小川洋子のレビュー一覧

  • 約束された移動

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    この著者の目には、世界はどんな風に見えているのだろう。一見すると奇抜で現実味を欠く内容なのに、妙に生々しい手触りの文章で、彼・彼女らが確かにそこにいると感じられる。エンタメとして楽しむ本ではないのだけれど、なぜか手に取っている。癖になる小説家だ……

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    2023年08月14日
  • からだの美

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    「赤ん坊の握りこぶしの中にはいつでも、生きるに値すると思わせてくれる世界が広がっている」
    まど・みちおさんの詩が、東京バンドワゴンの我南人の口調を連想させる…。

    ナメクジが大嫌いなのだが、カタツムリからの進化ということを初めて知った。別ものだと思っていた。どっちもキモチワルイが。

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    2023年08月05日
  • ブラフマンの埋葬

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    作中ではブラフマンは「謎」という意味だけが出てくる。それゆえに、その姿が我々が名前を知っている何かに当てはまる必要はないのだろう。

    とはいえ、造語ではなく元よりある言葉なだけに、その意味から作中の抽象が何を表現しているのか解釈したくなってしまう。

    高校の倫理を履修した人なら覚えているかもしれない。"ウパニシャッド哲学"なんて言葉と一緒に出てくる「ブラフマン」とは、宇宙の根本原理をさす。
    つまり、全てのものの根源がブラフマンであり、「宇宙の創造主」とも言われる。

    とすると、作中のブラフマンという存在は、芸術家たちが活動する〈創作者の家〉が、あるいはその創作が、生んだものなのか。いや、それぞれの創作がうまれる根源がもつ生きた熱量がこの家で融合し、姿をもっただけ。すなわちブラフマンから創作がうまれたという見方の方が哲学に即しているのか。

    いずれにせよ、ブラフマンは作中でも宇宙の根本原理であり、僕の存在が認識される世界における原理原則、各人がもつ領域の調和そのものであったのだろう。
    しかし、僕はラストシーンで娘の領域に踏み込む。その結果、ブラフマンは失われる。

    小川洋子の描く世界がこんなに言語化しやすいとも思わないので、ただの素人の解釈に過ぎないが、これが私が読んだものである。
    「創作」「宇宙」などのワードが見られたので、遠からずな気もしているが。

    今回も、言葉と脳みそでは掴めないような物語に心が休まった。幹に空洞ができることを「まるで森がため息をつく時の唇のよう」と表現するところなど、また小川洋子の世界に触れることができているんだと静かで幸せな気持ちになった。

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    2026年07月13日
  • 偶然の祝福

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    積ん読になっていましたが、ふと手にとって読み始めました。私の読解力がないのか、あれ~?なになに~と理解困難な箇所もありましたが、ほっこりするような、ふわっと幸せ感じるような、穏やかな気持ちになれます。

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    2023年07月09日
  • 偶然の祝福

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    説明のつかない奇妙さや気持ち悪さがありつつも、どこか儚くて切なく感じる短編集でした。

    特に前半「失踪者たちの王国」、「盗作」はちょっと気持ち悪く感じました。

    小川洋子の描く動物は優しくて可愛いです。
    「涙腺水晶結石症」が好きです。

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    2023年07月02日
  • からだの美

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    小川洋子の不思議な魅惑的な文章が出来上がる
    頭の中を見た感じ。

    一瞬をとらえた写真も素敵。

    それにしてもハダカデバネズミには
    世の中にこんな生き物がいたのかと驚かされた。

    不思議な本の表表紙の作品は、
    中谷ミチコさんの「すくう、すくう、すくう」だそうです。

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    2023年06月20日
  • 琥珀のまたたき

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    小川洋子さん、いつも目に見えない心の中を深く伝えてくれます。末娘を失った母親の狂気、外との世界を遮断し母の望むように生きようとする三姉弟。
    オパール、琥珀、瑪瑙。名前の言葉選びも奥深い。母との関係を精算した父が作った百科事典。その中で生きる末娘。琥珀の目に映る世界は幻想か希望か。百科事典の中で生きる家族だけは永遠であり続けて欲しい。

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    2023年06月17日
  • からだの美

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    小川さんの文章と写真がマッチしており、時折ハッとさせられました。短めの文章でありながらその中身の濃さと美しさに圧倒された一冊。

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    2023年06月15日
  • からだの美

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    からだのパーツに注目して書かれたエッセイ。
    観察眼が素晴らしく、自分が今までに美しいと感じていたもの(イチロー選手の肩とか)を言語化するとこうなるのか!と感心した。
    また、見過ごしてしまいそうなものにも美を見出していて、興味深く読んだ。

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    2023年06月10日
  • アンネ・フランクの記憶

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    アンネ・フランクの記憶を辿る、小川洋子の旅。

    ナチス・ドイツや人種差別問題、ホロコーストは頭のどこかで「遠くの」「昔の」事だと思っていたのですが、こうして小川洋子という好きな作家が、アンネ・フランクと交流のあった方に取材をされている事でかなり地続きに感じられました。

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    2023年06月07日
  • からだの美

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    同じものを見ても、きっと私はそう感じない。
    だからこそ面白い。バレリーナの爪先、フィギュアスケートの高橋選手の話が印象的。
    1つの話が3~4ページなので、隙間にサクッと読めるのがいい。

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    2023年06月02日
  • 約束された移動

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    六篇のお話から成る短編集。読み終わった後、自分の感情がうまく言葉にできなかったのですが、改めて思い返すと優しさと奇怪さとグロテスクな要素が絡み合っているお話ばかりだったからだと気付きました。
    それでいて、なぜか静謐な雰囲気が保たれているのが不思議です。

    それぞれのお話の主人公の名前が出てこないのはダフネ・デュ・モーリエの『レベッカ』を思い出しました。

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    2023年05月03日
  • 夜明けの縁をさ迷う人々

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     久しぶりの小川洋子さんの作品。野球を舞台にした作品が、生き生きと躍動感たっぷりで素晴らしい。阪神タイガースのファンでしたっけ?

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    2023年04月14日
  • 夜明けの縁をさ迷う人々

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    題通り不思議な話が多かった。
    結局なんなんだ?というものが多かった
    短い割に意外と進まず….

    パラソルチョコレートがすごく好き

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    2023年03月13日
  • 夜明けの縁をさ迷う人々

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    初手から小川節炸裂で大変よかった。精神的なグロテスクさというのかな。リアリティのある筆致ではないのに、その情景を鮮やかに想像させる文章が相変わらず好み。夜明けの縁はそう、あちらとこちら。ボーダーにいるのはこの物語の人々か、それとも私か。

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    2023年03月12日
  • 完璧な病室

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    完璧な病室 小川洋子
    『ダイヴィング・プール』

    4作の中で印象に残ってる、お気に入り。
    小川洋子さんの中で少し稀有な作品に感じた。

    大きな括りでいうと青春小説なのだろう。

    主人公の表の部分は。所謂、ピュアさ。
    心の中に抱えている部分は青春小説では表現する必要のないはず。所謂、ダークさ。

    ダークさとピュアさの対比が興味深い。
    対比という構図になっているが、混合されていく。
    この感覚を表現されている所が、小川洋子さん流の青春小説なのだろうか。

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    2023年03月21日
  • ボタンちゃん

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    ボタンちゃんをブラウスに繋ぎ留めていた糸が切れたことで思わぬ旅に出てしまうボタンちゃん。
    アンナちゃんの成長の過程のお気に入りに出会い、アンナちゃんの今を教えてあげる。
    やがてボタンちゃんも「思い出の箱」の仲間入りする。
    柔らかい絵と共にボタンちゃんによって語られるアンナちゃんの成長。
    ボタンちゃんが旅に出ているとき、ボタンホールちゃんのことをちょっぴり忘れていることはボタンちゃんの独り立ち?深読みかな。
    最後のページのガラガラの音がアンナちゃんには聞こえない、という場面はちょっぴり寂しくて、でも誇らしげに見守る「思い出箱」の仲間たちの姿だ。
    優しい気持ちになれる絵本だ。

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    2023年02月26日
  • 口笛の上手な白雪姫

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    久しぶりに読んだ、小川洋子さんは以前と変わらず、目の付け所に優しさと怖さを感じられたのが印象的で、それは彼女独自の、孤独感を持った人達への眼差しとも思えましたが、どこかそれだけではない繋がりも感じられたところに、奇妙な面白さを感じられました。

    また、それとは別に、石上智康さんの解説の中の、『縁起』の意味について、よく「茶柱が立つと、縁起が良くて、いいことありそう」等と言いますが、それは誤用で、『他との関係が縁となって生起すること、縁(よ)っておこること』が本来の意味だそうで、仏法の真理観として、この世の真実の一つとして解き明かされていることを知り、私も勘違いしていたので、とても勉強になったのですが、もしかしたら、この縁起が、本書のテーマ性とも密接に関わっているのではと思えてきました。

    本書は全8話の短篇集で、それぞれに共通するものは、人生における、ある『空白』の存在なのではないかと感じ、それと、どのように向き合っていくのかを問われているように思えました。

    そして、向き合っていくために必要なのが、自分以外の人間である点には、一見、当たり前にも思えそうですが、今の多様な世の中において、実はハッとさせられるものもあるのではないかと思い、各話について、書いていきたいと思います。


    (1)先回りローバ
    生まれたときに、正式に名付けられなかった『空白の六日間』が存在する、吃音の僕は、名前を言えないことに、自らの出生の事情があるのではと悩み苦しんでいたときに、何でも先回りして、僕の言葉を拾い集めてくれる老婆との出会いが、僕の心の隙間を埋めてくれるようで、その存在感は奇妙ながらも、その唯一無二な存在に温かさを感じられたのも事実でした。

    『どなたの耳にも触れていないお声ですからねえ。実に見事に透き通っておられます』

    (2)亡き王女のための刺繍
    幼い頃から、「りこさん」の刺繍された服をお気に入りとして、育ってきた私は、おそらく妹用のベビー服のあまりの完璧さを身を以て感じた瞬間、『私だけに許された特権』が途切れてしまったのではないかと思い、以後、50年近く経った現在においても交流し続ける、私とりこさんの微妙な距離感の物語。

    ちなみに、ツルボランの花言葉は、
    『生涯信じます』

    (3)かわいそうなこと
    かわいそうなことリストを記録し続ける、僕の物語で、その内容は、孤独なシロナガスクジラ、進化過程において天涯孤独といわれるツチブタから、映画の撮影風景の一枚の写真、「左から主演の○○、監督の○○、相手役の○○、一人置いて共演の○○」の、一人置いてゆかれた人までと幅広く、そこには僕の繊細な優しさに加えて、彼等を庇うような表現に、どこかユーモラスな性格も覗えたが、実は、僕自身を投影している存在を通して判明した、家族との微妙な距離感にやるせなさを感じられたのが、最も印象的でした。

    (4)この歌を分け合う
    突然、原因不明の病気で亡くなった従兄の悲しみから、その満たされない思いを、「レ・ミゼラブル」の「ジャン・バルジャン」役の俳優に投影しようとする伯母と、当時17歳の僕の、一回きりの観劇を通して、観客がそれぞれに思い浮かべる、自分にとって大事な死者たちと再会を果たせる事の大切さや、11年後に、一人でも再び観たいと感じた僕の思いに、時を隔てても決して忘れることのない、従兄を介した、年齢差はあっても分かり合える繋がりと切なさを、レ・ミゼラブルを通して静謐に伝えてくれた素敵な物語で、これを読んで、レ・ミゼラブルに興味を持つ方も、きっといらっしゃると思います。

    『言葉だけだと薄っぺらに聞こえるのに、歌になると真実に聞こえるの』

    (5)乳歯
    生まれてきた赤ん坊(君)の、神秘的な描写の美しさが印象的ですが、両親にとっては、『迷子』が『君のいない空白』であり、その後、君が偶然辿り着いた聖堂にある、見る角度や窓から差し込む日の光によって自由を謳歌できるような、柱の『浮彫』の存在との対比も素晴らしく感じられた、大いなる世界に飛び出そうとする、君の姿が思い浮かぶ物語。

    『彼らにとって君は、驚異的に美しい謎だった』

    (6)仮名の作家
    物語は言葉ではなく、声で書かれていることを重要視している、『声』にこだわりを持つ私が、理想的な声を持つ小説を書く作家と出会うことで、密やかな関係を妄想していく物語で、自らの声を出すことをためらう時期からの空白期間を埋めるかのように、作家を想って生き続けるその姿には、周囲から理解されない哀しさもあるが、それでも最後の行動には私の中に於ける、『縁』が引き起こしているようにも思われて、やるせないものがありました。

    (7)盲腸線の秘密
    廃線の危機に立たされた路線に、毎日乗り続けることで、反対の意思を訴えようとした曾祖父と、それに付き合う、ひ孫の、ひとときの交流には、他の家族から疎んじられているような曾祖父に、何とか貢献しようとする、ひ孫の優しさが健気であり、路線とは別に、ウサギを希望の象徴としているところも、それを更に強調させるようで、最後の、二人だけが分かり合える、ひ孫の思いに繫がっています。

    (8)口笛の上手な白雪姫
    女子浴場で赤ん坊の世話をする小母さんの、原初的で完璧な美しさを持つ赤ん坊への愛しさと、ひとりで生きている自らの人生とを対比させながら、その葛藤に悩む姿は、自らの出生不明な点や、浴場の裏にある、白雪姫を思い浮かべるような小屋に住んでいる、不思議な要素も絡むことで、小母さんの現実的な思いがより際立ったが、それでも心に残り続けている赤ん坊への、見返りを求めない慈悲の気持ちの神々しさには、白雪姫以上に気高き美しさを感じられましたし、その素朴で情感的な上手い口笛は、赤ん坊と小母さんだけの、目に見えなくても密かに共感し合う事の出来る、かけがえのない『縁起』に思えました。

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    2023年02月06日
  • 約束された移動

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    初期の小川作品に顕著な、静謐な物語世界の中にあるグロと悲哀が最近の他の作品よりも際立っていてよかった。

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    2023年02月05日
  • 口笛の上手な白雪姫

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    文学として追いかけている唯一の作家かもしれない。そこに共感があったり、学びがあったり、気付きがあったりするわけじゃない。ただただうつくしい文章に浸る、という読書体験。この文学世界をうつくしいと思わせる著者の感性と眼差し、表現力に脱帽。

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    2023年01月10日