小川洋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ作家が好きな本について話すというのが好きだし、すごく気になる本も何冊も出てきたけれど、そんなことより何より母と娘の関係や子育てのはなしが印象的。
「死なないと手渡してあげられないものがある。死ぬことで、遺された人たちは新たな地平に行くことができる。だとすれば、自分にも生きて死ぬ意味がある。」
「息子の可愛らしさの記憶なら、私も五つくらい保存があって、それをつらいことがあると繰り返し思い出して、またしまっておけば、いつでも再生可能。だから百個も、二百個も要らないんですね。五つでも多いくらい、三つぐらいあれば十分(笑)。」
「きっと、うちの両親だって、何かすごく馬鹿げた、本人が忘れているようなことを、記憶のあめ玉にしていただろうなと思えるんですね。」
自分にもあるなあ、記憶のあめ玉。
なるほど、確かに3つもあればじゅうぶん。
そう思ってとても、すっきりした。
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Posted by ブクログ
実在する人物や事実から着想を得た短編集。
その周りに、光の当たらない薄暗がりに、
いたかもしれない人たちの密やかな話。
穏やかな筆致で歪な世界を描き出し、
切ない幸せと残酷な喪失に心を乱される、
The 小川ワールドの真髄という感じだし、
世界が1冊に10個もあるうえに、
事実が絡んでるから、
もしやこれは本当のことかも、
案外自分のそばにあるかも、なんて思ってしまう。
ファン大歓喜の作品なのでは。
今作でも、ちょっと変わったこだわり、
もしくは執着を礎にして構築された
自分だけの世界を持っている人達が描かれている。
そのこだわりが行動に制約をうんだり、
世間とのズレをうんだりして、
どこか危ういというか、儚いというか、
不健康というか、微かな緊張感がいつもある。
その世界は時に小さな幸福をもたらしてくれる。
閉じた世界の安心感を与えてくれたりもする。
だけどふとしたことで崩壊してしまった時、
取り返しのつかない喪失に胸を痛めることになる。
失意の中で暗闇に椅子を置いて
永遠にそこに座り続ける人もいれば、
世界ごと箱にしまって
ときおり撫でて懐かしみながらも
別の世界を生きていく人もいる。
実際には自分は、自分含め大多数は、
彼らより少し鈍感に逞しく器用に生きてるけど、
彼らの美しく閉塞的で危うげな世界に惹かれて、
世界がもたらす幸せと不幸せにどっぷり浸かって
感情を揺り動かされてしまうから、
きっと今こうやって普通に健やかに生きているのは
自分の世界を早々に諦めたか、
普通を壊してしまうほど
自分にとってのっぴきならない価値のある礎に
出会っていないからかもしれない。
きっと自分がそこへは行かないから、
どこか、手に入らないものへの憧れに
近い感覚があるのかな。 -
Posted by ブクログ
「生」と「死」と「エロス」のトライアングル。
「死」は突然やってくる。
「死の準備」と隣り合わせで歪んでしまった欲望を
持つ翻訳家の前に現れた少女。
漫然とした「生」の中の住人。
そこの住人にとって翻訳家の
'屈折した欲望'は雷のように感じたのだろう。
雷を脳ではなく肌で理解し受入れた少女は
翻訳家にとって何よりもの宝物。
「エロス」とは「愛」と似て異なるもの。
翻訳家にとって己を迎合してくれた
初めての「女」であり
人生最後の「女」
決して自分で現像することはなかった
「フィルム」が
己が生きた証なのだろう。
己の死が近づいてくるのを感じ始めた男にとっては
切ない物語。 -
Posted by ブクログ
最近、時折読んでいる小川洋子さんの文庫本は、全て、私が引っ越してきた町で見つけた古書店で購入したもので、実は少々煙草の匂いが残っていました。まあ、気にする方もいらっしゃるとは思いますが、私は問題なし(むしろ、後で見開きがよれよれになっていることに気付いた方が嫌)。
逆に、私の前に読んでいた人はどんな人だったのだろうと、想像してしまう。リラックスしながら読んでたのかな、なんて。自分のスタイルで読書したいのは、すごく共感できる。
前置きが長くなったが、この短篇集に登場する人たちは、皆、それぞれの行動スタイルというか、夢中になるものを持っている。しかし、その裏には、何かを失ったことが原因になっている人たちが多い。
失ったものがあるから、それに代わるものを探しているのかな。それでも、いなくなったものを想像するのは、納得できるものを探し続けているんだ。
その結末は様々だけど、新たな人生の糧になることもあるし、微妙に思うこともある。けれど、その人が自分で判断すればいいわけであって、時には、共感しづらいものもあったが、それだけ人生は幾通りにもなるということだと思う。私が理解できることだけが、世界の全てではない。そう思わせてくれる小川洋子さんの作品は、周囲との共感の少ない私にすごく合う。 -
Posted by ブクログ
10年近く本棚に眠っていたので手に取った。
まずこの本の特徴として、小川洋子さんが書いているだけあって文章が読みやすい。
読みやすいといってもユーモラスだというわけではなく、何というかスラスラ入ってくる。
それは一つ一つの情景・感情描写にも普段から気を使い、細部にまで目を向けているからだろう。
このような作家特有の繊細さを持って科学について書かれるとどうなるか。
科学をストーリーとして味わえるのだ。
科学の内容だけでなく、そこに携わる科学者の心情までも事細かに描いてくれている。
よって、「科学をしている人」を客観的に見ることができるのだ。
「科学者はそんなことを考えながら科学と向き合っているのか」と感心させられることが多い。
科学者が書いた本だと、どうしても科学の内容に重点が置かれる。
作家が科学について書くことで、科学と科学者との間の相互作用を描くことができるのだ。
自分は特に
3章 命の源”サムシング・グレート”
6章 平等に生命をいとおしむ学問”遺体科学”
7章 肉体と感覚、その矛盾に挑む
の3つの章が非常に印象に残った。
科学者も人間であり、理性と感情を完全に分離して考えることなど不可能なんだと教えられる。
人間臭い科学者こそが魅力的なのだ。