小川洋子のレビュー一覧
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幼い子どものいない世界。
主人公は年齢不詳だが、きっとものすごく若くはないのだろう…今は廃墟のように古びた幼稚園に住んでいる。
すべてが幼い子どものために作られた、部屋も食事も園庭もプールも講堂も、小さな作りのこの建物に。
きっと何十年も前からこの街から子どもたちは消えてしまったのだろう。
どうしてこの街の全ての子どもたちが死んでしまったのかはわからない。
ただ死んでしまった子どもたちへ、街全体が哀悼からくる切なさと、亡き子どもたちへの想いを抱き続けることへの静謐な幸福感…それらが感じられる、舞台は確かに日本と感じられるのに不思議な…安らかな感覚になれる世界。
亡き子どもたちの遺骨と遺髪でで -
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藤原正彦(1943年~)氏は、東大理学部数学科卒、東大大学院理学系研究科修士課程修了の数学者、エッセイスト。お茶の水女子大学名誉教授。新田次郎と藤原てい夫妻の次男。『若き数学者のアメリカ』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。「論理より情緒」、「英語より国語」、「民主主義より武士道」という氏の自説を説いた『国家の品格』(2005年)は、200万部を超えるベストセラーとなった。
小川洋子(1962年~)氏は、早大第一文学部卒の小説家。『妊娠カレンダー』の芥川賞ほか、谷崎潤一郎賞、野間文芸賞、菊池寛賞、紫綬褒章等を受賞・受章。また、記憶が80分しかもたない数学博士と家政婦の母子との交流を描いた『博士 -
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この人の空想の世界は小さな世界で広がって、どんどん広がる。今回もそんな感じで、母親に家に監禁されて生活している姉オパール・弟琥珀・弟瑪瑙の生活とその山の中の別荘だった家で過ごす図鑑を基にした空想の遊び。
オリンピックごっこや事情ごっこなど、楽しそうな遊びが繰り広げられる。この作家の子供の時の遊びは頭の中でこのように繰り広げられたのではないかと思われるような遊び。そしてオパール、琥珀、瑪瑙それぞれが編み出した独自の遊び。琥珀は図鑑の下の空白に亡くなった妹を1つの糸くずのようなものから次々と活き活きと動くように描く。それが老後の琥珀に繋がるのが文の合間に現在として挟まれて話が進む。終わりがどのよう -
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小説家・小川洋子さんと、動物行動学者の岡ノ谷一夫さんが言葉の誕生について語る対話本。
岡ノ谷一夫さんは鳥の歌の構造などから、人間の言語の起源について考える研究などで知られる方で、この本にも動物の行動などからたてた言葉やコミュニケーションの誕生についての仮説が数多く載っており興味深かったです。
特に、ひな鳥が餌をねだる声は餌をくれないと天敵を呼ぶと脅迫しているという「脅迫仮説」は今まで考えたこともなかったので驚きました。少し調べてみたら、鳥の鮮やかな色の卵も抱卵を促すための脅迫という説もあるそうで、よく出来ているものだなあと……。人間の子どももずいぶん大きな声で泣いたりしますが、起源としては鳥 -
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人間個人の、存在としての痛々しさに苦しくなりながら読む。
身の回りの出来事や、自分の意識や認知の段階ではやり過ごしていることを豊かに発酵させて、あるいはジャムを作るように煮詰めて書かれているようだ。
痛い。ほんとは生きててずっと痛い。傷が痛む
ただ、それを注視していてもどうにもならないし、日々やらなくちゃらいけないことは積もっていくので傷に向き合っている時間はない。
ところが小川洋子の本を開くと、放置してきた傷がいかに深いか、どれほど化膿が悪化しているか、あるいは多少は癒えているか、などを思い起こさせる。
具体的な被害、加害の話ではないのに。
私はこんなに傷ついていたんだなあ、難し -
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たまにはこの様な物語もいいではないか。
ある日突然恋人を失い、その生きていた証を訪ねていく物語。
生前の彼のことを、実は何も知らなかった自分に少なからずショックを受けながらも、彼の弟と共に軌跡を追い彼の実家で過ごす。そして異国の地へ向かい、そこで出会うガイドと共に。
彼が存在していた記憶を思い出し、考え、それにどっぷり浸かりながら、いない事実を受け入れていく様がよく書かれていて、ページをめくる手がとまらなかった。
少しは楽になれただろうか?時間が解決とは良い言葉だが、どっぷり浸って溺れながら、でもゆっくり浮かんで生きていくのも悪くないと思った。
無性に好きな人に会いたくなった。