小川洋子のレビュー一覧
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ネタバレ『やさしい訴え』
ラモー作曲のチェンバロの曲だ。
『やさしい訴え』は新田氏と薫さんを静かに結びつける。瑠璃子さんがいくら新田氏と物理的に近づいたとしても。
三人とも傷を負っていた。演奏恐怖に陥ってしまったピアニスト。婚約者を結婚直前に亡くした女性。夫の不倫で居場所をなくした女性。
瑠璃子さんの発する嫉妬にまみれた言葉が、宙を舞う。その訴えは当たり前の感情だと思うけど、発すれば発するほど新田氏との距離が遠ざかっていくように思える。
やはりきっぱりと瑠璃子さんは失恋した。
瑠璃子さんに居場所は見つかるのだろうか。
薫さんの純粋な真っ直ぐさがドロドロを消していく。
かなわないんだな。
瑠璃子さんが切ない。
小川洋子さんの世界に浸って
もの悲しい幸福感と
透明感を味わった。
これから
ラモーのチェンバロ曲を聴こう。
『やさしい訴え』 -
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小川洋子さんの優しい痛みを伴うお話が好きで、よく読むんだけど。こちらは、お友達にお勧めしてもらったエッセイ。人間の体の部位をこんなにも美しく語れるなんて、さすが小川洋子さん。その中でも、「声」についてのエッセイが良かった。ここだけ、体の部位じゃないんだもんな。考えてみると、「声」って不思議。臓器で空気を振動させて音を作り出す。その空気の震えがあなたの鼓膜を揺らす…。なんか、すごくない?(語彙力!)私の妹が沖縄三線の新人賞コンテスト?に出た時のこと。古典だから、歌詞なんて全くわからない。にもかかわらず、まったくの門外漢の私にも良い歌はわかる。声って楽器なんだな、と思った。ヨガのYouTubeも見るんだけど、繰り返し見るのは、やっぱり声が好きな人(トーンだけでなく、ブレスのタイミング大事)。今日も歌おう。
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Posted by ブクログ
短編集。人間らしいというか、人間も一つのただの生き物として生々しく描かれるお話と、
一つの生き物としてとにかく美しくこの世のものでは無いくらい神秘的に描かれるお話もあり、
それらが小さな箱にぎゅっと詰まっている、感覚。
この感覚何かに似てると思いながら、なかなか思い出せなかった。とにかく繊細に微細に作り込まれたすぐに壊れてしまうような美しい芸術品のような、
それぞれの個性が際立つ小さなチョコレートとか、クッキーと、そんなお菓子たちが詰まってる箱をゆっくり味わっているような感覚かも、と、一つ一つをいただきながらたどり着いた。
この手の短編は一つ一つがとにかく心に残りながら読み進めるのに、あまりに素晴らしい表現力で、脳に描きすぎて、じんわり自分のものになり
どんな話だったっけ?と具体的なところは忘れてしまうから、一つ一つに感想を残しておいた方がいいのだろうか。
江國香織さんの解説。
これも一つの魅力でこの本を手に取ったのだけど、
小川さんの短編集は
一つ一つが全く違う世界観であるが、
一つ一つが磨きあげられている、
確かな質量がある、という一文を見て、
これが答えだと思ってしまった。
余韻が、とかそういうことではなく、
それもそうなんだけど、それ以上のもの。
たしかにそこにある。という感覚になる小川さんの小説は本当に素晴らしいです。 -
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アーケード街大家の父親を亡くしたわたしが、お店を訪れるお客様と織り成す小さな物語。
どこかもの悲しい雰囲気のなかに灯る小さな光、お店それぞれの味わいがありました。
小川洋子さんの作品に漂う雰囲気は本当に独特。
穏やかで静謐な世界観。
レース屋、義眼屋、ドアノブ店、勲章店など、
「一体こんなもの、誰が買うの?」
という品を扱う店ばかりが集まってるアーケード。
買いに来る人は少ないけど必要とする人がいて、そんな人のためにお店がある。
お気に入りは、
*衣装係さん
*百貨辞典少女
*紙店シスター
小川さんの作品は、個人的にやっぱり静かな環境でゆったり落ち着いて読みたい。
小川さんの文章表現がとても好き。
やっぱり良いなぁ。
アーケードの突き当たりの中庭で愛犬ベベと過ごす時間が愛おしい。
店主だけじゃなく、配達屋さんの思いも胸に響くものがありました。
小川ワールド堪能しました。 -
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『寡黙な死骸 みだらな弔い』以来に読む小川さんの短編集。
レース、使用済みのはがき、勲章、義眼等一見役に立たなそうな品物を扱う店が連なるアーケードと、そこに住む住人達と買い物客のエピソードを一つずつ丁寧に拾い上げた連作は寂しく、ときに静かな狂気を孕んで紡がれている。
どのお話も死や別れを絡むせいか、全体的な雰囲気が物悲しい。しかし、この連作の語り部である「私」はアーケードの大家の娘としてそこまで悲観的ではない。アーケードの配達係としてアルバイトをする彼女と、彼女の助手である犬のベベがかわいらしいエッセンスを仄暗い小説に加えている。
個人的なお気に入りは最初の「衣装係さん」と「遺髪レース」だった。 -
Posted by ブクログ
目次
・飛行機で眠るのは難しい
・中国野菜の育て方
・まぶた
・お料理教室
・匂いの収集
・バックストローク
・詩人の卵巣
・リンデンバウム通りの双子
小川洋子の小説の体温は低い。
それはひんやりと湿ったものだったり、かさかさに乾いたものだったりするが、決して温かくはない。
たとえひとの命を救ったとしても。
そこに「ない」ものを書くのも上手い。
「ありえない」と言うほど強い「無」ではなく、気づくとそこには「ない」」ものの持つ気配。
この絶妙な塩梅が、心地よかったり不気味だったりと、作品に彩りを与える。
ストーリーを味わう作品集ではないと思うので、具体的なことを書いても意味わからんことになるだろう。
ただ、これらの作品は、現実だとか事実だとかのしがらみとは無縁なところで味わえばよいのだ。
私にとって小川洋子は、エンタメ小説から純文学への橋渡しをしてくれた作家の一人。
未だ純文学はちょっと苦手意識があるけれど、小川洋子を読んだら、また次の純文学を手に取ろうと思えてくる。