小川洋子のレビュー一覧
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たまにはこの様な物語もいいではないか。
ある日突然恋人を失い、その生きていた証を訪ねていく物語。
生前の彼のことを、実は何も知らなかった自分に少なからずショックを受けながらも、彼の弟と共に軌跡を追い彼の実家で過ごす。そして異国の地へ向かい、そこで出会うガイドと共に。
彼が存在していた記憶を思い出し、考え、それにどっぷり浸かりながら、いない事実を受け入れていく様がよく書かれていて、ページをめくる手がとまらなかった。
少しは楽になれただろうか?時間が解決とは良い言葉だが、どっぷり浸って溺れながら、でもゆっくり浮かんで生きていくのも悪くないと思った。
無性に好きな人に会いたくなった。 -
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ニ短調。「やさしい訴え」は18世紀フランスの宮廷作曲家ジャン=フィイリップ・ラモーの作品。僕には判りませんがラモーにしてはしっとりとした小品だそうだ。洋子さんの創作する物語は既にここにある。誰もが平穏の中にいる。洋子さんの長編4作目はピアノを弾けない指、殺された婚約者、暴力を奮う夫。それに私が今回の登場人物。快い旋律は気分を高揚させる。それはまるで愛の営みの様に。
洋子さん節を勝手に哀妖艶愛小説って命名してますが、今回は妖と艶の部分は感じません。純愛と独占欲。結婚と愛情について問題を投げ掛けられました。今まで気付きませんでしたが発問性に惹かれているのかも。
結婚したい人と愛する人の違い。結婚したい人には相手が嫌がる自分を隠してしまう。愛する人は相手が嫌がる事まで理解し合い、逆にそれが好きだったりする。自分の全てを曝け出し、リラックスできる空間を共存し合う。一般的に互いに愛しているから結婚するんでしょうが実は互いに全ての自分を見せていないケースもあるんではないでしょうか?どこかで見えてしまうとこんな人ではなかったなんてことに。今回の主人公はちょっと自分の愛に貪欲でちょっと残酷。こんなキャラ、新鮮でした。でも根本は優しいのかな。いいわ。Myヨコフェス第19弾 -
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小川洋子さん初の絵本は、小説で時折見られる、妖しくも甘美な毒は無く、お子さんと親御さんに送る、やさしい物語でした。
ただ、それでも、日の当たらなくなったものたちへの温かい眼差しには、絵本でも、やはり小川さんは小川さんだなと感じられました。
それは、幼い頃のお子さんの成長を助けたが、やがてお役御免となり、記憶の片隅に取り残された物たちへの眼差しを、ボタンちゃんの素敵な励ましを通して、私たちに見せてくれます。
確かに、実際に使われていた間は、幼いお子さんにはまだ自意識が目覚めていないから、やむを得ない部分もあるのだが(思い出せないだけで実際嬉しかったんだろうな)、大きくなってから実は、こんなに助けてもらったんだ、いつも一緒にいてくれてありがとうといった気持ちを芽生えさせるような、そんな温かいメッセージを、お子さん本人とともに、親御さんにも、子どもの成長を辿る思い出深い物だったことに気付かせてくれる、素敵な絵本だと思います。
また、岡田千晶さんの紗のかかったような絵には、いつも、悲しくも懐かしい素敵な思い出を想起させられて、感傷に浸ることが多かったのですが、今回は、ボタンちゃんの可愛さも相まって、また良かったです。
もちろん、ボタンホールちゃんも(表紙で気付いてあげられなくて、ごめん)。 -
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霊長類学者山際寿一と作家小川洋子の対談集。山際さんは京都大学学長になる人を巻き込む言い方が出きる人だなと感じ入った。小川さんは対話する人のこれまでの経験や記憶のかけらをうまく言葉にさせる力がある人だなと思った。山際さんの人だけが持つ家族を結びつけるものを愛と叫ばせたのは、小川さんの力だなと思い、吉本の対幻想を思い起こさせた。ゴリラの子殺しの話は結局原因が自分の子供を残したい雄の欲望の発露なのか、人に生息域を狭められたことによる反動なのか結論が出ていない。なんとも陰鬱な話だがゴリラもチンパンジーも子殺しをするなら、人間の児童虐待も動物としての性なのかとも思ってしまった。さまざまな感慨を生む刺激に満ちた対談である。
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久しぶりに再読
【失踪者たちの王国】
“さよならも告げず、未練も残さず、秘密の抜け道をくぐってこちらの世界から消えていった、失踪者たちが住むという王国。誰でもたやすく足を踏み入れられるという訳でないらしい王国”
『嘔吐袋』の話はこの話だったかと再確認。
どこかで読んだと思っていても短編は何に入っていたか忘れがち。失踪する側は理由や事情があって、日常の延長で自覚なく失踪するものだが、失踪される側は特別な事になってしまうという事実が不思議な感触。
【盗作】
「あれ? この話……」となる作品。
他の短編集にある話とリンクしているから、混乱しがち(『三月は深き紅の淵を/恩田陸』と同じ感触の掴みきれない感覚が好き
【キリコさんの失敗】
キリコさんがチャーミングで実に魅力的!
【エーデルワイス】
穏やかなのに不穏で良い。
【涙腺水晶結石症】
絶望的な状況で判断を誤る人や助けを求められない人が苦手で、その種の話には苛立ちを感じやすいがが、作品が淡々とししていて、その悲劇的な状況に悲壮感がないから神経を逆撫でされる手前でとどまる。スッと終わるから後味は悪くない。
【時計工場】
指揮者、果物を背負う老人、愛犬、果物、マンゴー色の蝶……短編集だけと連作だし、連作だけど分断されていて「おや?」と登場人物の作品内の時間軸を探す作業が発生する。逃げ出したいくらいの湿度が心地良い。
【蘇生】
短くてスッと消えていく最後の短編。湿度の高い短編の後にカラカラに乾燥した短編が来て、潤いが欲しいと感じた辺りでストンと断ち切られる。
【変化の段階/川上弘美】
解説じゃなく新聞読書面からとのこと。文庫本の裏面解説も魅力的。
“失われたものたちの世界、と私は小川洋子の世界を呼んでいる。”の一文に共感しかない。
最初に小川洋子作品を手にしたのは『薬指の標本』だった。ゴシック調の表紙に惹かれて、何冊か読むあちに気がついたら「取り敢えず読む」作家リストにインしていた。今のところ『沈黙博物館』が自分内ベストな気がしているけど、結局のところどの作品も違和感はあるのに好きなんだよなあ。