小川洋子のレビュー一覧

  • 妊娠カレンダー

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    密に関わっている他者ではなく、自分からは遠い存在の他者を通して、自分というものを映し出す。そんな作家性を感じた作品たちだった。

    台詞回しが独特で、描写は身体的なものが多いので、なんとなくなじめなさがある。

    自分の心に秘めておく分にはちゃんとした背景のある悪意も、それを言葉にしたり公にしたら、途端にとてつもなく悪いことのように感じるかも。
    他に選ぶ道がないと思っている時、自分の中に潜む黒い気持ちなんて誰かに言おうと思わないよなあ。

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    2025年07月17日
  • 薬指の標本

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    この人の小説は常に、ひんやりした闇の中に、じっとり湿った生温かさみたいなものを感じる。決して派手でも明るくもない地下室みたい。
    そして、本人に自覚があるかどうかは別として、元来ヒトってみんなそうだよなと思う。

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    2025年07月15日
  • ホテル・アイリス

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    作者の描く、清々しく儚い美しさや、不安定で冷たい恐ろしさみたいなものは、いつもと変わらずに表現されていて、そこにマゾヒズムというスパイスが追加される事で、こんなに陰湿で卑猥になるんだ。と感動した。

    サディズムとマゾヒズムの関係性には、ある程度の理解があるつもりなんだけど、それは言語化するのは到底困難で(偏見ももちろんある)、目を逸らしているところが多々あるし、勘違いしてただのプレイの一つだと思い込んでいる人間が殆どの中で、ただのエロとしてでは無く、エモとして表現しているところは、この人の文体と表現力だから出来る事なんだろな、と思った。

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    2025年07月05日
  • 凍りついた香り

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    母と子の少し歪んだ関係って、どこにでもあるよね。
    母ってどうしてもどこか気持ち悪さを孕んだ存在だと思う。
    小川洋子さんの紡ぐ文章は、どこかひんやりとしていて、静かで、落ち着く。情が熱すぎず、それがとても心地いい。と、どの作品を読んでも感じます。
    心が疲れた時によく効きます。

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    2025年07月02日
  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    駒の制約ある不自由さと、スーパーの屋上や回送バス、盤の下や壁の間で身動きの取れなくなった登場人物達の不自由さが重なって見える。だがチェスは10の120乗もパターンがあるとされており、登場人物たちにも無限の可能性があると思える。

    作中181ページのセリフで
    「どうしてだろう。自分から望んだわけでもないのに、ふと気がついたら皆、そうなっていたんだ。でも誰もじたばたしなかった。不平を言わなかった。そうか、自分に与えられた場所はここか、と無言で納得して、そこに身体を収めたんだ」
    この言葉にあるように静かに受け入れて次の一手を打つ、そんな生き方が出来れば幸せだろうなと感じた。

    また賭けチェスや人間チ

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    2025年06月30日
  • 人質の朗読会

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    はじめの一文から小川洋子ワールド全開だった。
    "そのニュースは地球の裏側にある、一度聞いただけではとても発音できそうにない込み入った名前の村からもたらされた。"

    8人の人質と、1人の特殊部隊通信班隊員によって語られた9つの物語。他人からするとなんてことのない、人生のほんの一部の光景。それが当人にとっては色褪せることのない特別な記憶だったりする。
    「冬眠中のヤマネ」がよかった。

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    2025年06月29日
  • 約束された移動

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    短編集。大袈裟な職業ではないがそれぞれがその職務と意義を大切にしている。
    他の人から見たら異色に感じられる行動も見られるがそんなことにはお構い無しの強い意志、というよりそうするべきだという思い込みを持つ人は小川先生の作品によく登場する。

    「巨人の接待」が好き。きっちり仕事してくれる人に心を許してくれるというのが、読んでいて気持ちが良い。

    解説の藤野可織先生の言葉が的確で、深く頷きながら読んだ。

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    2025年06月24日
  • 遠慮深いうたた寝

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    かわいい表紙に惹かれて購入しました。
    一つ一つが短いので、寝る前の少しの読書時間にちょうど良かったです。

    小川洋子さんの作品は、ほとんど読んだことがないのですが、このエッセイで阪神ファンだったり推しがいたり、私が勝手に今まで小川さんに持っていたイメージと違う一面がたくさん知れて、面白かったです。

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    2025年06月20日
  • 約束された移動

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    どこか不穏な感じや不安定な感じを漂わせながらも、一定の品格や清々しさを決して失わない表現は、いつもと変わらずそこに感じられる。
    その上で1つの事を粛々と全うする様や、移動という表現でもたらされる人生の流れや事柄。そしてそこで生まれる自分でしか分からない、素晴らしい感覚。それを誰にも伝えたり表現する事なく噛みしめる行為。
    読むうちに、私もその中に織り混ざって、なんだか穏やかに心地いい気分になる。

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    2025年06月12日
  • 薬指の標本

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    2編共、どうしようもなく閉ざされた感覚、よるべなさ、あたたかい感情とさみしさが共通している。

    読み終えるとずうんと気分が落ちてしまうから、夜に読むのは要注意だなと思った(私の場合)。

    小川洋子作品は、脇役たちのほうがあたたかい不思議。

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    2025年06月11日
  • ブラフマンの埋葬

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    ネタバレ

    懐いていただけに最後がさみしいです。世界観はあまりわからなかったですが、ブラフマンが可愛い。どんな姿をしているのか想像するのもちょっと楽しいです。

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    2025年06月08日
  • 耳に棲むもの

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    骨壺 鳥の死骸 心中 座敷牢 遺体 犬の死骸 溺死…
    数えきれないほどのマイナスワード。
    狂気に満ちた話がつながっていく。
    補聴器の耳の中では外界では聞こえない音が静かに聞こえてくるのかもしれない。
    マイナスワードの傍ら、星 収穫祭 カルテット 小鳥のさえずり プラスワードが安堵させてくれる。

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    2025年06月08日
  • 薬指の標本

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    2篇とも主人公の自己肯定感の低さやうっすらとした希死念慮を感じる作品でした。

    私はこれら作品から、アクシデントをきっかけに人生計画が頓挫した主人公が死に場所を求めているという共通したイメージを抱きました。

    うっすらと思い描いていた人生計画が崩れたときに、ある種の枷が外れたと開き直り、次のプランに向けてバイタリティを高めることは容易ではないと思います。そのため共感できる人も多いのではないでしょうか

    これらの作品に美しさや救いを感じるには私はまだ幼く元気すぎました。

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    2025年06月03日
  • 人質の朗読会

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    ネタバレ

    タイトルを忘れて読む、

    人質にされた人たちの間で共有し合ったストーリーの記し。

    ふつうの人たちの、ちょっと不思議な思い出話。

    こんなふうに、みんなのひとりひとりの話なんて全部聞いてられるはずがないけれど、

    聞いてて、読んでて飽きない、というか、

    もっと知りたくなってしまう不思議。

    人質になったから語られたのか、

    とにかくこの世の中はたくさんの思い出たちでいっぱいなんだろうなー。

    その多くは語られることはなく、伝えられることはなく…

    だからこそ、わたしが聞き出してみたい、と思ったりするのかな。

    もっと話して、っていいたくなるような、

    そんなストーリーが、現実の身の回りにもた

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    2025年06月02日
  • 妊娠カレンダー

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    ネタバレ

    【妊娠カレンダー】
    主人公は大学生の妹。姉夫婦と一緒に住んでいる。心が脆い姉が妊娠。
    大きな病院ではなく,近くの産院で出産するという。そこは幼い頃姉と裏から中庭に入り込んで遊んでいた古い病院。窓から覗いた器具や、3階の病室の窓辺にいる女が記憶にある。
    姉のつわりが酷くなってくると、色んな我儘を言い出す。食べるのも,家の中の匂いも。
    姉がいる時にご飯を作れないし、食べれなくなる。
    急にふっと長く続いたつわりが終わった。
    途端にいろんなものをたくさん食べるようになってしまった。
    仕事で大量に貰ったグレープフルーツを皮ごとジャムにすると,姉はパンにつけずジャムそのものもを食べてしまう。グレープフルー

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    2025年06月02日
  • 猫を抱いて象と泳ぐ

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    狭く閉じられた場所が自分の居場所であることを受け入れ、一方で目の前の8×8のチェスの盤から広がる無限のような世界で勝つためでなく美しく進もうとした主人公の軌跡。チェスの醸し出す将棋とはまた違う色合いも新鮮。

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    2025年05月30日
  • 耳に棲むもの

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    今読んでいる で登録しましたが
    この先 たぶん読まないでしょう。
    静かな狂気の短編集です。
    最初の2つの話しも うーん!
    というはなしでしたが
    飼っている小鳥を生きたまま飲み込んで自殺する話しは 相当な狂気です。
    気持ち悪ーい!
    おまけに そのお宅 沢山の鳥籠の下が
    鳥の羽やふんが 空気中を飛び交っていて
    そこでお茶を頂く
    それも気持ち悪ーい!
    この小鳥のブローチを読んで この本は諦めました。
    素敵な表紙の本でしたが。
    小川洋子さん どうしたの?
    怪談話?ゆっくりと狂っていく感じが怖い!

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    2025年05月30日
  • まぶた

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    どの物語も、清々しく美しくて、清潔感が有る。前半は、その清潔感の裏に潜む、捉えようの無い不穏な空気や、どこまで深いか分からない闇、恐怖に似た冷たい感覚が際立って押し寄せてくる様な物語。
    後半は逆に、その清潔感を使い古されたモノや老いた人間の中にも写し込み、決して新品や綺麗で皺一つないものからは醸し出せない奥行きを表現していて、温かみを感じる物語だった。

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    2025年05月30日
  • 人質の朗読会

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    いわた書店の一万円選書で選んでいただいた本。

    他人にとっては取るに足らないことでも、本人にとっては印象深い特別なできごとが誰にでもひとつくらいあるのではないか。

    未来ではなく、過去に目を向けるとき、自分は何を思い出すのだろう。

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    2025年05月10日
  • まぶた

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    死にたい夜のお供に、小川洋子さんの作品は
    最適解な気がする。

    パラレルワールドのようなファンタジーに浸かり、
    純粋な人々の揺らぎに身を任せる心地よさ。
    いつしか自身の心も落ち着いている。

    個人的に、村上春樹先生のファンタジー感と似てる気がするんだが。
    この発言は各方面のファンからぼこぼこにされそうだけど。

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    2025年04月27日