小川洋子のレビュー一覧
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小川洋子さんは少女時代に「純粋な文学として」アンネの日記と出会い、自らも物を書く喜びに目覚め、そのことが作家になるきっかけにとなった。
そのことをアンネの日記の翻訳者で本書の解説を務めている深町氏はアンネ〜との最も幸福な出会い方だと述べています。
アンネの親友だったジャクリーンさん、擁護者だったミープさんと会うくだりは特に印象的です。
ちょっとどうかと思う質問もありますが……。
一作家のエッセイとして色々な感想が素直に書かれていて、読みやすかったです。
ホロコーストの善悪をどうこういう本ではありませんが、あらためてナチによるユダヤ人迫害や収容所での扱いは人間の尊厳を根こそぎ奪うものだった -
Posted by ブクログ
カラーひよことコーヒー豆の感想で信頼する読友のはこちゃんさんが小川さんを腐したことを実は根にもっていたのだが(笑)… ひょんなことから続けてエッセイを読むことになってその腐す理由がわかるような気がしてきた。
居丈高な態度は大嫌いなのだが謙遜、それもひとつの分野で地位を確立している人においての過度の謙遜はやはり鼻に付くものなのだ。
例えばお土産で「つまらない物ですが…」と言うよりも「美味しかったんで是非とも食べていただきたくて…」と言われたほうが自分のことを思ってくれてる度は格段に高く嬉しさも倍増する、そういう事でないか?
でもね、巨大化する心配事などを読むとやっぱり小川さんはいい人なのよ…あ、 -
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30歳前後のときに書かれたエッセイ集。
『妊娠カレンダー』で芥川賞を受賞し、子供が生まれて数年という期間。
自省的な文章であり、書くことがいかに小川さんにとって大切でかけがえのないものなのかがひしひしと伝わってくる。
早稲田に通いながら小説を書き始めた頃の思い出が印象深い。
決して芽が出ない作家志望者が大勢いる中で、ずば抜けた才能を持っている人ではあるけれど、ひたむきに書き続けることが一番大切だと感じられた。
後半に出てくる熱狂的な阪神ファンならではのエピソードも面白い。
阪神の勝利と読売の敗北を何よりののぞみとしながら、暗黒時代の阪神の戦いに一喜一憂する健気さであるよ。
作家としてだけ -
Posted by ブクログ
高校生のとき、英語の教科書に『アンネの日記』の1節が載っていた。
確かペーターとのやりとり、彼への恋心について書かれた部分。
ちょうど『アンネの日記』の完全版が文庫化されていて、それを読んでみようという気になった。
彼女が本当はどんな女の子だったのか興味がわいたから。
うまく言えないけど、高校生の私は『アンネの日記』を読んで、何か救われた気持ちがした。
思春期に感じていた葛藤を自分以外にも同じように感じていた人がいて、それを言葉に残してくれた。それが何だかものすごいことだと思った。
実際に身近にいたら、多分友達になることはないタイプの子だ。きっとお互い話しかけることもないだろう。
それが分か -
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タイトル通り、小川さんが心打たれた本、思い出に残る本について書いたエッセイ集。
たまに犬や家族、仕事の話など。
それぞれの本や出来事に対する考察も興味深いけれど、一番心に響くのは書くこと、表現することについての苦しみと喜びについてである。
そして物書きとして小川さんが励まされる思想というものはどれも深い。
元の文章も良いのだろうけれど、それを咀嚼し自分の養分としているところが、小川洋子の世界観を保ったまま上質な文章を書き続けられる秘訣なのかと感じた。
書くことに限らず、あらゆる活動は最終的に死に至る人間の運命と照らし合わせるとあまりに空虚で無力感を覚えさせるものだ。
だけどいつか自分の痕跡 -
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ネタバレすごーく官能的な話。老人のいいなりになる女の子。AVや成年誌の見本みたいな設定。それだけにエロスの本質でもあるし、登場人物の性欲がむきだしにされてても、小川洋子のやさしい文体のせいでまったく下品ではない。
どうしてここまでエロチックな話が書けるのだろう、とかんがえると、小川洋子の作品にまつわる一つのフェチを思いつく。あの、「被・支配欲」とでも言うようなフェチズムです。強い存在の下に置かれその存在にひれ伏すことで得られる満足。
しかしこれは自傷感のある、なんとなく悲しい性癖だと思う。小川洋子自体がそうじゃなくても、彼女の作品のヒロインたちはみんなどこか可哀想。ホテル・アイリスのマリはその痛々しい