小川洋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
小川洋子の小説は、博士が愛した数式しか読んだことがなかったけど、この人のほん。面白い。
ほんの少しの非日常をこんなうふうに淡々とミステリアスに、そして、ささやかな幸福に、ほんの少しのラブストーリーに、不思議なホラーに、少しづつ姿を変えて読ませてくれる、身近によくある話のようで、なかなかないんだけど、なんか自分でも経験したような気になるような日常風景の中に取り込まれる世界。
ふとした瞬間に、今の自分と本の中の主人公が簡単に入れ替われるほど普通の日常の出来事が、どんどん読ませてくれます。
ゾクっとしたり、え!?そうくる!?って思ったりオチも完璧なのに、なぜかとても日常的。
そんな不思議な -
Posted by ブクログ
タイトルから、エッセイなのかと最初思った。
(違うこれは小説だ、ということを分かった上で読み始めた)
作家の“私”はなかなか思うように執筆がはかどらない。小説の取材で、宇宙線研究所や盆栽フェスティバルなど、様々な地を訪れる“私”だったが、いつも知らず知らずのうちに不思議な世界へと迷い込んでしまう。
苔料理を出す料亭、海に繋がる大浴場、神隠しのように人が消えてゆくアートの祭典。これは果たして現実なのか。幻と現の狭間で、作家は日々の出来事を綴り続ける。
日記形式で書かれている不思議な短編集。
遅々として原稿が進まない作家の日常は、お世辞にも立派とは言えない。派手さもなく心が浮き立つようなことも -
Posted by ブクログ
ネタバレ2016年、31冊目です。
動物と人間のふれあいみたいなことがモチーフかと思って読み始めました。
それは、心地よく見事に裏切られました。まさに小川ワールドという感じです。
ストーリーや文体そのものに、大きな感動や心を揺さぶるメッセージがあるわけではないのですが、自分の心の中にある様々な考えというか既存の感情の隙間に、じわっとしみ込んでくる感覚がします。
これは、私の小川洋子作品に対して共通して抱くイメージです。
この小説は、何かしらの生物が出て来る8つの短編が収められています。
「帯同馬」/「ビーバーの小枝」/「ハモニカ兎」/「目隠しされた小鷺」/「愛犬ベネディクト」/「チーター準備中」/「 -
Posted by ブクログ
動物にまつわる八篇の短編集。
動物と言っても犬や猫といった愛玩動物ではなく、馬、ビーバーの骨、兎の看板、小鷺、犬のブロンズ像、動物園のチーター、蝸牛、タツノオトシゴという最早動物ではなく物。
動物の関わり方も物語の中心を占めるものから物語自体には影響のないモチーフのようなものまで様々。
この作品でも小川洋子さん独特の世界が拡がる。
わたしが小川洋子さんの作品を読むといつも感じることは、“ひそやかな世界”ということ。
何もすることがない眠れない夜中、小さな声で囁くように誰からともなく誰にでもなく、何と言うことのないオチも何もない物語、聞いていてもいなくても構わない、ただ時間を埋めるために語られ