小川洋子のレビュー一覧

  • 耳に棲むもの

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    第1章は補聴器のセールスマンとして生きた父に対する娘の視点から始まって、以降の章は父でありセールスマンである男が耳に棲むものと出逢う話が続いている。どの話も生き物の死が添えられているので、苦手な方はご注意を。小川洋子さんはいつも、現代でも中世でも何処でもない(登場するワード的には現代のものだけど)純粋に生きる人間を描き出すのがお上手だと思う。そんなひとり、ひとりに惹かれてページを捲る。

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    2025年10月08日
  • ブラフマンの埋葬

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    小川洋子さんの小説はいつも不思議が詰まっている。
    ここはどこなの?
    この人はなんていう名前なの?
    この動物は何?
    たくさんの想像力をつかって、たくさんの優しさをもらって、たくさんの尊さを得ました。
    次読んだら違う感想を持つのかな。

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    2025年10月07日
  • ミーナの行進

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    自分も社会人一年目で関東から神戸に移るという経験があるので、序盤から引き込まれた。神戸、芦屋の街並みを想像しながら登場人物たちの行方を追えたので、とても楽しくゆっくり読むことができた。

    思い出は死なない。死んでも消えるわけではない。

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    2025年10月05日
  • そこに工場があるかぎり

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    穴、菓子、ボート、乳母車、ガラス加工、鉛筆。身近なものを作っている工場を小川洋子さんらしくレポート
    彼女の筆にかかれば、どんな機会も職人さんも工場も美しく厳粛さまで感じる
    鉛筆作る過程の描写はピカイチ!

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    2025年10月04日
  • 犬のしっぽを撫でながら

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    作品はいくつか読んだことのある小川洋子さんですが、
    小川さんのエッセイは始めて読みました。
    小川さんの作品に流れる静かな哀しさや寂しさの源流はここにあるのか、と思わせるものもあれば、
    かなり熱心な阪神ファンとのことで、野球にまつわるあれこれまで様々なところで書かれたエッセイを一冊にまとめたもの作品のようです。

    『博士の愛した数式』にまつわるエッセイはとても興味深かったです。数字と人間の対比。美しく永遠に続く数字と弱くて物語なくしては生きていけない有限の人間の生。

    日常のお話では、資料となる雑誌や書物の整理に関するお話に共感。(私も人よりは「増殖する乱雑さ」に対する耐性はあると自負しています。つまり部屋が汚い)

    小川さんの美術館の監視員さんに対する考え方が「思慮深い5歳児」のようで面白かった。確かに、彼ら・彼女らを見ると「お元気ですか?」と話しかけてみたい衝動に駆られるほど、人形のようにスッと座ってらっしゃる方もいますもんね笑
    作品や展示について質問がある場合は、彼らに尋ねると奥にいる学芸員さんを呼んでもらえることもあるので、私は質問があるときは話しかることもあります。

    この本の中ほどは『アンネ日記』にまつわるお話です。小川さんが実際にアンネゆかりの地へ訪ねて行った際のことが書かれています。
    「死を受け入れるために、人は物語を必要とする。」

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    2025年10月02日
  • 最果てアーケード

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    やさしくて、ほんのり体温が残っている喪失感。
    最初は外から「私」を通してアーケードを覗かせてもらっている感覚だったのが、最後はアーケードの中にぽつんと取り残されたような気持ち。

    徐々に「私」の輪郭がぼやけていく。
    「私」はいつからいるのか、いないのか、アーケードの輪郭だってどこまではっきりしたものなのか。
    素直に読み取れるようなものではない気がした。

    生よりも死や無に近いところの商品を扱う店々。
    アーケードの外がこちらで、ドアノブの向こうがあちら。ならばアーケードは時間がよどむ境界線か。

    迷い込んだ名前も知らないアーケード、作者にゆかりのある地でとおった商店街、半年だけ過ごしたあの国の蚤の市で買った、どこかの誰かが写ったネガフィルム。
    自分のみてきたそんな景色と最果てアーケードが寂しく重なった。

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    2025年10月01日
  • ミーナの行進

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    大人と子どもの間、まだ家族に守られている時代の中学生朋子が、事情があって一緒に暮らすことになった叔母家族。朋子を含む家族の誰もの拠り所である、芦屋の洋館での一夏の出来事と心情を瑞々しい感性で切り取り、描いた物語。
    芦屋は私が暮らした街なので、橋の名前さえも懐かしく、景色が目前に浮かび、私の思い出と作者小川洋子さんの生み出した世界が交錯するような、不思議な読書の時間でした。

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    2025年09月25日
  • そこに工場があるかぎり

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    毎日の仕事を、目の前の仕事を誠実にこなす。
    小川洋子さんが見学し、工場や働いている人、製品を見て聞いて感じたことを小川洋子さんらしい言葉での表現されており、とてもよかった。おもしろそうと思った工場をみつけ、現地に足を運び、見学し、お話しし、推敲を重ねて文章にしているのを感じられた。

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    2025年09月23日
  • ゴリラの森、言葉の海(新潮文庫)

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    ゴリラについて知りたいなって思って手にとった本。気がついたら人間の本来のあるべき姿、について考えさせられてた。自然に求めるのではなく、私たちが謙虚にならなくてはいけない。

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    2025年09月15日
  • 密やかな結晶 新装版

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    心の中のものを一つずつ失くしていく話

    その島では鳥、バラの花、写真⋯
    消滅が少しずつ進む
    とめることはできず、島の人たちは受け入れていく
    消滅すると記憶からも消え、心の空洞が増えていく
    秘密警察が記憶狩りをし、記憶を持ち続ける人を連行していく
    記憶を持ち続けるR氏をかくまう
    小説を書くわたし
    やがて小説も消え、体も心も消滅していく


    物が消え、記憶さえもなくせば、いずれそれに順応していってしまう
    やがて実体のある体の消滅にまで危機が及んでるのに疑問もなく受け入れてしまうのが怖い

    希望という記憶を持つであろうR氏、
    希望がなんなのかさえわからないわたし、
    ふたりの道が二手に分かれることになるのが悲しい

    記憶というもので人は生きていける
    物に愛着し、思い出したり愛でたり、人と交流して楽しかったり、と
    だけど
    人生は喜びだけでない
    憂いや、痛みや、苦しみが心をかき乱す、そんなものでも心に留めて記憶しているほうがいい
    暗闇を失くしてしまったら光がわからない
    それがあるからこそ光や希望を目指して生きていけるんじゃないかと思った

    消えてほしいと思ったものでも消滅して記憶がなくなるのは困ると思った
    一つ消えればそれはやがて私の存在さえも薄らいでいくものになるから

    この夏の、心の1ページに刻まれる物語だった

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    2026年06月18日
  • そこに工場があるかぎり

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    面白かった!文章がさすがの美しさ。単なる工場見学の「ルポ」ではなく、作家として色々なところに想像力を巡らせ、作家ならではの感性と表現力で表現をする「作家の作品」に他ならないと感じた。

    同じ場所を見学したとしても、このような表現にはならないだろう。工場で見つけた驚きや感動の共有により、日常目にするものや使うものを再認識できるという面白さももちろんあるが、この作家ならではの視点と表現力で表現し切った作品を読む楽しみもあり、通常のルポとは一線を画す「作品」であったと感じた。

    もっと小川洋子氏の作品を読みたくなった。

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    2025年09月06日
  • 最果てアーケード

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    ネタバレ

    良かった。こういう、連作短編集も良い。全てのエピソードに愛があって、柔らかく暖かかった。表現も美しくて素敵だった。

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    2025年09月05日
  • ブラフマンの埋葬

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    ネタバレ

    あらゆる種類の芸術家が集う〈創作者の家〉。その管理人である〈僕〉と、肉球と水かきを持つ謎の小動物〈ブラフマン〉との、ひと夏の邂逅そして別れを描く。南仏を思わせる架空の村を舞台に、物語は〈僕〉の抑制のきいた一人称で、水彩画で描かれた大人の絵日記のように淡々と静かに進んでゆく。

    正体不明ながらも愛くるしいブラフマンと、〈僕〉の心の交流が物語の主成分となっている。しかし、これを心温まるハートフルストーリーと呼ぶのは少し違うように思われる。物語の始めから終わりまで繰り返し現れるのは、取り繕いようのない死の気配だからだ。古代墓地、石棺、埋葬人、碑文彫刻師、身寄りなく死んだ老人の所有していた家族写真、そして生活感を全く感じさせない登場人物たち。

    生身の肉体を感じさせるのはブラフマンと、〈僕〉が思いを寄せる雑貨屋の娘だけだ。しかし、ブラフマンは予めタイトルで死が暗示されており、いくら愛らしくともこの蜃気楼のような村の無自覚な虜囚であることから免れないように思われる。雑貨屋の娘だけが虜囚であることに満足せず、生身の人間らしい欲望に従って村から飛び出していこうとするが、その陳腐で無遠慮な生命力の前に、ブラフマンの存在はあっけなく掻き消されてしまう。

    ハートフルストーリーとしてはあまりに仄暗い物語は、しかしどこか遠い国のお伽話めいて、誰を罰するでもなく何を嘆くでもなく淡々と終幕を迎える。ここではこの世の価値基準は無効化され、ただ夢のような読後感と無常感が読者に残されるのみだ。この作品が受賞したのが直木賞や本屋大賞ではなく、泉鏡花文学賞だったというのはさもありなんと言うべきだろう。

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    2025年09月03日
  • 琥珀のまたたき

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    壁の中はとても密かで静かな世界。壁の外の記憶が残っているオパール。何も知らない無邪気な瑪瑙。琥珀はいつの間にか、皆がバラバラにならないように行動していたのかもしれない。

    歪で恐ろしいのに美しくて穏やか。小川洋子さんの作品の魅力。大森静佳さんの解説も素晴らしい。

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    2025年08月31日
  • 約束された移動

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    誰のどんな役割もすべて等しく神聖である気がした。ときどき常識から逸れることがあっても、大きな問題ではないような気もしてくる。すばらしくうつくしい、上品な雰囲気。うっとり。

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    2025年08月25日
  • 遠慮深いうたた寝

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    本を読まない人が増えて、本屋がどんどんつぶれ、何分以内に読める!というのが売り文句になってしまった今の時代だけど、やっぱり本を好きでいいんだ、本の力を信じていいんだと思わせてくれる心強い一冊。

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    2025年08月25日
  • NHK「100分de名著」ブックス アンネの日記 言葉はどのようにして人を救うのか

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    自分の置かれた状況がどうにもならない時に、文章や言葉にすることで、思わぬ気付きや救われることがあるのだと思いました。
    アンネの感性の豊かさに敬服です。

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    2025年08月24日
  • 口笛の上手な白雪姫

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    「かわいそうなもの」と「仮名の作家」が狂おしいほど好き。
    混沌とした静かな世界のなかで、ほんのりとした切なさがとても好きです。ほの暗い雰囲気で普通はないようなことが起こっていても、どこかに妙な現実味があって…
    何度でも読み返したい

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    2025年08月23日
  • ミーナの行進

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    小さい頃、友達の別荘で数日間過ごしたことを思い出した。
    あの頃に経験したすべての物事は、今となっても色褪せず大切な記憶。
    普段何気なく過ごしてる日常も、将来見返したときに、かけがえのない宝物にきっとなると思うので、日々を大切に過ごそうと思いました。

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    2025年08月20日
  • ブラフマンの埋葬

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    ファンタジーとリアルの合間 すごい薄い本で短いストーリーなのだけど、犬の描写が犬らしく可愛げで、犬っていいな、癒される存在だな、と思った。主人公の青年はなんか不思議な仕事をしている不思議な存在って感じ。ファンタジー感もあるし、現実感もあるけど、ふわっとしたストーリーだった。

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    2026年03月14日