【感想・ネタバレ】沈黙博物館のレビュー

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Posted by ブクログ

ある村の大きなお屋敷に住む、ちょっと気難しい風変わりな老婆に雇われた、若い博物館技師の物語です。
屋敷には老婆と一緒に暮らしている少女と、離れには庭師と、その妻である家政婦が住んでいます。
故郷を離れ、この村にたった一人で訪れた技師は、亡くなった村人たちの形見を集め、それらを展示、保存する博物館を作ってほしいと老婆に頼まれます。

閉鎖的な世界で起こる奇妙な出来事が、小川洋子さんの手にかかると、なぜこんなにも美しく魅力的になるのだろう。
名前のない登場人物たち。次々に起こる殺人事件の犯人は? 博物館技師の行く末は?
謎が深まり、非現実的な世界にどんどん引き込まれていきます。

“人々から忘れられた世界の縁にひっそりと建っている” 沈黙博物館というタイトルがとてもいいです。
物語の終わりには、悲しい現実を知るとともに、こんな隔離された場所にいることが居心地が良いとさえ思ってしまいます。

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2023年07月10日

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スリルのある小説です。見事に感情がぶつかり合い、不思議なパズルを完成させます。主人公が戸惑い、躓いたりして沈黙と戦います。謎めいた小説の好きな方におすすめです。何か返事があるかもしれません。

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2022年08月31日

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ネタバレ

小川洋子さんの静謐で美しい文章が、話の内容と組み合わさり、静かな不気味さとあたたかさを持った作品でした。博物館に集められていくモチーフはどれも少しぞっとするようなもので、それでもだんだんと収蔵物が増えるにつれて、博物館になっていく。沈黙の伝道師たちも印象的。こんな世界があればいいのにと思う。

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2019年07月21日

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すごくしんとした気持ちになりました。
爆弾事件と殺人事件のくだりは忘れていたので、こんなにミステリな作品だったっけ…と思いましたが好きです。
沈黙の伝道師も好き。わたしもかれらにひっそりと語りたいです。
遺品を展示する沈黙博物館、訪れてみたいです。
わたしなら一体何を展示されるのだろう…。
解説が、気になる堀江敏幸さんだったのも良かったです。この村はすでに命の無い人が住む場所、という視点は無かったので興味深く読みました。次に読むときは、このことを心に置いて読もうと思います。

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2018年01月11日

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久しぶりに胸を打つ話を読んだ。老婆の描き方が素晴らしく、魅力的だった。自分だったら形見は何になるのだろう、と想像するのも楽しめるというか。言葉にならない思いがたくさん溢れてきた作品です。読み終わった時、この本に出会えてよかったと思った。

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2017年05月30日

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象徴に満ち溢れている。

沈黙。形見。博物館。冬。
身寄りのないことが、逃げ場のないことが分かった主人公。高齢の老婆。バイソン。
解説でホロコーストとの関連に触れているが、その文脈で行くと多くのことがなにかにあてはまる。

そして、圧倒的で静謐な世界観。
特に沈黙の伝道師の存在が不可思議で考えさせられた。
死の象徴か。冷たくも温かくもない。常に意識すれば寄り添っているもの。あちらから語ってくることはない。

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2017年01月31日

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幻想的な長編小説。「博士の愛した数式」以来、小川洋子の長編はあまり読んでこなかったのだけれど、すごく良かった。

博物館技師の「僕」が訪れた幻想的な村。そこで「僕」は形見を陳列する「沈黙博物館」を作ることになる。形見を収集してきた「老婆」と、その娘だという「少女」、屋敷に代々仕えている「庭師」と「家政婦」とともに…。

相変わらず身体の表現、触感の鋭さが際立つ。老婆の皺とそこにたまる垢、昔一部を切除された歪な耳。少女のまつ毛や指先。体のパーツ一つ一つを慈しむように丁寧に表現する。
村の伝統や仕来り、不思議な涙祭りや、沈黙の伝道師、卵細工、森や屋敷の様子も、目の前に浮かんできそうなほど繊細。
そして、博物館技師がいかに博物館を愛してきたか、老婆がいかに形見に思いを注いでいたか、その奥深さ。

長さを感じさせない、読みやすく儚い小説でした。
途中で、ホラー?サスペンス?な雰囲気になりつつ、グレーエンド、というよりはセピア色の落ち着いた幻想的なエンディングでした。

彼は沈黙博物館に取り込まれてしまったのでしょうか…。
今後博物館に行ったときの受け取り方が変わりそうです。

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2015年04月23日

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終始登場人物の名前が出ていないのにも関わらず、そのことに読み終わるまで気がつかないほど自然で美しい文体で描かれています。庭師と主人公との穏やかな交流と、その下に潜む秘密が徐々に明らかになっていくのをどきどきしながら読みました。

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2013年07月25日

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『猫を抱いて象と泳ぐ』を思い出しながら読んでました。
チェスの世界と博物館の世界という違いはあれ、どこか似通った幻想的な雰囲気があります。そもそもどこの国の話なのかも判然としませんし。
登場人物はそれなりに(と言うか結構活発に)動き回りますし、会話も豊富なのですが、どこか絵画的な静止状態と静けさを感じてしまいます。何処から醸し出されるものなのか判りませんが、小川さん独自の静謐感です。最後は少々荒っぽい感じがありましたが。。。
続けて読む気はないけれど、これからも折に触れ小川さんの作品を読んで行こうと思います。

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2016年06月19日

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形見を収蔵する博物館で、それぞれの人生を象徴するものの文脈を紡ぐ物語。事件の犯人が誰なのか、途中の展開の仕方が絶妙でスリリングだった

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2024年04月18日

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ある村に博物館を建築するため、博物館技師が呼ばれた。
博物館で展示するのは死んだ村人たちの形見。
小川洋子さん独特の世界観。
静かに時は流れるが、なんとなく不穏な空気が漂います。
そこは音は聞こえるのに音がない世界。
震えました。

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2023年03月05日

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タイトル通り静かな話でした。でも、爆破事件や殺人事件が起きたりして、後半はドキドキしました。舞台になっている場所はどこなんでしょう?カナダ?北欧?勝手に想像してました。「沈黙の伝道師」寒がりでおしゃべりな私には、絶対なれそうもありません。

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2022年03月05日

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この物語は日本?外国?この世界?死後の世界?
シロイワバイソンも…
季節が変わる様子も見ているように感じた。
爆破事件や殺人事件の恐ろしい事件もおこるが
物語は優しい雰囲気のまま淡々と進む。

沈黙博物館の形見はメス、剪定ハサミ…
こんなものと思うがその人を語るにはとても重要なもの
私の形見として老婆は、僕は、なにを見つけて
くれるのだろう、聞いてみたい。

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2020年06月11日

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「博士の愛した数式」の小川洋子女史の小説。なんとも不思議な物語。人の形見を展示する沈黙博物館の作成依頼を受けた主人公。この博物館のある街がまた不思議。もしかして死者の街?

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2016年01月06日

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ネタバレ

最後が安部公房の砂の女のように主人公が囚われる
庭師が怖かった

文章は美しかった
小川さんの話の中で怖くなった話だった

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2015年03月29日

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形見の博物館。

一つ一つの形見のお話しが読みたくなる。

この博物館に保護されれば
自分が生きた証は残されていくのかと思うと
自分の形見も仲間に入れてほしい気がしました。

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2013年12月17日

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小川洋子の作家としての主題は「死あるいは死の空気」だろうが、この本も例に漏れず、そして濃密。
また読者に色んな想像の余地を上手く与えている。
主人公自身が実は黄泉の世界の住人なのか、『アンネの日記』を下敷きにした死者への祈りなのか等など、とにかく終わりに近づけば近づくほど様々な考えが湧いてくる(ちょっとした閃き含めてここには書き切れないな)。
なかなか手ごわい小説です。

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2013年06月21日

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ある日、主人公は生と死の間にある村を訪れる。
村の住人たちは、自分たちがすでに死んでいるにもかかわらず、その現実を受け入れられずにいる(二人の刑事も含め)。
そしていつか、彼らにはきっかけが与えられ、完全なる死の世界へと旅立つことに。

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2013年03月25日

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小川洋子4作め。時間の流れ方とか、雰囲気とか、読んでいると吸い込まれていく感じとか、とても好きです。

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2013年02月22日

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小川洋子の小説には喪失感や死の匂いが濃厚なのですが、今回はより一層感じさせられました。
集落の人々の形見を蒐集する老婆のもと、形見を展示する博物館を造るべく呼ばれた博物館技師。この設定だけでもクラクラしますが、そこに連続猟奇殺人や言葉を発することを封じ込めた沈黙の伝道師などなどの要素が合わせ鏡のように配され、世界を多重化していきます。
沈黙を扱うのに映像的でもあり、重々しい空気までもが可視化されたような感覚があります。決して楽しい訳ではないけれど、読み進めてしまう力を持つ小説でした。

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2012年10月24日

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死者の形見を集めて展示する沈黙博物館を作ることになった主人公。
依頼主を含めた5人での作業の過程で、主人公は次第にその魅力にひかれていく。

よくしゃべる老婆が衰弱していき、伝道師が修行を重ねて沈黙を極めて行くことが、沈黙博物館が完成に近づいていく様子を象徴している。

不気味で美しい物語。

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2012年07月29日

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小川洋子さんの、科学的な雰囲気を纏ったおとぎ話のような、でもちょっと怖い側面もあるお話。
沈黙博物館とは、無くなった人の形見を展示するという。イメージ的には、近代・現代から取り残されたようなヨーロッパの古びた町で、形見を集め続けてきた老婆。それを補佐するまだあどけなさが残る養女。そして使用人の夫婦。
そこに博物館技師として雇われた僕は、沈黙する形見を老婆との共同作業で、陳列物として完成させていく。
初めはその全ての異様さに恐れを抱きつつ加わるが、いつの間にか技師としての使命・喜びを見出して、
そして、老婆の死に伴って、その仕事を受け継いでいく。

この町は、どこか村上春樹の「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」に出てくる、主人公が迷い込む世界の終りの町を彷彿とさせる。
怖いけれど、惹きつけられる沈黙の町。
どこか死のイメージと重なる。

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2012年03月26日

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なんだかぞっとしながらも、読み進めずにはいられない。
小川さんの著書はそういうものが多い。
「博士の愛した数式」が有名だが、こういうちょっと不気味な作風の方が好みではあるな。

有名でもなんでもない、全く普通の人物の形見を集め、博物館を作ろうとする話。
その博物館の沈黙を想像するだけで・・・
横隔膜、縮む。

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2015年02月01日

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形見と沈黙を軸に進んでいく謎めいた物語です。登場人物の感情表現やスリリングな展開に引き込まれながらも、どのように物語が終着するのかが予想できず、先に先に読み進めてしまう変わった魅力のある本でした。

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2022年11月05日

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博物館技師として長閑な村を訪れた僕。
荷物は兄から譲り受けたお古の顕微鏡と
何度も読み返しているアンネの日記。
依頼主である老婆の面接を受けるのだが
そこは、形見の品々を展示する博物館だった・・・

後半に入ってから、物語の様相が変化してくる。
そういえば・・・
という空気は最初の頃から感じていた。
雰囲気に馴染んでスルーしておりました。
色んなところに違和感という形で存在してました。
最初の段階で僕が語っている博物館技師の仕事。
なるほど・・・沈黙を守る博物館・・

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2021年05月10日

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どこか遠い小さな村にある沈黙博物館。そこには人が生きた形見を展示してあるという。不思議な博物館の誕生にまつわる寓話である。私の愛する人が死んだとき、その形見が人知れずその博物館に展示してあったらうれしいだろうか、嫌だろうか。もし私が死んだとき、その形見が人知れず展示してあったら、私はそれを望むだろうか、それとも望まないだろうか。

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2021年04月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「博士の愛した数式」を読み、小川洋子さんの他の作品を読みたい!と思い、作品のタイトルに惹かれ手にした一冊。
全体を通して、冬の静けさと薄灰色の重たい雪、というイメージ。

正直、読後感はすっきりしなかった。
(恐らく)自己表現のためにと、そんな勝手な理由で殺された挙句、形見として乳首飾られたくなんかないよ!って思ってしまったから仕方ない。

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2014年03月12日

Posted by ブクログ

密やかな結晶を読んだときと同じ。
意味はわからないけど何か強く引き付けられて、意味はわからないのに息を詰めて一気に読んだ。
市川春子の漫画に少し似ている。
小川洋子の作品は国を感じさせないところがある。

落ちている髪の毛を不快に思うのは、そこに有機物から無機物への変容を見るから。
その人間が生きていたと言う証拠である物体(形見)は、髪の毛と同じく生前は有機物であり死後は無機物であった。その無機物に新たな役目、展示品としての役目を与えることで、有機物へと再転換させる。
形見とは、卵細工と同じなのかもしれないと思った。

修道院の中の描写が素晴らしく美しい。あのシーンだけでも、読んでよかったと思った。

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2014年01月17日

Posted by ブクログ

まずタイトルがいい。「沈黙博物館」いいね。小川洋子の描く世界は不思議でどこかこわい。
主人公は村人の遺品を納めるための博物館を作る仕事をするために不思議で遠い村にやって来ることろから物語は始まる。
面白かったし、世界観も良かったんだけど、他の小川洋子作品に比べると個人的にはちょっと物足りない感じがした。なにが足りなかったのは自分でもよくわからないんだけど。

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2012年09月18日

Posted by ブクログ

 1985年 村上春樹著 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』と似ている。こちらは2000年に筑摩書房より刊行された。とりとめのない話がだらだらと続いていると感じるか、それともそこに深い真理を見出すのか読み手によって評価が分かれる。好き嫌いがはっきりする小説だ。エンターテイメント性なしと、あえて言い切ろう。

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2012年02月23日

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