小川洋子のレビュー一覧

  • 凍りついた香り

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    亡くなった彼の真実を探す旅。孔雀の羽根、記憶の泉、調香師、数学の問題…幾つかのキーワードから死者を訪ねる謎解きが始まる。
    小川洋子さんの作品は、五感を研ぎ澄まして読むとより一層楽しむことができる。全ての物に対して存在を認めることが、この世界の入り口のチケットでもある。だから体調不安の時は馴染めない。

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    2020年11月23日
  • 偶然の祝福

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    作家である「私」が、息子や愛犬のこと、昔の思い出などを描いた短編集で、「私」を中心に、それぞれの話はどこかで繋がっている。
    タイトルに"祝福"とあるわりには、どの話もわかりやすい幸せな感じはないため、個人的には少しモヤモヤが残ったが、一見不幸そうな中にわずかに温かさを感じる部分もあり、それが"偶然の祝福"なのかもしれない。

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    2020年10月30日
  • ホテル・アイリス

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    少女と老人のお話
    究極のエロティシズムに期待して読んでみました
    老人はただのエロじじいだし
    少女もなぜに彼に引き寄せられたのか・・・

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    2020年09月21日
  • 夜明けの縁をさ迷う人々

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    捻れた恐怖を感じさせる短編集。
    その怖さはあからさまなものではない。
    真夜中に自分の部屋でふと目覚め、クローゼットの扉が細く空いているのに気がつく。きちんと締めなかったせいだ。大したことじゃない。なのになぜかそこから目が離せない。人の身体を借りた闇の獣が、息を殺してこちらをずっと覗いているのを感じる。
    そういった恐怖だ。

    タイトルの『夜明けの縁』というのは、人間の正気と狂気の境目だとわたしは考える。
    この9つの短編集に出てくる人たちは皆、その縁を覚束ない足取りでさ迷っている。そしてこちらに戻ってくる人もいれば、あちら側に落ちてしまう人もいる。
    すべて現実味のない話のはずなのに、じわじわとその

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    2020年09月21日
  • 犬のしっぽを撫でながら

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    エッセイをあまり読んでこなかった私。
    小川洋子さんの作品もいくつかしか読んだことがないのだけれど、『作品』じゃなくて『作家その人』が好きになるってあんまりなかった体験。
    着飾らなくて、なんだかぬけてて、なんて自信のない方なんだ…!と驚いたりしながら楽しく読めました。
    これは日記か?というような文章もあったりして、こんな小川さんがちょっとダークな世界を描いたりしてるのかと思うと、作家さんってすごいな…と改めて感じたりしました。

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    2020年09月21日
  • 小箱

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    すでにこの世にはいない子供たちへの祈りなのか、果てしない鎮魂の話なのか?
    読み進めていくうちに「想像ラジオ」を思い出していた。やるせないファンタジー。

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    2020年09月15日
  • ホテル・アイリス

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    ネタバレ

     昔途中まで読んだけど、積読していた本。なんとなく、久しぶりに本を読んだ。1日で読み終わった。
     読み始めてなぜ途中で読むのを止めたのか思い出した。登場人物の男(翻訳家)の第一印象がキモかったからだ。このキモいおっさんと、主人公との恋愛物語とか見たくないわーと思ったんだろう。今回読んでも同じ印象で同じ感情を抱いたが、読むのは止めなかった。
     この小説で印象的だったのが、舞台となる町の風景だ。海沿いの町で城壁があり、離小島があるらしい。その描き方が美しかった。調べたところ作者さんはある地域をモデルとしているらしい。自分の中ではなんとなく、逗子や真鶴辺りを想像した。
     登場人物の「翻訳家」は最初か

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    2020年09月13日
  • 心と響き合う読書案内

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    本を紹介する本が好きで、また自分が読んだ本をプロの作家はどのように評価したり感じたりしているのか知ることができてなかなか面白かったです。
    今後の読書の参考にできる本でした。

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    2020年09月10日
  • 小箱

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    ネタバレ

    小川さんの作品の魅力は、優しく不思議な世界観なのだけど、この作品は感情移入しにくかった。
    いつもは現実の中に見えてくるファンタジーな部分を楽しむのだけれど、今回はそれがあまり見えなかったのと、死を扱ったことが要因かもしれない。

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    2020年09月06日
  • いつも彼らはどこかに

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    ブロンズ製の犬、cheater、蝸牛、竜の落とし子‥それぞれの主人公のそばには動物たちがいる。
    ここではない何処かで繰り広げられる、不思議かつユーモラスな8つの物語。

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    2020年08月30日
  • 小箱

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    小川さんの作品はどうしていつもこうハラハラさせられ落ち着かない気持ちにさせられるのか。なのにどうしていつも小川さんの作品に引き寄せられてしまうのか。

    子供たちがいなくなってしまった町には、元幼稚園に住み続ける主人公の「私」、子どもを亡くした親たち、その親たちを慰める人々がいる。

    親たちは元幼稚園の講堂にずらりと並んだガラスの小箱の中で亡くした子供の成長を見守り、風の吹く丘の上で子供の遺品で作った楽器を耳にぶら下げ自分にしか聴こえないその音に耳を傾ける。
    子供を亡くし心を病んで入院中の女性は判読不能なほど小さい文字の連なりで綴られた手紙を恋人に送り、恋人のバリトンさんはその解読を「私」に託す

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    2020年08月17日
  • ホテル・アイリス

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    ネタバレ

    ヨーロッパの方の映画みたいな感じだった。
    全体的に乾いて、影が多くて、黒い感じの画面。登場人物の心も皆、乾いている感じがする。
    小川洋子にしては、現実味がある世界なんだけど、やっぱりさらっと、俯瞰している感じがする。
    世界の片隅で、誰にも気にかけられない人たちのいとなみ。いそうもないけどいるかも知れない。絶対いないとは言い切れない。

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    2020年08月14日
  • 不時着する流星たち

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    実在するモデルを元に作られた10篇の短編集。
    氏の小説は久しぶりに読んだが、彼女の感性を共用するには、私は少々歳を取り過ぎたのかもしれない。美しい言葉で語られるが、どの物語にも狂気を感じ、途中で読むのが辛くなった。
    美しいが、落ち着かない感じ。
    それがタイトルの『不時着する流星たち』へと繋がっているのかもしれない。

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    2020年07月31日
  • 世にも美しい数学入門

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    ネタバレ

    数学って実は美しく面白いものなんだ、ということを知ったのが小川洋子さんの著書「博士の愛した数式」だった。それまで数学は四角四面の無味乾燥のものだと思っていたが、それ以来数学を見る目が変わった。
    また「遥かなるケンブリッジ」で藤原先生の大ファンになっていたので、骨髄反射的にこの本を手に取ってしまっていた。
    数学は大の苦手だけれど、「美しい」ということだけは分かる気がする。そして美しいことは正しい、というのも腑に落ちる。それが宇宙の法則なのか、神の技なのか。混沌の中からその秩序を見つけ出す、秘密を解き明かす数学者には信念と情熱が必要。実はとてもウェットな世界だよなぁと感じた。数学に、数学者に、宇宙

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    2020年08月10日
  • 小箱

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    これぞ小川洋子ワールドって感じの不思議なお話。
    亡くなった後もガラスケースの中で、子供は成長し続ける。素敵です。

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    2020年04月01日
  • やさしい訴え

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    夫から逃げるように向かった別荘地で過ごす瑠璃子と、同じように林の中で生活するチェンバロ作者の新田氏、薫さん、そして宿のおばさんたちとの関わりが描かれた作品。
    新田氏への恋心を持て余す瑠璃子の気持ちに共感したのと同時に、非日常の世界の優しさが身に染みた。
    いつかはそこから離れなくてはならないとわかっていても、ずっと安住していたくなるような安心感があった。

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    2020年02月20日
  • いつも彼らはどこかに

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    小川洋子の短編集。本タイトルが、小川洋子らしくなく、内容の一部もそんな感じ。

    スーパーで試食を作ると、派手でも積極的でもないのに飛ぶように売れる試食販売員。スーパーの試食が配られ始めると、どこからともなく現れて、何周も食べる女性。いつの頃か、2人には固い絆が作られていく。

    年末年始に読んだ本が、ことごとくハズレであったので、心の安らぐことこの上ない1冊。サウナのあとの1杯の水と言う感じで、ごくごくと読んでしまった。

    冒頭のスーパーの2人とディープインパクトに対する帯同馬の話は、どう思いついたのかがすぐわかるところが、創作の参考になる。ただ、小川洋子にしてはツッコミが浅いな…とおもっていた

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    2020年01月15日
  • 余白の愛

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    ふわふわした気分で読み進め、ふわふわした気分で読み終えた。
    静かで綺麗、そして独特な世界観に引き込まれた。
    しかし良くも悪くも言葉の言い回しや表現に癖があって高度なため、なかなか初見では理解するのが難しいところもあり、読んでいて少し疲れてしまった。
    また時間のあるときにゆっくり読み返したいと思う。

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    2019年09月05日
  • 不時着する流星たち

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    ネタバレ

    そこに狂気があるとして


    まるっきりのタイトル買い。少し怖くて、ちょっと気持ち悪くて、でもたぶんプラスに向かうマイナスのちから、というものもあるんだろうなぁ…なんてぼんやり。
    頭がおかしくなりそうな、いろいろ、の中で
    それを形にするには、じゃあ、どうしても
    そちらがわ、に踏み込むしか無い?

    高みの見物、は許されないのだ。

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    2019年08月30日
  • アンネ・フランクの記憶

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    ネタバレ

    著者小川洋子氏が、「アンネの日記」を初めて読んだのが中学1年生の時だったそうだ。それからご自身も日記の中で、自己表現することを知り、それが作家業へとつながったと述べられている。

    著者は、自身の心の友であるアンネ・フランクの生涯に触れることのできる地を実際に訪れ、アンネを実際に知る人々と会って対話をし、最後はアンネの命を奪ったアウシュビッツを訪れるという8日間の旅を計画した。

    アムステルダムで、アンネがまだ少女として、そして家族の一人として暮らしていたアンネ・フランク・ハウス(隠れ家)を実際に訪れる。

    また、そこであらかじめアポイントをとっていた二人の人物に、取材というより会って対話をする

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    2019年07月21日