好き。人間椅子を思い出す雰囲気。イービーが上手に半分にした小さなデザートを食べさせてくれる。私の淡い恋心

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    2025年04月17日
  • 口笛の上手な白雪姫

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    他者の視線を気にせず、思うままに振る舞うのは簡単じゃない。何かに強いこだわりを持っているならなおさら。私はそう思うのだけれど、ここで描かれる人物たちは、偏執的な自分を良しとし、ありのままの姿で何をも恐れず突き進みます。そのエネルギーは、いったいどこから湧いてくるのでしょう…
    8つの短編、どれも面白かったですが、表題作が一番心に残りました。舞台となっている銭湯の壁画の森に、私も迷いこみたいです。そして小母さんのように、幼い命に対して、私に何かできることはあるのかしら…と考えてしまいます。何かできる人でありたい。

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    2025年04月12日
  • 遠慮深いうたた寝

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    やっぱりこの人の言葉や文章は好きだ
    めっちゃ阪神ファン(笑)
    偏愛している文学、小説を書くこと…
    色々な考えや出来事を垣間見れて楽しい

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    2025年04月07日
  • ミーナの行進

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    小学生の女の子二人が主人公という可愛さの中に、大人の事情がチラチラ顔を出して読めば読むほど気になるお話。この時代に生きていたわけではないけれど、なんだか懐かしいなと思わせる設定。大人の事情も、いけないことなのに何故か嫌味なく書かれていて、筆者の文章力や人物設定に感心する。

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    2025年04月06日