小川洋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
小川洋子 著
なんて素敵な小川洋子さんならではの世界に
誘ってくれる作品なんだろう。
やっぱり、この世界観好きだなぁと思う。
出だしの頁から既に誘われ、何処か知らない外国の土地に降り立って、物語の登場人物達に出会ってしまうのだ。
最初に姿を現した僕は、、少年かと思った。
そして朝早く裏庭のゴミバケツに潜んでいた動物らしきものは子犬かと思ったけれど…
予想は少しずつ外れてゆくが、それすら気にならないくらい、どんどん物語に引き込まれてゆく。
目をあけていられないほどの眩しい夏でも緑の匂いがする。泉がある。
静謐な雰囲気に漂いながら物語りを読む。
どうやら、少年は青年であるらしい。
そして、物語り -
Posted by ブクログ
幼い子どものいない世界。
主人公は年齢不詳だが、きっとものすごく若くはないのだろう…今は廃墟のように古びた幼稚園に住んでいる。
すべてが幼い子どものために作られた、部屋も食事も園庭もプールも講堂も、小さな作りのこの建物に。
きっと何十年も前からこの街から子どもたちは消えてしまったのだろう。
どうしてこの街の全ての子どもたちが死んでしまったのかはわからない。
ただ死んでしまった子どもたちへ、街全体が哀悼からくる切なさと、亡き子どもたちへの想いを抱き続けることへの静謐な幸福感…それらが感じられる、舞台は確かに日本と感じられるのに不思議な…安らかな感覚になれる世界。
亡き子どもたちの遺骨と遺髪でで -
Posted by ブクログ
細穴放電加工工場、なかなかに細かい仕事、しかし言葉だけではなかなかに分かりにくい。
グリコのポッキー工場、ポッキー食べたくなった。チャーリーとチョコレート工場ではないのねやはり。チョコレートがかかる所が秘密なんて、私が思っているような単純なものではないんだね。
ボート製造工場、あまり関わる事の無い物ではあるが製造よりも競技に対する熱い思い。
サンポカー工場、ザ・町工場、一つずつ手作りの丁寧な製品。縫製室が何故和室?そこが一番気になった。
ガラス管火炎加工工場、色々細かく書いてあるがちょっとどんな物か想像しづらい。こんな小さな作業大好き。
鉛筆製造工場、馴染み深いがこんなに沢山の工程を得ていて大 -
Posted by ブクログ
舞台、演劇をひとつの共通のキーにはしているものの、舞台の裏に隠れている「失敗係」の話、ただパンフレットだけを持ち帰る女性の話、子どもが一人遊びで劇を演じる話……と日常的な発想からひょいと一足飛びの、少し不思議な小川さんらしい繊細な話ばかりが展開されていて、どれも新鮮に楽しめました。
「指紋についた羽根」では乳母車に載る赤ん坊が空に伸ばす指、というだれもが想像できる純粋で尊い様子に、素敵な空想を添えていて、好きだなぁとただしみじみとそのくだりを読み返していました。
ほかも、オペラ座の怪人の洞窟と、口腔がなぜか巧妙にリンクしてめくるめく世界を展開していく「鍾乳洞の恋」や、糸と眼の比喩がとても艶 -
Posted by ブクログ
ネタバレ短編集。8話ある。
印象に残ったのは、『鍾乳洞の恋』『ダブルフォルトの予言』『花柄さん』『いけにえを運ぶ犬』『無限やもり』
『鍾乳洞の恋』
肩がいつまでも痛い。そういうのって辛い。
この物語では原因がわかっている。白い生き物のせい。
白い生き物はいったい何だろう?
室長が院長から離れてしまうと痛みが増すようである。
白い生き物が院長に恋してるのだろうか?それとも、室長が?
もう一度リセットして、歯の下を確認してみたい。
『ダブルフォルトの予言』
安堵と寂しさ。
最後の言葉…交通事故で助かり生き残ったことが失敗で、本当は死にたかったのか。
交通事故で保険金を受け取り、『レ・ミゼラブル』全公