小川洋子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
特集が「はじめてのクトゥルー」だったのと、乙一さん周年というのとで手に取った次第。クトゥルー、よく見聞きする言葉だけど内容そのものに全く無知なので。
そんな中、一番印象的だったのは、
小川洋子さんの「お借りいたします 棺」
特集と全く関係ない読み切り小説だったから、身構えなく読んでました。だからこそのインパクト ガツン!!だったのかな。
あの結末… ぇ!?どういうこと!?
妊娠と流産を繰り返しているという流れにすごく違和感感じたけど、まぁそういうこともあるかもしれんと強引に納得しつつ読み進めていったら…
葬儀場の職員さんから投げかけられてるあの言葉、
ぇ、どういう意味?? 主人公の周りから見た人物像って、読み手が想像してきた人とは全然別物なの!? それとも、あの場面で急展開したんだろうか…
それまで淡々と進んでいただけに、最後が急展開過ぎて面白かったです。キツネにつままれたみたい。。
クトゥルーに関しては、正直よく分からないままです^_^
用語集とか色々噛み砕いた内容だったけど、頭に入ってこなかった…すみません、あれかな、カタカナアレルギーなのかな、私(笑) -
Posted by ブクログ
ネタバレ小川洋子さん、平松洋子さんによる、対談形式の書籍紹介本。
お二人の成長に合わせて、5章に渡り、印象に残った本を紹介してくださっている。
その5章は、少女時代の本、少女から大人へ向かう時の本、家を出る時の本、人生の中で思い出すと力が湧くような本、旅立ち(死後の意味で)に向かう本、という内容。
紹介されている本は、ほぼ読んだことのないものが多く、新しく読みたい本リストに加わった。
個人的に印象に残ったのは第4章、人生のあめ玉。
人には後悔や恥ずかしかった経験がたくさんあるが、
それらを肯定して、私はこれでよかったんだ、良いことも悪いこともすべて今の自分を作っているものだと思って生きていくという趣旨のコメントが出てくる。
この自己肯定のための力になるものとして、あめ玉のような記憶、というキーワードが登場。
紹介されている本は、そういうあめ玉になる記憶が生まれた瞬間や、あめ玉になる存在について描写するような本たち。
お二人の息子さん、お嬢さんに関するあめ玉の記憶も登場し、温かい気持ちになった。
自分にも、そういう人生のあめ玉はあるだろうか。
あめ玉を舐めて、人生の辛いことや後悔を肯定していけるだろうか、と思わされた。
巻末の人生問答もなかなか面白い。
また、小川洋子さんのアンネ好きは健在で、本自体も紹介されているし、違う本の紹介でもエピソードとして登場するなど、小川さんの人生の中で、それが重要なものであることが分かる。
小川洋子さんファンとしては、彼女の人となり、価値観を垣間見ることができ、満足の行く一冊だった。
-
Posted by ブクログ
饒舌なこと、適切な言語化が求められる現実社会のアンチテーゼのような作品。内気な人々が作り上げた小さなコミュニティが何十年と続いている「アカシアの野辺」,そこでの会話は指言葉と呼ばれるもので成り立っていて、言葉を発することはほとんどない。とても静かな世界のお話。アカシアの野辺で働くおばあさんの元でリリカは育った。彼女は名を明かさず、匿名で歌うことが仕事の一つだ。サイレントシンガー。彼女の日常を、人々とのやりとりを、人生を、辿った物語だ。
はしゃぐこともなく、慎み深い優しい時間が流れていく。とても寂しいし、とても哀しいと感じてしまうが、幸せ?不幸せ?尋ねるのは失礼な気がする。
指言葉のサヨナラは、目を閉じないと表現できない。お別れに相手を見送ることができない、と言う意味をとても考えさせられた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ〈備忘録・ネタバレあり〉
7つの作品をおさめた短編集
・海
婚約者とその家族の間になにかしらのわだかまりがあること、小さい弟(大人)が少し変わっていて純粋な心をもっていることは分かったが、何をどう読み解けば良いのか、物語の着地がわからなかった。小さい弟の愛くるしさは伝わった。
・風薫るウィーンの旅六日間
ありきたりなおばちゃん琴子さんが、病に伏すかつての恋人に会いにいくのに、たまたまホテル同室だった主人公が付き添うはめになる。連日通った末に元恋人は亡くなるが、実は人違いで隣のベッドだったというオチ。ただただそういう話でしかない。琴子さんの可愛らしい描写には引き込まれる(図々しいが)。
たったいっときのお付き合いをした人が、死に際に自分と会いたいと思ってくれたら、戸惑うがちょっとうれしいだろうな。
・バタフライ和文タイプ事務所
糜の活字が欠け、活字管理人の存在を知る。次に睾の活字が欠け、言葉を交わすうちに活字管理人のことが頭から離れなくなる。ついに膣の活字を自ら傷つけ、壊れたと見せかけて活字管理人のもとへ。自分で壊したとバレるのでは?と怯えつつ、彼の手つきや声を聞きながら悦に浸る、、、逆セクハラかいって突っ込みたくなる、純粋と淫靡が表裏一体な恋心の話。
・銀色のかぎ針
祖母の十三回忌へ向かう旅路で編み物をする老婦人の姿を見かけ、編み物が得意だった祖母との懐かしい思い出を回想する。そういうことあるよね。めちゃ短い話。
・缶入りドロップ
バスだけを40年運転してきた男、この5年は幼稚園バスを運転している。同じ味のドロップだけを集めた缶を所々に潜ませ、園児たちの心を掴む、優しい日常。これもめちゃ短い。
・ひよこトラック
40年ホテルのドアマンをしている孤独で不器用な男と、下宿先の口を利かない少女の会話のない交流。男も喋らないのは、対等でない気がするから…というように、二人が互いを思いあい、絆ができていく様子は微笑ましいしちょっと泣ける。あるきっかけにより少女が言葉を発し、それを聞いた男は「かけがえのない贈り物だ」と感じる。それだけの話なんだけど、この不器用で純朴な男がそう感じたんだな、と思うと泣けてくる。男の描写が秀逸。
・ガイド
題名屋の老人と僕が出会い、トラブルを解決した僕へお礼に題名をくれる。『思い出を持たない人間はいない』。物語としてはふーん…だけど、老人の動作所作の描写が丁寧で、人となりが伝わってくる。そこが素敵だった。
総じて、よく分からないけどなんか優しい…という印象の一冊だった。人柄が伝わる描写は全編素晴らしい。 -
Posted by ブクログ
テレビの短編ドキュメンタリーを見ているかのようでした。
普段何気なく目にするものの工事見学もありましたが、私は全く未知の世界の工場見学に面白さを感じました。例えば、ただひたすら金属に細い穴をあける会社とか、競技用のボートを作る国内唯一のメーカーとか、複数人の保育児を運ぶサンポカーを作る会社とか。
今の時代は大量生産しているものが多いですが、本書で紹介される工場には、唯一無二のものを作り出す職人さんがたくさんいらっしゃいました。専門家とか職人さんってカッコいいなぁと思います。一つの事に精通している、誰にも負けない、スペシャリスト。もしかしたら時代に合わないのかもしれませんが、私は憧れます。
きっと筆者も同じような思いだったのではないかと感じ勝手に親近感が湧きました。
171ページと薄い本でサクサクと読めますが、(興味のある方には)内容は濃いと思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレことりの小父さんと呼ばれるおじさんの人生。
小父さんにはポーポー語を話すお兄さんがいて、
両親がいた頃から
お兄さんとの生活を大切に守っていたし、
幼稚園の鳥小屋も大切にしてたし、
司書さんも大切にしたかったし、
仕事も丁寧にしてたし、
ブローチも宝物だったし…
全部を繰り返し繰り返し、
丁寧に丁寧に扱うことで、
それはそれは大切に守ってたし
守りたかったのに
なかなかそうはいかなくて、みんな結局は
小父さんのもとから離れていってしまって…
小父さんはただ守りたいだけなのに
(時にはひどい方法で)離れてしまうのが辛い。
とても静かな小説の世界の中で
何度も胸が締め付けられる、
いたたまれない、悔しい気持ちにさせられた。
でも、守り続けていた小父さんが
鳥たちを解放して自分も旅立つラストは
とても清々しく晴れやかな読後感だった。
小父さん、あっちの世界では
お兄さんとポーポー語で話してるんだろうな。 -
Posted by ブクログ
ツアー中 異国で反政府ゲリラの襲撃を受け人質となった日本人たちが各人の思い出を語る─。
この先 起こることを自らの意思で選択できない状況下。
しかし個々の中にある思い出は何者にも踏みにじられることはない。
人質が8名に対し語られた物語は9話。
正直どんな気持ちで読んだらいいのかと思った。でも語られる話はどれも日常のささやかな思い出で、暫し状況を忘れてしまう…。
9話目があることによって冒頭のショッキングで血なまぐさい事件とは裏腹に終わりは静謐な余韻に満たされたんじゃないかと思った。
そして人には誰しも語れる物語があるということか…。
小川洋子さん。久しぶりのこの感じ。