小川洋子のレビュー一覧
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ネタバレ夜明けの縁をさ迷う人々
収録作品は以下の通りです。
曲芸と野球、教授宅の留守番、イービーのかなわぬ望み、お探しの物件、涙売り、パラソルチョコレート、ラ・ヴェール嬢、銀山の狩猟小屋、再試合
どの物語も、正常と異常の縁をさまよう人の物語です。曲芸、エレベーター、楽器、全集など各短編ではガジェットが異なりますが、それらに執着するがゆえにバランスを踏み外して、縁をさまよっていた人々はその執着するものの引力に引き寄せられ、崩壊します。もう一つ共通しているのは、ぬるりとしたエロティズムでしょうか?ふとした言葉で垣間見られる隠微さ。
印象的だったのが、野球ではじまり野球で終わるという構成。野球というもの -
Posted by ブクログ
読み始めた瞬間、二つの結末を想像した。あるいは二つは両立するかもしれないとも。
ひとつは、主人公の男がこの世界に取り込まれて抜け出られなくなること。
もうひとつは博物館は完成する前に瓦解すること。ひとつは外れ、ひとつは当たった。
殺人事件の話は夾雑物だと感じ、これがなければもう一ランク上の評価にしたかもしれない。
/博物館専門技師である「僕」は老婆の依頼に従って村の住人の形見を集めた博物館づくりに勤しむ。そのためには死者が出たときその者を象徴する形を盗み出さねばならない。
/中央広場で爆発事件が起こり少女は大怪我をする。左頬に星型の傷が残る。
/連続殺人事件。どうやら主人公は容疑者になってい -
Posted by ブクログ
同僚が貸してくれた本です。
これは小川洋子さんの初期の頃の以下4作品を収めたもの。
「完璧な病室」
「揚羽蝶が壊れるとき」
「冷めない紅茶」
「ダイヴィング・プール」
なんとも独特な世界でした、どの4作品も。小川洋子さんは、グロテスクな事象や残酷な心理描写などを、なんとも精巧で均等で美しい文章で表現するなーと思いました。本書の中でもあったような表現をお借りすると、つるりと冷たい陶磁器の美術品のような印象を受けました。
一番好きだったのは「冷めない紅茶」かな・・・。登場人物の関係性を含め、すごく曖昧で不思議な世界で、え、これはどういうことだろ、どうもこうもないのだろうか、と一瞬一生懸命考え -
Posted by ブクログ
ネタバレ小川洋子さんらしい、優しく流れるような文章が素敵な作品でした。丁寧に描写されるブラフマンの一挙手一投足が可愛らしく、ずっと幸せに暮らして欲しいと願って止みませんでした。
芸術家が芸術をひねり出すために、献身的に、ときには透明人間のように人に尽くす主人公。唯一心を惹かれた女性の目線の先には、別の想い人。
慢性的な酸素不足のような主人公の日常において、ブラフマンは真っ直ぐに彼のことを慕い、彼の心を癒したのだと思います。ブラフマンにとっては、主人公が世界の全部だったのでしょう。
ブラフマンを最後まで、心ある誰かに愛された命だということを認めようとしなかった娘さん。対照的に、最初は動物アレルギーだ -
Posted by ブクログ
【なぜだかわからんがずっと鞄に入れておきたい本】
なんだかわからない
特別感動したわけでもない
大好きな本になりました!てわけでもない。
可笑しさとかさみしさとか嬉しさとか
いろんなものがしっくりきて心が落ち着く。
現実とひと続きの中にアーケードがあって
でも絶対に存在しない感もある。
どんなに悲しくたって本はどっかへ行ったりしないから
そっと鞄の中身のレギュラーになったっていいじゃない。
いつだって自分が求めればそこにいてくれる安心感を本に求めたっていいじゃない。
読み終わって次の日とか次の次の日とか
すぐじゃないいつか
急にアーケードのことを思い出して泣きそう