小川洋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
昔は本をよく読んでいたがいつの間にかあまり読まなくなってしまっていました。
小川洋子さんの小説を読んでみたいけれどすらすら読める小説ではないと認識していたので、短編小説からにしようと思いました。新しめのもので。タイトルと同名の『約束された移動』が一番好きで面白かったです。高級ホテルのロイヤルスイート担当の客室係と非定期的にスイートルームに宿泊するハリウッドスター、ギリシャ彫刻のように美しいBとの二人だけの不思議で秘密な本に関するやり取りがとてもひっそりとしているが興味深かった。Bが宿泊したあと、書棚の本が一冊ずつ消えてゆき、その隙間を客室係がわからないよう塞いでゆく。消えた本と同じ本を客室係は -
Posted by ブクログ
現実世界で起これば母親は親としての在り方を非難されるに違いないが、小川洋子の世界の中では誰も糾弾されることはない。いろんな人にとっての真実がただそこに存在している。
他の作品でも登場人物や小川洋子の世界観が強く存在していることは多々あるが、この作品は他のどの作品よりも絶対に自分は入り込めない、触れてはいけない世界だと感じた。
そして、その世界、家族の在り方は信仰に通ずるものを感じた。ムスリムの友人は宗教で自由になれると私に話した。外から見れば戒律に縛られた自由のない世界。内から見れば従うものがあるからこそ迷いなく守られながら自由でいられる世界。そんな信仰に近いものを彼らの壁の内にも感じた。
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Posted by ブクログ
心が温まったり、冷えたり。体温調節が大変だったなぁ、と言うのは冗談で。「仮名の作家」が一番好きでした。映画ミザリーよりももっと、リアリティのある暴走ファンのお話。読み進めると段々雲行きがおや?と怪しくなってきた辺りから徐々に体が冷え始め、最後に哀れみが残った。
表題にもなっている「口笛の上手な白雪姫」は、正直解説を読んでもしっくりは来なかった。解釈も受け取り方も人それぞれなので、何が正解かは分からないけれど、無理やり仏法と結びつけ過ぎている様な。正直この手のヒューマンドラマ系の物語に、宗教と言う視点から考察する事には違和感しか感じられなくて。小母さんの過去は全く描かれていない中で、無償の愛と -
Posted by ブクログ
ネタバレ偏愛と孤独を友とし生きる人々を描く、8編の短編小説。
「一つの歌を分け合う」が一番印象的だった。
従兄弟が亡くなってしばらくしてから、伯母が舞台俳優を亡くなった我が子だと思い込み、主人公と一緒に観劇に行く話。
「劇場では誰も泣いている彼女を不思議がったり、奇異な目で見たりしなかった。理由を取り繕う必要はないのだ。伯母は好きなだけ泣くことができた。」
という、帰り道のシーンがよかった。
夫の祖母の葬式のときに、子供を亡くした叔母さんの話を聞いてから、それと重なって思いを馳せてしまった。
「かわいそうなこと」「盲腸線の秘密」も、子供ながらの世界を表していてよかった。