小川洋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ゲーデルの「不完全性定理」…正しいとも正しくないとも判定できない命題が存在する、ということを証明。
アラン・チューリング…ある命題がゲーデルのいう"原理的に真偽を判定できない命題"であるかどうか、を判定する方法が存在しない、ということを証明。
真偽を判定できない命題を「悪魔的な問題」とすると、ゴールドバッハの予想(*)がその悪魔的な問題かどうかすら判定できない。
*ゴールドバッハの予想…「6以上の偶数はすべて二つの素数の和で表せる」
未解決。素数の定義は約数を持たないこと。約数は掛け算の話だけど、ゴールドバッハの予想は足し算の問題だから難しい。
「間違っていても、正しい -
Posted by ブクログ
久し振りに小川洋子さんの短編集を読む。
動物が何らあの形で係る連作集なのだが、例えば看板の兎に拘る登場人物にウソっぽさを感じてしまった。日本ではなく、かといって特定の外国でもない不思議な場所は「ブラフマンの埋葬」でもそうだったが、この作品集ではなぜか醒めてしまった。
(引用)
…世の中には目隠しの似合う人と似合わない人がいるのかどうか分からないが、間違いなく老人の顔にそれは上手く馴染んでいた。小鼻の出っ張りと縁のカーブがずれることなく重なり合い、前方に突き出した大きな耳が紐をがっちりと支え、禿げあがった青白い額が、黒い色を特別に引き立てていた。
ディティールを重ねていく小川洋子節を堪能す -
Posted by ブクログ
SMのシーンだけが浮いていて、違和感があった
自分が孤独でないことを確かめるために女の人を抱くのは理解できるけどそれがなぜSMなのか
主人公のマリもなぜSMに溺れるのか
男よりも、男の甥に魅力を感じてしまって、後半の男はさらに醜く思えた
色んなことが納得できないまま終わった
これは恋愛小説ではないなという思いだけは確かだ
でも情景描写はとても緻密で好き
マリがホテルで働く描写は無駄がない
夏のリゾート地が舞台なのに、とても退廃的な雰囲気が漂っている
魚の臭気が本当に臭ってきそうだった
においの分かる小説
魚だけじゃなく
小川洋子の小説はほとんどの料理がまずそう 実際にまずいのかもしれないけ -
Posted by ブクログ
やや母親に虐げられ気味の少女と境界性パーソナリティ障害と思われる老人とのSM恋愛小説。商売女に放った老人の声の響きに引き寄せられた少女がSMに溺れ快感を覚える。
舞台は夏のリゾート地なのだが、どこか薄暗く退廃的な空気が全編を通して漂っている。性描写は良くも悪くもムッツリスケベ向きか。読みながら石井光太氏のルポに出てくる、貧困国で春を売る少女の恋を思い出した。その少女はとにかく愛を欲していた。だが本書の少女の関心は結局自分だけに向いているように感じた。少女は快楽の剥き出し手として老人が必要だったに過ぎないのではないだろうか。そもそもSMとはそういうものなのかもしれない。