小川洋子のレビュー一覧
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ネタバレ小川さんの美しい文章で綴られる静かな消失の物語。
架空の何処かの島では、島の外に脱出することは出来ず、日々少しずつ日常の何かが人生から完全に消失して行く。
誰が何の目的で消失をさせているのかは不明だけど、
中には記憶を失わずに留めて置ける普通の人も居て、そう言う人は『記憶狩り警察』と言う特殊組織に狩られてどこかへ連れていかれてしまう。
最終的には、何かを消失して行くことをただ静かに受け入れてこの物語もそっと静かに幕を閉じるのだけど、この記憶を消失させて行くのを決めてるのは誰なのかとか、記憶狩りをなんの為に行ってるのかとか、そこら辺の深い所を想像するのもちょっと楽しいかも。 -
Posted by ブクログ
先日読んだ博士の愛した数式が面白かったので、同じ著者さんの本を買ってみました。
街の中にひっそりとあるアーケード内にまつわる短編。
コンビニたそがれ堂や、あずかりやさんみたいな、短編が繋がってる話すっごく好きなんだよなあ。こういうお話の書き方って名前あるんだろうか。
相変わらず文章がとても綺麗で頭にスッと入ってくる。瞬時に情景が浮かぶような小説を読むと心の底から没頭できて良い時間を過ごせたなあと感じます。
悲しかったり、少し怖かったり、心温まるような、アーケード内の人にまつわるお話が「私」の目線で淡々と書かれている。
いまいちグッと感じなかったのはあまりにも「私」が淡々としていたからかもし -
Posted by ブクログ
[こんな人におすすめ]
*上質な物語に身も心もゆだねてしまいたい人
没入できます。著名なオーケストラの生演奏を聴いている時のように、睡魔も日常のモヤモヤも全部忘れて幸せな気分に浸れます。
なお、5篇に分かれているので少しずつ読み進めることも可能です。
[こんな人は次の機会に]
*動物を愛している人
思い出そうとするたびに「脳内で再生してはいけないよ。世の中には忘れてしまった方が良いこともある。」と脳内が優しく語りかけてくるほど気持ち悪い描写があります。困ったことに、該当部分を読んでいる時は文章の美しさに心を奪われているので恐ろしさに気づくのが遅れます。読む前にご注意ください。
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Posted by ブクログ
ネタバレ小川洋子ぶし炸裂のとても不思議な物語でした。
様々なものが消滅していく島で島民はモノの消滅が訪れるとそのものが何だったのかどんどん記憶からなくなり、それを捨てなくてはならない。
持っていると警備隊につからまりとんでもない目にあわされる。そんな中、記憶が消えない人達もいて警備隊にバレないようにかくまってもらったりしながら生きている。
この物語は消滅とは別に人の死や忘却も並行で描かれており、様々な形で消えていく。
消えるとは、忘れるとは、どういうことなのかをリアルに感じさせてくれる本でした。
最後は自分の手や足、体が消えていってしまい何もかも残らない。
アルツハイマーの人はこういう感覚なのかなな -
Posted by ブクログ
ネタバレYとヒロが積極的に主人公に構ってくれるのだが、Yの存在は幻覚だったとして、ヒロはそんな幻覚が見えることも含めて叔母に付き合ってあげていたのかと読後に改めて思うと、凄い子だ。
Yの指への惹かれようが、性的ともいえる魅力を感じる。そして自身の突発性難聴となった耳に聞こえてくる幻聴のバイオリン。それも魅力的な指により速記という形で絡め取られて、抱擁されたような心地。
帯に記憶と現実が溶け合うとあるが、物としては指と耳が溶け合い、Yと主人公が溶け合う。
人間は小さな声で話しているといくらか優しい気分になれるものだということを、私は病気になってから発見した。小さな声は柔らかくて肌触りのいいベールにな -
Posted by ブクログ
昔外国人と話せる英会話アプリをやっていて、そこでダイヴィングプールを勧められたことがあり、ずっと気になっていた。あの外国人、センスが良いな……。
どの短編もずっと暗くて陰鬱で神経質な感じだった。どれも読んでいると心がヒリついて落ち着かない。ぱちぱち続く静電気に顔を歪ませながら読み続けるみたいな、不思議な痛さのある読書体験だった。でも不愉快だったわけではない。10代の時に感じていた、かさぶたを剥がす気持ちよさみたいなもの、いちいち色んなことに積極的に傷ついてみたり不愉快に感じてみたり、そういう心って大人になると健やかな生活を妨げるから意識的に忘れていくもののような気がするけど、それを久しぶりに思