小川洋子のレビュー一覧
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作家である「私」が創作活動の合間に起こる出来事や過去の回想を徒然なるままに綴る日記形式の物語。不思議なことが次々と起こる小川作品が凝縮したような作品。
山の中の温泉旅館のさらに奥、ひっそりと佇む苔料理専門店やただ物語のあらすじを話すだけの公民館のあらすじ教室。参加者がひとりずつ消えてしまっても集合時間を優先する現代アート展ツアー。
確かにおかしい何かが当然のように存在するので、むしろおかしいのはこちらなのではないかという錯覚さえ覚える。
さらには文体が日記であるという点と病院、母親、市役所、取材など現実のような単語が出てくるので事実と勘違いしてしまい、まるで明晰夢をみているようだった。
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高校の時に一度読んで、最近また読みたくなったので読んでみた。数学は大嫌いだったが、この本は楽しく読み進めていくことができた。目に見えないゼロを発見したインド人はすごいし、天才数学者の生まれる条件がまったく数学に関係無い事に驚いた。欧米人とアジア人では数学の受け入れ方が違うなど、自分の知らないことが沢山あっておもしろかった。ゲーデルが発見した「不完全性定理」、チューリングが証明した、真偽を判定できない命題であるかどうかを、チェックする方法はない という結果が一番びっくりした。論理を数学であらわすことができるんだなと感じた。目に見えない世界を数学であらわしていくんだから数学者はすごいと思った。
高 -
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ネタバレ小川さんの日常を綴ったエッセイ
とても控えめなお人柄が伺えます
書下ろしの「ジュウシマツの芸術」がお気に入り
鳥には興味がなかった小川さんがジュウシマツの生態に感銘を受ける件がいい
小川さんの「芸術」に対する考え方が伺える
ジュウシマツは求愛のために歌の練習をし本番に挑む
練習と本番では遺伝子の発現パターンが異なるらしい
さらに、究極の歌をうたうオスが出現する、そのオスは
メスには求愛せず、自分の歌に聞きほれ満足する
「求愛という目的が消え去り、ただうたうためだけの歌、つまり芸術がここに誕生する。(中略)孤独を愛し、より繊細な美を追い求め、いつしかそれを芸術にまで高めることのできる彼ら -
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ネタバレ2015年の41冊目です。
主人公である”作家”の私の奇妙な日常を、日記風に書き綴っています。小川洋子作品に欠かせないな「奇妙な職業」を持つ人を始めとし、「奇妙な料理」、「奇妙なツアー」が出てきます。日常の中に描かれている非日常的かる不思議な世界が、現実から読み手の意識を引き離していきます。引き離された意識が自分なのか?置き去りにした無意識が自分なのか?奇妙な世界から、「あなたは何者?」と問われている気持ちになる。
苔料理店、ツアー参加者が次々に迷子になりながらも時間通りに進んでいく現代アートの祭典見学ツアー、物語の”あらすじ”をまとめるあらすじ係という職業、楽譜めくり係、、、。この奇妙な世 -
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基本的に人間は信じていない私ではあるが、それでも人生のどこかで誰かに助けられた場面があったことは認めざるを得ない。いかに人間嫌いな私でも、たった一人で生きてきたわけではない。普通の人は助けてくれる人というのは家族であったり恋人や友達であったりするのかもしれない。だが極端に知り合いの少ない私は、いざというとき力になってくれたのは、赤の他人であることが多かった。通りすがりの優しいおばちゃんや、名前も告げずに去っていったサラリーマン。よくぞあの時あのタイミングで、と奇跡を信じたくなるほどありがたい助けもあった。
たぶん、世の中はそいういうふうにできているのだ。不幸と幸福のバランスがとれるように、な -
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「博士の愛した数式」の小川洋子さんと、数学者の藤原正彦さんの対談集
この本のすごいところは、入門として得られる知識について、地理的背景のほか、特に有名な人物や各種の定理・予想などの幅の広さにもあると思います。
有名なフェルマー予想(サイモンシンのフェルマーの最終定理が詳しい)の他に、ゴールドバッハの予想(6以上の偶数はすべて2つの素数の和で表せる)という問題にも触れられていて、そこから、ゲーデルの不完全性定理(正しいとも正しくないとも判定できない命題が存在するということを証明)を提示し、 コンピュータの父であるチューリングによる、ある命題が真偽を判定できない命題であるかどうかをあらかじめチェ -
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アンネ・フランクを辿る旅に出ることは、すなわち、過去の戦争と向き合うこと。
小説家を志すきっかけとなったのがアンネ・フランクの日記だったという小川洋子さんが、アンネゆかりの地を訪ね歩いたときのエッセイだが、とても重い旅だったのではないだろうか。
私の場合、ゴールデンウィークにアンネ・フランクの家を訪れたことから、もう一度アンネについて知りたいと思い、アンネの日記を再読し、小川洋子さんのこのエッセイを読み、そして映画「シンドラーのリスト」を観た。その結果、アウシュビッツには行っていないものの、あまりの悲惨さ残酷さに直面し、かなりの疲労感を感じてしまった。
小川洋子さんも、旅立つ前にある程度予 -
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「博士の愛した数式」などの作品で有名な作家、小川洋子氏が、それぞれ分野の違う7人の科学者たちを訪ねるという内容。
文系の人が書いた自然科学の本ということで、科学本としては読みやすい部類に入る。
ただ専門用語や若干複雑な説明も書いてあるため、理数系はからっきしだめという人には、ちょっと辛い部分があるかも。
ただこの本の魅力は、単に科学に対する見識を深められるというところにあるのではない。
そうではなく、小川洋子氏の科学への純粋な興味と、作家ならではの独創的な解釈。
そういった単なる知識ではないところにこそ、この本の面白さがあると思う。
だからこの本を読むときは科学の知識を理解する、理解しよう