小川洋子のレビュー一覧

  • 凍りついた香り

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    たまにはこの様な物語もいいではないか。

    ある日突然恋人を失い、その生きていた証を訪ねていく物語。
    生前の彼のことを、実は何も知らなかった自分に少なからずショックを受けながらも、彼の弟と共に軌跡を追い彼の実家で過ごす。そして異国の地へ向かい、そこで出会うガイドと共に。

    彼が存在していた記憶を思い出し、考え、それにどっぷり浸かりながら、いない事実を受け入れていく様がよく書かれていて、ページをめくる手がとまらなかった。

    少しは楽になれただろうか?時間が解決とは良い言葉だが、どっぷり浸って溺れながら、でもゆっくり浮かんで生きていくのも悪くないと思った。
    無性に好きな人に会いたくなった。

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    2022年07月17日
  • ゴリラの森、言葉の海(新潮文庫)

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    ゴリラについて作家と霊長類学者が語り合う。言葉を持たない霊長類を研究するには、彼らの活動を言語化しなければならない。その過程でいろいろな発見がなされるわけであるが、作家の想像力と学者の観察力が出合い、ゴリラを介在して二人が見出したものを言語化していくのを読むのは有益であり、楽しい。

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    2022年07月09日
  • やさしい訴え

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    ニ短調。「やさしい訴え」は18世紀フランスの宮廷作曲家ジャン=フィイリップ・ラモーの作品。僕には判りませんがラモーにしてはしっとりとした小品だそうだ。洋子さんの創作する物語は既にここにある。誰もが平穏の中にいる。洋子さんの長編4作目はピアノを弾けない指、殺された婚約者、暴力を奮う夫。それに私が今回の登場人物。快い旋律は気分を高揚させる。それはまるで愛の営みの様に。

    洋子さん節を勝手に哀妖艶愛小説って命名してますが、今回は妖と艶の部分は感じません。純愛と独占欲。結婚と愛情について問題を投げ掛けられました。今まで気付きませんでしたが発問性に惹かれているのかも。

    結婚したい人と愛する人の違い。結婚したい人には相手が嫌がる自分を隠してしまう。愛する人は相手が嫌がる事まで理解し合い、逆にそれが好きだったりする。自分の全てを曝け出し、リラックスできる空間を共存し合う。一般的に互いに愛しているから結婚するんでしょうが実は互いに全ての自分を見せていないケースもあるんではないでしょうか?どこかで見えてしまうとこんな人ではなかったなんてことに。今回の主人公はちょっと自分の愛に貪欲でちょっと残酷。こんなキャラ、新鮮でした。でも根本は優しいのかな。いいわ。Myヨコフェス第19弾

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    2022年07月07日
  • 口笛の上手な白雪姫

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    ネタバレ

    自分の世界で丁寧に繊細に生きる人々の8話の短編集
    短編はあまり好みではないと思っていたけど、
    十分に惹き込まれ充たされた

    中でも印象に残ったのは、
    仮名の作家
    途中から、主人公はまるでストーカーじゃないかと気づきドキドキさせられ
    空想と現実が見事に折り混ぜられまるで映画を観てるような気持ちになった
    狂気の中にも、儚く美しい描写シーンがありきらきらと光ってる
    タイトルにもなっている、口笛の上手な白雪姫のお話もとても好き
    小母さんと赤ん坊が愛おしい

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    2022年06月27日
  • 刺繍する少女

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    不思議な世界感。
    ただそこに置かれている静物にも意志を感じ、時には狂気さえ見えます。
    そんなところもひたすら優しい文章の中で共感してしまいます。
    誰にも自分の気持ちは理解できない、ひとりの世界に漂います。

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    2022年06月26日
  • 心と響き合う読書案内

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    ラジオ番組メロディアスライブラリーで紹介された本をまとめられた最初の本。
    読んだことのあるものあり、ないものあり。

    出来れば手元に置いて読書の参考にしたいかな。

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    2022年05月12日
  • 余白の愛

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     私の母が歳を取り、難聴になったので、補聴器を試してみたけど、音が聞こえすぎて辛いと言っていました。この話の主人公も色んな聞こえなくてもいい音が、ずっと聞こえているそうで、大変そうでした。
     後半は、モヤモヤした感じがスッキリするのかと思い、いっきに読んだのですが、やはり小川洋子さんの作品らしい終わり方でした。

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    2022年05月03日
  • ボタンちゃん

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    小川洋子さん初の絵本は、小説で時折見られる、妖しくも甘美な毒は無く、お子さんと親御さんに送る、やさしい物語でした。

    ただ、それでも、日の当たらなくなったものたちへの温かい眼差しには、絵本でも、やはり小川さんは小川さんだなと感じられました。

    それは、幼い頃のお子さんの成長を助けたが、やがてお役御免となり、記憶の片隅に取り残された物たちへの眼差しを、ボタンちゃんの素敵な励ましを通して、私たちに見せてくれます。

    確かに、実際に使われていた間は、幼いお子さんにはまだ自意識が目覚めていないから、やむを得ない部分もあるのだが(思い出せないだけで実際嬉しかったんだろうな)、大きくなってから実は、こんなに助けてもらったんだ、いつも一緒にいてくれてありがとうといった気持ちを芽生えさせるような、そんな温かいメッセージを、お子さん本人とともに、親御さんにも、子どもの成長を辿る思い出深い物だったことに気付かせてくれる、素敵な絵本だと思います。

    また、岡田千晶さんの紗のかかったような絵には、いつも、悲しくも懐かしい素敵な思い出を想起させられて、感傷に浸ることが多かったのですが、今回は、ボタンちゃんの可愛さも相まって、また良かったです。

    もちろん、ボタンホールちゃんも(表紙で気付いてあげられなくて、ごめん)。

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    2022年04月24日
  • 凍りついた香り

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    なぜ、夫は死んでしまったか?謎を解くために旅をするけど謎は簡単にはとけなくて・・・。主人公と一緒にチェコを旅している気分になりました。(チェコに行ったことはないのだけど。)

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    2022年04月08日
  • アンネ・フランクの記憶

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    ミープさんやアンネのお友達だった方の言葉に重みを感じる。この本とアンネの日記を読むと平和を願う気持ちが強くなる。

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    2022年04月07日
  • ホテル・アイリス

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    主人公が10代ということもあり、またそれ以外にも感情移入はできなかったのですが、主人公の伯母ぐらいの気分で読んでいました。恋は盲目ってことですかね。最後は私、ほっとしました。

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    2022年03月30日
  • やさしい訴え

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    ネタバレ

    「音が溶けて蒸発していく」

    いくつもの三角関係
    嫉妬からの破壊活動、クラッシャー行動。感情的な行動のあとにいくら修復を望んでもどうしても気まずさが消えず。
    新田氏には最高の離婚の綾野剛の役を思い出した。
    淡々とそして意外にもドロドロしていくが、最後は静かに終わる。
    林の中で暮らしを続ける描写がすばらしかった。

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    2022年03月18日
  • 不時着する流星たち

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    実在した人からイメージして書いた短編集のようです。小川洋子さんの小説は静かで穏やかな雰囲気なので、寝る前が読書タイムの私にはぴったりです。今回も毎晩1篇ずつ(たまに2編)読みました。どの話も良かったです。1番好きなのは「若草クラブ」かな。

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    2022年03月17日
  • 沈黙博物館

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    タイトル通り静かな話でした。でも、爆破事件や殺人事件が起きたりして、後半はドキドキしました。舞台になっている場所はどこなんでしょう?カナダ?北欧?勝手に想像してました。「沈黙の伝道師」寒がりでおしゃべりな私には、絶対なれそうもありません。

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    2022年03月05日
  • ゴリラの森、言葉の海(新潮文庫)

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    霊長類学者山際寿一と作家小川洋子の対談集。山際さんは京都大学学長になる人を巻き込む言い方が出きる人だなと感じ入った。小川さんは対話する人のこれまでの経験や記憶のかけらをうまく言葉にさせる力がある人だなと思った。山際さんの人だけが持つ家族を結びつけるものを愛と叫ばせたのは、小川さんの力だなと思い、吉本の対幻想を思い起こさせた。ゴリラの子殺しの話は結局原因が自分の子供を残したい雄の欲望の発露なのか、人に生息域を狭められたことによる反動なのか結論が出ていない。なんとも陰鬱な話だがゴリラもチンパンジーも子殺しをするなら、人間の児童虐待も動物としての性なのかとも思ってしまった。さまざまな感慨を生む刺激に満ちた対談である。

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    2022年02月24日
  • 凍りついた香り

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    香りが記憶を表す、洗練されたお話。
    数学、スケート、香水瓶の棚、どれにおいても綻びのない綺麗な完璧さをもっており、ただただ美しかった。
    どうして彼が間違いを選んだのか、最後まで語られることはないが、それすらも神秘的と言わざるを得ない物語。

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    2022年02月23日
  • 夜明けの縁をさ迷う人々

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    ファンタジー要素が強そうだったり、
    ホラーっぽい展開だったり、
    不思議な世界観の9つの短編集。

    あり得ないような描写が
    さもリアルに描かれているように感じた。

    イービーのお話は、
    どことなく猫を抱いて象と泳ぐの世界観に似ている気がした。

    小川洋子さんの描く世界の人物は
    小さな幸せをこれでもかと抱きしめて
    大事に大事にしているイメージ

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    2022年02月14日
  • 偶然の祝福

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    久しぶりに再読

    【失踪者たちの王国】
    “さよならも告げず、未練も残さず、秘密の抜け道をくぐってこちらの世界から消えていった、失踪者たちが住むという王国。誰でもたやすく足を踏み入れられるという訳でないらしい王国”
    『嘔吐袋』の話はこの話だったかと再確認。

    どこかで読んだと思っていても短編は何に入っていたか忘れがち。失踪する側は理由や事情があって、日常の延長で自覚なく失踪するものだが、失踪される側は特別な事になってしまうという事実が不思議な感触。

    【盗作】
    「あれ? この話……」となる作品。
    他の短編集にある話とリンクしているから、混乱しがち(『三月は深き紅の淵を/恩田陸』と同じ感触の掴みきれない感覚が好き

    【キリコさんの失敗】
    キリコさんがチャーミングで実に魅力的!

    【エーデルワイス】
    穏やかなのに不穏で良い。

    【涙腺水晶結石症】
    絶望的な状況で判断を誤る人や助けを求められない人が苦手で、その種の話には苛立ちを感じやすいがが、作品が淡々とししていて、その悲劇的な状況に悲壮感がないから神経を逆撫でされる手前でとどまる。スッと終わるから後味は悪くない。

    【時計工場】
    指揮者、果物を背負う老人、愛犬、果物、マンゴー色の蝶……短編集だけと連作だし、連作だけど分断されていて「おや?」と登場人物の作品内の時間軸を探す作業が発生する。逃げ出したいくらいの湿度が心地良い。

    【蘇生】
    短くてスッと消えていく最後の短編。湿度の高い短編の後にカラカラに乾燥した短編が来て、潤いが欲しいと感じた辺りでストンと断ち切られる。

    【変化の段階/川上弘美】
    解説じゃなく新聞読書面からとのこと。文庫本の裏面解説も魅力的。
    “失われたものたちの世界、と私は小川洋子の世界を呼んでいる。”の一文に共感しかない。

    最初に小川洋子作品を手にしたのは『薬指の標本』だった。ゴシック調の表紙に惹かれて、何冊か読むあちに気がついたら「取り敢えず読む」作家リストにインしていた。今のところ『沈黙博物館』が自分内ベストな気がしているけど、結局のところどの作品も違和感はあるのに好きなんだよなあ。

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    2022年02月12日
  • 凍りついた香り

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    死者の記憶を辿る過程で現実と空想の曖昧な境目を往来する涼子。夫の過去や死の輪郭が少しずつ明確に認識されていく一方で、その中身は何処まで行ってもぼやけたまま。予め用意された”間違い”へと突き進む彼の姿は理解はできても共感はできず、その掴みどころの無さに儚さ/畏ろしさのような物を感じた。
    ”過去は損なわれず記憶は保存される”という幸福な事実に縋り付くようにして読み終えた、静謐な語り口で紡がれる喪失と救済の物語。

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    2022年02月07日
  • まぶた

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    様々な視点からのまぶたの連想は、時として切なく影を感じながらも光に近づくような何処かそんな感覚を思わせるものがありました。

    外国でのストーリーも幾つかあり、海外に夢を置く自身にとって一期一会の旅の中での出来事に、日常離れしたまた違ったワクワクもありました。

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    2022年01月29日