小川洋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ相変わらず良かった!
「静謐」という言葉がぴったりくる小川氏。彼女の2007年の作品となります。
短篇9編からなる本作、全般的に幻想的(シュール!?)、でも筆致はしっとり。
そうしたギャップが、真面目な顔して冗談をいうかの如く、ユーモアを湛えた雰囲気すら醸成しています。
あるいは、冗談だと思っていた話が実は本人は本気で、その本気が狂気・ホラーの世界につながっていくかのような小品もあります。それもそれで味わい深くありました。
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どれも良かったのですが、一番印象に深い作品を挙げます。
私としては「イービーのかなわぬ望み」。
エレベーターで生をうけ、そこで育ち、エレベーターボーイ -
Posted by ブクログ
ネタバレ8編すべてに動物が登場する。
読み終わって、人も動物もみんな孤独だという思いを抱いた。それは決して悪いことではなくて、孤独な存在がそれぞれ感じられることが小さな光のようだった。
特に好みだったのは「愛犬ベネディクト」だった。祖父と孫ふたりの生活にはベネディクトという存在が必要なのは分かったけれど、ブロンズ製の犬を中心とした生活に、この家庭の喪失が浮き彫りになっている気がして胸が締め付けられた。手作りドッグフードを食べて病気にまでなっているのだ。この生活はいつまで続けられるだろう、と悲しくなった。
ラストの「竜の子幼稚園」も悲しかったけれど、空っぽの心にじんわりと温かい余韻をくれるような物語だっ -
Posted by ブクログ
特筆すべきテーマや表現、共感ポイントは私にはないのだけど、解説にあった、「言葉のイメージ」というのに頷ける。
抽象画のように、淡く掴みにくいが、隣合う色同士が調和するように、人物の固有名詞が出てこない作品の中で、物の固有名詞が本の調和を奏でる。
ブラフマンの愛らしさ…みたいなのがいまいち私には煩わしく感じ、これは私が猫好きだからかもしれない。犬のような従順さとおちゃめさ。それから飼い主への絶対的な信頼感。どれも私が犬に対して苦手に思うことの全てだ。犬好きだったら受け取り方が違ったかも。
それにしても、間間にあるブラフマンの解説は何なのだろう。 -
Posted by ブクログ
アンネ・フランクへの旅、の数篇は、実際に現地へ赴き、目にしたもの感じたものを実直に描かれており心に響いた。
同じユダヤ人でも、列車に乗せられ殺された者もいれば助かった者もいる。
生き延びた人達は本来有難く、喜ぶはずだが、なぜ自分は生き残ったのか、と疑問を抱き、自身が獲得した 生 を後悔し憎むようになる。生きながらも自分自身を責めている。これは辛い。
これが戦争、ひいては虐殺の後遺症ではないか。
人間らしい感情、価値観を混乱させ、後々の人生にも甚大な悪影響を及ぼす。
甲子園球場や列車など、沢山の席がある場所で、混乱せず皆自分の席に座れるのは、「数字」があるからだ。
→この考え方は斬新だ。 そ