【感想・ネタバレ】掌に眠る舞台のレビュー

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Posted by ブクログ

8編の物語が詰まった作品です。⁡
もう、⁡とにかく、美しい。
舞台を見終わった後のような感覚です。⁡
景色、人物、心、思い…⁡
⁡そして、舞台という非日常が生み出すどこか面妖な世界…⁡
⁡とにかく全てが儚く綺麗な物語でした。⁡
⁡⁡
⁡中でも私が心掴まれたお話しは⁡⁡⁡…

『ユニコーンを握らせる』
『いけにえを運ぶ犬』
⁡⁡
⁡表紙も綺麗で、じっと眺めてしまいます。⁡
⁡飾っておきたくなるような美しさです。

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2024年02月05日

Posted by ブクログ

舞台×小川洋子×ヒグチユウコ。よりによって私の大好きな芸術3種の恐るべき盛り合わせに、私のために作ってくださったのですか?!と問いたくなる短編小説。どの短編にも舞台が必ず登場するのだが、趣がそれぞれ異なるだけでなく、小川洋子さんが書くとこうなるのか!という驚きに満ちた珠玉の8編…(まだ余韻が)。虚構と現実が同時に確かに存在し、共鳴しあい、たとえ終わりが来ようとも心に宿り続ける尊い灯火(ともしび)。それが私をあたため、寄り添い、明日を照らす。死と生の循環。舞台の魅力がこの1冊に詰まってる。

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2023年01月09日

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流石の安定感です。
どの話も良かったです。
オペラ座の怪人を、あんなに簡潔に分かりやすく説明するだけで星5つです。

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2022年10月30日

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ネタバレ

舞台にまつわる短編集。
とても綺麗でおとぎ話のような表現が多く、素敵な場面が想像しやすかった。
いくつかのお話の感想を以下に。

『指紋のついた羽』
縫い子さんは少女の心がわかっているのか、と思うくらい手紙の返事が適当。
機械油が溜まった道すら綺麗に感じてしまう表現が素敵。
少女の工具箱の上で作り出す舞台を理解できている縫い子さんも、想像力をできる範囲で表現する少女も愛しい。

『ユニコーンを握らせる』
ローラ伯母さん、、かつての恋人(?)をずっと待ち続けているのか…
角が折れた描写は別れてしまったことを指すのか、女優として輝けなかったことを指すのか、はたまたどちらもか…
部屋の空洞がとてもいいステージになっていたり、町の光など景色も照明などのように作用しているようで、素敵な舞台が想像できた。
1人で世界が完結してしまっているが、いつか青年紳士と会えるのか、ただ会えても幸せになれるのか…?と外野からは思ってしまうが、とても健気で形容し難い魅力的な人。

『装飾用の役者』
お金があっても劇団を雇わず、それぞれの持ち場に一人ずつ配置するというこだわり、なんだかわかる気がする。手広く自分だけの所有物を増やしてそれぞれを深く愛でたいのかなと思った。個性的な目の表現にそのような要素を感じた。
それにしても頭がおかしくなってしまいそうな仕事…与えられたものだけで生活するなんて、自分というものがわからなくなりそう。

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2023年12月06日

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それぞれに小川洋子さんらしい味わい深い8篇だった。一作一作、余韻を楽しみながら読み進めていくのが正しい読み方のような気がしたが、一気に読んでしまった。暑い夏の連休の最終日、8つの世界に飛んで行け、幸せな休日を過ごせた。
小川洋子さんの頭の中はどうなっているのだろう。よくこんな小説がいくつも書けるものだなぁと感心してしまう。

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2023年08月13日

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「ユニコーンを握らせる」が1番好きだった。どのお話も薄暗くて湿っぽくて不穏な感じがあるのに、なんだか希望を感じずにはいられないのがとても不思議で好き。

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2023年05月30日

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私は、入学試験のためにローラ伯母さんの家に四泊した。伯母さんと言っても親族の中で誰とも血がつながっていなかった。祖父の先妻の連れ子という関係だった。親戚の中では、伯母さんは、「昔、女優だった人」と呼ばれていた。ローラは伯母さんの当たり役だったらしいお芝居の役名である。伯母さんの住んでる町に着いた。そこの古い公団住宅の一室が伯母さんの家だった。間取りは1LDKで、目立つ家具は細長いソファと正方形のテーブルと二脚の椅子だけだった。伯母さんは手袋を編んでいた。一日一目と決めて。また、食器には「ガラスの動物園」のローラのセリフか書かれていた。毎日食事をしたときにお皿やコップの底にどんなセリフが隠れていたのか見ることが楽しみになった。そして、その時には伯母さんはローラになりきってセリフを読み上げるのだ。

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2023年02月13日

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舞台にまつわる短編集。いつもながらの静けさの中に漂う不思議な空気感が「あぁ、小川洋子さんを読んでいる…」と感じさせられる。

ラ・シルフィードに魅せられる少女を世話する縫い係、昔女優だった叔母、失敗係と交通事故の女性、不思議なコンパニオン、馬車の本屋に罪悪感を持ち続ける男性、ヤモリ。どの主人公も過去の何らかの思い、と舞台が結びつき展開されていく物語はどれも秘密めいた空気を纏っており、それに呼応するように自分自身の過去の出来事を呼び起こし自分の中の秘密感が増幅される。これが自分にとっての小川洋子さんの雰囲気かな。

表紙のイラストはヒグチユウコさん。とても内容にあった雰囲気で素敵。表紙のイラストが素敵な事は言うまでもないが、実は背表紙の装丁もイラスト背景の絵柄に金の箔押しのタイトルで素敵。背表紙って電子書籍ではデータ化されてないケースが多いと思うので、紙の本を手にした人だけが味わえる特権かな。本棚に並べておきたい!

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2023年01月15日

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舞台をテーマにした短編集。
短編自体が繋がってるのかな?と思ったところもあったけど、やはり繋がってはおらず独立してる話のようだった。
表紙の装画に心惹かれて手に取る人も多いのではないでしょうか?装画はヒグチユウコさんです。
猫の絵のイメージ強いヒグチユウコさんですが、この少女の横顔も美しいですね〜!

クラシックバレエ、ミュージカル、ストレートプレイ、クラシック音楽、温泉街にある廃墟と化した演芸場…。
舞台はたくさんある。
実在する演目、固有名詞が登場するものの、内容に踏み込んではいないから、舞台のことや内容を知らない人でも楽しめると思います。

どの話も、小川洋子さんのお話だな〜!って感じ。
心温まる系は、バレエに登場する妖精に憧れる少女と、それを見守る縫い子さんの話(指紋のついた羽)だけで(子どもへの眼差しが優しいのは、小川洋子さんだなぁ)、あとは個性的。

大学受験のため「昔女優だった」叔母の家に宿泊した女の子と、叔母との交流(ユニコーンを握らせる)。

奥歯の差し歯から小さな生き物が生まれるようになった女性と、女性が通う盲目の鍼師のこと(鍾乳洞の恋)

交通事故の賠償金で帝国劇場Les Misérables全公演のチケットを買った女性の前に現れた、劇場に住むという謎の女性(ダブルフォルトの予言)。

老人に雇われたコンパニオンが、老人が自宅に作った劇場に住み役者役を演じさせられる話(装飾用の役者)。

いつも花柄スカートを履いている女性が、劇場楽屋口でパンフレットにサインをもらうためだけに様々な劇場に通い詰める(花柄さん)。

クラシック音楽の演奏会を聴きながら、子ども時代の移動本屋で夢中になった渡り鳥の本や、本屋の犬を思い出す(いけにえを運ぶ犬)。

子宝に恵まれると言われている温泉街で湯治する女性が、宿の主人夫婦から「無限ヤモリ」という子宝のお守りを見せられる(無限ヤモリ)。

無限ヤモリは不気味な話だったけど、最後に出てきた演芸場で泣いていた男の子を抱き抱えてあげる一瞬は、永遠のように切なさと懐かしさ、愛しさが込み上げてきた。
こういうふとした瞬間の切り取り、描写が、本当に小川洋子さんだなぁ!って。すばらしかった。
男の子を宿す暗示なのだろうか?
しかし、一人で湯治してては、いつまでも子どもは授かれないのでは?という素朴な疑問も湧きました。

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2022年12月27日

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繊細で儚い言葉で綴られる物語は美しくもあり怖くもあり。。
誰も哀しいくらい孤独に見えるけれど、各々が特別なこだわりを抱えて生きていて。それは他人から見たら奇妙で滑稽だけれど、不思議に幸せそうにも思える。
数ヶ月前にガラスの動物園を観劇したこともあって、「ユニコーン」が特にリアルで瑞々しく感じた。ローラのセリフを演じ続ける伯母さんが、舞台の中のローラと同じくらい、淋しくて痛々しくて切なくていじらしくて可愛らしかった。

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2022年11月29日

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最近遅読化著しい私が一気読み。
美しくてせつなくて、そして怖い作品たち。「え、これはどういう意味なの⁇」と思うところもあって、久しぶりに同じ本を読んだ人と語り合いたい!と思う1冊でした。
私が好きなのは、「指紋のついた羽」「ユニコーンを握らせる」

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2022年11月11日

Posted by ブクログ

舞台、演劇をひとつの共通のキーにはしているものの、舞台の裏に隠れている「失敗係」の話、ただパンフレットだけを持ち帰る女性の話、子どもが一人遊びで劇を演じる話……と日常的な発想からひょいと一足飛びの、少し不思議な小川さんらしい繊細な話ばかりが展開されていて、どれも新鮮に楽しめました。

「指紋についた羽根」では乳母車に載る赤ん坊が空に伸ばす指、というだれもが想像できる純粋で尊い様子に、素敵な空想を添えていて、好きだなぁとただしみじみとそのくだりを読み返していました。

ほかも、オペラ座の怪人の洞窟と、口腔がなぜか巧妙にリンクしてめくるめく世界を展開していく「鍾乳洞の恋」や、糸と眼の比喩がとても艶めいていた「装飾用の役者」、軽やかでもどこか一筋寂しさが残る「花柄さん」など、自分が舞台好きなのもあるからか、心情や状況に寄り添って楽しめるものが多くて、充実感のある短編集でした。

小川さんの発想力と表現力は、ほんとに素晴らしくて溜息ができる、と思うばかりです。

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2022年11月03日

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ネタバレ

短編集。8話ある。

印象に残ったのは、『鍾乳洞の恋』『ダブルフォルトの予言』『花柄さん』『いけにえを運ぶ犬』『無限やもり』

『鍾乳洞の恋』
肩がいつまでも痛い。そういうのって辛い。
この物語では原因がわかっている。白い生き物のせい。
白い生き物はいったい何だろう?
室長が院長から離れてしまうと痛みが増すようである。
白い生き物が院長に恋してるのだろうか?それとも、室長が?
もう一度リセットして、歯の下を確認してみたい。

『ダブルフォルトの予言』
安堵と寂しさ。
最後の言葉…交通事故で助かり生き残ったことが失敗で、本当は死にたかったのか。
交通事故で保険金を受け取り、『レ・ミゼラブル』全公演のチケットを買う。
劇場で失敗を先に予言して請け負う女性が出てくる。
最後の言葉が、本当は死にたかったのだと解釈するのはマイナス的すぎるのか。疲れてたこともあったし、生きていくことを続ける強い意志もなさそうに見えた。いろいろ片付いたことで、もういいのでは?と思ったのか。
もしくは、交通事故に遭わずに保険金は出ず、チケットも買わず、女にも会わず、細々と暮らしていく。こっち側のストーリーだとしたら、普通だな…

『花柄さん』
ただただ、無名役者のサインをもらい、収集する。
花柄さんが他にどんなふうに過ごしたりするのか、何かを楽しみにしてるとかわからない。
偶然のきっかけからサインの収集に執着する。
とにかくそれが大事なのだ。

『いけにえを運ぶ犬』
琵琶の種には有害物質がある。種がつまるというより、たくさん食べてしまうと実際に有害なのだ。
少年の本が本当にほしくてたまらない気持ちが伝わってくる。
買えるお金はない。だから、盗もうとした。だけど、犬の目が。
お前がいなければ、本は僕のものになっていたかもしれないのに。
そんな歪んだ気持ちでやったんだろうか。恐ろしい…

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2022年10月30日

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舞台をモチーフにした短編集。固有名詞が全く出てこない小説は、オカルトばりの展開でありながら、おとぎ話のようである。言葉の選び方ひとつひとつに気品があり、読んでいると、場面が美しい色合いで頭の中に再現される小説だった。

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2022年10月26日

Posted by ブクログ

舞台や劇場をテーマにした8編の短編集。小川さんの創造する舞台やそれにまつわる人が描かれ、その世界にすぐにどっぷり浸かることができた。パンフレットだけを購入して楽屋口で出待ちし、サインをもらう「花柄さん」が好き。どこか寂しさが漂う話ばかりですが、どの人も地に足がついているような感じがする。これが小川さんの世界観なのかな?

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2022年10月22日

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タイトル通り“舞台”をテーマにした短篇集。8篇が収録されている。
舞台と一言で言ってもいろいろなものがあるが、基本的には“演劇”を上演するための舞台だ。最近、演劇の面白さに目覚めてしまったぼくにはうってつけの本だった。
小川さんの格調高い文章で綴られる話はしかし、よくよく考えてみるとかなり異常なものもある。それを当たり前のことであるかのようにしらっと書いてしまうのがこの人のすごさだ。
どれもよかったが、「指紋のついた羽」、「花柄さん」、「装飾用の役者」が好みだった。

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2022年10月14日

Posted by ブクログ

不思議なお話の短編集。どこか、不気味で、少し怖くて、可愛らしくもある、そんなお話。とりとめもなく、もともと忘れっぽい私には、読んだ側から、遠くへ行ってしまうような、フワフワとしたお話。どんなお話だったとか、誰にも伝えられそうにないお話。

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2023年11月01日

Posted by ブクログ

"装飾用の役者"が特に印象的だった。
金持ちの道楽だが、舞台そのものを所有したく、それは特別な公演で無くても良く、というのはわからなくもない。それでも現実的には、やはりちゃんとした劇団を欲しくなるだろうし、色んな派手な公演を見たくなるだろうけど。

工具箱の上で繰り広げられるバレエも、みんな似たようなことをしたことがあるのではないだろうか。懐かしさと、ほっこり。

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2023年10月30日

Posted by ブクログ

ダブルフォルトの予言がいろいろと不気味。無限ヤモリは毎日ヤモリが湧いて出てくるのかと思ったらもちろん違った。

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2023年08月28日

Posted by ブクログ

純文学中心の雑誌「すばる」に発表された8篇を収録した短編集。不思議な感覚を体験できる。

小川さんの作品では、『博士の愛した数式』、『ミーナ行進』が好きですが、私には難しい作品も多いです。でも、時々、手に取りたくなります。

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2023年08月25日

Posted by ブクログ

舞台をテーマにした短編集。なんとなく初期の小川洋子さんを彷彿させるような独特の湿度を感じる作品が多かった。装丁が作品の雰囲気と絶妙にマッチしていてとても素敵。

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2023年05月01日

Posted by ブクログ

バレエ、舞台、本の表紙に惹かれて読んでみた。
ちょっと不気味なファンタジー短編集。

博士の愛した数式と同じ作者さんか⁈と少し戸惑った。
ちょっと入り込めなくて流し読みしてしまったから、また機会があれば読み返したい。

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2023年03月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

小川洋子さん、博士の愛した数式しか読んだことがなくてそちらはとてもわかりやすいストーリーだったので、この作品はちょっと意外だった。
他の方の感想を見る限り、通常運転なんですね。そのつもりで読んだらもっと楽しめたかも。

舞台にまつわる短編集。同じ「舞台」をテーマに、こんなにも趣向の違うお話が書けるとは…。

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2023年03月05日

Posted by ブクログ

人にはさまざまな人生があり、ささやかだけど自分が輝ける場所があって良いと思った、そんな短編作品。テーマは統一していますが、内容は幅広くちょっと理解し難い部分はありましたが、それでも小川さんの世界観が伝わり、独特な余韻が残る一冊。

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2022年12月04日

Posted by ブクログ

久しぶりに読む小川作品。今回はタイトルにあるように様々な演劇が使われている。
ただ今回は今一つ世界観に入り込めなかった。これは小川さんのせいではなく私の問題。いずれ時を置いて違う状況の時に読み返したい。

「指紋のついた羽」
バレエ『ラ・シルフィード』
舞台を一緒に見に行った少女と縫い子の交流。繋がっているのかいないのかという危うさだったり、縫い子の心がボビンケースの中に入り込むというところが小川さんらしさか。

「ユニコーンを握らせる」
テネシー・ウイリアムズ『ガラスの動物園』
”昔、女優だった人”という伯母。その”女優”というのがこれまた頼りない。叔母宅に滞在した数日間が淡々としているのに濃い。

「鍾乳洞の恋」
『オペラ座の怪人』
歯のブリッジを取り替えて以来、痛みに悩む女性。そしてそのブリッジの中から得体の知れない生き物が出てくるように。
この歪で怖いものを大切に扱うというのが小川作品によく出てくる設定。読み終えてみれば恋愛もの?

「ダブルフォルトの予言」
『レ・ミゼラブル』
これは正しく小川さんの真骨頂といった話。交通事故の保険金で得た金が偶然『レ・ミゼラブル』全79公演のチケット代と同額だったことから毎日通うことにした女性。ある時彼女に声を掛けてきた女は劇場に住んでいるという。
それにしても小川さんはよくこういう設定を思いつくものだと毎度感心する。

「花柄さん」
これも小川作品ではありそうな話。コレクションも過ぎれば、それが積もり積もってついには形を失くしていき悍ましいものと化していく。
主人公なりのこだわりが花柄とプログラムにもらうサイン。サインをもらう相手は主人公同様目立たぬ存在でなければならない。一方で「花柄」の方は主人公を際立たせている。分かるような分からないような。

「装飾用の役者」
ムーミン?
これまた小川さんらしい、コンパニオンが受けた奇妙な依頼の想い出。依頼人の老人一人のために舞台に作られた部屋で暮らし、老人一人のために芝居を演じる。
老人の目が怖い。

「いけにえを運ぶ犬」
シベリウスとストラヴィンスキー作品を聴きに行った男性の想い出
セントバーナード犬が曳いてやってくる本屋。渡り鳥の本がどうしても欲しいがお金のない少年(男性)は良からぬことを考えるが…。野生の本能?

「無限ヤモリ」
この作品のみ演劇関係ないな…と思ったら芝居小屋の廃墟が出てきた。
子宝に恵まれるという温泉地の保養所に滞在する女性。
宿の夫婦が売っているのは一対のヤモリ。そのヤモリの尾同士が絡まり縺れ合うと無限ヤモリになり、そのミイラは子宝のお守りになるという。
ラストシーンのインパクトはこの話がダントツ。もう誰もかれもが歪んで見える。

悍ましさと美しさ、シュールさと儚さ、現実感と虚構、様々な境界線を今回も楽しませてもらった。

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2022年11月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

今まであまり読んでこなかった小川洋子さん。
こんなにも美しい文章を書く人だったんですね。物語の全てが幻想的で美しく、独特の雰囲気を感じた。

言葉選びが多彩。特に「指紋のついた羽」は格別。赤ちゃんが触ろうとしているのが妖精の羽だというその発想が本当に素敵。

正直なところ、全体的な感想としては「ちょっと不気味」と思う。世にも奇妙な物語を最高に文学的で美しくした感じの不思議さがある。

不気味と美しいって共存出来るのだな…。

「ユニコーンを握らせる」のローラおばさんが何故だかとても好きになった。相手がどんな人であっても、きっとおばさんには関係がなくて待ち続けているのかな。

実現しなかったローラおばさんとの日々が切なくて、胸がぎゅっとなった。

「ダブルフォルトの予言」の失敗係とは一体なんだったのだろう。彼女と過ごした日々はどこに消えてしまったのか。あの部屋は何だったのか。

そして、最後の「取り返しもついたんだけど…」が何だったのかずっと考えている。とても印象的な話だった。

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2022年10月30日

Posted by ブクログ

舞台にまつわる短編集。
表題は短編集のために作られたタイトル。
挿画もヒグチユウコ氏と、著者の世界観が本にしっくり漂っている。

「鍾乳洞の恋」
なんとも発想がすごいのに、まるで違和感なく物語に惹きつけられる。
こんなホラーな出来事を、恋にまで仕立てる手腕。

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2022年10月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

短編集8編
どれもが舞台に関わる物語.バレエ(ラ・シルフィード),ミュージカル(レ・ミゼラブル),劇(ガラスの動物園)が出たり,劇上つながりの出待ちのサインや仕事として作られた舞台の中で生活するというのまで,なんらかの形で舞台につながるものがキーとして表れる.だけどそれらは単にとっかかりに過ぎずそこから溢れるばかりの紡ぎ出された世界は小川さんらしい世間から隔絶している.そしてその完結した密やかな世界がきらきら輝いているようで何やら眩しい.
ヒグチユウコ氏の表紙絵も素敵だ.

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2022年10月26日

Posted by ブクログ

「レ・ミゼラブル」全公演に通う私は、劇場に住む「失敗係」の彼女と出会い…。ステージの此方と彼方で生まれる特別な関係を描く、美しく恐ろしい極上の短編集。

8篇の短編から成る。どの篇も小川洋子らしいうまさが感じられ、不思議な雰囲気をまとっている。でもそれぞれが面白かったかと言われると…
(Ⅽ)

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2022年10月11日

Posted by ブクログ

短編8作
小さな場面、すみっこの焦点が合わない箇所
切り取られたものたちの破片が残る
少ないページで紡がれたとはとても思えない
最初の、工場の塵のにおいと手についた油の感触が最後までとれない

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2022年10月11日

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