あらすじ
「だって人は誰でも、失敗をする生きものですものね。だから役者さんには身代わりが必要なの。私みたいな」
金属加工工場の片隅、工具箱の上でペンチやスパナたちが演じるバレエ「ラ・シルフィード」。
交通事故の保険金で帝国劇場の「レ・ミゼラブル」全公演に通い始めた私が出会った、劇場に暮らす「失敗係」の彼女。
お金持ちの老人が自分のためだけに屋敷の奥に建てた小さな劇場で、装飾用の役者として生活することになった私。
演じること、観ること、観られること。ステージの彼方と此方で生まれる特別な関係性を描き出す、極上の短編集。
感情タグBEST3
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文章を読むだけで浮かんでくる情景。作者の言葉の選び方と紡ぎ方に絡め取られていく。
指紋についた羽の少女との文通。いつのまにか自分がそこに居るかのように感じる。
ストーリーはややホラーのようでどこか暖かい。人が生きていく中での静かで強い感情を思い出させられた。
Posted by ブクログ
舞台の上で、観客席で、誰もが自分自身の孤独と向かい合っている。誰も入ることのできないその場所でしか存在できないものを、ステージ上の輝きに、客席に落ちた暗闇に、見出している。そんな、自分だけの「舞台」との関係性をそっと覗くような短編集でした。
指紋のついた羽
縫い子さんと少女の距離が、ラ・シルフィードの浮いた爪先と地面の距離なのかも知れない。その空間は青年のことを拒否したけれど、少女に手紙を届けて、ボビンケースの中の縫い子さんを守っている。得難い断絶となって二人の世界を包んでいる。ちょっとすれ違って、でもちゃんと心を通わせあっている手紙のやり取りが長く続きますようにと祈らずにいられない。
ユニコーンを握らせる
主人公があり得なかったもう一つの時間について思うとき、その両手は完全な姿になたユニコーンをしっかりと握り込んでいるんだろうと思う。その手の中で、ローラおばさんはいつまでも凛とした姿、張りのある澄んだ声のまま、青年紳士を待ち続ける。主人公が時折思い出す限りは、ずっと。
おばさんは永遠になれたんだきっと。
鍾乳洞の恋
あまりにもすごくてちょっと怯えてしまった。
秘めていた恋の発露としてそんな表現をするんですか!?でも、室長から見た虫のような生き物はちっとも醜くなんかなくて、むしろその小さな体の隅々まで愛おしさに満ちているのだと思うと、いじらしくてたまらなくなる。オペラ座の怪人テーマでこれが出てくるの本当に...恋愛ものとして完璧に限りなく近い作品なのでは。
ダブルフォルトの予言
なんか分からないけど泣いちゃった。キラキラした空間、夢のような時間には終わりがあるから、それそのものを求めてしまっては行き着く先は地獄になる。前半の心地よさはじわじわとすり減っていって、千秋楽で溢れてしまった不安と恐怖と孤独はもう取り返しがつかない現実として残ってしまったんだろうな。でも失敗係はいない。空想の世界を守るための失敗係は、現実には存在しない。79公演分の時間の重さが本を通して伝わって、やるせなくなってしまった。
花柄さん
花柄さんとサインをくれた役者の関係は、花柄さんが立つ一人だけの舞台の花柄さんという役者に対する観客、ということになるのかな。ほんの一瞬だけ、サインをする時間だけ、その人は花柄さんのことを考える。花柄さんだけを見る。それって舞台に立つ演者を見つめるのとおんなじなんだ多分。花柄さんはベッドの上で、もうこれ以上ないほどの観客をその下の空間に引き連れて、拍手喝采の千秋楽を迎えたに違いない。
装飾用の役者
舞台のセットで生活するとだけ聞くとかなり楽しそうではあるけれど、それを上演しなくてはならないとなったら、どうだろう。本物になってはいけない、というのはかなり難しいんじゃないのか。爺さんが敷地内に造ったものを全て偽物にしたのは、自分にとって、自分にだけ本物であって欲しかったからなのかなと思う。そのための役者として、なるほどコンパニオンの彼女はこの上なく適任なのかも知れない。
いけにえを運ぶ犬
はじめのファゴットの音から呼び起こされる後悔。ふとしたことで思い出してしまうどうしても忘れられない嫌な記憶には身に覚えがあるので、読むごとに羞恥心が募って困った。春の祭典の進行と交互に語られる思い出は、力強い楽器たちの音色と妙な静けさの記憶が絡み合って異様な雰囲気を漂わせていた。犬の目に映る自分がこっちを見ている、多分、永遠に。
おばあちゃんのお話がすごく好きなのであと50話くらい教えて欲しかったな。
無限ヤモリ
本物の舞台である芝居小屋が廃屋になっているの、彼女が初めから得られるものなど何もないことを象徴しているみたいですごく嫌だった。すごい。代わりに何もかも偽物であるジオラマの中では、子供達がこれ以上ないほどの幸福に包まれているというのだからもう、何から何までやるせなくて、すごく好きです。
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8編の物語が詰まった作品です。
もう、とにかく、美しい。
舞台を見終わった後のような感覚です。
景色、人物、心、思い…
そして、舞台という非日常が生み出すどこか面妖な世界…
とにかく全てが儚く綺麗な物語でした。
中でも私が心掴まれたお話しは…
『ユニコーンを握らせる』
『いけにえを運ぶ犬』
表紙も綺麗で、じっと眺めてしまいます。
飾っておきたくなるような美しさです。
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舞台×小川洋子×ヒグチユウコ。よりによって私の大好きな芸術3種の恐るべき盛り合わせに、私のために作ってくださったのですか?!と問いたくなる短編小説。どの短編にも舞台が必ず登場するのだが、趣がそれぞれ異なるだけでなく、小川洋子さんが書くとこうなるのか!という驚きに満ちた珠玉の8編…(まだ余韻が)。虚構と現実が同時に確かに存在し、共鳴しあい、たとえ終わりが来ようとも心に宿り続ける尊い灯火(ともしび)。それが私をあたため、寄り添い、明日を照らす。死と生の循環。舞台の魅力がこの1冊に詰まってる。
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舞台をモチーフとした短編集です。小川洋子さんだなあと思いながらの読書でした。研ぎ澄まされた文章に、不思議な世界が広がっていました。装画はヒグチユウコさん。この雰囲気と色合い、好きな感じです。そして何かが潜んでいるような感じもしました。背表紙もおしゃれです。
以下は、読者の私が気に入った短編の感想です。
【指紋のついた羽】
ひとことで言えば〈無言の世界の美しさ〉。
バレエのラ・シルフィードに魅せられた少女。逆さまに置いた工具箱の上で上演される無言の世界。その世界になぜか美しさを感じ、幼い頃から少女を知っている縫い子さんの優しさが心地よかったです。二つの光と二人の後ろ姿の描写で締めくくった最後の場面が、とても印象的でした。
【ユニコーンを握らせる】
ひとことで言えば〈永遠の時間をかけて待つ楽しみ〉。
伯母さんと過ごした4日間。この後も、もしも続くことになっていたら、どんな日々が待っていたのかが気になるところでした。
伯母さんが演じる予定だった「ガラスの動物園」のローラのセリフが書かれた食器の数々。そしてそのセリフが現れたときに、伯母さんが発する声がまるで聞こえてくるようでした。一目ずつ編まれている手袋の意味がわかったとき、何もない舞台のような家で、伯母さんが待ち続ける日々をいとおしく感じました。
【ダブルフォルトの予言】
ひとことで言えば〈不思議な空間〉。
事故の保険金で舞台の全公演分のチケットを買います。その金額に不思議な縁を感じます。公演に通って知り合った人は、帝国劇場で暮らし、役者の失敗の身代わりだといいます。全公演が終わったあとに気づいたことと、今までが現実だったのかがわからなくなったことに、不思議な感覚を得ました。
【花柄さん】
ひとことで言えば〈安らぎと達成感〉。
花柄さんと呼ばれる女性が、舞台の後にお芝居に出ていた人からサインをもらう喜びを知ります。そのサインが書かれたプログラムを一つ一つ大切にベッドの下にしまいます。
花柄さんの幼い頃の記憶と今の喜びに想いを馳せました。始めの不穏な感じから一転して、花柄さんの満足げな笑顔に安堵しました。
〈目次〉
指紋のついた羽
ユニコーンを握らせる
鍾乳洞の恋
ダブルフォルトの予言
花柄さん
装飾用の役者
いけにえを運ぶ犬
無限ヤモリ
※「鍾乳洞の恋」は幼虫、「無限ヤモリ」はヤモリのリアルな表現があるので苦手な人は要注意です。
Posted by ブクログ
不思議で、不気味で、美しい短編集。
一見グロテスクに思える描写でも美しく見せてしまうところがさすが。
以下備忘録
「指紋のついた羽」
舞台で見た妖精ラ・シルフィードに手紙を送る少女。
「ユニコーンを握らせる」
昔女優だった伯母と過ごした日々。
「鍾乳洞の恋」
歯の詰め物の間から白い生き物が生まれる。
「ダブルフォルトの予言」
劇場に住んでいる女性の話。
「花柄さん」
役者のサインを集め続ける花柄さんの話。
「装飾用の役者」
お金持ちの家で装飾用の役者として働く。
「いけにえを運ぶ犬」
移動書店の車を引く犬と少年の話。
「無限ヤモリ」
子供を望む女性と無限ヤモリ。
Posted by ブクログ
不思議だなぁ。日常のひとときを切り取ったのに、なんだか印象深くて、一生心に残るような感覚だった。
各主人公のように思い出や経験が秘密裏に根を張り、一体化していく様を見て面白いなぁと思うと同時に安心する。
自分以外の人もこんな経験を持っているのだろうかと考えてしまう。
気に入ったエピソードは、「指紋のついた羽」「花柄さん」「装飾用の役者」「いけにえを運ぶ犬」。
小川さんの文章がスッと入ってきて、さらに短編なので読みやすい。
Posted by ブクログ
ちょっと独特な世界観のある小川さんの本.
イメージとしては,ちょっと昔の,もしくはちょっと田舎の場所のお話.
そのお話を,ある人の視点で眺めているような感触.
人とは誰もがほんの少し歪んでいると思う.
どんなに真っ当に見える普通に見える人でも,ある側面からある視点からある想いから見ると他人とは違う.
この本の,ある人の視点,を考えた時に,どことなく,それとなく,ちゃんと気がつくくらいの薄さで,歪みを捻じれを狂気を感じる.
それは誰もがもつ可怪しさ誰かが持ってもそんなに不思議ではないオカシサが混じっている.
それがとてもクセになる.
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舞台にまつわる短編集。
とても綺麗でおとぎ話のような表現が多く、素敵な場面が想像しやすかった。
いくつかのお話の感想を以下に。
『指紋のついた羽』
縫い子さんは少女の心がわかっているのか、と思うくらい手紙の返事が適当。
機械油が溜まった道すら綺麗に感じてしまう表現が素敵。
少女の工具箱の上で作り出す舞台を理解できている縫い子さんも、想像力をできる範囲で表現する少女も愛しい。
『ユニコーンを握らせる』
ローラ伯母さん、、かつての恋人(?)をずっと待ち続けているのか…
角が折れた描写は別れてしまったことを指すのか、女優として輝けなかったことを指すのか、はたまたどちらもか…
部屋の空洞がとてもいいステージになっていたり、町の光など景色も照明などのように作用しているようで、素敵な舞台が想像できた。
1人で世界が完結してしまっているが、いつか青年紳士と会えるのか、ただ会えても幸せになれるのか…?と外野からは思ってしまうが、とても健気で形容し難い魅力的な人。
『装飾用の役者』
お金があっても劇団を雇わず、それぞれの持ち場に一人ずつ配置するというこだわり、なんだかわかる気がする。手広く自分だけの所有物を増やしてそれぞれを深く愛でたいのかなと思った。個性的な目の表現にそのような要素を感じた。
それにしても頭がおかしくなってしまいそうな仕事…与えられたものだけで生活するなんて、自分というものがわからなくなりそう。
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それぞれに小川洋子さんらしい味わい深い8篇だった。一作一作、余韻を楽しみながら読み進めていくのが正しい読み方のような気がしたが、一気に読んでしまった。暑い夏の連休の最終日、8つの世界に飛んで行け、幸せな休日を過ごせた。
小川洋子さんの頭の中はどうなっているのだろう。よくこんな小説がいくつも書けるものだなぁと感心してしまう。
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「ユニコーンを握らせる」が1番好きだった。どのお話も薄暗くて湿っぽくて不穏な感じがあるのに、なんだか希望を感じずにはいられないのがとても不思議で好き。
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私は、入学試験のためにローラ伯母さんの家に四泊した。伯母さんと言っても親族の中で誰とも血がつながっていなかった。祖父の先妻の連れ子という関係だった。親戚の中では、伯母さんは、「昔、女優だった人」と呼ばれていた。ローラは伯母さんの当たり役だったらしいお芝居の役名である。伯母さんの住んでる町に着いた。そこの古い公団住宅の一室が伯母さんの家だった。間取りは1LDKで、目立つ家具は細長いソファと正方形のテーブルと二脚の椅子だけだった。伯母さんは手袋を編んでいた。一日一目と決めて。また、食器には「ガラスの動物園」のローラのセリフか書かれていた。毎日食事をしたときにお皿やコップの底にどんなセリフが隠れていたのか見ることが楽しみになった。そして、その時には伯母さんはローラになりきってセリフを読み上げるのだ。
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舞台にまつわる短編集。いつもながらの静けさの中に漂う不思議な空気感が「あぁ、小川洋子さんを読んでいる…」と感じさせられる。
ラ・シルフィードに魅せられる少女を世話する縫い係、昔女優だった叔母、失敗係と交通事故の女性、不思議なコンパニオン、馬車の本屋に罪悪感を持ち続ける男性、ヤモリ。どの主人公も過去の何らかの思い、と舞台が結びつき展開されていく物語はどれも秘密めいた空気を纏っており、それに呼応するように自分自身の過去の出来事を呼び起こし自分の中の秘密感が増幅される。これが自分にとっての小川洋子さんの雰囲気かな。
表紙のイラストはヒグチユウコさん。とても内容にあった雰囲気で素敵。表紙のイラストが素敵な事は言うまでもないが、実は背表紙の装丁もイラスト背景の絵柄に金の箔押しのタイトルで素敵。背表紙って電子書籍ではデータ化されてないケースが多いと思うので、紙の本を手にした人だけが味わえる特権かな。本棚に並べておきたい!
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舞台をテーマにした短編集。
短編自体が繋がってるのかな?と思ったところもあったけど、やはり繋がってはおらず独立してる話のようだった。
表紙の装画に心惹かれて手に取る人も多いのではないでしょうか?装画はヒグチユウコさんです。
猫の絵のイメージ強いヒグチユウコさんですが、この少女の横顔も美しいですね〜!
クラシックバレエ、ミュージカル、ストレートプレイ、クラシック音楽、温泉街にある廃墟と化した演芸場…。
舞台はたくさんある。
実在する演目、固有名詞が登場するものの、内容に踏み込んではいないから、舞台のことや内容を知らない人でも楽しめると思います。
どの話も、小川洋子さんのお話だな〜!って感じ。
心温まる系は、バレエに登場する妖精に憧れる少女と、それを見守る縫い子さんの話(指紋のついた羽)だけで(子どもへの眼差しが優しいのは、小川洋子さんだなぁ)、あとは個性的。
大学受験のため「昔女優だった」叔母の家に宿泊した女の子と、叔母との交流(ユニコーンを握らせる)。
奥歯の差し歯から小さな生き物が生まれるようになった女性と、女性が通う盲目の鍼師のこと(鍾乳洞の恋)
交通事故の賠償金で帝国劇場Les Misérables全公演のチケットを買った女性の前に現れた、劇場に住むという謎の女性(ダブルフォルトの予言)。
老人に雇われたコンパニオンが、老人が自宅に作った劇場に住み役者役を演じさせられる話(装飾用の役者)。
いつも花柄スカートを履いている女性が、劇場楽屋口でパンフレットにサインをもらうためだけに様々な劇場に通い詰める(花柄さん)。
クラシック音楽の演奏会を聴きながら、子ども時代の移動本屋で夢中になった渡り鳥の本や、本屋の犬を思い出す(いけにえを運ぶ犬)。
子宝に恵まれると言われている温泉街で湯治する女性が、宿の主人夫婦から「無限ヤモリ」という子宝のお守りを見せられる(無限ヤモリ)。
無限ヤモリは不気味な話だったけど、最後に出てきた演芸場で泣いていた男の子を抱き抱えてあげる一瞬は、永遠のように切なさと懐かしさ、愛しさが込み上げてきた。
こういうふとした瞬間の切り取り、描写が、本当に小川洋子さんだなぁ!って。すばらしかった。
男の子を宿す暗示なのだろうか?
しかし、一人で湯治してては、いつまでも子どもは授かれないのでは?という素朴な疑問も湧きました。
Posted by ブクログ
繊細で儚い言葉で綴られる物語は美しくもあり怖くもあり。。
誰も哀しいくらい孤独に見えるけれど、各々が特別なこだわりを抱えて生きていて。それは他人から見たら奇妙で滑稽だけれど、不思議に幸せそうにも思える。
数ヶ月前にガラスの動物園を観劇したこともあって、「ユニコーン」が特にリアルで瑞々しく感じた。ローラのセリフを演じ続ける伯母さんが、舞台の中のローラと同じくらい、淋しくて痛々しくて切なくていじらしくて可愛らしかった。
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最近遅読化著しい私が一気読み。
美しくてせつなくて、そして怖い作品たち。「え、これはどういう意味なの⁇」と思うところもあって、久しぶりに同じ本を読んだ人と語り合いたい!と思う1冊でした。
私が好きなのは、「指紋のついた羽」「ユニコーンを握らせる」
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舞台をテーマにした幻想的な雰囲気のある短編集。
体調の悪い時に見る不思議な夢のような、現実か非現実か分からなくなるあの境目の感覚に近い物語でした。
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8本の短編それぞれがとても不思議な話で、文体もどこか詩のような流れなのにどれも読み終わったあとに良い意味で気味が悪い(笑)
短編集のなかによく舞台の話が組み込まれているのは意図的なのか、著者が好きなのか…(まぁ、本のタイトルを考えるにそうなるよね)とにかく読後にその先を少し考えてしまう作品でした。
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最初から最後まで何が何だかよく分からなかった。
博士の愛した数式のイメージが強すぎて装丁が綺麗なこの本を選んでしまったことが失敗かな…
すべて舞台にまつわる物語で「掌に眠る舞台」という題名も納得なのだがストーリーの終着点が見つけられず困惑。
あまりにも非日常すぎて私はついていけなかった。
年を経て価値観や感じ方が変わる頃にもう一度読みたい。
Posted by ブクログ
不思議なお話の短編集。どこか、不気味で、少し怖くて、可愛らしくもある、そんなお話。とりとめもなく、もともと忘れっぽい私には、読んだ側から、遠くへ行ってしまうような、フワフワとしたお話。どんなお話だったとか、誰にも伝えられそうにないお話。
Posted by ブクログ
"装飾用の役者"が特に印象的だった。
金持ちの道楽だが、舞台そのものを所有したく、それは特別な公演で無くても良く、というのはわからなくもない。それでも現実的には、やはりちゃんとした劇団を欲しくなるだろうし、色んな派手な公演を見たくなるだろうけど。
工具箱の上で繰り広げられるバレエも、みんな似たようなことをしたことがあるのではないだろうか。懐かしさと、ほっこり。
Posted by ブクログ
舞台をテーマにした短編集。なんとなく初期の小川洋子さんを彷彿させるような独特の湿度を感じる作品が多かった。装丁が作品の雰囲気と絶妙にマッチしていてとても素敵。
Posted by ブクログ
小川洋子さん、博士の愛した数式しか読んだことがなくてそちらはとてもわかりやすいストーリーだったので、この作品はちょっと意外だった。
他の方の感想を見る限り、通常運転なんですね。そのつもりで読んだらもっと楽しめたかも。
舞台にまつわる短編集。同じ「舞台」をテーマに、こんなにも趣向の違うお話が書けるとは…。
Posted by ブクログ
人にはさまざまな人生があり、ささやかだけど自分が輝ける場所があって良いと思った、そんな短編作品。テーマは統一していますが、内容は幅広くちょっと理解し難い部分はありましたが、それでも小川さんの世界観が伝わり、独特な余韻が残る一冊。
Posted by ブクログ
久しぶりに読む小川作品。今回はタイトルにあるように様々な演劇が使われている。
ただ今回は今一つ世界観に入り込めなかった。これは小川さんのせいではなく私の問題。いずれ時を置いて違う状況の時に読み返したい。
「指紋のついた羽」
バレエ『ラ・シルフィード』
舞台を一緒に見に行った少女と縫い子の交流。繋がっているのかいないのかという危うさだったり、縫い子の心がボビンケースの中に入り込むというところが小川さんらしさか。
「ユニコーンを握らせる」
テネシー・ウイリアムズ『ガラスの動物園』
”昔、女優だった人”という伯母。その”女優”というのがこれまた頼りない。叔母宅に滞在した数日間が淡々としているのに濃い。
「鍾乳洞の恋」
『オペラ座の怪人』
歯のブリッジを取り替えて以来、痛みに悩む女性。そしてそのブリッジの中から得体の知れない生き物が出てくるように。
この歪で怖いものを大切に扱うというのが小川作品によく出てくる設定。読み終えてみれば恋愛もの?
「ダブルフォルトの予言」
『レ・ミゼラブル』
これは正しく小川さんの真骨頂といった話。交通事故の保険金で得た金が偶然『レ・ミゼラブル』全79公演のチケット代と同額だったことから毎日通うことにした女性。ある時彼女に声を掛けてきた女は劇場に住んでいるという。
それにしても小川さんはよくこういう設定を思いつくものだと毎度感心する。
「花柄さん」
これも小川作品ではありそうな話。コレクションも過ぎれば、それが積もり積もってついには形を失くしていき悍ましいものと化していく。
主人公なりのこだわりが花柄とプログラムにもらうサイン。サインをもらう相手は主人公同様目立たぬ存在でなければならない。一方で「花柄」の方は主人公を際立たせている。分かるような分からないような。
「装飾用の役者」
ムーミン?
これまた小川さんらしい、コンパニオンが受けた奇妙な依頼の想い出。依頼人の老人一人のために舞台に作られた部屋で暮らし、老人一人のために芝居を演じる。
老人の目が怖い。
「いけにえを運ぶ犬」
シベリウスとストラヴィンスキー作品を聴きに行った男性の想い出
セントバーナード犬が曳いてやってくる本屋。渡り鳥の本がどうしても欲しいがお金のない少年(男性)は良からぬことを考えるが…。野生の本能?
「無限ヤモリ」
この作品のみ演劇関係ないな…と思ったら芝居小屋の廃墟が出てきた。
子宝に恵まれるという温泉地の保養所に滞在する女性。
宿の夫婦が売っているのは一対のヤモリ。そのヤモリの尾同士が絡まり縺れ合うと無限ヤモリになり、そのミイラは子宝のお守りになるという。
ラストシーンのインパクトはこの話がダントツ。もう誰もかれもが歪んで見える。
悍ましさと美しさ、シュールさと儚さ、現実感と虚構、様々な境界線を今回も楽しませてもらった。