小川洋子のレビュー一覧

  • 偶然の祝福

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    いつもそばに失踪者たちの影があったという「私」。タクラマカン砂漠に羊の買い付けに行った友人の叔父さん、歯医者に入れ歯を置いたままいなくなった隣の席の少年のおじいさん、嘔吐袋をコレクションしていた自分の伯母さん…。失踪者たちの王国は広々とした草原の続く光あふれる場所なのか。行ってみたいような心細いような気持ちになった。そばにいる犬のアポロやまだ小さな息子、失くし物を取り戻してくれたお手伝いのキリコさんの存在に救われる。

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    2024年06月02日
  • 完璧な病室

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    どこまでも綺麗で残酷な短編四篇。
    幸福からは程遠い内容なんだけど綺麗だなぁって思いながら読んで…たら唐突なホラーにビビる。

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    2024年05月21日
  • 科学の扉をノックする

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    小川洋子らしい目線で
    科学的な題材と向き合ったエッセイ。
    7つのテーマが収録されている。

    科学の説明というよりは
    科学的題材と向き合う研究者の人柄や
    ストーリーに主眼が置かれている。

    家庭の医学が好きだった子供時代など
    小川洋子作品の表現でみたシーンも出てきた。

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    2024年05月13日
  • いつも彼らはどこかに

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    気に入った2編

    - ビーバーの小枝
    緩やかに繋がり関係し合ういのち。
    一生懸命に手元の小枝を食んで、残るのはその痕跡だけ

    - チーター準備中
    特別なコトはなくて、誰もがかけがえのない特別

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    2024年05月05日
  • ブラフマンの埋葬

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    この小さなブラフマンと呼ばれる生き物は結局何だったのか記されていない。穏やかに進む前半から徐々に不穏さを感じていき…。
    小川さんの筆力があってこその作品で、おそらくこういった一見何も起こらない物語を描くことがとても難しいのではないだろうか。
    温かな春から、急な春の嵐に巻き込まれたような、そしてまた静寂がおとずれる、浮遊感のある作品だった。

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    2024年05月05日
  • 不時着する流星たち

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    モチーフになった人たちを詳しく知らないからか、そこまで入ってこず。とりあえず、その人たちのことからでしょうか。

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    2024年04月29日
  • 完璧な病室

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    同僚が貸してくれた本です。
    これは小川洋子さんの初期の頃の以下4作品を収めたもの。

    「完璧な病室」
    「揚羽蝶が壊れるとき」
    「冷めない紅茶」
    「ダイヴィング・プール」

    なんとも独特な世界でした、どの4作品も。小川洋子さんは、グロテスクな事象や残酷な心理描写などを、なんとも精巧で均等で美しい文章で表現するなーと思いました。本書の中でもあったような表現をお借りすると、つるりと冷たい陶磁器の美術品のような印象を受けました。

    一番好きだったのは「冷めない紅茶」かな・・・。登場人物の関係性を含め、すごく曖昧で不思議な世界で、え、これはどういうことだろ、どうもこうもないのだろうか、と一瞬一生懸命考え

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    2024年03月25日
  • 余白の愛

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    耳についての感覚とか、文学的だけど理解できる感じもあって、個性ある作品だと思った。
    文学らしい描写だけじゃなくて、静かなトーンで進んでいく話もよかった。

    けどわたしには少し文学らしさが強すぎて、若干物語としては不自然さも感じたかな、、

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    2024年03月23日
  • からだの美

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    体に関する(特にスポーツに基づいて)気付きを書いている☺️言葉が巧みで、想いを細かい描写で表現できることはスゴい。 将棋の話が心に残る

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    2024年03月22日
  • ブラフマンの埋葬

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    ネタバレ

    小川洋子さんらしい、優しく流れるような文章が素敵な作品でした。丁寧に描写されるブラフマンの一挙手一投足が可愛らしく、ずっと幸せに暮らして欲しいと願って止みませんでした。

    芸術家が芸術をひねり出すために、献身的に、ときには透明人間のように人に尽くす主人公。唯一心を惹かれた女性の目線の先には、別の想い人。
    慢性的な酸素不足のような主人公の日常において、ブラフマンは真っ直ぐに彼のことを慕い、彼の心を癒したのだと思います。ブラフマンにとっては、主人公が世界の全部だったのでしょう。

    ブラフマンを最後まで、心ある誰かに愛された命だということを認めようとしなかった娘さん。対照的に、最初は動物アレルギーだ

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    2024年03月14日
  • 最果てアーケード

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    【なぜだかわからんがずっと鞄に入れておきたい本】

    なんだかわからない
    特別感動したわけでもない
    大好きな本になりました!てわけでもない。

    可笑しさとかさみしさとか嬉しさとか
    いろんなものがしっくりきて心が落ち着く。
    現実とひと続きの中にアーケードがあって
    でも絶対に存在しない感もある。

    どんなに悲しくたって本はどっかへ行ったりしないから
    そっと鞄の中身のレギュラーになったっていいじゃない。
    いつだって自分が求めればそこにいてくれる安心感を本に求めたっていいじゃない。

    読み終わって次の日とか次の次の日とか
    すぐじゃないいつか
    急にアーケードのことを思い出して泣きそう

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    2024年03月13日
  • 不時着する流星たち

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    ネタバレ

    なんとなく心ざわつく読後感。
    「失われたものへの哀悼と、喪失の甘美さに充ちた、極上のオマージュ作品」とは解説の文章であるが、なかなかぴったりな表現だなと思った。

    表現が精密で、モデルになった人物や出来事の解析度が高く、顕微鏡レベルで提示されるので、ぼんやり生きてる私には少しクラクラしてしまった。
    後でもう一度読み返してみよう。

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    2024年03月08日
  • 口笛の上手な白雪姫

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    公衆浴場の脱衣所で働く小母さんは、身なりに構わず不愛想。けれど、他に誰も真似ができない自由自在な口笛で、赤ん坊には愛された。(表題作)


    表題作含む全8話を収録した小川洋子さんの短編集。
    どれも孤独で密やかな、世界に埋もれてしまいそうなささやかで優しく寂しい話です。
    小川さんはともすれば不気味・グロテスク、生々しいととられかねない物事を、綺麗に、さりげなく表現することが特にお上手だと思っていて、今回はそういった表現は多くはないのですが、それでも悲愴さや心の底に沈めた狂気のようなものをやわらかに描いています。

    こどもの目線で書かれた話もいくつかあり、こどもの独特の世界観・大人には理解のし辛い

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    2024年03月02日
  • まぶた

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    ネタバレ

    どの登場人物も、音もなく崩壊していくようだった。彼らが纏う空気には確実に死が感じられるのに、誰もそれを恐れてはいないように見える。
    死とは息をひそめればいつでもそこにあり、生き物が必ず辿り着く終わりの時。でもきっと怖いものではないのだ。
    それぞれに悲しい出来事や上手くいかなかった事を抱えながら、今多くを求めず穏やかに生きている人々を見ると、心が静けさに満ちてくる。手の届く範囲の、目の前のものを愛していくことの大切さを教えてくれる。
    繋がりのない短編集なのに、全てにどこか共通したものがあった。
    「お料理教室」だけは誰も話が通じない感じがして、フワフワして拠り所がない感覚になった。確かなものがいつ

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    2024年02月28日
  • 刺繍する少女

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    『図鑑』が特に好きだった。『やさしい訴え』に近いものを感じさせる内容だった。小川洋子さんの書く女性の嫉妬の気持ちが好き。静謐な文章で淡々と綴られていく激しい感情には美しさと狂気的なものを感じる。この作品は狂気が沸騰し、目玉を取り出す奇行に走るが、やはり、美しい、と思わされてしまう。それも小川洋子さんの力量なのだと感心した。

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    2024年02月26日
  • ブラフマンの埋葬

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    ネタバレ

    全体としてフワフワとした夢物語のような感覚が
    解説を読んで、なるほどなとスッと入ってくるものがあった。南仏にまつわる話、主人公を含む名前のない人間たちこそ夢の中で出会う行きずりの人物のように謎めいている、互いの領域に決して入り込まない人々の世界に起こった泉泥棒の登場と「僕」の侵犯行為、その結果としての死。

    犬との関わり、育つ幼きものに寄り添う子育てを振り返りたくなるようなあたたかな前半もよいが
    後半の展開は深く、余韻を残す一冊。

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    2024年02月23日
  • 約束された移動

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    昔は本をよく読んでいたがいつの間にかあまり読まなくなってしまっていました。
    小川洋子さんの小説を読んでみたいけれどすらすら読める小説ではないと認識していたので、短編小説からにしようと思いました。新しめのもので。タイトルと同名の『約束された移動』が一番好きで面白かったです。高級ホテルのロイヤルスイート担当の客室係と非定期的にスイートルームに宿泊するハリウッドスター、ギリシャ彫刻のように美しいBとの二人だけの不思議で秘密な本に関するやり取りがとてもひっそりとしているが興味深かった。Bが宿泊したあと、書棚の本が一冊ずつ消えてゆき、その隙間を客室係がわからないよう塞いでゆく。消えた本と同じ本を客室係は

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    2024年02月18日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

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    充実の対談集。
    「博士の愛した数式」の逸話と「源氏物語」の解釈が新鮮。
    日本の曖昧さと西洋の厳密さが興味深い。
    私はアースされているから大丈夫という河合先生の心構えを見習いたい。

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    2024年02月17日
  • 刺繍する少女

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    小川洋子の短編集ははじめて読んだ。「森の奥で燃えるもの」が1番好きだったかもしれない。どの短編を読んでも、小川洋子の他の作品に通じるなにかがあった。薬指の標本とか、完璧な病室とか、余白の愛とか。いささか繊細すぎ、美しすぎるがゆえに不気味さが静かに際立っていた。

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    2024年02月14日
  • 完璧な病室

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    「完璧な病室」
    無駄なものはなく清潔で安心できる場所。
    弟の病室で二人で過ごす時間は静かで、時を刻むほど清らかになっていく。相反していたものは、心の病があった母とのかつての生活。それらを全て包み込んでいくものの温かさが、この小説全体を包み込んでいるように思えた。

    ほかに、「揚羽蝶が壊れる時」「冷めない紅茶」「ダイヴィング・プール」

    あとがきまで読み終えて、人のすべての奥底までが細やかに描かれた小説が、自分の物のように感じられる読者になりたいと思った。

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    2024年02月12日