小川洋子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
小川洋子さんの文と吉野朔実さんの絵ということで借りる。
本書は小川さんの『アンネ・フランクの記憶』をもとに児童向けに新たに編み直したものとの巻末の注記。
吉野さんの絵は表紙と人物紹介の頁の他、カットが数点で期待してたのとはちょっと違った。
1994年に小川さんがアンネ・フランクの親友ジャクリーヌさんとアンネ一家の隠れ家生活の手助けをしたミープさんを訪問し、アウシュヴィッツを見学したことが記されている。収容所を見学する記述では、やはり胸が苦しくなる。
特に展示室を埋め尽くす靴を前にして、心の中で「無数ではない」と繰返し自分に言い聞かせる小川さんの述懐が胸に迫る。 -
Posted by ブクログ
数学者でエッセイストの藤原正彦と、『博士の愛した数式』の著者である小川洋子が、数学をテーマに語りあった対談を収録しています。
『博士の愛した数式』についても多少は言及されていますが、多くの部分では、小川が聞き手にまわり、数学の美しさと、それに憑かれた数学者という人種について藤原が語るというスタイルで進んでいきます。
おそらくは「数学」と「美」を結びつけることなど思いもよらないというような若い読者に、数学の美しさに目を開かせることを目的としているのかもしれませんが、数学の世界についてのとりとめのない印象がつづられていて、すこし内容が薄いようにも感じてしまいました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ小川洋子さんのエッセー集は初めて。
本のことや、当時飼っていたラブラドールのラブのこと、岡ノ谷先生の研究のことや、ご自身の作品のことなどがふれられていて、楽しく読めた。
特に、執筆するときに小説の世界に浸るというか、その世界の様子を見て聴いて感じたことを<描いて>いるだけなので、私自身のものではないと言うところが小川洋子さんの作品の世界観(自分が勝手に思ってるだけ)だなと。ツバキ文具店だったり、リトルアリョーヒンだったり、標本士だったり、ミーナだったり、どの小説の主人公も彼・彼女らだけのオリジナルの世界を持っているからこうも惹かれるのかなとか思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ何かでお勧めされてた本。
博物館というキーワードに惹かれて。
誰も駅に降りないような村で、博物館を作りたいという依頼主に会うためにやって来た博物館技師の僕。
未成熟な輝きを持つ少女と、どうみても親とは思えない位、年が離れた依頼主の老婆。
そこから沈黙の博物館と称した、老婆が集めた形見の展示の準備から、村で起こった死人の形見の収集(窃盗…)まで行うことになる。
読んでいくと、時々現れる不釣り合いなキーワードに意味があるのか考える。
持参した親の形見のアンネの日記、兄から譲られた顕微鏡、沈黙の行を行う沈黙の伝道師の存在。
人形劇やお祭りが娯楽の、へんぴな村っぽいのに、爆弾事件や猟奇的な殺人事件 -
-
Posted by ブクログ
小川さんの優しさや温かさにあふれたエッセイ集。
タイトルだけ見て借りたのだけど…なぜ表紙が犬のしっぽではないのか?というところに、大いなる疑問が残る。
愛犬ラブちゃん、阪神タイガース、ご家族、著書「博士の愛した数式」やアンネ・フランクへの追憶…テーマがまとまっているような、いないようなパートもあるんだけども、そのひとつひとつから小川さんの人となりが感じられる、優しい文章とお話。
祖父のお話の構成で、最後に「最近、死んだ人のことを思い出すことが多くなった」というような言い回し(うろ覚えでごめんなさい)を持ってくるところで、ものすごく切なさを誘われた。なんとなく、本文の冒頭や途中に出てくるのであ -
Posted by ブクログ
この静かで残酷な世界に浸りました。
新田さんと薫さんの完璧に閉じられた世界に入り込んだ瑠璃子さんの、感情をふたりにぶつける様は痛々しいものがありましたが、彼女を嫌いになれるはずがありませんでした。
皆、心に抱いた傷をこの森で癒していて、瑠璃子さんがただ少し早く癒されただけだと思いました。
新田さんと薫さんの日々が、これからもずっと永遠に続いていきそうだなとわたしも感じました。
お話の筋とは離れていると思いますが、カリグラフィーの先生の言葉が心に響きました。「それ、謙遜のつもり?自分の能力を低く見積もっておいた方が、あとで楽ですもんね。」「できないと思ったらできないの。できると思ったら何とかなる