小川洋子のレビュー一覧
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小川洋子さんのエッセイ集を読んだのは、『とにかく散歩いたしましょう』と『カラーひよことコーヒー豆』に続いて3冊目。3冊の中でもこの本は、他の2冊に比べて小川さんの熱量がかなり高かったように感じました。
内容が『博士の愛した数式』に関連したことや、小川洋子さんの愛する『アンネの日記』を巡る旅のことであったりと、特に思い入れの強い事柄について書かれていたからだと思います。
いつものエッセイでは限りなく控え目で、街行く人々の人生に物陰からこっそり拍手を送っているような小川さんの熱に触れることが出来たような気がしました。
でもやっぱり、本の最後に納められた「自信満々の人」という話では、
-自分 -
Posted by ブクログ
以前は、女性作家と日記、手記などは読まなかった。読書は空いた時間に、それも出来るだけ現実から遠いものを選んでいた。海外の小説が多いのも当時の気持ちや環境から距離があったからかもしれない。
時間に少し余裕が出来てベストセラーなども読むようになり、時間があまって来ると、本来の好奇心からかさまざまなジャンルのものを読み、手に取ったことがなかった女性作家のものが心に響くことに気がついた。
小川さんは長い間記憶の中で「博士の愛した数式」を書いた人だった。それがほかの作品も読んでみたい、と読んだ途端好きな作家に入ってしまった。
どの作品も独特の味があって、ちょっと変わっている。
余りたくさん読んでいな -
Posted by ブクログ
ネタバレ小川洋子さんのエッセイ。
読者の人によって思い出される祖母との記憶。
お金をもらってももらっていなくても、仕事をこなしている人への尊敬の気持ち。
本物のご褒美というのは、ふとしたときに出会うありがとうということ。
その人のことを詳しく知らなくても、一冊の本があれば十分だということをラジオの仕事で知ったこと。
いろいろ後悔してしまうこともあるけれど、姪っ子の愛おしさが全て帳消しにしてくれること。
思い描く理想の1日と、小説と犬と阪神に囲まれた生活。
控えめで謙虚で、愛に溢れている人。
素敵な人だなあ、と思う。作品ももちろん素敵だし、エッセイから伝わる小川洋子さんのお人柄も素敵。 -
Posted by ブクログ
素敵で不思議な雰囲気の短編集。この人の文章は語られてる内容が何であれ本当にうっとりさせられる。正直に言うと何が伝えたかった事なのか?をちゃんと理解できてないケースも多くファンというのもおこがましい気がするが、あえて言うなら言葉で語られた言葉では説明しにくいイメージそのものが伝えたい事なのかな?とも思う。
子供の頃の自分中心の世界観の中で感じた、心地良く秘密めいた場所を思い起こさせる、私にとっての小川洋子さんはそんな素敵な読書体験を得られる稀有な作家であり、本作でもその魅力は存分に発揮されてると思う。
中でも「誘拐の女王」「若草クラブ」「十三人きょうだい」は特に良かった! -
Posted by ブクログ
ネタバレ「君の耳は病気なんかじゃない。それは一つの世界なんだ。君の耳のためだけに用意された、風景や植物や楽器や食べ物や時間や記憶に彩られた、大切な世界なんだよ」
突発性難聴に苦しむ「わたし」を救ったのはYの優しくて甘い言葉。
自信なさげに恐る恐る喋る声を一つ残らず書き留めるYの繊細な指。
人は思いもよらない災難に遭遇して心細い思いをした時、自分の殻に閉じ籠ることが多い。
そして棘のない痛みの伴わない記憶を頼りに癒しを求める。
記憶の捻れがもたらした安らぎは「わたし」をゆっくりと浮上させる。
小川さん特有の甘美な幻想的な世界にゾクゾクした。
無駄な音のない静かな物語。
一度読んだだけでは理解できず、