小川洋子のレビュー一覧

  • 不時着する流星たち

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    ネタバレ

    なんとなく心ざわつく読後感。
    「失われたものへの哀悼と、喪失の甘美さに充ちた、極上のオマージュ作品」とは解説の文章であるが、なかなかぴったりな表現だなと思った。

    表現が精密で、モデルになった人物や出来事の解析度が高く、顕微鏡レベルで提示されるので、ぼんやり生きてる私には少しクラクラしてしまった。
    後でもう一度読み返してみよう。

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    2024年03月08日
  • 口笛の上手な白雪姫

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    公衆浴場の脱衣所で働く小母さんは、身なりに構わず不愛想。けれど、他に誰も真似ができない自由自在な口笛で、赤ん坊には愛された。(表題作)


    表題作含む全8話を収録した小川洋子さんの短編集。
    どれも孤独で密やかな、世界に埋もれてしまいそうなささやかで優しく寂しい話です。
    小川さんはともすれば不気味・グロテスク、生々しいととられかねない物事を、綺麗に、さりげなく表現することが特にお上手だと思っていて、今回はそういった表現は多くはないのですが、それでも悲愴さや心の底に沈めた狂気のようなものをやわらかに描いています。

    こどもの目線で書かれた話もいくつかあり、こどもの独特の世界観・大人には理解のし辛い

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    2024年03月02日
  • まぶた

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    ネタバレ

    どの登場人物も、音もなく崩壊していくようだった。彼らが纏う空気には確実に死が感じられるのに、誰もそれを恐れてはいないように見える。
    死とは息をひそめればいつでもそこにあり、生き物が必ず辿り着く終わりの時。でもきっと怖いものではないのだ。
    それぞれに悲しい出来事や上手くいかなかった事を抱えながら、今多くを求めず穏やかに生きている人々を見ると、心が静けさに満ちてくる。手の届く範囲の、目の前のものを愛していくことの大切さを教えてくれる。
    繋がりのない短編集なのに、全てにどこか共通したものがあった。
    「お料理教室」だけは誰も話が通じない感じがして、フワフワして拠り所がない感覚になった。確かなものがいつ

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    2024年02月28日
  • 刺繍する少女

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    『図鑑』が特に好きだった。『やさしい訴え』に近いものを感じさせる内容だった。小川洋子さんの書く女性の嫉妬の気持ちが好き。静謐な文章で淡々と綴られていく激しい感情には美しさと狂気的なものを感じる。この作品は狂気が沸騰し、目玉を取り出す奇行に走るが、やはり、美しい、と思わされてしまう。それも小川洋子さんの力量なのだと感心した。

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    2024年02月26日
  • ブラフマンの埋葬

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    ネタバレ

    全体としてフワフワとした夢物語のような感覚が
    解説を読んで、なるほどなとスッと入ってくるものがあった。南仏にまつわる話、主人公を含む名前のない人間たちこそ夢の中で出会う行きずりの人物のように謎めいている、互いの領域に決して入り込まない人々の世界に起こった泉泥棒の登場と「僕」の侵犯行為、その結果としての死。

    犬との関わり、育つ幼きものに寄り添う子育てを振り返りたくなるようなあたたかな前半もよいが
    後半の展開は深く、余韻を残す一冊。

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    2024年02月23日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

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    充実の対談集。
    「博士の愛した数式」の逸話と「源氏物語」の解釈が新鮮。
    日本の曖昧さと西洋の厳密さが興味深い。
    私はアースされているから大丈夫という河合先生の心構えを見習いたい。

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    2024年02月17日
  • 刺繍する少女

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    小川洋子の短編集ははじめて読んだ。「森の奥で燃えるもの」が1番好きだったかもしれない。どの短編を読んでも、小川洋子の他の作品に通じるなにかがあった。薬指の標本とか、完璧な病室とか、余白の愛とか。いささか繊細すぎ、美しすぎるがゆえに不気味さが静かに際立っていた。

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    2024年02月14日
  • 完璧な病室

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    「完璧な病室」
    無駄なものはなく清潔で安心できる場所。
    弟の病室で二人で過ごす時間は静かで、時を刻むほど清らかになっていく。相反していたものは、心の病があった母とのかつての生活。それらを全て包み込んでいくものの温かさが、この小説全体を包み込んでいるように思えた。

    ほかに、「揚羽蝶が壊れる時」「冷めない紅茶」「ダイヴィング・プール」

    あとがきまで読み終えて、人のすべての奥底までが細やかに描かれた小説が、自分の物のように感じられる読者になりたいと思った。

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    2024年02月12日
  • 口笛の上手な白雪姫

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    世界の片隅で、ひっそりと生きている人たち。
    物語の主人公たちのイメージ。

    みんなそれぞれ、個性的な習慣や癖などがあって、どうかそのことで世の中からはみだしたりしませんようにと、願いたくなる。

    小川洋子さんの作品は、こんな感じの主人公が多いのかな。

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    2024年02月12日
  • からだの美

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    現代の作家で、言葉の使い方が、最も好きな作家さん

    一つ一つのテーマに対して少し冗長になるとことがあったのが残念

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    2024年01月18日
  • いつも彼らはどこかに

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    どこかの国でひっそりと静かに暮らす誰かの側にはいつも彼ら(何か)が寄り添っている。それは生きた動物だったり、物であったり…。 大きな出来事はおこらない、物語の結末もよくわからない。けれどその世界観にじわっ〜と浸れるような短編集。
    特別なことがなくても平凡に暮らす私たちでも小川洋子さんの手にかかれば素敵な物語になるのかもしれない。自分の心にそっと寄り添ってくれているものって何だろう…

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    2024年01月15日
  • 琥珀のまたたき

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    現実世界で起これば母親は親としての在り方を非難されるに違いないが、小川洋子の世界の中では誰も糾弾されることはない。いろんな人にとっての真実がただそこに存在している。

    他の作品でも登場人物や小川洋子の世界観が強く存在していることは多々あるが、この作品は他のどの作品よりも絶対に自分は入り込めない、触れてはいけない世界だと感じた。
    そして、その世界、家族の在り方は信仰に通ずるものを感じた。ムスリムの友人は宗教で自由になれると私に話した。外から見れば戒律に縛られた自由のない世界。内から見れば従うものがあるからこそ迷いなく守られながら自由でいられる世界。そんな信仰に近いものを彼らの壁の内にも感じた。

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    2024年01月12日
  • 生きるとは、自分の物語をつくること

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    小川洋子さんの本を読んでよかったのでこちらに。

    河合先生の、カウンセリングの話ははっとさせられた。相談や迷いの声を聞くと、わたしは答えらしきものが知りたくて、⚫︎⚫︎ということ?と問うてしまう。もしくは、こう捉えたらいいんだよと解釈を与えてしまう。

    相手に寄り添い、相手の世界の中で話をする態度を自分はとりたいけど、現実的にはそうもいってられないことも。自分の考えのよらないことに、ああそうかとただ受け止めるようになりたいし、まだ自分がわかってないこともあるかもと思っていたいと感じた。

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    2024年01月08日
  • ボタンちゃん

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    岡田千晶さんの描く子ども部屋が好き。ご自身はどんなお宅に住まわれているのだろう。絶対オシャレなはず。
    娘が大好きなアニメ「ドックはおもちゃドクター」に通じるものがあった。困ってる人、悲しんでいる人を励ます勇敢な女の子のストーリー。ボタンちゃんも同じ。アンナちゃんのお母さんを見習って、モノと思い出を大切にせねばならんな。と反省した。

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    2023年12月17日
  • 洋子さんの本棚

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    書くことを仕事にする二人の「洋子」さんが本の世界を語る対談集。
    思い出の本として紹介される本が重鎮な本ばかり。(私は、ほとんど読めていません)
    1冊1冊を深く深く読み込んでいる。
    やっぱり、言葉を仕事にしている方の観点や洞察力は深いのだなと思った。
    時々、お二人の日常のお話や、食のお話が出てきて、身近に感じた。

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    2023年12月14日
  • 凍りついた香り

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    ネタバレ

    主人公の夫が序盤から自殺してしまうが、亡くなった夫に対する悲しみや愛がひしひしと伝わる。読み進めていくうち胸が締め付けられる。さすが小川洋子さん!といった作品だと思う。

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    2023年12月03日
  • 口笛の上手な白雪姫

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    心が温まったり、冷えたり。体温調節が大変だったなぁ、と言うのは冗談で。「仮名の作家」が一番好きでした。映画ミザリーよりももっと、リアリティのある暴走ファンのお話。読み進めると段々雲行きがおや?と怪しくなってきた辺りから徐々に体が冷え始め、最後に哀れみが残った。

    表題にもなっている「口笛の上手な白雪姫」は、正直解説を読んでもしっくりは来なかった。解釈も受け取り方も人それぞれなので、何が正解かは分からないけれど、無理やり仏法と結びつけ過ぎている様な。正直この手のヒューマンドラマ系の物語に、宗教と言う視点から考察する事には違和感しか感じられなくて。小母さんの過去は全く描かれていない中で、無償の愛と

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    2023年11月22日
  • 琥珀のまたたき

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    滑らかな言葉、誰にも侵せない世界。一歩踏み出せば、異質でしかないと気づくそこが、琥珀にとっての全てになる。荒々しい描写も怒涛の展開もないのに、じわじわと衝撃が染み入ってくる作品だった。

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    2023年11月12日
  • 琥珀のまたたき

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    この本の世界観が独特で全く意味がわからなかったが、解説を読んでなんとなくわかった。
    時間が止まっている表現であったり、この閉塞感、視点の移り変わり、すべてが難しいが読み終わった感想としては、その人の境遇だけで決めつけることをしないということ。

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    2023年11月12日
  • 口笛の上手な白雪姫

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    ネタバレ

    偏愛と孤独を友とし生きる人々を描く、8編の短編小説。

    「一つの歌を分け合う」が一番印象的だった。
    従兄弟が亡くなってしばらくしてから、伯母が舞台俳優を亡くなった我が子だと思い込み、主人公と一緒に観劇に行く話。
    「劇場では誰も泣いている彼女を不思議がったり、奇異な目で見たりしなかった。理由を取り繕う必要はないのだ。伯母は好きなだけ泣くことができた。」
    という、帰り道のシーンがよかった。

    夫の祖母の葬式のときに、子供を亡くした叔母さんの話を聞いてから、それと重なって思いを馳せてしまった。

    「かわいそうなこと」「盲腸線の秘密」も、子供ながらの世界を表していてよかった。

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    2023年11月05日