小川洋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
小川洋子の小説は、博士が愛した数式しか読んだことがなかったけど、この人のほん。面白い。
ほんの少しの非日常をこんなうふうに淡々とミステリアスに、そして、ささやかな幸福に、ほんの少しのラブストーリーに、不思議なホラーに、少しづつ姿を変えて読ませてくれる、身近によくある話のようで、なかなかないんだけど、なんか自分でも経験したような気になるような日常風景の中に取り込まれる世界。
ふとした瞬間に、今の自分と本の中の主人公が簡単に入れ替われるほど普通の日常の出来事が、どんどん読ませてくれます。
ゾクっとしたり、え!?そうくる!?って思ったりオチも完璧なのに、なぜかとても日常的。
そんな不思議なもう一人の自分の人生のような一冊です。
ハマるかも。小川洋子! -
Posted by ブクログ
タイトルから、エッセイなのかと最初思った。
(違うこれは小説だ、ということを分かった上で読み始めた)
作家の“私”はなかなか思うように執筆がはかどらない。小説の取材で、宇宙線研究所や盆栽フェスティバルなど、様々な地を訪れる“私”だったが、いつも知らず知らずのうちに不思議な世界へと迷い込んでしまう。
苔料理を出す料亭、海に繋がる大浴場、神隠しのように人が消えてゆくアートの祭典。これは果たして現実なのか。幻と現の狭間で、作家は日々の出来事を綴り続ける。
日記形式で書かれている不思議な短編集。
遅々として原稿が進まない作家の日常は、お世辞にも立派とは言えない。派手さもなく心が浮き立つようなこともないけれど、少しの抑揚や楽しみを見つけながら生きている。と、いう風情。
それなのに日々起こることが不可解すぎて、まさに“夢か現か”状態。
よくある日常とおかしな世界が地続きでゆるやかに繋がっていて、普通の日記を読んでいたはずなのに、いつの間にかファンタジーの世界に引き込まれているような。
小川洋子ワールドすぎるなぁ、と思いながら読んだ。
読み進めていくと、ある1日の出来事とだいぶ先のまたある1日に繋がりを見つけたりする。
まったく繋がっていないような部分で繋がっている。そういうところも、読んでいて不思議な気分になる所以。
うっすら気づいて「あぁ…」と淡く呟いてしまうような感覚。
「あらすじ教室」と「健康スパランド」「子泣き相撲」の章がとくに印象に残った。
小川作品に漂ういつも通りの静謐さ、そして少しの哀しさは、すべての章に共通していた。
1日の日記の終わりに(原稿●枚)という記述がある。その日書き進んだ原稿の数。
“零”の日が一番多いのは、言うまでもない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2016年、31冊目です。
動物と人間のふれあいみたいなことがモチーフかと思って読み始めました。
それは、心地よく見事に裏切られました。まさに小川ワールドという感じです。
ストーリーや文体そのものに、大きな感動や心を揺さぶるメッセージがあるわけではないのですが、自分の心の中にある様々な考えというか既存の感情の隙間に、じわっとしみ込んでくる感覚がします。
これは、私の小川洋子作品に対して共通して抱くイメージです。
この小説は、何かしらの生物が出て来る8つの短編が収められています。
「帯同馬」/「ビーバーの小枝」/「ハモニカ兎」/「目隠しされた小鷺」/「愛犬ベネディクト」/「チーター準備中」/「断食蝸牛」「竜の子幼稚園」です。
「目隠しされた小鷺」に出てくる移動修理店の老人が、1枚の絵を見るために、小さな美術館にやってきます。そこで働く「私」は、老人がその絵を見るために行っている奇妙な行動を手助けすることになります。この老人の行為にすごい重たい背景があるのか?と思わせながら話は、「私」とその老人の関わりで進みます。”小鷺”が出てくるのは、最後の一瞬です。まさに、いつも彼らはどこかにという感じですね。
「帯同馬」というのは、海外の大きな競馬レースにでる本命サラブレッドの精神的安定をはかるために、一緒に移動遠征する時に”帯同”するレースに出ない馬のことです。この物語だけが、関東の競馬場であることが分かります。ちなみに他の作品は、まったく場所が分かりません。そもそも日本なのかさえも特定できないです。そういった物語の設定の場所を無機質で、白っぽい感じにすることで、登場する人間の行動の中に心の機微を感じやすくしているだろうかと思います。
「愛犬ベネディクト」は、もうちょっとのところでサイコパス的世界に入ってしまいそうな感覚をうけました。愛犬とは犬の置物なのですが、それに対する家族の思い入れ方というか、存在の受容性が、滑稽に思える反面、恐ろし世界を描いているという感覚を待たせます。(2016/11/19)
その他の小編については、また思い出せたときに、加筆します。
おわり -
Posted by ブクログ
作家である「私」が創作活動の合間に起こる出来事や過去の回想を徒然なるままに綴る日記形式の物語。不思議なことが次々と起こる小川作品が凝縮したような作品。
山の中の温泉旅館のさらに奥、ひっそりと佇む苔料理専門店やただ物語のあらすじを話すだけの公民館のあらすじ教室。参加者がひとりずつ消えてしまっても集合時間を優先する現代アート展ツアー。
確かにおかしい何かが当然のように存在するので、むしろおかしいのはこちらなのではないかという錯覚さえ覚える。
さらには文体が日記であるという点と病院、母親、市役所、取材など現実のような単語が出てくるので事実と勘違いしてしまい、まるで明晰夢をみているようだった。
ある有名な作家とバスに同乗したという話が好きだ。極端に人物の抽象性が高まったため一つのおとぎ話のような印象になっている。
いままで読んだ小川作品の中で一番ぶっ飛んでるので初めて著者に触れる人にはオススメはしない。