小川洋子のレビュー一覧
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敬愛する作家にして、読書好きにとっての憧れでもある小川洋子の、本にまつわるエッセイ集や、あとがき寄稿文を収録した一冊。
物語、それを生み出す作家、彼らにまつわる物事。本を形作るあらゆる要素に、深い敬意と、誠実でひたむきなまなざしが注がれている。
『偏愛短編箱』、『陶酔短編箱』等のアンソロジーもそうだけれど、小川さんの書評は単なる作品紹介や解説の枠にとどまらない。物語の世界に思いを寄せ、丹念な言葉でそれを紡ぐ、どこか祈りにも似た静かな熱意が感じられる。
その祈りに、もっと深く身を浸してみたい。心震わせてみたい。
私もそう願って、本書で紹介されている作品をひとつずつ読み進めているところ。 -
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ネタバレ博物館技師は、田舎に新しい博物館を建てる依頼を受ける。依頼主の老婆は、犯罪ギリギリの方法で手に入れてきた、亡くなった村人たちの形見を展示する博物館を建てようとしていた。
いいな、私が求めたのは、その肉体が間違いなく存在しておったという証拠を、最も生々しく、最も忠実に記憶する品なのだ。それがなければ、せっかくの生きた歳月の積み重ねが根底から崩れてしまうような、死の完結を永遠に阻止してしまうような何かなのだ。(p49)
老婆の言っていることは、恐ろしくもあるように思う。彼女は、亡くなった人々の形見を保存することで、「死の完結を永遠に阻止」しようとしているのである。
なぜ、彼女はそんなことをする -
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みんな少しずつ偏っていてそれはある意味孤独なんだけど、寂しさよりも静かな強さ、したたかな美しさを感じる短編集。
物語たちそのものもとても素敵。特にそれぞれの余韻たっぷりな終わり方がいい。
ただ何より、心情や状況の描写、比喩のひとつひとつがときめく程美しくてたまらなかった。
「亡き王女のための刺繍」と「一つの歌を分け合う」が特に好き。でも選べないくらいどれも良かった。
色々な方が小川洋子さんの文章はうつくしいと言っている意味が、読み始めてすぐに理解出来た。
淀みなく流れるようで、でも確実にひとつひとつがきらめいていて虜になってしまう。
博士の愛した数式をかなり昔に読んだはずだけど、それ以 -
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自分にとって、こういう読書案内を読む楽しみは2種類ある。1つは、次に読みたい本を見つけること、自分が読んだことがない本で、面白そうな本を見つけること、それが1つ。もう1つは、自分がかつて読んだ本が、どのように紹介されているか、小川洋子さんのような書き手が、それをどのように読んだのかを確かめること、これが2つ目の楽しみだ。
この読書案内で、前者、すなわち、これから読んでみたいな、と思ったのは、大岡昇平の一連の著作、カズオ・イシグロの「日の名残り」、「おくのほそ道」、宮本輝の「錦繍」、島尾敏雄の「死の棘」、アリステア・マクラウドの「冬の犬」、中上健次の一連の著作といったところ。
後者、すなわち、自 -
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ネタバレ確かインスタグラムで紹介されていた本。
小川洋子さんの文体が本当に好き。柔らかで優しくて丁寧に読まないと壊れてしまいそうな文体。
そこから紡ぎ出される物語もやはり柔らかで誰かを包み込むような作品。
あるアーケードの配達員さんのお話。不思議な店ばかりでそこにやってくるお客さんもなかなか癖がある。
でもさも普通ですよ、というように商売をしている店主たちと当たり前ですよ、というような顔をしてやってくるお客さんたちには違和感を覚えつつも優しい気持ちにさせられる。小川洋子マジック。
一番好きだったのはラビト夫人。
一番理解できなくて一番幸せになってほしいお客さんだった。 -
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骨壺の中の骨。
その骨は、生前、補聴器のセールスマンでした。
骨壺から始めて、彼の物語を遡っていきます。
耳の奥で誰かが音楽を奏でています。補聴器で塞げば、耳に棲むものがこぼれ落ちる心配はありません。
そんな小さな世界の奥へ奥へと導かれながら、人としての原点へと帰っていくような感覚になりました。
歳を重ねるにつれ「死」と「死に至るまでの苦痛」への恐怖が少しずつ増しているような気がしています。それでも、このような小説に触れることで、生死についての漠然とした不安がギュッと縮小されて手の中に収まり、穏やかな気持ちにもなるのです。
孤独を描くことで孤独を癒し、心に寄り添ってくれるような作品でした。 -
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まとまった小川洋子さんのエッセイを読むのは初めてでした。素晴らしい小説世界の創作秘話や素顔がうかがい知れ、小川さんの日常にそっと触れられた感があって興味深かったです。
小川さんの描く世界観が腑に落ちたり、語りかけられ考え思わず納得したりと、気にも留めない自分の日常を、新たな視点で見直すきっかけにもなりました。各編の内容がいかに深いことか! 「言葉を捨て去る」「答えのない問い」の前段などは、惚れ惚れします。
2012年から続く「神戸新聞」の連載、他に約10年間のエッセイから厳選された作品の数々…。日々の出来事、思い出、創作、野球やミュージカルなど、物語の裏側が描かれます。
ミュージカ -
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補聴器といえば、聞こえづらい外の音を伝えてくれるものだ。
だが、小川洋子さんの魔法がかけられると、耳の奥で鳴っている、かすかな音楽を聴き取るための道具に思えてくる。
そして、泣きたくなるような悲しみや苦しみに満ちた秘密が、思わずこぼれ落ちてしまわないように、そっと封印するための御守りのようにも感じられないだろうか。
補聴器の移動販売員だったお父さんは言う。
”閉じ込められ、誰からも見捨てられ、忘れ去られたものを救い出すのと、閉じこもっていたいものに、それが求める小さな空洞を与えてやるのは、私にとって同じことです。”
お父さんの骨壺の中から、かつて耳に棲んでいたものたちが四つの欠片として