小川洋子のレビュー一覧
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小川洋子(1962年~)氏は、岡山市生まれ、早大第一文学部卒の小説家。『妊娠カレンダー』で芥川賞(1991年)、『博士の愛した数式』で本屋大賞(2004年)、そのほか谷崎潤一郎賞、野間文芸賞などを受賞している。
本書は、2008年に出版され、2011年に文庫化された。
本書は、「子供の頃から、新聞で一番好きなのは科学の記事でした」という著者が、科学の7分野の研究者に対して行ったインタビューをまとめたものである。
章立て及び対談相手は以下である。
1章:宇宙を知ることは自分を知ること/国立天文台教授 渡部潤一
2章:鉱物は大地の芸術家/鉱物科学研究所所長 堀秀道
3章:命の源“サムシング・グレート”/筑波大学名誉教授 村上和雄
4章:微小な世界を映し出す巨大な目(SPring-8)/財団法人高輝度光科学研究センター特別研究員 古宮聰
5章:人間味あふれる愛すべき生物、粘菌/京都大学名誉教授 竹内郁夫
6章:平等に生命をいとおしむ学問“遺体科学”/東京大学総合研究博物館教授 遠藤秀紀
7章:肉体と感覚、この矛盾に挑む/阪神タイガースファームトレーニングコーチ 続木敏之
研究者や(科学)ジャーナリストが、特定の分野に関して、一般向けに網羅的にまとめた入門書や、最新の研究結果をレポートしたものとは異なるが、好奇心の塊のような著者と、研究愛に溢れた各研究者のやりとりから得られるものは少なくない。
また、宇宙科学や生命科学のような注目される分野については、否応なく関心も向くし、知識・情報に触れる機会も多く、自ら関連する書籍を読むことも少なくないが、そのほかの、そうした機会の少ない分野(先生方には申し訳ないが)についても取り上げられており、そういう意味でも本書の価値は大きいと思われる。
宇宙科学、生命科学から鉱物学、粘菌学まで、様々な科学の扉をたたき、興味を呼び起こしてくれる、作家と研究者の対談集である。
(2021年6月了) -
Posted by ブクログ
8つの作品が収録された短篇集で、幻想的で奇妙な出来事を交えながらも、人間という愛らしい存在を感じられたのが、印象的でした。
また、奇妙な出来事を体験した後で、自らの人生を見つめ直すような展開が多いことに、人生とは、何をきっかけにして突然変わるか、分からないものだなとも思えました。しかし、不自然さは感じずに共感できたのは、小川さんの、上品でいて飾らない文体にあるのかもしれません。
こういった上品な奇妙さと、私の人生観には、精神的な距離を隔てているのを感じ、逆に、読んでいて気楽な心地良さがあって、何となく旅行時に持って行きたい本だなと思いました。 -
Posted by ブクログ
鳥やクジラに見られるような、求愛の時に行われる歌のような声から言語が始まったという仮設は面白と思うし、納得感がある。
しかし、それなりに長い対談の中で刺激的な話題が他にはあまりなかったのが残念。
対談というのもは基本的にしゃべったままを記録するものなので、あまり内容が詰まったものにはなりにくいのかな。
発声というのは本質的には呼吸を制御することであるというのは目から鱗が落ちる思いだった。鳥のように上空を飛んだり、クジラのように海に深く潜ったりするためには、意図的に呼吸を制御する必要があり、その副産物として多彩な歌を歌うことができる。他の動物は無意識的な呼吸のみを行っているのだろう。人間は呼吸を制御できる必要がなかったのに発声を学ぶことができたのが不思議だということ。(59ページあたり)
あと、コミュニケーションには、コミュニケーションしたいという意図のコミュニケーションと、内容のコミュニケーションに分かれるということ。(99ページあたり)
答えのない問いに対して考え続けるのは大切なことだと思う。 -
Posted by ブクログ
あの「博士の愛した数式」を書いた作者の駆け出しのころのエッセイ。
どんな風に言葉を紡いて小説を書くのだろうと思って読んでみました。
真摯に言葉に向き合うひたむきな姿勢と、書くことが好きという想いが伝わってきた。
印象に残ったのは「小説は言葉によってしか表現できないものだが、それだけですべてを表現しつくしてしまうことも、またできない。言葉が持っている目に見えない模様を見せたい」。そう、小説って言葉で表されているもの以上にその裏に感じる情景や思いや手触りといった諸々のものを感じさせる。私は一読者としてそれらを感じられる読書が好き。
あと印象的だったのは、出産した時に感じた哀しさの話。産声に切ない哀しさを感じたって。人は哀しさを抱えて生まれてくる。手付かずの純粋な哀しさ。曰く「人の心を掘り起こしていって、一番奥の髄にある哀しさを表現することが、小説を書くということではないだろうか」。私が彼女の小説に心を動かされる訳がわかったような気がしました。
読み飛ばしたところも多々あったけど、印象に残る箇所のあるエッセイでした。