小川洋子のレビュー一覧

  • 沈黙博物館

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    どこか遠い小さな村にある沈黙博物館。そこには人が生きた形見を展示してあるという。不思議な博物館の誕生にまつわる寓話である。私の愛する人が死んだとき、その形見が人知れずその博物館に展示してあったらうれしいだろうか、嫌だろうか。もし私が死んだとき、その形見が人知れず展示してあったら、私はそれを望むだろうか、それとも望まないだろうか。

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    2021年04月22日
  • まぶた

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    8つの作品が収録された短篇集で、幻想的で奇妙な出来事を交えながらも、人間という愛らしい存在を感じられたのが、印象的でした。

    また、奇妙な出来事を体験した後で、自らの人生を見つめ直すような展開が多いことに、人生とは、何をきっかけにして突然変わるか、分からないものだなとも思えました。しかし、不自然さは感じずに共感できたのは、小川さんの、上品でいて飾らない文体にあるのかもしれません。

    こういった上品な奇妙さと、私の人生観には、精神的な距離を隔てているのを感じ、逆に、読んでいて気楽な心地良さがあって、何となく旅行時に持って行きたい本だなと思いました。

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    2022年12月02日
  • 言葉の誕生を科学する

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    鳥やクジラに見られるような、求愛の時に行われる歌のような声から言語が始まったという仮設は面白と思うし、納得感がある。
    しかし、それなりに長い対談の中で刺激的な話題が他にはあまりなかったのが残念。
    対談というのもは基本的にしゃべったままを記録するものなので、あまり内容が詰まったものにはなりにくいのかな。

    発声というのは本質的には呼吸を制御することであるというのは目から鱗が落ちる思いだった。鳥のように上空を飛んだり、クジラのように海に深く潜ったりするためには、意図的に呼吸を制御する必要があり、その副産物として多彩な歌を歌うことができる。他の動物は無意識的な呼吸のみを行っているのだろう。人間は呼吸を制御できる必要がなかったのに発声を学ぶことができたのが不思議だということ。(59ページあたり)

    あと、コミュニケーションには、コミュニケーションしたいという意図のコミュニケーションと、内容のコミュニケーションに分かれるということ。(99ページあたり)

    答えのない問いに対して考え続けるのは大切なことだと思う。

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    2021年01月23日
  • 不時着する流星たち

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    美しくて、そしてゾワゾワとくる、まさに小川洋子さんワールドでした。
    例えるなら、大人のための童話かな。

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    2021年01月20日
  • 余白の愛

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    冬生まれが冬に読みたい物語。誰もまだ踏んでいない真っ白な雪原は、いつだって静かだ。そこに足跡をつけるかなしみとよろこびを知っている。

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    2020年12月30日
  • 妖精が舞い下りる夜

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    あの「博士の愛した数式」を書いた作者の駆け出しのころのエッセイ。
    どんな風に言葉を紡いて小説を書くのだろうと思って読んでみました。
    真摯に言葉に向き合うひたむきな姿勢と、書くことが好きという想いが伝わってきた。
    印象に残ったのは「小説は言葉によってしか表現できないものだが、それだけですべてを表現しつくしてしまうことも、またできない。言葉が持っている目に見えない模様を見せたい」。そう、小説って言葉で表されているもの以上にその裏に感じる情景や思いや手触りといった諸々のものを感じさせる。私は一読者としてそれらを感じられる読書が好き。
    あと印象的だったのは、出産した時に感じた哀しさの話。産声に切ない哀しさを感じたって。人は哀しさを抱えて生まれてくる。手付かずの純粋な哀しさ。曰く「人の心を掘り起こしていって、一番奥の髄にある哀しさを表現することが、小説を書くということではないだろうか」。私が彼女の小説に心を動かされる訳がわかったような気がしました。
    読み飛ばしたところも多々あったけど、印象に残る箇所のあるエッセイでした。

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    2020年12月08日
  • 凍りついた香り

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    亡くなった彼の真実を探す旅。孔雀の羽根、記憶の泉、調香師、数学の問題…幾つかのキーワードから死者を訪ねる謎解きが始まる。
    小川洋子さんの作品は、五感を研ぎ澄まして読むとより一層楽しむことができる。全ての物に対して存在を認めることが、この世界の入り口のチケットでもある。だから体調不安の時は馴染めない。

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    2020年11月23日
  • 偶然の祝福

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    作家である「私」が、息子や愛犬のこと、昔の思い出などを描いた短編集で、「私」を中心に、それぞれの話はどこかで繋がっている。
    タイトルに"祝福"とあるわりには、どの話もわかりやすい幸せな感じはないため、個人的には少しモヤモヤが残ったが、一見不幸そうな中にわずかに温かさを感じる部分もあり、それが"偶然の祝福"なのかもしれない。

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    2020年10月30日
  • ホテル・アイリス

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    少女と老人のお話
    究極のエロティシズムに期待して読んでみました
    老人はただのエロじじいだし
    少女もなぜに彼に引き寄せられたのか・・・

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    2020年09月21日
  • 犬のしっぽを撫でながら

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    エッセイをあまり読んでこなかった私。
    小川洋子さんの作品もいくつかしか読んだことがないのだけれど、『作品』じゃなくて『作家その人』が好きになるってあんまりなかった体験。
    着飾らなくて、なんだかぬけてて、なんて自信のない方なんだ…!と驚いたりしながら楽しく読めました。
    これは日記か?というような文章もあったりして、こんな小川さんがちょっとダークな世界を描いたりしてるのかと思うと、作家さんってすごいな…と改めて感じたりしました。

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    2020年09月21日
  • ホテル・アイリス

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    ネタバレ

     昔途中まで読んだけど、積読していた本。なんとなく、久しぶりに本を読んだ。1日で読み終わった。
     読み始めてなぜ途中で読むのを止めたのか思い出した。登場人物の男(翻訳家)の第一印象がキモかったからだ。このキモいおっさんと、主人公との恋愛物語とか見たくないわーと思ったんだろう。今回読んでも同じ印象で同じ感情を抱いたが、読むのは止めなかった。
     この小説で印象的だったのが、舞台となる町の風景だ。海沿いの町で城壁があり、離小島があるらしい。その描き方が美しかった。調べたところ作者さんはある地域をモデルとしているらしい。自分の中ではなんとなく、逗子や真鶴辺りを想像した。
     登場人物の「翻訳家」は最初から最後まで滑稽だった。売女に罵られたり、町の人々からは変人と思われてたり、レストランの予約は出来ていなかったし、なにより最後に逃げて船から海へ飛び降りる場面。ダサいし格好悪い。主人公の恋愛観(?)には読み終わるまで感情移入できなかったが、主人公はこの男が滑稽な姿であったから、どこか惹かれるものがあったのかなと感じた。

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    2020年09月13日
  • 心と響き合う読書案内

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    本を紹介する本が好きで、また自分が読んだ本をプロの作家はどのように評価したり感じたりしているのか知ることができてなかなか面白かったです。
    今後の読書の参考にできる本でした。

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    2020年09月10日
  • いつも彼らはどこかに

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    ブロンズ製の犬、cheater、蝸牛、竜の落とし子‥それぞれの主人公のそばには動物たちがいる。
    ここではない何処かで繰り広げられる、不思議かつユーモラスな8つの物語。

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    2020年10月13日
  • ホテル・アイリス

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    ネタバレ

    ヨーロッパの方の映画みたいな感じだった。
    全体的に乾いて、影が多くて、黒い感じの画面。登場人物の心も皆、乾いている感じがする。
    小川洋子にしては、現実味がある世界なんだけど、やっぱりさらっと、俯瞰している感じがする。
    世界の片隅で、誰にも気にかけられない人たちのいとなみ。いそうもないけどいるかも知れない。絶対いないとは言い切れない。

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    2020年08月14日
  • 不時着する流星たち

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    実在するモデルを元に作られた10篇の短編集。
    氏の小説は久しぶりに読んだが、彼女の感性を共用するには、私は少々歳を取り過ぎたのかもしれない。美しい言葉で語られるが、どの物語にも狂気を感じ、途中で読むのが辛くなった。
    美しいが、落ち着かない感じ。
    それがタイトルの『不時着する流星たち』へと繋がっているのかもしれない。

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    2020年07月31日
  • 世にも美しい数学入門

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    ネタバレ

    数学って実は美しく面白いものなんだ、ということを知ったのが小川洋子さんの著書「博士の愛した数式」だった。それまで数学は四角四面の無味乾燥のものだと思っていたが、それ以来数学を見る目が変わった。
    また「遥かなるケンブリッジ」で藤原先生の大ファンになっていたので、骨髄反射的にこの本を手に取ってしまっていた。
    数学は大の苦手だけれど、「美しい」ということだけは分かる気がする。そして美しいことは正しい、というのも腑に落ちる。それが宇宙の法則なのか、神の技なのか。混沌の中からその秩序を見つけ出す、秘密を解き明かす数学者には信念と情熱が必要。実はとてもウェットな世界だよなぁと感じた。数学に、数学者に、宇宙に敬意を感じずにはおれない。
    日本も歴史に残るような偉大な数学者を多く輩出しているという事実に改めて驚いた。鎖国時代にも独自に研究を進めていたというのも興味深い。
    藤原先生の「谷村ー志村予想」についての例え「エベレストの頂上と富士山の頂上を結ぶ虹のかけ橋」というのもまた美しい。
    ・室伏選手のアテネオリンピックでのエピソード
    ・三角数の美しさ

    以下、読書メモ
    ・天才数学者の生まれる条件
    ①何かにひざまずく心を持っている
    ②美の存在
    ③精神性を尊ぶ(役に立たないもの)
    ・正しい方向に間違う

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    2020年08月10日
  • やさしい訴え

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    夫から逃げるように向かった別荘地で過ごす瑠璃子と、同じように林の中で生活するチェンバロ作者の新田氏、薫さん、そして宿のおばさんたちとの関わりが描かれた作品。
    新田氏への恋心を持て余す瑠璃子の気持ちに共感したのと同時に、非日常の世界の優しさが身に染みた。
    いつかはそこから離れなくてはならないとわかっていても、ずっと安住していたくなるような安心感があった。

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    2020年02月20日
  • いつも彼らはどこかに

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    小川洋子の短編集。本タイトルが、小川洋子らしくなく、内容の一部もそんな感じ。

    スーパーで試食を作ると、派手でも積極的でもないのに飛ぶように売れる試食販売員。スーパーの試食が配られ始めると、どこからともなく現れて、何周も食べる女性。いつの頃か、2人には固い絆が作られていく。

    年末年始に読んだ本が、ことごとくハズレであったので、心の安らぐことこの上ない1冊。サウナのあとの1杯の水と言う感じで、ごくごくと読んでしまった。

    冒頭のスーパーの2人とディープインパクトに対する帯同馬の話は、どう思いついたのかがすぐわかるところが、創作の参考になる。ただ、小川洋子にしてはツッコミが浅いな…とおもっていたら、頭に入ってこない作品が有って、ちょっと戸惑った。

    ほとんどの作品は、☆4以上の出来なのに、やはり頭に入ってこない、突拍子もない展開のある作品については、減点。また、いつもの小川洋子らしからぬ浅い作品、例えばカタツムリはオチが分かっちゃったなあ。でも、寄生虫にはライフサイクルというものが有るから、純な環境では繁殖できないんだよなあ、などと要らないことを考えてしまう。

    我々は小川洋子には、いつものように、もう少し薄ら怖い作品を求めているのだと思う。

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    2020年01月15日
  • 余白の愛

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    ふわふわした気分で読み進め、ふわふわした気分で読み終えた。
    静かで綺麗、そして独特な世界観に引き込まれた。
    しかし良くも悪くも言葉の言い回しや表現に癖があって高度なため、なかなか初見では理解するのが難しいところもあり、読んでいて少し疲れてしまった。
    また時間のあるときにゆっくり読み返したいと思う。

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    2019年09月05日
  • 不時着する流星たち

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    ネタバレ

    そこに狂気があるとして


    まるっきりのタイトル買い。少し怖くて、ちょっと気持ち悪くて、でもたぶんプラスに向かうマイナスのちから、というものもあるんだろうなぁ…なんてぼんやり。
    頭がおかしくなりそうな、いろいろ、の中で
    それを形にするには、じゃあ、どうしても
    そちらがわ、に踏み込むしか無い?

    高みの見物、は許されないのだ。

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    2019年08月30日