小川洋子のレビュー一覧
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あとがきすら乱暴な文体の作品が増えてきた日本の文学界にあって、小川洋子は気持ちがいい。
作家の読む本というのは、それだけで気になるもの。
ある作家が書いた本をさらに魅力的に見せる魔法のようなものがある。もちろん逆もあるが。読む方は文が短いと読むのが楽という単純な調子になるが、書くほうが短くまとめるのは特に気に入った本については難しいものだ。
そんな難しさを見せず、しかし生きた日本語でありながらその世界に入れる文を書く小川洋子。
若い頃、同時代日本人の作品をほとんど読まなかったが、今は特に女性ならではの感情の豊かさに惹かれる。
蠅取り紙は、私も薬品や電気を使いたくないので今でも使っているのだが、ひっかかったハエの気持ちはいつも複雑になる。と言っても現代では蝿すらあまりいないが、小さい頃同じような気持ちになったものだ。
蝿取り紙のカモ井加工紙の皆さんが「蝿供養」をしているのは知らなかった。有難いことである。 -
ネタバレ
面白かったです
一部ネタバレありです。
どこかに身を隠す様、ひっそりと存在していて、それでも誰かに必要とされる小さなアーケードを「私」の視点から描いた作品。
死を題材とした話が多いため暗い印象がありますが、どこか暖かく優しさを感じさせる不思議な世界観でした。
ラストシーンが特に印象深く「私」がどうなったのか考えさせられました。
自身の髪で「遺髪のレース」の制作を依頼したこと、図書館で、おそらく故意に電話番号を間違えたことなどから「私」は死に向かう準備をしていたのだと思います。
人さらいの時計が止まる描写では、「私」の時が止まったことを表しており、最後の二行で、それでも尚、生きている者の日常が変わらず続いていくことを示しているのだと解釈しております。 -
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ネタバレあらすじ?
アンナちゃんのよそ行き用のブラウスの一番上のボタンのボタンちゃんと彼女を支えるボタンホールちゃん。ある日、ボタンちゃんが外れてしまい、部屋の床へ転がってしまいます。ボタンちゃんは、部屋のあちこちを探検しながら、アンナちゃんが小さい頃に使っていて忘れ去られてしまった思い出の品たちに会い、心を通わせていきます。ベットの下にいたところをアンナちゃんのお母さんに見つかったボタンちゃんは無事にボタンホールちゃんの元へ戻りました。時を経てアンナちゃんが大きくなり、ブラウスも着られなくなってしまうと、ブラウスも思い出の品に変わります。
感想
表紙ににっこりと可愛く笑ているボタンちゃんが描かれています。よく見るとボタンホールにもにっこり笑顔が!やわらかいタッチで描かれてる絵がとても可愛らしいです。
よそ行きのブラウスということで、アンナちゃんがレストランかカフェでメロンソーダを飲んでいるシーンがあるのですが、レトロな元祖メロンソーダがとてもおいしそうです。
お部屋のあちらこちらを探検するボタンちゃん。中途半端に切れてしまった糸がお手々の形なのがこれまたかわいいですね。彼女は各所で忘れ去れてしまった思い出の品達に会うのですが、その思い出の品達は毎回泣いています。まあ、部屋の隅に追いやられて(きっとわざとではない)忘れ去られてしまったら誰でも悲しくもなるでしょうけども。そんな彼らにボタンちゃんはとっても前向きな言葉をかけて励ましていきます。胸がほっこりするようなあたたかい言葉です。絵本の中にいるアンナちゃんの成長を感じながら読めます。最後のページは今まで登場した思い出の品たちが箱に収納されて棚の下にしまわれます。その棚の上にはランドセル姿のアンナちゃんの写真があります。 -
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突然の恋人の自殺をキッカケに恋人の過去を辿り、改めてその思い出に浸る…それがいつもの小川洋子さんらしい優しく不思議な空気感の文章で綴られている。
弘之の世界観は予定調和的なのか?記憶の泉を作り自らの命を絶つ事で永遠に記憶として生きる、というのが究極の整理・分類なのか?逆に彼に触れた人が全て彼の世界に整理されていくのか?孔雀の番人を通じて行き来できる記憶と現実のどちらに私たちは生きているのか?
突然の死によって逆にその人の事を深く知るようになる事を通して、人と人がわかりあう事の難しさとだからこそ相手の事をあたまで理解するのではなく「匂いとして」受け入れる、そんな受け止め方もできるのかな?って思いました。
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作家の小川洋子氏が科学のスペシャリスト7人にインタビューしたもの。
ふだん関わりのない事柄であるが、とても面白く読むことができた。
特に、宇宙に関する内容が印象深かった。
「木星、土星、天王星、海王星、この四つはガスでできているため、大地がありません」(p16)
だから、人間が降り立つことはできないのだそうだ。
ガスでできた星。
宇宙の神秘さを感じさせられた。
また、粘菌の生態も興味深かった。
動物と植物の中間の様な状態になって、増殖を繰り返す。
生物の動きには、すべて意味があることを改めて感じた。
人間の力の及ばない自然科学の世界には、ロマンと壮大な気持ちを覚えた。 -
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小川洋子さんは岡山市朝日高校出身、内田百閒の居た古京町の隣の森下町で生まれたらしい。夕方5時、県庁のドボルザークの「家路」放送で家に帰るのは、あの街だけの特権だった。さらには、やがてしばらくは倉敷市に住んでいる(「玉島に10年住んでいた」というのは異議がある。倉敷市鶴の浦は玉島ではない)。平松洋子さんは、なんと倉敷市中島の出身、私より2歳上だから、何処かですれ違っていたかもしれない。渡辺和子学長がいた頃のノートルダム精心高校の出身。
この本は、2人の洋子さんが、少女、大人の女性、その他人生の中で読んできた愛読書を持ち寄り、お互い読んで、お互い感想を出し合うというもの。本の世界は、ワールドワイドなので、倉敷市なんて関係ないのではあるが、時々ふと「共通の話題」として出てくるのが、とっても嬉しい。
2人と私の興味関心は違うので、2人の提出した34冊のうちに、私の既読は(映画「道」を含む)3つだけだった。それでも、本が好き、という共通項があるので、ひとつひとつがとても面白かった。また、年代が似通っていることもあって、高度成長期に大人になって、歴史の激動に揺さぶられることなく、穏やかに読書を通してアイデンティティを確立してきた我々の世代を説明されていたような気もした。
反対に言えば、穏やかな環境に居ても、人生にきちんと向き合えば、世の中の大切なことは理解するということなのだろう。
以下私的メモ。
⚫︎(平松)英語詩集の翻訳ノートを作っていた。一人遊びとして楽しかった。
⚫︎忘れられない味(平松)宇高連絡船の立ち食い讃岐うどん「いまだに死ぬ前はあれを食べたい」(小川)年一回の天満屋屋上のカレーとか、お子様ランチ(←支持!)
⚫︎「道」のジエルソミーナは、ほとんど「ザンパノ」しか言っていなくても、彼女の瞳を見ていると心の動きは全部わかる。類人猿の中でヒトが1番白目がハッキリしている。心の内を読まれないように、ヒトは言葉を編み出したのか?(ウソは言うな、と子供の頃から教えられるけど)ヒトは先天的にウソをいうようになっているらしい。(平松)誰かと理解し合いたいのにどうしても出来ない絶望感とか諦めは、誰もが経験する。
⚫︎『美食放浪記(檀一雄)』「岡山はまた、ちょっとした食堂や酒の店に、必ずといってよいほど『雑煮』を売っている」「雑煮の具はブリであり、サワラであり、エビであり、穴子であり、カマボコであり、春菊であるが」あゝこういう雑煮だったな(平松)。(←コレ岡山市の雑煮だな。今では売っていないんでないかな)
⚫︎旅について(小川)日常生活の中でとりこぼしている偶然が、必然として育っていく(平松)ある意味、自分のあり方の訓練。「これだ」と思った瞬間に感知する力。
⚫︎豚コマワンパック何を作るか?(平松)細かく刻んで肉味噌。(小川)豚汁
⚫︎日々の習慣(平松)1時間20分、一万歩のウオーキング8年間(小川)50分ほどのスロージョギング3年間。
⚫︎自分に許している贅沢(小川)本の値段を見ない。和菓子「空也」のもなか。(平松)週一二回ステーキ(ランプ肉) -
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ネタバレ星座を作っている星、これは変わらない星と言うので恒なる星恒星と名付けられたわけです。ちょこまか動く回っているのが惑う星惑星です 孤立した小さな存在ではなく、無限の宇宙とつながっているのだと言う、不思議な安堵感を覚える 宇宙を探索することは、自分自身とは何もであるかを探索することに等しくなる 鉱物学者には、ルーペとハンマーを持って山へ行き、石を叩く義務があると先生はおっしゃる。大地に出向いて石を叩く、これが鉱物学者の最初の仕事だと先生はおっしゃる 薬の代わりにお笑いビデオを出すような病院が出てくるかもしれません。だから私は、笑は副作用のない薬だ、と言っているんです 要するに大きな仕事は、あるところから常識を超えないとダメなんです。理性だけではないんです。ジャンプするのです
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孤独な女性小説家の過去、日常を描く連作小説。
間違いなく日常が描かれているが、そこにあるのは、ミステリアス、生々しい神秘性、非現実感、虚構。
最初はエッセイ?と勘違いしそうになりました。ご自身の経験も多かれ少なかれ盛り込まれてるとは思いますが。
小川洋子さんは静謐な文章を書かれる方、と紹介されることが多いが、その通り喧騒とは正反対のところにいる。
流れている時間がすべらかで秒針の音ひとつしないのだ。
主人公の人生は穏やかなものではなく、しかし落ち着き払っている。
終わり方はストンときたし好みだが、その後主人公にとってやさしい時間はやってくるのだろうか、という読後感が残った。
暗い話が好きな私にとっては良い余韻だった。 -
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怪談がかった話が大半の短編集。表題作なんかは」純文学なんだけど。
あいかわらず、特にこれというでもない言葉を取り上げてそこからどんどん想像して、大体の場合怖い方に持っていく小川洋子流の言葉の昇華方法が素晴らしい。
本作の場合、言葉というよりも、キリンや寄生虫というような生物が多いのだけれども。ぼろ屋の王女様なんてのは、小川洋子らしいなーというファンタジーでもある。
角川から発売されており、表紙もかわいらしくされているのは、内容も割と軽いタッチが多いのを表しているのではないかと思う。
芥川賞などと気負いせず読めるので、若い人にも勧めやすい1冊だ。 -
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雑誌「Domani」に連載していたエッセイ集で、大人の女性や働く女性に対するお話も多い。
小川さんの人柄が好きになり、その作品に触れたくなった一冊。
小川さんは、道行く様々な人の背後にある暮らしや仕事、人生を想像し、尊敬と愛情の目で世の中を眺めている。小川さんの手にかかれば、どんな人生もどんなに慎ましい暮らしも、掛け替えのない物語に溢れた素晴らしい人生に思える。
小川さんの小説の源泉はこういう愛情溢れる心なんだなと思って尊敬するばかり。
毎日新聞からのエッセイ「とにかく散歩いたしましょう」を読んだ時にも感じたけれど、話中で紹介される本が、今回も自分の好きな本ばかりで嬉しくなる。枕草子や錦繍や思い出トランプや…名作ばかりだから一致して当たり前かも知れないけれど、またしても小川さんと気が合うような気がした。しかもタイガースファンだし。
書き留めておきたい一節は「ただごとではない人生」という話から。
”若い時は大いばりで生きていればいい。少しずつ、(人生が)ただごとでないのが分かってくる。何の前触れもなく、静かに試練はその人の背中に舞い降りてくる。仕事で取り返しのつかない失敗もするだろう。大事な人を失うこともあるだろう。でも慌てる必要などない。必ず救いの道は用意されていて、それを探すことこそが、生きることなのだから。” -
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小川洋子の小説は、博士が愛した数式しか読んだことがなかったけど、この人のほん。面白い。
ほんの少しの非日常をこんなうふうに淡々とミステリアスに、そして、ささやかな幸福に、ほんの少しのラブストーリーに、不思議なホラーに、少しづつ姿を変えて読ませてくれる、身近によくある話のようで、なかなかないんだけど、なんか自分でも経験したような気になるような日常風景の中に取り込まれる世界。
ふとした瞬間に、今の自分と本の中の主人公が簡単に入れ替われるほど普通の日常の出来事が、どんどん読ませてくれます。
ゾクっとしたり、え!?そうくる!?って思ったりオチも完璧なのに、なぜかとても日常的。
そんな不思議なもう一人の自分の人生のような一冊です。
ハマるかも。小川洋子!