小川洋子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
*妊娠カレンダー
妊娠という不思議な体験と向き合うわたし、姉、義兄の生活。
お腹の中にいる子が産まれてくるということが全然理解できないという姉と、同じく理解が出来ないわたし。だけど月日は刻々と過ぎ、お腹の赤ちゃんはすくすくと育つ。
周りの気持ちが妊娠や出産に追いつくことは待たずに、赤ちゃんの方はどんどん産まれる準備をしていく。
そんな妊婦と周囲の葛藤を描いているのかなと感じた。
*ドミトリイ
不思議なお話だった。自分の知らないところでそれぞれの人生が展開しているということが、最後の蜜蜂の巣の描写と同じことなのかなとも思ったり。うーん、でも解釈が難しかった…
*夕暮れの給食室と雨のプール
1番好きなお話だった。なぜだろう、と考えたけど学校という場の給食室の匂いや風景、プールの授業の様子が生々しく蘇ってきて、あぁそういえばそう感じだよなぁと懐かしさに浸れたからかな。
とある思い出が、また別の思い出を引き出すこともあるよなー、そこにはなんの関係がないように思えても。これまた不思議な話しだったけど、人は思い出(もしくはトラウマ)と共に、人知れず色んなドラマを背負って生きているんだよなぁと。
小川洋子さんの描く文章から伝わる温度感というか、生々しさというか。それが感情を表す言葉からは全く別の単語から来ていることもあるから不思議だなと思いながら読みました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ小川洋子さんの作品は、3作目です。
相変わらず不思議な世界に連れて行ってくれます。
全体的にゆるく繋がっていて、気に入ったストーリーが幾つがありました。
私自身は小劇場にはよく足を運んだのですが、帝国劇場には行ったことがなく。非常に惜しいことをしたなと思いました。
・ホタルさんへの手紙
盲目になってしまった父と、娘の話。サワコは幼少期名前が言えずチャバコと言っていた。
ある公演のチャヴァと娘を重ねて、盲目の父が1人で観劇をしに行った際に、サポートしてくれた新人案内係さんとの話。
これが一番好きでした。泣いている父に寄り添う案内係さんの素敵な気配りにも泣けました。
・こちらへ、お座り下さい
幸運の椅子の話。椅子にまつわる様々な人のエピソードでしたが、中でも3年間だけ男の子の母親だった女性が印象的。光と影に興味を持つ男の子。ビスケットのかけらに、光の強さを調整しながら観察していました。その子が、照明係としてレミゼに関わっていることを偶然知ります。
私の息子も懐中電灯で遊びたがったけどやらせなかったな・・やらせてあげよう・・と思いました。レミゼは映画見たはずだけど断片的にしか覚えてなくてストーリーは言えない・・もう一度映画を見返したいなと思いました。
・長すぎた幕間
帝国劇場に臨月でローマの休日を観に行き、そこで出産した母と息子のはなしです。
幕間で抜けたから、大好きな俳優による2幕とラストを見られませんでした。
そこで、大学生になりバイトのお金でチケットをプレゼントする息子。観に行った母は、これできちんとパパにお別れできた、と言い、間も無く父の3回忌だったことがわかります。
頭の中で彼に変換すると言っていたけど、それは推しではなくパパのこと?とわかると、急に泣けました。 -
Posted by ブクログ
表題作「妊娠カレンダー」
妊娠そのものというより、「人間の身体が自分の意思では止められない方向へ変化していくこと」を描いた小説だと思います。
つわり、食欲の変化、体重増加、むくみ、胎児の成長、そして放っておいても出産へ向かう時間。妊娠中の身体は、自分の意思とは別の論理で進みます。その変化は「成長」というより「異質化」に近く、人間が生物として持つ強い力が前面に現れることで、かえって「人ならざるもの」へ近づいていくようです。このことは妊娠の当事者だったときにもそう感じましたので、こうした変化を神秘として描かないのは、非常に正直で素直な書き方だと思いました。
妹の気持ちは、そうした変化への抵抗かな、と思いました。 -
Posted by ブクログ
アンネの日記について、私が過去に読んだ時の記憶が蘇る。苦しい潜伏生活についての記憶よりも、何か常に希望をもちながら生活をしているアンネの心の中の声が、恋する乙女の想いが、不自由なはずなのに凛とした少女の姿が思いだされる。だからこそ最後の結末が最悪なものだったにも関わらず、ヒトラーのユダヤ人迫害を描いた暗く辛い物語としての記憶になっていないのだと気付かされた。
父としての視点から見たとき、また自分への戒めとしても誕生日に父オットーからアンネにプレゼントされた詩が印象にのこる。
一ここではいちばん年若だが、おまえはもう幼児ではない、しかし人生はきびしいだろう、われわれ年長者が周囲から、あれこれおまえに指図しようとするからね。
自分の欠点は小さく見えるものだ、だから他人の欠点は批判しやすい、他人のそれは二倍にも大きくみえるものだから。どうかわれわれを、おまえの両親を、広い心で見てほしい、これでもおまえを公平に、共感をもって判断しようとしているのだから。(1943年6月13日の日記)
日記から読み取るアンネの成長や葛藤を伝える小川洋子の綺麗な文体による解説が素晴らしい。小川ファンになりそう。
辛く暗い物語になっていないとはいえ、学ぶべきは日常の暮らしが一瞬にして奪われるのが戦争であること。戦争は抽象的な数でなく、1人1人のおもてにあらわれない日記を奪うということ。
東浩紀の「平和と愚かさ」にもあった「抽象化と数値化の暴力」の記述を思い出す。無数の人々が、集団的に、匿名的にゴミのように殺された。ドイツのホロコーストにせよ、日本の731部隊にせよ、、20世紀の大量死の本質は、犠牲者を数に還元し、その生と死から名前と意味を奪うことにある。それゆえ、その記録においてはまず名前(固有性)の回復が重要になる。
まさに、「アンネの日記」は数の暴力に対して意味の回復で抵抗する書物。「世界記憶遺産」たる所以。 -
Posted by ブクログ
小川洋子さんのエッセイ。
小説は読んだことがあるけど、エッセイははじめてで色々知れて面白かった。
・岡山県出身
・阪神タイガースのファン
・趣味でランニングをしている
・ミュージカルが好き
意外な一面はあったけど、小説の元ネタとなる着眼点は小川洋子さんらしいなと思った。
まだまだ読んだことがない作品もあるので、読んでみたくなった。
---------------------
■良いなと思った言葉↓
"再読には意味がある"
安易に分かったつもりになるのは、読み手の傲慢さ。読み手の成長や社会変化によって、見せる姿が変わってくる。
"何の役にも立たないことを一生懸命している時、
小さな幸せが訪れる"
"世界のどこかに必ず、自分にフィットする一枡があるはずだ"という気分になれる。 -
Posted by ブクログ
私に、、、小川文学は早かった、、、??
と、思うくらい、良く言えば小川洋子ワールド全開、悪く言えば気持ち悪いストーリーが、舞台をテーマに繰り広げられる。
特に「鍾乳洞の恋」は、頭痛を感じるくらい頭を悩ませながら読みました。
「オペラ座の怪人」、それに、タイトルの「恋」から、やっぱり主人公と針院の院長は、恋愛までとは行かないけど、限りなくそういった雰囲気に近いような感情があるのではないかと…思ったけど、他の人はどう感じたのか。
口内から湧き続ける虫も、痛みからの幻覚の産物としか考えられなかったです。
「舞台」は、幻覚を見せる場所で、夢と現の狭間のような空間だとすれば、この短編は確かに、主人公の幻覚なのか、現実に起こっているのか、そういう曖昧な物語たちです。
所謂「信用出来ない語り手」系の話が続く…そういう、濃厚な「世にも奇妙な物語」を文学として楽しみたい人にとっては最高かもしれません。