小川洋子のレビュー一覧
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涼子の恋人、香水の調香師弘之が自殺した。なぜ?彼の全く知らなかった一面が次々と明らかになっていく。涼子は弘之の面影を求めて迷宮の街プラハへ。
弘之の過去と涼子の今が重なり、弘之が残した『匂いのイメージの言葉』と出会う。
弘之の死の原因は解らない、ただ生きにくい人だったことはわかる。
涼子は弘之の過去を訪ねることで、救われたのだろうか。
臭覚で感じる香りを言葉で表現する。それを読者が香りとして感じるには、言葉が示す香りをイメージできなければならない。言葉から臭覚を呼び起こそうとし、知ってる何かに当てはめようとする。
言葉で五感を刺激し、言葉で静寂を感じる小川洋子さんの世界、好きだなぁ。 -
Posted by ブクログ
意外とスルメ本だった
寝る前に気が向いたら1話2話読もうかなという風にちょろちょろ読んでたけどなかなかちょうど良かった(短編が10話入ってる作品です)
短編を結構書いてる作家さんだと「またお決まりのこのパターンね」みたいな手癖がどうしても出てくる。例えば本作に入ってる「ケーキのかけら」は「いつもかれらはどこかに」に入ってる「帯同馬」と似たテイストだ。このふたつの作品は特別好きな手癖なのでもっと味がしなくなるまでこすってほしいと内心思ってたりする(一方で他作品はちょっとパンチが弱かった気がして内容あんまり覚えてないのは内緒だよ)。
「ケーキのかけら」と「帯同馬」のどちらの話も、ものすごく見栄を -
Posted by ブクログ
この静かで、ガラス箱の中で幼い死者の魂が時を重ねて行くだけの世界の中で、こっそりと私だけが生命を膨らませている。
私の密やかな想いが、バリトンさんが暗い底のない透明な湖に沈んでゆくのを阻み、もう一度生命を吹き込む。
この町にあって、私とバリトンさんの二人だけが、自らの子供を亡くしていない登場人物だ。
二人だけが、過去を悼んで生きる人々に寄り添いながらも、現在と、もしかしたら未来の自分自身を生きている。生者の世界にある。
私が幼稚園の備品に自らのサイズを合わせるように奇妙に縮み歪んでいっても、私の中に息づく生命力はその奇形には収まりきらない。
最も死者が遠い夏至の日を選んでプール開きをする -
Posted by ブクログ
細かい描写を読み進めていると、いつのまにか物語のなかに入り込んでいる感覚。そして、思わぬ方向に連れていかれている。『盗作』もまさにそんな感じだった。
『失踪者達の王国』の伯母さん、『キリコさんの失敗』のキリコさん、『エーデルワイス』の弟、それぞれが大切にしているものや事柄と、それに対する思いを、私はちゃんと感じとれたか、と思ってしまった。
『涙腺水晶結石症』は、一番好きだった。ひどい雨のなか、ベビーカーと40キロのラブラドールのアポロを連れ、歩く。孤独を感じながらも、大切なものを守りたい思いに後押しされ、頑張る気持ち、そして訪れる絶望、希望。小さな白い結晶がそれらの全てをもたらした。アポロ -
Posted by ブクログ
昔、立花隆の「サル学の現在」を読んで、人類の先祖がチンパンジーのように残忍ではなく、ゴリラのように穏やかな性格だったら我々はもっと平和な歴史を刻んだだろうなと思っていた。どうやら、僕の考え違いだったようだ。山際先生は集団間の暴力の理由を言葉、死者の利用、共感性としている。ユヴァル・ノア・ハラリ「サンオピエンス全史」言う処の認知革命が原因なんだな。
山際先生の近親相姦のタブーの起原説に納得した。育てる経験が性的な関心を抑制する。そのインセスト・タブーがあるからこそ娘を他の家に差し出すことができる。また、類人猿のメスは親元を離れて繁殖するとある。
ここでレヴィ・ストロースの云う「女の交換」が発生