小川洋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
夕暮れの給食室と雨のプールが1番好きだった
どの作品もはっきりしたラストは描かれず、文学的な表現で締めくくられる
私には難しくて、なぜそのようなことを表現したのか、はてな
ただ、1Q84のときのような不完全燃焼感、筆者への苛立ちはない
それは作品全体の雰囲気のためなのかな
柔らかく霧がかった、温かいようでどこかじめっぽさがある、雨の水彩画みたいな雰囲気だから、最後のもやもやも作品の一部として受け入れられた
結末をはっきり知りたい!という焦燥感がない
不思議と満足感がある
これが小川洋子の作品なのかな
角田光代のクリアな世界とは全然違う
最初は馴染めなかったけど、3作品読み終わった頃にはその世 -
Posted by ブクログ
◼️ 小川洋子「猫を抱いて象と泳ぐ」
予想外の内容だった。さる著名作家によく似ている。こんな人日本にいたのかと。
柔らかな、しかし、ん?象と?となるタイトル。おそらくプールで泳ぐ時なんらか象に関係した夢想があるのかな、穏やかな現代小説か児童小説っぽいものかなというイメージのまま入ったら、まったく違った。短編集「アンジェリーナ」は読んだことがあったけどこんな幻想的な長編だとは。
途中からこれはポール・オースターにそっくりだ、という気がしてならなかった。最後まで。
リトル・アリョーヒンとのちに呼ばれる少年は成長して巨大化したためデパートの屋上から降りることができず一生をそこで過ごしたいう象 -
Posted by ブクログ
ネタバレ雪がしんしんと降り積もると世界が沈黙したみたいに感じるよなあと思った。
「小川洋子氏の作品は音がないのだ」なんていう評価を読んだことがあるけれど、この作品では沈黙が静けさが静寂が何度もこんこんと表現されていて、ざわついて苦しい私の現実から目を背けるのにぴったりだった。「音がない」という評価については、そんなことないよと思う。小川洋子作品の特徴である"静謐さ"を「音がない」と表現するのはちょっと省略しすぎだと思う。
兄さんに手紙が届かないという部分で、「ああ、この人は生きているお兄さんとは違う沈黙の、死の世界に行ってしまったんだ」と気づいた。小川洋子さんの本では、「届かない手 -
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ネタバレ形や意味が人々の記憶から失われていく世界で残るものは?
目覚めるとこの世界から「なにか」が消えている。痛みもなく不安もなく、ただ消失する。鳥や切符やリボンや香水や左足が消えていく。
喪失を経験しない人間もいて、そんな人間を取り締まる秘密警察がいる。Aがいればその対極にいるBは立ち現れる。
不思議な世界と秩序を、慈しみと優しさを備えて表現することを得意とする小川洋子先生の一本技。終着点が読めるテーマだからこそどのようにして辿り着くのかが気になってページをめくった。
秘密警察という存在が小説世界に不穏と緊張を強いていて、隠し部屋にいる「R」氏とのミニチュアハウスのような柔らかな生活との対比が -
Posted by ブクログ
VR作品と本書の両方を楽しむと彼の人生の全体像が見えてすっきりします。
VRの公式のあらすじだけでもぜひ読んで欲しい。
小川洋子らしさ全開の洗練された短編集だったと
思う。忘れられたもの、閉じ込められたものに
手を差し伸べたやさしい小説だった。
自分にとって大事なものをここ最近は書き続けていると本人もどこかで言っていたのがよく分かる。
「琥珀のまたたき」「密やかな結晶」あたりと似た何かを感じたが、それ以上に主人公が小川洋子そのものである気がして、読んでいて満たされていくのを感じた。
編によっては好みが分かれるのは理解できる。
「今日は小鳥の日」は、共感はできない世界の1エピソードという受け