小川洋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ不気味で残酷な話と、ただ残酷な話と、切ない話が散らばっていた。
特にアリアが印象的で、年に一度、誕生日に訪れ、贈り物専用棚に毎年1個ずつ品は増えていく。そしてお返しに叔母さんはオペラを披露する。年に1日だけだろうと、わざわざ誕生日にプレゼント片手に訪れてくれるのだから有難いのかもしれないが、叔母さんの方も人を持て成すことに慣れておらず、毎年大量の料理やデザートを用意して待ち構えている。
オペラで成功せず、化粧品売りになった叔母。
今では唯一披露するのがこの誕生日かもしれない。
「どうぞお元気で。また、来年」と帰っていく。
窓からじっと目を凝らして、彼の姿が見えなくなるまで見送る。
そして冷たくなった残った沢山の料理を前に、叔母さんは何を思うだろう。
叔母さんの交友関係の話は出ないので、この料理はどう始末されるんだろう。
誕生日祝い後の1人きりの静寂さを思うと、切なく、残酷。 -
Posted by ブクログ
ゴリラの専門家(霊長類学者)の山極寿一さんと、小説家の小川洋子が、ひたすら対談する。対談集なので、徹底的に突き詰めるというより、ふわっと終わった感がある。学者は、霊長類のゴリラの特性から、人間との共通点、違う点、なぜ違いが出たかについて語る。小説家は、なぜ人間界にだけが戦争や暴力や強姦が起きるのかを考えている。山極さんは『言語』、それによるメタファー、そして死の記憶等の、他の動物にはない人間特有の特性だとする。それは人間が文明を築き上げた源でもあり、それがまた、戦争、暴力をも引き起こす源でもあるのか。個人的には、ゴリラの子殺しの話が興味深い。自分の子どもを殺した男ともつながれる。それは死の記憶がないから?ゴリラと人間の大きな違いは、罪の意識の有無かもと思ったが、それも言語による幻想なのか?資本主義が効率化を善とする風潮を生んだが、子育ては効率化できないもの。ゴリラを見習って共同で育てるべきと言うが、言うは易しだわなあ・・・。
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Posted by ブクログ
作中ではブラフマンは「謎」という意味だけが出てくる。それゆえに、その姿が我々が名前を知っている何かに当てはまる必要はないのだろう。
とはいえ、造語ではなく元よりある言葉なだけに、その意味から作中の抽象が何を表現しているのか解釈したくなってしまう。
高校の倫理を履修した人なら覚えているかもしれない。"ウパニシャッド哲学"なんて言葉と一緒に出てくる「ブラフマン」とは、宇宙の根本原理をさす。
つまり、全てのものの根源がブラフマンであり、「宇宙の創造主」とも言われる。
とすると、作中のブラフマンという存在は、芸術家たちが活動する〈創作者の家〉が、あるいはその創作が、生んだものなのか。いや、それぞれの創作がうまれる根源がもつ生きた熱量がこの家で融合し、姿をもっただけ。すなわちブラフマンから創作がうまれたという見方の方が哲学に即しているのか。
いずれにせよ、ブラフマンは作中でも宇宙の根本原理であり、僕の存在が認識される世界における原理原則、各人がもつ領域の調和そのものであったのだろう。
しかし、僕はラストシーンで娘の領域に踏み込む。その結果、ブラフマンは失われる。
小川洋子の描く世界がこんなに言語化しやすいとも思わないので、ただの素人の解釈に過ぎないが、これが私が読んだものである。
「創作」「宇宙」などのワードが見られたので、遠からずな気もしているが。
今回も、言葉と脳みそでは掴めないような物語に心が休まった。幹に空洞ができることを「まるで森がため息をつく時の唇のよう」と表現するところなど、また小川洋子の世界に触れることができているんだと静かで幸せな気持ちになった。