小川洋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『Domani』の連載に数本の書下ろしを加えたエッセイ集。
表題作にもなっている『カラーひよことコーヒー豆』はどうやら連載中に読んだらしいと、この本を読んで気付きました。何時・どこで読んだかも覚えてないのですが、とにかくこのエピソードだけは頭の中に残っていました。それだけ自分のなかで驚いたのだと思う。
全体に流れる柔和な空気は小川さんの他の作品に通じるものがあって、全ての作品には筆者の人となりが表れるのだなぁ・・・と改めて感じた一冊。
作家さんのエッセイを読むと毎回思ってしまうのだけれども、こんなにも多感で疲れてしまうことはないのでしょうか。
読むとほっこりする。そんな本でした。 -
Posted by ブクログ
小川さんは「猫を抱いて象と泳ぐ」でその小説世界を堪能させてもらったけれど、エッセイはまた違った印象でこちらもとても良かった。
『Domani』に連載されていたものだからか、働く人や女性に対する応援のようなものが多かったように思う。
そしてなんだか泣けてきたりもしたのだ。
自分が年を重ねるにしたがって人をいとおしく思う気持ちが強くなっていく気がする。
人がそれぞれの生きている場で自分の務めをはたし毎日を暮らしている、そのことを思うと胸がいっぱいになる。
様々な場面でのそうした人達をみつめ優しくそっと応援してくれる小川さんの言葉が心に沁みる。
心が柔らかになっていく気がする。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ働く女性のためのエッセイ。
何も言わないけれどそっと側で見守っていてくれているような、そんな温かい目線の本です。
慎ましやかで、我慢強く、いつどんな時も感謝の心を忘れない、愛情深い明治生まれの女性だったおばあさんのお話。「思い出からやってくる人」
基本的に何に対しても自信の持てない性格であるという小川さんが落ち込んでしまった時のとっておきの救済策
「小さな命に救われながら」
友人との待ち合わせの時に、見知らぬ(失敬な!)女性に‘こんなにも大変なものを背負っておられるのに…’と言われた
「ただごとじゃない人生」
他にもたくさんあるけど、この3つが好きでした。
何の前触れもなく、静かに -
Posted by ブクログ
未読だった小川さんのエッセイ。とてもよかった。
小川さんの書かれるものを読むといつも、ああこの人は少女なのだなあと思う。「少女」という言葉にはひどく手垢が付いていて、できれば他の言い方をしたいのだが、なんと言ったらいいのだろう。
日頃は一人前の大人として、何気ないふうにやっかいなこともこなしているけれど、そのこと自体にどうしようもない違和感がある。なんだか自分だけ「人生ごっこ」をしているような非現実感がつきまとう。それは自意識過剰以外の何物でもないとはわかっているが、いくつになっても「大人たちが作っている社会」というものをおそるおそる遠巻きにしているような気持ちが抜けない。
うーん、やっ -
Posted by ブクログ
小川洋子さんのエッセイ集。
今まで自分が読んできた本の話かなと思って読み始めたら、
それだけでなく、愛犬の話や作家という職業への思いや
日々の生活の中で起きる事件や出来事、そこで考えた事などが、
淡々と、しかしとても大切に、愛情をこめて、書き連ねてある。
このエッセイを読んで感じ入ったのは、
小川洋子さんの持つ謙虚さ。
芥川賞をはじめとして多くの賞をもらっている
才能溢れる作家であるにも関わらず、
白紙の原稿用紙を前にして、自分の胸に湧き起こる
「もしこのままずっと書けなかったらどうしよう。」
といった焦りや弱気を読者の前に広げて見せてしまう潔さ、
ある作家の著作を読み、その作品の魅力を