小川洋子のレビュー一覧
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心が温まったり、冷えたり。体温調節が大変だったなぁ、と言うのは冗談で。「仮名の作家」が一番好きでした。映画ミザリーよりももっと、リアリティのある暴走ファンのお話。読み進めると段々雲行きがおや?と怪しくなってきた辺りから徐々に体が冷え始め、最後に哀れみが残った。
表題にもなっている「口笛の上手な白雪姫」は、正直解説を読んでもしっくりは来なかった。解釈も受け取り方も人それぞれなので、何が正解かは分からないけれど、無理やり仏法と結びつけ過ぎている様な。正直この手のヒューマンドラマ系の物語に、宗教と言う視点から考察する事には違和感しか感じられなくて。小母さんの過去は全く描かれていない中で、無償の愛と -
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ネタバレ偏愛と孤独を友とし生きる人々を描く、8編の短編小説。
「一つの歌を分け合う」が一番印象的だった。
従兄弟が亡くなってしばらくしてから、伯母が舞台俳優を亡くなった我が子だと思い込み、主人公と一緒に観劇に行く話。
「劇場では誰も泣いている彼女を不思議がったり、奇異な目で見たりしなかった。理由を取り繕う必要はないのだ。伯母は好きなだけ泣くことができた。」
という、帰り道のシーンがよかった。
夫の祖母の葬式のときに、子供を亡くした叔母さんの話を聞いてから、それと重なって思いを馳せてしまった。
「かわいそうなこと」「盲腸線の秘密」も、子供ながらの世界を表していてよかった。 -
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ネタバレ不気味で残酷な話と、ただ残酷な話と、切ない話が散らばっていた。
特にアリアが印象的で、年に一度、誕生日に訪れ、贈り物専用棚に毎年1個ずつ品は増えていく。そしてお返しに叔母さんはオペラを披露する。年に1日だけだろうと、わざわざ誕生日にプレゼント片手に訪れてくれるのだから有難いのかもしれないが、叔母さんの方も人を持て成すことに慣れておらず、毎年大量の料理やデザートを用意して待ち構えている。
オペラで成功せず、化粧品売りになった叔母。
今では唯一披露するのがこの誕生日かもしれない。
「どうぞお元気で。また、来年」と帰っていく。
窓からじっと目を凝らして、彼の姿が見えなくなるまで見送る。
そして冷たく -
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物静かな主人公とブラフマンとの、静かな出会いと静かな別れが、淡々とした叙事的な文章で語られる。
先日読んだ井伏鱒二「山椒魚」と同じく、この作品の中では空想上の生物であるブラフマンの描写だけがリアルだ。
現実的に「あり得る」はずの他の登場人物達は、主人公が密かに想いを寄せる「娘」でさえ、あるいはその「娘」への想いさえ、どこかぼんやりしている(村上春樹の世界の終わりを連想させる)。
ブラフマンを失った主人公の悲しみについては何も書かれていない。
書かれているのは、「娘」から聴く言葉がどこか平板であり、声を発さないブラフマンの表情は主人公に豊かな心情を語りかけていることである。
ブラフマンが枯葉 -
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ゴリラの専門家(霊長類学者)の山極寿一さんと、小説家の小川洋子が、ひたすら対談する。対談集なので、徹底的に突き詰めるというより、ふわっと終わった感がある。学者は、霊長類のゴリラの特性から、人間との共通点、違う点、なぜ違いが出たかについて語る。小説家は、なぜ人間界にだけが戦争や暴力や強姦が起きるのかを考えている。山極さんは『言語』、それによるメタファー、そして死の記憶等の、他の動物にはない人間特有の特性だとする。それは人間が文明を築き上げた源でもあり、それがまた、戦争、暴力をも引き起こす源でもあるのか。個人的には、ゴリラの子殺しの話が興味深い。自分の子どもを殺した男ともつながれる。それは死の記憶