あらすじ
人が生まれながらに持つ純粋な哀しみ、存在していることの孤独を心の奥から引き出すことが小説の役割ではないだろうか。小説を書きたいと強く願った少女は成長しやがて母になり、芥川賞を受賞――。少女・青春期の思い、家族や本のこと、心を締めつける記憶の風景を率直に丁寧に綴り作家小川洋子の原点を明らかにしていく、珠玉の一冊。繊細な強さと静かなる情熱を併せ持つ著者の全貌がみえる初めてのエッセイ集。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
再読です。小川さんの「書きたい」という思いをあらためてしみじみと強く感じるエッセイでした。初期の頃のエッセイなので、あの小説はこんな思いで書かれたのだ、というところが興味深いです。出産と子育て、阪神タイガース…阪神タイガースの応援日記が、なんだか小川さんを身近に感じました。日々の切り取り方が、エッセイという形でも、小川さんだなと思わされます。面白かったです。小川さんはやっぱり、物語を紡ぐために生まれてきたのだなと思いました。これからも読みます。
Posted by ブクログ
小説家のエッセイはその人の小説に対する想いが伝わり面白い。小川洋子の小説を書くという行為に対しての真摯な想いをひしと感じました。芥川賞の候補に選ばれてから、実際に受賞するまでのエピソードが面白いです。また阪神タイガースファンである筆者の「阪神カレンダー」に、小説とは別の側面を見ることが出来ました。
Posted by ブクログ
作家さんを等身大に感じるのに、エッセイを読みたくなりますよね。作家さんと自分との接点を見出して嬉しくなったり。小川洋子さん、本人も認めるように小説では少し昏い世界をお書きになりますが、阪神の熱烈なファンであるなど意外性たっぷりです。
おこがましいようですが、小川さんは
「書きたい人」なのだなぁ、天性の作家さんなんだなぁと思いました。どの言葉を掬いとるかということに専心しつつ、一方で言葉にできない空間に意識を払っている。金井美恵子さんらの小説について綴った箇所も、とても素敵でした。
Posted by ブクログ
30歳前後のときに書かれたエッセイ集。
『妊娠カレンダー』で芥川賞を受賞し、子供が生まれて数年という期間。
自省的な文章であり、書くことがいかに小川さんにとって大切でかけがえのないものなのかがひしひしと伝わってくる。
早稲田に通いながら小説を書き始めた頃の思い出が印象深い。
決して芽が出ない作家志望者が大勢いる中で、ずば抜けた才能を持っている人ではあるけれど、ひたむきに書き続けることが一番大切だと感じられた。
後半に出てくる熱狂的な阪神ファンならではのエピソードも面白い。
阪神の勝利と読売の敗北を何よりののぞみとしながら、暗黒時代の阪神の戦いに一喜一憂する健気さであるよ。
作家としてだけでなく、母としての姿が垣間見れるのも新鮮である。
Posted by ブクログ
小説を読んでいてもわかるように、言葉を大事に大事に丁寧に丁寧に積み重ねてるんだとわかる。
小川さんの小説の書き方、出来上がる工程は、私には不思議だ。そんなふうにして出来上がるなんて!という感じ。
遅筆なんですね。でも、それだけ言葉一つ一つに想いが込められている。
子育てのこと、阪神のこと等、プライベートな話は笑えた。
やっぱり小川さん、好き。いいわぁー。
Posted by ブクログ
実はエッセイだと気づかずに手に取り読んだ1冊だったものの、「小説の最も大事な要素は、主題でも事件でも登場人物の魅力でもなく、言葉である…(引用P53)」という一文には思わず感動。小川さんの小説をもっと読んでみたくなりました。
Posted by ブクログ
小川洋子氏初のエッセイ。
小川さんの作品は、小説よりエッセイが好きなのだが、何作か読んだ後での本書なので、内容が重複している部分も見受けられる。
それでもやっぱり小川さんのエッセイはいい。
特質すべき点はないけれど、静かで簡素なありふれた日常にスポットライトを当てて綴られたエッセイには、小川さんが寄せる思いの「ぬくもり」が伝わってくる。
小川さんが語ると、自分が興味関心がなかったことにも関わらず、まるで自分のことのように慈しみを感じる。
Posted by ブクログ
大好きな作家のエッセイ。言葉への徹底的な信頼が小説を書く根本になっていると同時に遅筆の原因にもなっているという彼女の言葉に深く頷く。身を削るようにして生み出された彼女の言葉は本当に美しい。彼女が好きだという村上春樹作品(短編)が、私がずっと気になりながら題名を思い出せなかった特別な作品だった事に大感激。
Posted by ブクログ
エッセイ集
野球に興味はわかないけど
金井 美恵子さんの本は読んでみたくなった。
買ったまま、放置してた映画のDVD「ミュンヘン」
週末、観ようかなー
Posted by ブクログ
小川洋子のエッセイ兼書評。
自身の小説の説明も書いてあります。
一つ一つ短いですが内容は非常に濃いというかところどころ重複してる部分もあります^^;
村上春樹の作品を読んでいることに驚きです。「主婦作家」と呼ばれることが嫌いとか。
これはこの本だけに限ったことじゃないですが、スポーツの話は常に変化するので(誰がいつどこで勝ったとか或いは勝ちそうとか)いつも飛ばしてます…。
あまり興味がないということもありますが笑
Posted by ブクログ
正直、この乙女ちっくな題名と装丁に「……」となりました。
自分も好きな春樹のこととか、作家としてなるまでの大学生活とか、やわらかくぼんやりとした調子で書かれていて「あぁこの人の文章上手いなぁ」と思いました。
他のエッセィも読んでみよう。
Posted by ブクログ
初めてのエッセイ。
「モノ書き」として出発した学生時代から岡山での暮らしぶりが垣間見れます。
特に面白かったのは家族揃っての阪神好き。
これでもっかって程の熱狂なのに、本人は至って「普通」だと思っているギャップが凄い。
Posted by ブクログ
エッセイ集。比較的古いもので、1988年から1993年まで。阪神ファンぶりとかも面白いし、小説に対する考え方も面白い。それまでに書いた小説の紹介があったり、阪神日記があったり。
芥川賞の裏話、出産と同時に作家生活が始まった話などなど。
Posted by ブクログ
あの「博士の愛した数式」を書いた作者の駆け出しのころのエッセイ。
どんな風に言葉を紡いて小説を書くのだろうと思って読んでみました。
真摯に言葉に向き合うひたむきな姿勢と、書くことが好きという想いが伝わってきた。
印象に残ったのは「小説は言葉によってしか表現できないものだが、それだけですべてを表現しつくしてしまうことも、またできない。言葉が持っている目に見えない模様を見せたい」。そう、小説って言葉で表されているもの以上にその裏に感じる情景や思いや手触りといった諸々のものを感じさせる。私は一読者としてそれらを感じられる読書が好き。
あと印象的だったのは、出産した時に感じた哀しさの話。産声に切ない哀しさを感じたって。人は哀しさを抱えて生まれてくる。手付かずの純粋な哀しさ。曰く「人の心を掘り起こしていって、一番奥の髄にある哀しさを表現することが、小説を書くということではないだろうか」。私が彼女の小説に心を動かされる訳がわかったような気がしました。
読み飛ばしたところも多々あったけど、印象に残る箇所のあるエッセイでした。
Posted by ブクログ
少し前に読んだので、内容をあまり覚えていないが、駆け出しの頃から誠実な人間関係と仕事を続けてきて、華やかな文壇の世界にはあまり興味のなさそうな普通さのある小川さんの人間性に改めて惹かれた。失礼かもしれないが、個性的な作風とのギャップが素敵。また、編集者さんかだれかに、小川さんの作品はラヴェルに似てる、と言われたと書いてあり、わかる!と思った。ころころと変化する旋律の絡み合い、楽器の入れ替わり、それでいて哀しかったり、風変りな主題が出てきたり。んーほんとだ。
Posted by ブクログ
小川さんは昔から、慎ましやかで可憐な、それでいて「書くこと」「言葉」に静かながらも温度の高い情熱を注いでいるひとだったんだな、とわかる一冊だった。
特に、佐野元春さんに会えて良かったね! と、なんだか手を取って喜びあいたくなるような気分になった。
私が野球に全く詳しくないせいで、そういう意味でよくわからん(共感しきれない)部分が多かったので☆は少なめ。
Posted by ブクログ
小川洋子の最初のエッセイ集。
著者の「書きたい」という思いと言葉に対する信頼を強く感じた。
三章以降のエッセイは特に面白かった。
ただもう少し小川さんの作品を読んでから手に取った方がよかったかもしれないなあ…
Posted by ブクログ
そんなに熱心なタイガースファンだったとは!笑
いかに小川さんが繊細に大事に言葉に触れ、言葉を扱い、組み上げて小説を作っているかがよくよく伝わってくるエッセイ。
ですが、小説家としての小川さんの文書(前半多め)よりも、後半の母親として子供と歩いたり、ワープロを取り合ったりする小川さんや、タイガースの勝敗に一喜一憂したり、佐野元春のライブで幸せいっぱいな小川さんの話の方が、なんだか「可愛らしい人なんだなぁ」と思って、楽しんで読んだ。
相撲についてとか、野球についてとか詳しくわからないんだけれど、小川さんがその人の「物体」としての美しさ(筋肉のしなやかさや、表情の表れ方)を見ているようで、だからあんなふうに、切なくて美しくて儚い描写の小説が書けるんだなと思った。
Posted by ブクログ
デビュー間もない頃から小川洋子が書き綴ってきたエッセイをまとめた一冊。
芥川賞作家、ひとりの女性、妻、そして母親、
そんな色んな顔を持っていることが不思議なほど、
本書に収められているエッセイから浮かび上がってくる彼女の姿は、
ある種の「一貫性」に溢れている。
しかし彼女のもつこの「一貫性」は、
鋼鉄のようにがちがちに硬いものではなく、
ゆたかにしなる若い竹のような、そんな柔軟さにあふれたものだ。
作家であること、家庭をもつ女性であることなど、
一定の何かの形に捕らわれたりせず、
彼女はあくまでも「小川洋子」というひとりの人間として、
日々の小さな発見や幼い頃の記憶に自由に思いを馳せ、文章を綴っていく。
なんというか、心の在り方がいつまでも若い人なんだろうと感じる。
この感覚の柔らかさでもって、
彼女は静謐でありながらもどこかグロテスクな味わいをもつ、
あの独特の物語群をつくりあげているのだろう。
またエッセイとして抜群に面白いのは、
熱狂的な阪神タイガースファンとして書かれたいくつかのエピソードである。
大真面目に綴られる悲喜こもごもの観戦日誌では、
茶目っ気に溢れる彼女の姿に何度も笑いをさそわれた。
小説のみならず、作品を生み出された背景を知るにつれ作者自身を思わず好きになってしまう、
そういう魅力にあふれたエッセイ集。
間違いなく、小説のファンは必読の一冊だと思う。
Posted by ブクログ
エッセイ。
最初の章で、ものを書くことへの小川洋子のこだわりが見えてよかった。
後半に行くにつれて、同じ内容の文が重なるのが目に付いたかなというのが、正直な感想。