小川洋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
異様な状況なのに、どこか温かみのある不思議な雰囲気。本の中に確かに彼らの生活があって、壁の中のママ、オパール、琥珀、瑪瑙の密やかな生活をそっと静かに覗きたくて本を開いていた。
家族の絆というと安い表現だけど、家族だから成せた温かい日々だと思う。家族って不思議。
ママが”図鑑のモデル”でいるために、毎月スターに扮するシーンが印象的。たった数時間、ほんの一瞬の高揚感で1ヶ月じっと個性を押し殺して生活するなんて、私にはできない。家族を守りたいという母親の底深い執念を感じた。それとも父親からの愛を忘れられずに図鑑のモデルを演じ続けていたのかな。
後半ちょっと読みつかれちゃったので、星3 -
Posted by ブクログ
先日読んだ博士の愛した数式が面白かったので、同じ著者さんの本を買ってみました。
街の中にひっそりとあるアーケード内にまつわる短編。
コンビニたそがれ堂や、あずかりやさんみたいな、短編が繋がってる話すっごく好きなんだよなあ。こういうお話の書き方って名前あるんだろうか。
相変わらず文章がとても綺麗で頭にスッと入ってくる。瞬時に情景が浮かぶような小説を読むと心の底から没頭できて良い時間を過ごせたなあと感じます。
悲しかったり、少し怖かったり、心温まるような、アーケード内の人にまつわるお話が「私」の目線で淡々と書かれている。
いまいちグッと感じなかったのはあまりにも「私」が淡々としていたからかもし -
Posted by ブクログ
[こんな人におすすめ]
*上質な物語に身も心もゆだねてしまいたい人
没入できます。著名なオーケストラの生演奏を聴いている時のように、睡魔も日常のモヤモヤも全部忘れて幸せな気分に浸れます。
なお、5篇に分かれているので少しずつ読み進めることも可能です。
[こんな人は次の機会に]
*動物を愛している人
思い出そうとするたびに「脳内で再生してはいけないよ。世の中には忘れてしまった方が良いこともある。」と脳内が優しく語りかけてくるほど気持ち悪い描写があります。困ったことに、該当部分を読んでいる時は文章の美しさに心を奪われているので恐ろしさに気づくのが遅れます。読む前にご注意ください。
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Posted by ブクログ
ネタバレYとヒロが積極的に主人公に構ってくれるのだが、Yの存在は幻覚だったとして、ヒロはそんな幻覚が見えることも含めて叔母に付き合ってあげていたのかと読後に改めて思うと、凄い子だ。
Yの指への惹かれようが、性的ともいえる魅力を感じる。そして自身の突発性難聴となった耳に聞こえてくる幻聴のバイオリン。それも魅力的な指により速記という形で絡め取られて、抱擁されたような心地。
帯に記憶と現実が溶け合うとあるが、物としては指と耳が溶け合い、Yと主人公が溶け合う。
人間は小さな声で話しているといくらか優しい気分になれるものだということを、私は病気になってから発見した。小さな声は柔らかくて肌触りのいいベールにな -
Posted by ブクログ
昔外国人と話せる英会話アプリをやっていて、そこでダイヴィングプールを勧められたことがあり、ずっと気になっていた。あの外国人、センスが良いな……。
どの短編もずっと暗くて陰鬱で神経質な感じだった。どれも読んでいると心がヒリついて落ち着かない。ぱちぱち続く静電気に顔を歪ませながら読み続けるみたいな、不思議な痛さのある読書体験だった。でも不愉快だったわけではない。10代の時に感じていた、かさぶたを剥がす気持ちよさみたいなもの、いちいち色んなことに積極的に傷ついてみたり不愉快に感じてみたり、そういう心って大人になると健やかな生活を妨げるから意識的に忘れていくもののような気がするけど、それを久しぶりに思