小川洋子のレビュー一覧

  • 偶然の祝福

    Posted by ブクログ

    後から考えると何が怖かったのか分からない怖い夢を見ることがある。
    眠りの導入部で自分の目にしたことの無い映像が勝手に流れ出すような。
    見当違いなことを言っていたら恥ずかしいが、現実なのか夢なのか分からない世界がこの小説と似ていると思った。
    読んでいる途中は何とも言えない居心地の悪さみたいなものを感じていたのに読み終わってみると不思議とまた読みたくなっている。
    何だろう、上手く言葉にできない。

    0
    2018年02月07日
  • いつも彼らはどこかに

    Posted by ブクログ

     8編からなる短編集。
     動物に関連する内容の短編が収録されている。
     ジーンとくるものもあれば、後味のよくないもの、現実から少し離れたもの、と様々。
     僕の一番のお気に入りは「竜の子幼稚園」と「断食蝸牛」で、これらはジーンとくるものと後味のよくないものになる。
     小川洋子さんの作品としては、本作は僕との相性はよくなかったようで、いまひとつ面白みに欠けた内容だった。

    0
    2018年01月04日
  • アンネ・フランクの記憶

    Posted by ブクログ

    ある経験を機に再読。
    先に読み返しておくべきだったかな?そうするとその経験も変わったものになっていたやもしれませぬ。
    まぁともかく日本での受容に対する色んな見方が存在するという解説が一番衝撃的というか、目から鱗というか。解説含めて多くの人が手に取り、沈思すべき本であります。

    0
    2017年11月30日
  • ホテル・アイリス

    Posted by ブクログ

    再読です。淫らで執拗な性愛の世界に浸りました。主人公のマリという少女と、醜い老人である翻訳家の間にあったものは、わたしの思っていたSMという形では言い表せない気がします。ホテル・アイリスのある港町の白っぽい渇いた光と、島での夢の中のようなひととき。仕える肉体は、醜ければ醜いほどいい、というマリの境地には辿り着けませんが。マリをとりまく人々は、翻訳家の甥以外は関わりたくない人々でした。マリがいつか、自由になれたらいいなと思います。小川洋子さんにかかると、官能的なお話もこんなにひっそりしたお話になるのだなと思いました。

    0
    2017年11月10日
  • 原稿零枚日記

    Posted by ブクログ

    執筆が思うようにはかどらない作家の『私』。出かける度に現実と幻の狭間に陥り、その出来事を日記に綴る。不思議な世界が日記形式で紡がれる長編小説。
    苔料理に運動会荒らし、そしてあらすじ教室と、ありそうでない奇妙で独特な世界観が面白い。小川さんの発想力にただただ感服する。

    0
    2017年07月26日
  • ボタンちゃん

    Posted by ブクログ

    低学年の読書感想文とともに
    暖かい時間だなぁ

    それでも、読んでいただいたのは途中まで(^^;
    つづき読まないと!

    ほぼ一年ぶりに最後まで読みました(^^;
    それぞれの物たちが役目を終えて昇華されていくんだけど?
    これってハッピーエンド違うかも?
    絵はかわいい(^^)

    0
    2018年07月11日
  • 世にも美しい数学入門

    Posted by ブクログ

    ゲーデルの「不完全性定理」…正しいとも正しくないとも判定できない命題が存在する、ということを証明。
    アラン・チューリング…ある命題がゲーデルのいう"原理的に真偽を判定できない命題"であるかどうか、を判定する方法が存在しない、ということを証明。
    真偽を判定できない命題を「悪魔的な問題」とすると、ゴールドバッハの予想(*)がその悪魔的な問題かどうかすら判定できない。

    *ゴールドバッハの予想…「6以上の偶数はすべて二つの素数の和で表せる」
    未解決。素数の定義は約数を持たないこと。約数は掛け算の話だけど、ゴールドバッハの予想は足し算の問題だから難しい。

    「間違っていても、正しい

    0
    2017年06月11日
  • いつも彼らはどこかに

    Posted by ブクログ

    久し振りに小川洋子さんの短編集を読む。

    動物が何らあの形で係る連作集なのだが、例えば看板の兎に拘る登場人物にウソっぽさを感じてしまった。日本ではなく、かといって特定の外国でもない不思議な場所は「ブラフマンの埋葬」でもそうだったが、この作品集ではなぜか醒めてしまった。

    (引用)
    …世の中には目隠しの似合う人と似合わない人がいるのかどうか分からないが、間違いなく老人の顔にそれは上手く馴染んでいた。小鼻の出っ張りと縁のカーブがずれることなく重なり合い、前方に突き出した大きな耳が紐をがっちりと支え、禿げあがった青白い額が、黒い色を特別に引き立てていた。

    ディティールを重ねていく小川洋子節を堪能す

    0
    2017年05月29日
  • やさしい訴え

    Posted by ブクログ

    眼科・チェンバロ・カリグラフィー。

    小川さんらしさを感じる言葉選びを通して、
    静謐でどこかしら奇妙な、三人の人間関係が描かれる。

    0
    2017年05月17日
  • ホテル・アイリス

    Posted by ブクログ

    初老の男性と母が営むホテルで働くマリの出会いは、男がホテルで女性といざこざを起こした時。
    それから、町で偶然に男性を見かけたマリは後をつけるが、すぐに見つかってしまう。
    そこから始まったマリと男性の妖しい関係。ただ、そこには互いの寂しさを埋めたい感情が見える。
    最後は二人にとって、悲しいけれど良い結果に終わったと思う。

    2017.4.10

    0
    2017年04月11日
  • いつも彼らはどこかに

    Posted by ブクログ

    短編集。小川洋子は小説を読むという行為について深く考えさせられる作家である。内容に意味は無いし、不条理だし、所謂面白さとも無縁。
    無意味だからこそ手に取りたくなる。

    0
    2016年11月05日
  • ホテル・アイリス

    Posted by ブクログ

    SMのシーンだけが浮いていて、違和感があった
    自分が孤独でないことを確かめるために女の人を抱くのは理解できるけどそれがなぜSMなのか
    主人公のマリもなぜSMに溺れるのか
    男よりも、男の甥に魅力を感じてしまって、後半の男はさらに醜く思えた
    色んなことが納得できないまま終わった
    これは恋愛小説ではないなという思いだけは確かだ

    でも情景描写はとても緻密で好き
    マリがホテルで働く描写は無駄がない
    夏のリゾート地が舞台なのに、とても退廃的な雰囲気が漂っている
    魚の臭気が本当に臭ってきそうだった
    においの分かる小説
    魚だけじゃなく
    小川洋子の小説はほとんどの料理がまずそう 実際にまずいのかもしれないけ

    0
    2016年10月05日
  • ホテル・アイリス

    Posted by ブクログ

    やや母親に虐げられ気味の少女と境界性パーソナリティ障害と思われる老人とのSM恋愛小説。商売女に放った老人の声の響きに引き寄せられた少女がSMに溺れ快感を覚える。
    舞台は夏のリゾート地なのだが、どこか薄暗く退廃的な空気が全編を通して漂っている。性描写は良くも悪くもムッツリスケベ向きか。読みながら石井光太氏のルポに出てくる、貧困国で春を売る少女の恋を思い出した。その少女はとにかく愛を欲していた。だが本書の少女の関心は結局自分だけに向いているように感じた。少女は快楽の剥き出し手として老人が必要だったに過ぎないのではないだろうか。そもそもSMとはそういうものなのかもしれない。

    0
    2016年09月08日
  • とにかく散歩いたしましょう

    Posted by ブクログ

    気になる作家さんを知るにはエッセーを読むに限る、とは私の考えです。
    ということで今回小川洋子さんのを読んでみました。

    一言でいうと、真面目。
    作品群からもわかるように、想像していた通り、見た目通り、とにかく真面目。
    時には羽目を外すとかとんでもないことはやらかす、とかそういうことはなさらない。
    真面目に題材に取り組み、真面目に取材をして、真面目に執筆をして、その合間に真面目に散歩する、という生活でしょうか。
    まさに想像通りの方のようです。
    今後の活躍をますます期待します。

    0
    2016年08月13日
  • いつも彼らはどこかに

    Posted by ブクログ

    気がつけばいつも側にいて、安らぎと暖かみを与えてくれる存在。そんな動物たちのエピソードを描く8つの物語。
    『帯同馬』と『ハモニカ兎』がお気に入り。決して主役ではない彼らの存在が、人生を豊かにして生きていくことの糧をくれる。目の付け所が小川さんらしい。

    0
    2016年07月30日
  • いつも彼らはどこかに

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    『失った物をあなたは覚えていますか』

    片方だけのピアス、仕舞って置いたはずの切手、大切な人と見たミュージカルのチケットの半券、臍の緒、なくした物をあなたは覚えていますか?

    生き物がテーマだと言い放つにはあまりにも動物達は自然で、異質で、矛盾をはらんでいる。

    0
    2016年06月23日
  • 科学の扉をノックする

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    『さよなら、僕が愛した九つ目の』

    冥王星が惑星ではなくなった時、彼又は彼女を偲んで泣いた少年の歌を聴いていた。

    それから、十年。

    冥王星は仲間はずれになったのではなく、もっと近い仲間の元へ帰ったのだと知る。

    嬉しくてちょっぴり恥ずかしくて、でもやっぱり、嬉しくて。たった、数行に私は救われてしまったんだ。

    0
    2016年06月23日
  • 原稿零枚日記

    Posted by ブクログ

    【それは、鏡を通してみる世界】

    この本を読み終わったとき、あなたは必ずあらすじが好きになる。

    作家の私はさまよい続ける。旅を続けながら、いとしい人に思いを馳せながら。物語の一番最後、その名前が明かされて、さらに読者を不思議な世界に誘い込む。

    鏡に映った私は、私だけど私ではない。誰かの見ている私が、私でないように。小さな不思議が散りばめられた、ホントウの話。

    0
    2016年06月15日
  • ボタンちゃん

    Posted by ブクログ

    アンナちゃんのブラウスの一番上にとまっているボタンちゃん。
    ある日、糸が切れて、ボタンちゃんはコロコロと転がり落ちてしまいました。
    床に落ちて出会ったのは、アンナちゃんが赤ちゃんの時に活躍してきたガラガラやよだれかけ、ホッキョクグマのぬいぐるみ。もう、アンナちゃんは大きくなったので必要ありません。

    でもボタンちゃんとともに、お母さんがみんなを見つけました。きれいに洗って、想い出箱へ。

    成長とともに、もう使わなくなったものたち・・・アンナちゃんが懐かしく思い出すには、まだ時間がかかりそう。

    0
    2016年06月12日
  • 偶然の祝福

    Posted by ブクログ

    『涙が落ちて、それが宝石になる』

    わかっていることと理解していることは違う。このままじゃダメだと思っているのに、手を繋いだまま崖に向かっていってしまう。視野を、視野を広くしなくては。物語は誰かの視界を介して複雑に移り変わっていく。見ているものは一つなのに。それは赤く、丸く、重く、薫。リンゴを見てあなたはなにを一番に思い浮かべるのか。

    0
    2016年05月27日