小川洋子のレビュー一覧
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◆自分の人生にとって一大事が起きている最中にも、自分以外の世界を観察している。
◆日記と向かい合ったとき、彼女は大人になったのです。「言葉を探す」という作業が、彼女を年齢以上に成長させたのだと思います。
◆真理を描くとき、そこに必ずユーモアが生まれます。人間が一生懸命に生きている姿は、やはりほはえましい。
◆隠れ家にあって肉体的には外へ行けないぶん、観察と考察の対象は自分へと向かいます。内側へずっと深く降りていく。逆にいえばこの環境が、彼女を普通の女の子より早く大人にさせたのだと思います。
◆彼女たちは隠れ家で徹底的に静かな生活を余儀なくされていたにもかかわらず、静謐さが貴重だという。 -
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【好きなだけ窪みに身を沈めていられるよう、ただ黙って放っておいた】
「一体こんなもの、誰が買うの?」という品を扱う店ばかりが集まった小さなアーケードの話。
「私」も店主たちも登場人物がみな大切なものがあり、繊細だけれど芯が通っているため、発言の一つ一つにハッと思わされる。
短編集のようだが話に繋がりはあって、ただ時系列がバラバラ。しかし不思議と違和感がない。
作中に「それを必要としているお客さんが来るまで、わたしたちはいつまでも待った。」という一節があるが、もしかするとこの話の一つ一つが読者が必要とするタイミングで読まれるようになっているのではないだろうか。 -
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紹介文にあるように、どれもうっすらと霞んで漂う悪夢のようだった。誰にも悪意は無いが、必然的に悪い方向へ傾いていっているかのようなバランスの取れない感覚に陥った。
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姉が妊娠した。つわりに苦しみ、家族に八つ当たりし、 母となる不安に苦しむ姉と接するうち、妹の心に芽生える不思議な感情。姉を苦しめるモノから姉を妹は守りたいという気持ちと裏腹に、妹はやがて、めまいのするような悪意の中へすべりこんで行く。出産を控えて苦しむ姉の傍らで、妹は鍋でジャムを混ぜる、その中には、ひそかな「毒」が。
家族の妊娠をきっかけとした心理と生理のゆらぎを、きらめく言葉で定着した芥川賞受 -
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しばらく小川洋子さんは満腹気味でゲップでそう。「オ」の棚を通り過ぎるときは迂回したり背表紙に視線あわせないように通るのですがそうなると必然的に小川糸さん、恩田陸さんもスルーしてしまうので残念に思ってしまう。
後ろ髪引かれながら奥に進むとあまり目立たない場所なんですが本殿の裏にあるお稲荷様のように新刊のラックが置かれているのです。覗いてみるとなんと小川洋子さんの新刊が立てかけてあって開いてみよやと言わんばかりに鎮座していらっしゃるではないですかぁあww
妖狐かぁああ!!
って、叫びたくなるのを抑えて、神託に「謹んでお受けいたします。」と柏手を打つよりほかありませんでした。(てへぺろ)
とゆうこと -
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野球選手(例えてイチロー)のその時々に使われる筋肉、フィギュアスケーター(例えて高橋大輔)のうなじ、ヨット選手の体の動き、などなど。
ありありと目に浮かぶがごとくの素晴らしい描写。
さすがにプロの文筆家だな(当たり前だけど)
イチローにしても高橋大輔にしても小川さんは熱烈なファンなんだろうな。
そうでなければここまで細かい観察はできない。
ふふっと笑ってしまったのは、外野手のたたずまいの説明というか、外野手の心の内を想像して書いている下り。
タイムを取ってマウンドのあたりで数人が作戦会議をしたり、はっぱをかけてる時の外野手の疎外感・・・って。
仲間の声より、スタンドの観客の声の方がよく聞 -
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ネタバレあの小川洋子さん作の絵本、ということで手に取った一冊。
読んでいて、映画『トイ・ストーリー』を思い出した。
小さなアンナちゃんの、お出かけ用のブラウスの一番上にとまっているボタンちゃん。丸いお顔のかわいい女のコ。
一番上にいるから、アンナちゃんの一番近くでアンナちゃんのことを見ていられる。いわば特等席に居られる存在。仲良しのボタンホールちゃんと一緒に、お出かけ中のちょっぴりおすましのアンナちゃんのことをニコニコしながら見守っている。
そんなボタンちゃんにある日ハプニングが。なんとボタンの糸が切れてしまってボタンちゃんが遠くに転がっていってしまい…。
小さなアンナちゃんがもっと小さな頃、大切 -
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人間の独特の能力であるフィクションを駆使して世界の可能性を紡ぎ出す作家と、サルやゴリラを通して人間を理解しようとしている研究者。この対比は、巻末に紹介される両者の往復書簡にて、研究者側が表現したものだ。本著はまさに、霊長類が保有する物語や現前性について、それを比較探求する事で真理に触れんとする試み、或いは、その探求や比較の楽しさを伝える本だ。
例えば、子殺しの意味について。社会生物学的に解釈すれば、自分の子どもを殺したオスは、自分の子どもを守れなかったオスより強い。だから一層、これから作る子どもを守ってくれるに違いない、とメスが見なす。こうした仮説は、人間側が自らの感性でゴリラ側に当て嵌めた -
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2013年に東北地方で出会った土着神事に亡くなった子どもが死後も成長し結婚できるように、玩具や文具を納めたり花嫁・花婿人形を収めたガラスケースを奉納する親たちからインスピレーション得て書いた作品だとか。
『ことり』から7年ぶりの長編小説。
子どもが死んで一人もいない町の元幼稚園に暮らす語り手の私、講堂にはガラスの小箱の中に、わが子を亡くした親たちが成長に見合う品々を収め続ける。(ぬいぐるみにお菓子、漢字ドリルからニキビ用の塗り薬とか)
西風の吹く頃には、子どもの遺髪を弦にした竪琴、乳歯や 爪を入れた小瓶の風鈴など、小さな楽器のイヤリングを耳たぶにぶら下げて丘の上で風を受け、「一人一人の音楽 -
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アンネの日記を小川洋子さんの視点から解説してくれている本。
大体のことを「へぇ〜」と「ふぅん」で右から左へ受け流す傾向があり、そんな薄っぺらな自分を変えたいけれど、「感性」なんてコントロールしようと思って出来るものでもなく、自分の人としての浅さを残念に思ってしまう。私のような底の浅い皆さん!そんな人たちに是非読んでほしい。
アンネの日記の一節が、小川洋子さんの感性を通すとこんなに広がっていくものかと驚き感心してしまう。同じ本を読んでも人によってこんなに得るものが違うのかと惨めな気持ちにもなる。(小川洋子と比べるなという話ですが)。
自分だけでは物語の世界をここまで広げられないので、本の読み方指 -
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臨床心理学者 河合隼雄先生と小川洋子さんの間で2005年と2006年に行われた対談。河合さんは2007年に死去され、氏にとって最後の対談となった。小川さんの長い後書きによると、本当は続きがあるはずだったらしく残念。
箱庭療法、源氏物語など、いろいろな話題から物語とは何かを語っている。カウンセリングで患者と対峙する場面についての河合さんの話からは、一筋縄ではいかない優しさが伝わってきて感動した。読んでいると温かい気持ちになれる一冊。
最も印象に残ったのは、長年、「なぜ小説を書くのか」色々な人から問われ続けてうまく説明できなかった小川さんが、”内面の深い部分にある混沌は論理的な言葉では表現できな