小川洋子のレビュー一覧

  • 洋子さんの本棚

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    ネタバレ

    同い年、同じ県下で育ったおふたりによる読書対談。個人的的には大好きな須賀敦子氏が翻訳したタブッキの『インド夜想曲』を取り上げているのが嬉しかった。「本の値段を見ずに買う」という贅沢をなかなか許せずにいる自分をちょっとだけ情けなく思った。

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    2023年10月30日
  • 刺繍する少女

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    ネタバレ

    不気味で残酷な話と、ただ残酷な話と、切ない話が散らばっていた。
    特にアリアが印象的で、年に一度、誕生日に訪れ、贈り物専用棚に毎年1個ずつ品は増えていく。そしてお返しに叔母さんはオペラを披露する。年に1日だけだろうと、わざわざ誕生日にプレゼント片手に訪れてくれるのだから有難いのかもしれないが、叔母さんの方も人を持て成すことに慣れておらず、毎年大量の料理やデザートを用意して待ち構えている。
    オペラで成功せず、化粧品売りになった叔母。
    今では唯一披露するのがこの誕生日かもしれない。
    「どうぞお元気で。また、来年」と帰っていく。
    窓からじっと目を凝らして、彼の姿が見えなくなるまで見送る。
    そして冷たくなった残った沢山の料理を前に、叔母さんは何を思うだろう。
    叔母さんの交友関係の話は出ないので、この料理はどう始末されるんだろう。
    誕生日祝い後の1人きりの静寂さを思うと、切なく、残酷。

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    2023年10月09日
  • やさしい訴え

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    静かな別荘地で、新田や薫、グラスホッパーの奥さんなど、日々他愛ない交流・親睦を深めながら、ゆっくりと時間が過ぎていく様が心地よく、羨ましい。新田も薫もそれぞれの過去を背負いながらチェンバロを通してお互い支え合って生きていく。
    こんな隠居生活ができたらな。

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    2023年09月23日
  • 琥珀のまたたき

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    ちょうど気持ちが下を向いている時期に読んだので、この閉塞感が苦しくて読むのに苦労した。息も苦しくなった。
    外から見るとママのしたことは考えられないけれど、琥珀にとってはそんなに悪いものでもなかったのかもしれない。4人一緒にいられるなら。
    ママの、オパールの、瑪瑙の、ジョーの話も聞きたい。文字という声あるものだけの話では見えない。オパールや瑪瑙がこの日々を愛しく思い出す時間がありますように。

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    2023年09月01日
  • 琥珀のまたたき

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    幼い娘を亡くした母と姉弟がその子のことを思う愛情が伝わってきた。しかし少し常軌を逸した形ではあったが、そのくらい深い愛があったのだなと。描写が繊細でほんの微かな変化にも敏感で想像力豊かな作品だった。

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    2023年08月29日
  • ゴリラの森、言葉の海(新潮文庫)

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    ゴリラの専門家(霊長類学者)の山極寿一さんと、小説家の小川洋子が、ひたすら対談する。対談集なので、徹底的に突き詰めるというより、ふわっと終わった感がある。学者は、霊長類のゴリラの特性から、人間との共通点、違う点、なぜ違いが出たかについて語る。小説家は、なぜ人間界にだけが戦争や暴力や強姦が起きるのかを考えている。山極さんは『言語』、それによるメタファー、そして死の記憶等の、他の動物にはない人間特有の特性だとする。それは人間が文明を築き上げた源でもあり、それがまた、戦争、暴力をも引き起こす源でもあるのか。個人的には、ゴリラの子殺しの話が興味深い。自分の子どもを殺した男ともつながれる。それは死の記憶がないから?ゴリラと人間の大きな違いは、罪の意識の有無かもと思ったが、それも言語による幻想なのか?資本主義が効率化を善とする風潮を生んだが、子育ては効率化できないもの。ゴリラを見習って共同で育てるべきと言うが、言うは易しだわなあ・・・。

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    2023年08月19日
  • 約束された移動

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    この著者の目には、世界はどんな風に見えているのだろう。一見すると奇抜で現実味を欠く内容なのに、妙に生々しい手触りの文章で、彼・彼女らが確かにそこにいると感じられる。エンタメとして楽しむ本ではないのだけれど、なぜか手に取っている。癖になる小説家だ……

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    2023年08月14日
  • からだの美

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    「赤ん坊の握りこぶしの中にはいつでも、生きるに値すると思わせてくれる世界が広がっている」
    まど・みちおさんの詩が、東京バンドワゴンの我南人の口調を連想させる…。

    ナメクジが大嫌いなのだが、カタツムリからの進化ということを初めて知った。別ものだと思っていた。どっちもキモチワルイが。

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    2023年08月05日
  • ブラフマンの埋葬

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    作中ではブラフマンは「謎」という意味だけが出てくる。それゆえに、その姿が我々が名前を知っている何かに当てはまる必要はないのだろう。

    とはいえ、造語ではなく元よりある言葉なだけに、その意味から作中の抽象が何を表現しているのか解釈したくなってしまう。

    高校の倫理を履修した人なら覚えているかもしれない。"ウパニシャッド哲学"なんて言葉と一緒に出てくる「ブラフマン」とは、宇宙の根本原理をさす。
    つまり、全てのものの根源がブラフマンであり、「宇宙の創造主」とも言われる。

    とすると、作中のブラフマンという存在は、芸術家たちが活動する〈創作者の家〉が、あるいはその創作が、生んだものなのか。いや、それぞれの創作がうまれる根源がもつ生きた熱量がこの家で融合し、姿をもっただけ。すなわちブラフマンから創作がうまれたという見方の方が哲学に即しているのか。

    いずれにせよ、ブラフマンは作中でも宇宙の根本原理であり、僕の存在が認識される世界における原理原則、各人がもつ領域の調和そのものであったのだろう。
    しかし、僕はラストシーンで娘の領域に踏み込む。その結果、ブラフマンは失われる。

    小川洋子の描く世界がこんなに言語化しやすいとも思わないので、ただの素人の解釈に過ぎないが、これが私が読んだものである。
    「創作」「宇宙」などのワードが見られたので、遠からずな気もしているが。

    今回も、言葉と脳みそでは掴めないような物語に心が休まった。幹に空洞ができることを「まるで森がため息をつく時の唇のよう」と表現するところなど、また小川洋子の世界に触れることができているんだと静かで幸せな気持ちになった。

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    2026年07月13日
  • 偶然の祝福

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    積ん読になっていましたが、ふと手にとって読み始めました。私の読解力がないのか、あれ~?なになに~と理解困難な箇所もありましたが、ほっこりするような、ふわっと幸せ感じるような、穏やかな気持ちになれます。

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    2023年07月09日
  • 偶然の祝福

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    説明のつかない奇妙さや気持ち悪さがありつつも、どこか儚くて切なく感じる短編集でした。

    特に前半「失踪者たちの王国」、「盗作」はちょっと気持ち悪く感じました。

    小川洋子の描く動物は優しくて可愛いです。
    「涙腺水晶結石症」が好きです。

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    2023年07月02日
  • からだの美

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    小川洋子の不思議な魅惑的な文章が出来上がる
    頭の中を見た感じ。

    一瞬をとらえた写真も素敵。

    それにしてもハダカデバネズミには
    世の中にこんな生き物がいたのかと驚かされた。

    不思議な本の表表紙の作品は、
    中谷ミチコさんの「すくう、すくう、すくう」だそうです。

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    2023年06月20日
  • 琥珀のまたたき

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    小川洋子さん、いつも目に見えない心の中を深く伝えてくれます。末娘を失った母親の狂気、外との世界を遮断し母の望むように生きようとする三姉弟。
    オパール、琥珀、瑪瑙。名前の言葉選びも奥深い。母との関係を精算した父が作った百科事典。その中で生きる末娘。琥珀の目に映る世界は幻想か希望か。百科事典の中で生きる家族だけは永遠であり続けて欲しい。

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    2023年06月17日
  • からだの美

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    小川さんの文章と写真がマッチしており、時折ハッとさせられました。短めの文章でありながらその中身の濃さと美しさに圧倒された一冊。

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    2023年06月15日
  • からだの美

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    からだのパーツに注目して書かれたエッセイ。
    観察眼が素晴らしく、自分が今までに美しいと感じていたもの(イチロー選手の肩とか)を言語化するとこうなるのか!と感心した。
    また、見過ごしてしまいそうなものにも美を見出していて、興味深く読んだ。

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    2023年06月10日
  • アンネ・フランクの記憶

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    アンネ・フランクの記憶を辿る、小川洋子の旅。

    ナチス・ドイツや人種差別問題、ホロコーストは頭のどこかで「遠くの」「昔の」事だと思っていたのですが、こうして小川洋子という好きな作家が、アンネ・フランクと交流のあった方に取材をされている事でかなり地続きに感じられました。

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    2023年06月07日
  • からだの美

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    同じものを見ても、きっと私はそう感じない。
    だからこそ面白い。バレリーナの爪先、フィギュアスケートの高橋選手の話が印象的。
    1つの話が3~4ページなので、隙間にサクッと読めるのがいい。

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    2023年06月02日
  • 約束された移動

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    六篇のお話から成る短編集。読み終わった後、自分の感情がうまく言葉にできなかったのですが、改めて思い返すと優しさと奇怪さとグロテスクな要素が絡み合っているお話ばかりだったからだと気付きました。
    それでいて、なぜか静謐な雰囲気が保たれているのが不思議です。

    それぞれのお話の主人公の名前が出てこないのはダフネ・デュ・モーリエの『レベッカ』を思い出しました。

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    2023年05月03日
  • からだの美

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    色んな分野に興味を示し、観察し、魅力を感じていて、世界の広さに尊敬すると共に、それぞれが作家さんらしい着眼点だなと思った。
    よく知らない分野の話もあったが、筆者が心踊ったであろう感覚が文章から伝わってきて、興味が湧いた。

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    2023年05月23日
  • 夜明けの縁をさ迷う人々

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     久しぶりの小川洋子さんの作品。野球を舞台にした作品が、生き生きと躍動感たっぷりで素晴らしい。阪神タイガースのファンでしたっけ?

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    2023年04月14日