小川洋子のレビュー一覧

  • 博士の本棚

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    あとがきすら乱暴な文体の作品が増えてきた日本の文学界にあって、小川洋子は気持ちがいい。


    作家の読む本というのは、それだけで気になるもの。

    ある作家が書いた本をさらに魅力的に見せる魔法のようなものがある。もちろん逆もあるが。読む方は文が短いと読むのが楽という単純な調子になるが、書くほうが短くまとめるのは特に気に入った本については難しいものだ。

    そんな難しさを見せず、しかし生きた日本語でありながらその世界に入れる文を書く小川洋子。
    若い頃、同時代日本人の作品をほとんど読まなかったが、今は特に女性ならではの感情の豊かさに惹かれる。

    蠅取り紙は、私も薬品や電気を使いたくないので今でも使ってい

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    2019年03月17日
  • 世にも美しい数学入門

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    数学は難しいというイメージですが、話を聞いていると(読んでいると)、数学者が数学に魅了される気持ちはよく分かります。
    自分にはやはり難しい世界ですが、美しいというのは理解できたと思う。

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    2019年01月06日
  • まぶた

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    意味不明と片付けてしまえばそれまで、とも言えるようなシュールな世界観。でもそこにはうっとりするような美しさとか、心に引っ掛かるイメージとか、温もりとかが確かにあって、これぞ芸術、文学的文章……という感じ。堀江さんの解説を読むとまたなるほどなあと思います。

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    2019年01月03日
  • 最果てアーケード

    ネタバレ

    面白かったです

    一部ネタバレありです。
    どこかに身を隠す様、ひっそりと存在していて、それでも誰かに必要とされる小さなアーケードを「私」の視点から描いた作品。
    死を題材とした話が多いため暗い印象がありますが、どこか暖かく優しさを感じさせる不思議な世界観でした。

    ラストシーンが特に印象深く「私」がどうなったのか考えさせられました。
    自身の髪で「遺髪のレース」の制作を依頼したこと、図書館で、おそらく故意に電話番号を間違えたことなどから「私」は死に向かう準備をしていたのだと思います。

    人さらいの時計が止まる描写では、「私」の時が止まったことを表しており、最後の二行で、それでも尚、生きている者の日常が

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    2018年10月23日
  • ボタンちゃん

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    ネタバレ

    あらすじ?

    アンナちゃんのよそ行き用のブラウスの一番上のボタンのボタンちゃんと彼女を支えるボタンホールちゃん。ある日、ボタンちゃんが外れてしまい、部屋の床へ転がってしまいます。ボタンちゃんは、部屋のあちこちを探検しながら、アンナちゃんが小さい頃に使っていて忘れ去られてしまった思い出の品たちに会い、心を通わせていきます。ベットの下にいたところをアンナちゃんのお母さんに見つかったボタンちゃんは無事にボタンホールちゃんの元へ戻りました。時を経てアンナちゃんが大きくなり、ブラウスも着られなくなってしまうと、ブラウスも思い出の品に変わります。


    感想
    表紙ににっこりと可愛く笑ているボタンちゃんが描か

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    2018年09月15日
  • 凍りついた香り

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    小川洋子さんの小説で共通して言えるのが、誰もが日常で出会うふとした瞬間を的確だけどほんの少し美しく代わりに表現してくれる、そんな一文との出会いが必ずあること。物語の世界に入っているはずなのに、と同時にその一行と出会うためにページをめくっている自分がいる。

    トロフィを磨く、ドライブ、お料理、、、そんな日常も小川さんらしく丁寧に細やかに一瞬も取りこぼさず描写されていて、読者としても一行も逃せない。

    ノンフィクションっぽいけれど、時たまダークなファンタジーなフィクションの世界と行き来する。その揺らぎがたまらなく好き。

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    2018年08月16日
  • 凍りついた香り

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    突然の恋人の自殺をキッカケに恋人の過去を辿り、改めてその思い出に浸る…それがいつもの小川洋子さんらしい優しく不思議な空気感の文章で綴られている。
    弘之の世界観は予定調和的なのか?記憶の泉を作り自らの命を絶つ事で永遠に記憶として生きる、というのが究極の整理・分類なのか?逆に彼に触れた人が全て彼の世界に整理されていくのか?孔雀の番人を通じて行き来できる記憶と現実のどちらに私たちは生きているのか?
    突然の死によって逆にその人の事を深く知るようになる事を通して、人と人がわかりあう事の難しさとだからこそ相手の事をあたまで理解するのではなく「匂いとして」受け入れる、そんな受け止め方もできるのかな?って思い

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    2018年07月16日
  • 科学の扉をノックする

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    作家の小川洋子氏が科学のスペシャリスト7人にインタビューしたもの。

    ふだん関わりのない事柄であるが、とても面白く読むことができた。
    特に、宇宙に関する内容が印象深かった。
    「木星、土星、天王星、海王星、この四つはガスでできているため、大地がありません」(p16)
    だから、人間が降り立つことはできないのだそうだ。
    ガスでできた星。
    宇宙の神秘さを感じさせられた。

    また、粘菌の生態も興味深かった。
    動物と植物の中間の様な状態になって、増殖を繰り返す。
    生物の動きには、すべて意味があることを改めて感じた。

    人間の力の及ばない自然科学の世界には、ロマンと壮大な気持ちを覚えた。

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    2018年05月18日
  • 夜明けの縁をさ迷う人々

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    面白かったです。タイトルも良いです。
    不思議でなんだか奇妙だな、と思いながら読んでいると、終盤になるにつれ狂気を帯びてくるお話たち。
    特に、「教授宅の留守番」「涙売り」が好きです。「ラ・ヴェール嬢」の淫靡さも好き。
    最初と最後の短編が野球のお話で、最後のお話は、小川洋子さんはこんな眼差しで野球の応援をされているのかな…というのが感じられました。

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    2018年05月10日
  • 凍りついた香り

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    『匂いは過去に向いて漏れている』

    小川洋子の作品を読んでいる時、私の身体は薄い膜に覆われて、現実の中に確かにいるはずなのに、ひんやりと凍りついた空気の中に閉じ込められてしまう。

    寒くないのに、身体が冷え切ってしまったような感覚に陥って本を閉じては何度も腕を摩る。そしてその摩る自分の手のひらが、指先が思いのほか熱くてその生暖かさを気持ち悪いと感じてしまう。

    匂いを感じている。夜の匂い。メレンゲ菓子の喉に残るような甘い香り。サボテンの花が咲いている。雨の音が一度遠ざかる。

    小川洋子の作品を読むという事。それは普通の読書体験ではない。自分がどこにいるのか感じることができる。私がここにいるとい

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    2018年05月08日
  • 凍りついた香り

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    面白かったです。ひっそりと匂い立つような世界が好きです。
    数式をレース編みのように感じるところや、記憶は損なわれない、というところは、小川さんの他の作品にも通じるところがあるなと思いました。
    とてもひっそりと、恋人の死を受け入れる主人公が哀しくも、最後は前を向けたのかなと思います。

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    2017年12月18日
  • 心と響き合う読書案内

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    読んだことある本だけ読んだ。
    新しい視点がかかり面白かった。
    他に取り上げられている本も読んでみたいと思い。メモを取った。

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    2017年12月15日
  • 洋子さんの本棚

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    小川洋子さんは岡山市朝日高校出身、内田百閒の居た古京町の隣の森下町で生まれたらしい。夕方5時、県庁のドボルザークの「家路」放送で家に帰るのは、あの街だけの特権だった。さらには、やがてしばらくは倉敷市に住んでいる(「玉島に10年住んでいた」というのは異議がある。倉敷市鶴の浦は玉島ではない)。平松洋子さんは、なんと倉敷市中島の出身、私より2歳上だから、何処かですれ違っていたかもしれない。渡辺和子学長がいた頃のノートルダム精心高校の出身。

    この本は、2人の洋子さんが、少女、大人の女性、その他人生の中で読んできた愛読書を持ち寄り、お互い読んで、お互い感想を出し合うというもの。本の世界は、ワールドワイ

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    2017年12月09日
  • 科学の扉をノックする

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    ネタバレ

    星座を作っている星、これは変わらない星と言うので恒なる星恒星と名付けられたわけです。ちょこまか動く回っているのが惑う星惑星です 孤立した小さな存在ではなく、無限の宇宙とつながっているのだと言う、不思議な安堵感を覚える 宇宙を探索することは、自分自身とは何もであるかを探索することに等しくなる 鉱物学者には、ルーペとハンマーを持って山へ行き、石を叩く義務があると先生はおっしゃる。大地に出向いて石を叩く、これが鉱物学者の最初の仕事だと先生はおっしゃる 薬の代わりにお笑いビデオを出すような病院が出てくるかもしれません。だから私は、笑は副作用のない薬だ、と言っているんです 要するに大きな仕事は

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    2017年12月01日
  • 洋子さんの本棚

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    小川洋子、平松洋子『洋子さんの本棚』集英社文庫。

    同郷で同世代のダブル洋子により、本を切り口に人生を語る対談集。二人の洋子が何を読み、どう生きてきたのかが赤裸々に語られる。どちらかと言えば女性向けの内容。

    度々、平松洋子の『野蛮な読書』が取り上げられるが、あれは読書をテーマにしたエッセイの中でも傑作だと思う。

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    2017年10月23日
  • いつも彼らはどこかに

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    ランチタイムに、自分の席で、近くの小さな公園で、
    一人で食べにきたお店で、少しずつ読み続けた本
    短編集なので、ちょうど良い感じで短い時間に読めた

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    2017年07月02日
  • 偶然の祝福

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    孤独な女性小説家の過去、日常を描く連作小説。
    間違いなく日常が描かれているが、そこにあるのは、ミステリアス、生々しい神秘性、非現実感、虚構。
    最初はエッセイ?と勘違いしそうになりました。ご自身の経験も多かれ少なかれ盛り込まれてるとは思いますが。

    小川洋子さんは静謐な文章を書かれる方、と紹介されることが多いが、その通り喧騒とは正反対のところにいる。
    流れている時間がすべらかで秒針の音ひとつしないのだ。
    主人公の人生は穏やかなものではなく、しかし落ち着き払っている。
    終わり方はストンときたし好みだが、その後主人公にとってやさしい時間はやってくるのだろうか、という読後感が残った。
    暗い話が好きな私

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    2017年06月13日
  • 原稿零枚日記

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    日常からいろんな世界に入り込んでいく。変な世界だけど、キレイに整理されていて、すっと入ってくると、いつも思う。不思議な心地。

    「苔料理専門店」「ドウケツエビ」「あらすじ教室」「カワウソの肉球」「盆栽フェスティバルの桂チャボ」「子泣き相撲」「イトトンボの付け爪美女」どの話も魅力的。

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    2017年07月30日
  • 刺繍する少女

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    怪談がかった話が大半の短編集。表題作なんかは」純文学なんだけど。

    あいかわらず、特にこれというでもない言葉を取り上げてそこからどんどん想像して、大体の場合怖い方に持っていく小川洋子流の言葉の昇華方法が素晴らしい。

    本作の場合、言葉というよりも、キリンや寄生虫というような生物が多いのだけれども。ぼろ屋の王女様なんてのは、小川洋子らしいなーというファンタジーでもある。

    角川から発売されており、表紙もかわいらしくされているのは、内容も割と軽いタッチが多いのを表しているのではないかと思う。

    芥川賞などと気負いせず読めるので、若い人にも勧めやすい1冊だ。

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    2017年05月26日
  • カラーひよことコーヒー豆

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    雑誌「Domani」に連載していたエッセイ集で、大人の女性や働く女性に対するお話も多い。

    小川さんの人柄が好きになり、その作品に触れたくなった一冊。

    小川さんは、道行く様々な人の背後にある暮らしや仕事、人生を想像し、尊敬と愛情の目で世の中を眺めている。小川さんの手にかかれば、どんな人生もどんなに慎ましい暮らしも、掛け替えのない物語に溢れた素晴らしい人生に思える。

    小川さんの小説の源泉はこういう愛情溢れる心なんだなと思って尊敬するばかり。

    毎日新聞からのエッセイ「とにかく散歩いたしましょう」を読んだ時にも感じたけれど、話中で紹介される本が、今回も自分の好きな本ばかりで嬉しくなる。枕草子や

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    2017年05月05日