小川洋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
“夏のはじめのある日、ブラフマンが僕の元にやってきた。”
その子犬のような小さな生き物は、痩せて傷つき、震えている
“最初に感じ取ったのは体温だった。
そのことに、僕は戸惑った。
朝露に濡れて震えている腕の中の小さなものが、こんなにも温かいなんて信じられない気持ちがした。
温もりの塊だった。”
それから僕はブラフマンとの濃密な日々を過ごしていき、彼の生態について詳しく記録していくのだ。
※ブラフマンの尻尾
※ブラフマンの眠り方
※ブラフマンの食事
※ブラフマンの足音
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そして最後は……
※ブラフマンの埋葬
なんて愛おしいのでしょう。
愛情しかありません。
この -
Posted by ブクログ
私も読んで触れてみたかった…!
閉塞感ある隠れ屋の中でも
生きる希望を失わず 真っ直ぐに
世界を観ていたアンネ
アンネから観た世界はどのように
映っていたんだろう…
8月中に1冊は 戦争の作品に触れてみようと思い
今年はこちらの作品を読むことに決めました
あの時代 あの限られた人たちの中で
日記を通して 少女から大人へと
成長していったアンネ
日記で綴った自分自身の言葉に
時には励まされながら
決してユーモアを忘れなかったアンネ
小川洋子さんの感性で 抜粋された
アンネの日記の言葉に何度もウルウル…
私も自分自身を見つめるきっかけになりました
この本に出会えたこと -
Posted by ブクログ
太陽の光を浴びて輝く泉の水面、風に誘われてさざめく樹々たち、自然の中で思いきり遊ぶブラフマン……。すべての描写を記憶したくなる程、美しい文章だった。
架空の動物であるブラフマンの仕草は可愛さに溢れていて、見た事のない生き物を、ここまで鮮やかに描き出す文章に魅了され続けた。
穏やかな日常が次第に不穏な雰囲気へと変わっていく様子が、季節の移ろいと共に感じられる。主人公である〝僕〟の純粋さに翳りが差し、引き起こされてしまった結末は心が痛み切なさが込み上げた。しかし物語は〝僕〟の心に宿ったエゴを非難する事なく、淡々と出来事だけを書き連ねていく。その表現のされ方に心はより深い余韻に包まれた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレいつもの小川さんらしく、登場人物たちには名前がなくて殊更注目されるような人物ではないんだろうなと思っても、登場人物たちの仕事はぴったりとその世界に収まっている。
代わりがおらず、万が一他の人がその仕事をすればそれは取り返しがつかないほど全く違うかたちにその世界を変えてしまうんだろうなというくらいに。それに、変わってしまった世界になると前のことなどすぐ忘れられてしまうだろう。
そんな些細な人の一瞬を切り取る小川さんの目線は優しい。薄っすらと漂う狂気や、抑え込まれないグロテスクも、この尊さはなくならない。さすが小川さんだ。
普段、自分のしている仕事は代わりがきくと思っていて、仕事のためにはそれが良