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古い館は、死んだ動物たちであふれていた──。それらに夜ごと「A」の刺繍をほどこす伯母は、ロマノフ王朝の最後の生き残りなのか? 若い「私」が青い瞳の貴婦人と洋館で過ごしたひと夏を描く、とびきりクールな長編小説。
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Posted by ブクログ
日本に亡命したロシア人の女性が、突然に先立った夫の遺した膨大な剥製のコレクションと広大な洋館での暮らしを、姪となる「私」が語り継ぐ物語だ。 「私」の伯父とロシア婦人ユーリの二人は、伯父が51歳、ユーリが69歳の時に結婚した。 相思相愛だった二人だが、伯父は突然亡くなってしまう。 一人残されたユーリ...続きを読む伯母さんは、膨大な数の剥製に囲まれながら、その一つ一つに「A」の刺繍をして暮らす日々だった。 何故に「A」なのか、「私」を含めて誰もその理由を知らない。 「私」の父も突然亡くなり、大学生だった私は伯母と同居して身の回りの世話をする代わりに、伯父の遺産から学費を出してもらうことにした。 暮らしている洋館を訪ねる人も殆どなく、ユーリ伯母さんと「私」の二人の暮らしが綴られている。 館を常に訪れるのは私のボーイフレンドのニコで、彼は強迫性障害を患っていたのだが、ユーリ伯母さんとは気が合うようで、お互いが思いやる良い関係を築いていた。 穏やかな関係を保っている3人の間に、剥製売買のブローカーを裏家業とする胡散臭いオハラと名乗る男が現れる。 オハラとユーリ伯母さんの話の中で、自分はロマノフ王朝最後の皇女アナスタシアである事を仄めかす。 もしや刺繍の「A」は自らのイニシャルだったのか⋯。 この話に興味を抱いたオハラは、ユーリが本当にロマノフ王朝最後の皇女なのかどうか、テレビ局にユーリの存在を売り込み、テレビ番組の制作に漕ぎ着ける。 そしてユーリ伯母さんは、これまで語ることのなかった過去を想い出すことになる。 まさにユーリ伯母さん自身が、「私」とニコ、そして胡散臭かったオハラの愛に囲まれて、徐々に皇女らしさが蘇生して行く過程が綴られる。 果たしてユーリ伯母さんはロマノフ王朝最後の皇女なのか⋯
文庫本の帯によるとこの作品は“硬質な文体で描かれた初期の傑作”らしい。 硬質な文体、か。小川洋子さん作品にあまりそういうイメージは持ってなかったけど、言われてみればたしかに。無機質な感じ、乾いた感じ。 読んでいるうちにいつの間にか、自分が“距離を保って舞台袖から結末を見守る関係者”みたいになってい...続きを読むたりする。 感想書くのが難しい不思議な読後感。どこかアンバランスながら、成り立っている。小川洋子ワールドだなって感じ。
もしかしたら伯母はアナスタシアの使用人で、革命によって理不尽に命を奪われた彼女を悼むために自らがアナスタシアと名乗り、剥製のように永遠を生きようとしたのではないか、、途中まではそのような想像を巡らせながら読んでいた。しかし、作者の静謐な文章や生々しさをも美しさへと変容させる描写に、伯母が誰であろうと...続きを読む〝今ここで慎ましやかに幸せを感じて暮らしている〟その事実だけで充分だと感じさせられた。
小川洋子さんの作品に出てくる「私」を中心に話が進められるが、個人的に一番主人公っぽいのは「オハラではないか?」と思った 小川洋子作品で出てくる人物としてとても珍しい人物像だなと思いました。この人の視点で物語を読むと全く違う話ができあがりそうと思いながら読んでいました。
小川さんの初期作品、1999年から2001年まで連載された作品の新装版。 伯母がロマノフ王朝の皇女かも?という謎があっても淡々とした主人公はいつもの小川作品だけど剥製マニアのブローカー小原はちょっと珍しいタイプ。伯母とこの小原のやり取りがシュールでクスっと笑えて面白かった。胡散臭いけどいいやつじゃ...続きを読むん?って感じ。 胡散臭いと感じる登場人物がいるというのが初期作品だと感じました、最近だとどんな胡散臭さも納得させられる気がします。 剥製だらけの家とロシアって絶妙な取り合わせでときめきました。
小川洋子の文章は、基本的にクールに硬質に淡々と続く(解説 藤森照信) その小川洋子の文章が素敵。 結末は「博士の愛した数式」とか「ことり」とか読んでいるとそうなるなーと思うけれど、どの作品も悲しみよりも優しさが残る感じが好き。
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