小川洋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
8つの作品が収録された短篇集で、幻想的で奇妙な出来事を交えながらも、人間という愛らしい存在を感じられたのが、印象的でした。
また、奇妙な出来事を体験した後で、自らの人生を見つめ直すような展開が多いことに、人生とは、何をきっかけにして突然変わるか、分からないものだなとも思えました。しかし、不自然さは感じずに共感できたのは、小川さんの、上品でいて飾らない文体にあるのかもしれません。
こういった上品な奇妙さと、私の人生観には、精神的な距離を隔てているのを感じ、逆に、読んでいて気楽な心地良さがあって、何となく旅行時に持って行きたい本だなと思いました。 -
Posted by ブクログ
鳥やクジラに見られるような、求愛の時に行われる歌のような声から言語が始まったという仮設は面白と思うし、納得感がある。
しかし、それなりに長い対談の中で刺激的な話題が他にはあまりなかったのが残念。
対談というのもは基本的にしゃべったままを記録するものなので、あまり内容が詰まったものにはなりにくいのかな。
発声というのは本質的には呼吸を制御することであるというのは目から鱗が落ちる思いだった。鳥のように上空を飛んだり、クジラのように海に深く潜ったりするためには、意図的に呼吸を制御する必要があり、その副産物として多彩な歌を歌うことができる。他の動物は無意識的な呼吸のみを行っているのだろう。人間は呼吸を制御できる必要がなかったのに発声を学ぶことができたのが不思議だということ。(59ページあたり)
あと、コミュニケーションには、コミュニケーションしたいという意図のコミュニケーションと、内容のコミュニケーションに分かれるということ。(99ページあたり)
答えのない問いに対して考え続けるのは大切なことだと思う。 -
Posted by ブクログ
あの「博士の愛した数式」を書いた作者の駆け出しのころのエッセイ。
どんな風に言葉を紡いて小説を書くのだろうと思って読んでみました。
真摯に言葉に向き合うひたむきな姿勢と、書くことが好きという想いが伝わってきた。
印象に残ったのは「小説は言葉によってしか表現できないものだが、それだけですべてを表現しつくしてしまうことも、またできない。言葉が持っている目に見えない模様を見せたい」。そう、小説って言葉で表されているもの以上にその裏に感じる情景や思いや手触りといった諸々のものを感じさせる。私は一読者としてそれらを感じられる読書が好き。
あと印象的だったのは、出産した時に感じた哀しさの話。産声に切ない哀しさを感じたって。人は哀しさを抱えて生まれてくる。手付かずの純粋な哀しさ。曰く「人の心を掘り起こしていって、一番奥の髄にある哀しさを表現することが、小説を書くということではないだろうか」。私が彼女の小説に心を動かされる訳がわかったような気がしました。
読み飛ばしたところも多々あったけど、印象に残る箇所のあるエッセイでした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ昔途中まで読んだけど、積読していた本。なんとなく、久しぶりに本を読んだ。1日で読み終わった。
読み始めてなぜ途中で読むのを止めたのか思い出した。登場人物の男(翻訳家)の第一印象がキモかったからだ。このキモいおっさんと、主人公との恋愛物語とか見たくないわーと思ったんだろう。今回読んでも同じ印象で同じ感情を抱いたが、読むのは止めなかった。
この小説で印象的だったのが、舞台となる町の風景だ。海沿いの町で城壁があり、離小島があるらしい。その描き方が美しかった。調べたところ作者さんはある地域をモデルとしているらしい。自分の中ではなんとなく、逗子や真鶴辺りを想像した。
登場人物の「翻訳家」は最初から最後まで滑稽だった。売女に罵られたり、町の人々からは変人と思われてたり、レストランの予約は出来ていなかったし、なにより最後に逃げて船から海へ飛び降りる場面。ダサいし格好悪い。主人公の恋愛観(?)には読み終わるまで感情移入できなかったが、主人公はこの男が滑稽な姿であったから、どこか惹かれるものがあったのかなと感じた。 -
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ネタバレ数学って実は美しく面白いものなんだ、ということを知ったのが小川洋子さんの著書「博士の愛した数式」だった。それまで数学は四角四面の無味乾燥のものだと思っていたが、それ以来数学を見る目が変わった。
また「遥かなるケンブリッジ」で藤原先生の大ファンになっていたので、骨髄反射的にこの本を手に取ってしまっていた。
数学は大の苦手だけれど、「美しい」ということだけは分かる気がする。そして美しいことは正しい、というのも腑に落ちる。それが宇宙の法則なのか、神の技なのか。混沌の中からその秩序を見つけ出す、秘密を解き明かす数学者には信念と情熱が必要。実はとてもウェットな世界だよなぁと感じた。数学に、数学者に、宇宙に敬意を感じずにはおれない。
日本も歴史に残るような偉大な数学者を多く輩出しているという事実に改めて驚いた。鎖国時代にも独自に研究を進めていたというのも興味深い。
藤原先生の「谷村ー志村予想」についての例え「エベレストの頂上と富士山の頂上を結ぶ虹のかけ橋」というのもまた美しい。
・室伏選手のアテネオリンピックでのエピソード
・三角数の美しさ
以下、読書メモ
・天才数学者の生まれる条件
①何かにひざまずく心を持っている
②美の存在
③精神性を尊ぶ(役に立たないもの)
・正しい方向に間違う -
Posted by ブクログ
小川洋子の短編集。本タイトルが、小川洋子らしくなく、内容の一部もそんな感じ。
スーパーで試食を作ると、派手でも積極的でもないのに飛ぶように売れる試食販売員。スーパーの試食が配られ始めると、どこからともなく現れて、何周も食べる女性。いつの頃か、2人には固い絆が作られていく。
年末年始に読んだ本が、ことごとくハズレであったので、心の安らぐことこの上ない1冊。サウナのあとの1杯の水と言う感じで、ごくごくと読んでしまった。
冒頭のスーパーの2人とディープインパクトに対する帯同馬の話は、どう思いついたのかがすぐわかるところが、創作の参考になる。ただ、小川洋子にしてはツッコミが浅いな…とおもっていたら、頭に入ってこない作品が有って、ちょっと戸惑った。
ほとんどの作品は、☆4以上の出来なのに、やはり頭に入ってこない、突拍子もない展開のある作品については、減点。また、いつもの小川洋子らしからぬ浅い作品、例えばカタツムリはオチが分かっちゃったなあ。でも、寄生虫にはライフサイクルというものが有るから、純な環境では繁殖できないんだよなあ、などと要らないことを考えてしまう。
我々は小川洋子には、いつものように、もう少し薄ら怖い作品を求めているのだと思う。