坂口安吾のレビュー一覧

  • タナトスの蒐集匣 -耽美幻想作品集-(新潮文庫nex)

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    妖しげな姫様(?)の絵が好みでジャケ買い。近代文学史に名を残す文豪たちによる怪作集。「桜の森の満開の下」「芋虫」「夢十夜」は以前読んだことがありましたが、今回も変わらずおもしろくて好きな作品です。個人的には「白蟻」のいい意味で「何を読まされているんや…?」という気持ちになり印象的でした。

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    2024年11月05日
  • タナトスの蒐集匣 -耽美幻想作品集-(新潮文庫nex)

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    改めて読むと、夏目漱石や江戸川乱歩の文章のなんと読みやすいことか。

    個人的には夢野久作の瓶詰地獄が、短編のなかに、考えさせられる構成の工夫があり、謎解きのようで面白かった。
    わかりやすさや時系列がシンプルな今時には見られない昨日だった。、

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    2024年10月27日
  • 白痴

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    自分に重ねて、主人公の反省がまるで自分のように感じるのを楽しんだ。欲情に埋もれる過程が生々しくも表現され、それが別れを際立たせる。

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    2024年10月05日
  • 不連続殺人事件 附・安吾探偵とそのライヴァルたち

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    作品そのものの面白さは説明するまでもないのでおいといて、不連続に関連して、安吾の友人達(ライバル探偵たち)の回想・証言が巻末におまけとしてくっついてきているのがすばらしい。戦中戦後の辺りのあの時代、安吾達が愉快に過ごしていた様子が語られており「不連続執筆に至った安吾」の話が堪能できる。
    また、この不連続関係者に特化した関連年表も凄いですね。あちこちの書簡から引用してきて、当時の時系列みたいなのがよく分かる。

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    2024年10月01日
  • 不良少年とキリスト

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    その時代の

    現在では国語の教科書の中に偉そうな顔をして座っている太宰治や芥川龍之介、そして小林秀雄や志賀直哉が、現役で良い点も悪い点も世に見せながら、いきいきと活動していた時代の話である。特に同じ匂いのする作家 破滅型 無頼派ということなのだろうが、太宰治に対しての論評が質量ともに多い。なるほどなと思わせるところがある。

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    2024年09月03日
  • 風と光と二十の私と

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    二十歳のときの自伝

    無頼派の呼び名の通り日常性が破綻していた坂口安吾が、二十歳のとき教師をやっていたと知って驚いた。およそ子供を教え育てることなどできないと思われる経歴だからである。教員生活を割合淡々と描いているが、生徒への考察や生徒の個性特徴に合わせた接し方には、100年近く経った現在でも参考になるような気がする。

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    2024年09月03日
  • 暗い青春

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    安吾の持つ心の切なさや虚無感、その原点に迫るような短編集。

    安吾自身の半生が綴られている短編がまとめられている本作。
    生まれて以来ずっと心に持ち続ける悲しさや寂しさ、そうした感情が心のなかで重くのしかかり切なくさせる感覚になりました。

    どの作品も読む人のなかにもある寂寥感の輪郭を浮き彫りにするような話の進め方で、自分がたまに感じる切なさと向き合うきっかけをくれるました。

    とくに『石の思い』は虚しさと向き合うことが心の故郷に帰ることになるような一種の安心感を与えてくれる作品でした。

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    2024年09月01日
  • 桜の森の満開の下

    購入済み

    狂気と幻想

    梶井基次郎に 桜の樹の下には という好短編があるが、満開の桜には人々を狂気に誘う何かがあるような気がする。この作品も様々な葛藤の原因が満開の桜の木であり、最後にその桜とともに消えてしまう。素直に読めば 悪女に翻弄された愚かな男の話であるが、狂気と幻想を含んで印象的な作品になっている。

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    2024年08月07日
  • 白痴

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    戦争時代でのお話で、主人公の感情変化や周りの人々の人間的生々しさがひしひしと伝わる物語でした。戦争時の環境やそこでの人々の感情といい、戦争についてとても考えさせられ、爆弾が降り注ぐ街、生死を彷徨う中、主人公の感情に移入し手に汗握る思い出読み切りました。

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    2024年07月26日
  • 悪魔 乙女の本棚作品集

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    「堕落させたくないもの程、益(ますます)堕落させたいのです。」
    美しい顔をした悪魔はこう言って、涙を流した。

    美しいものはそのままにして愛でたい、という思いはあるのに、それを汚してしまいたいと思う己の醜さに悪魔は涙した。悪魔は、人を堕落させるのが仕事なのだろうから、そう思い悩んでしまう辺りが悪魔に似つかわしくなく、哀れんであげたい気持ちになった。

    大切にしたいけど、悲しませたい。
    清くいてほしいと思うけれど、真っ黒にしたい。

    この欲望はどこから来るのだろう。
    占有したい感覚、所有して支配したい気持ちは、どうして生まれてくるのだろう。
    どうして、美しいものほど、汚したくなるのだろう。

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    2024年06月24日
  • 恋愛論(乙女の本棚)

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    今まで、色んな本や漫画で、困難な道とそうでない道があれば困難な道を選ぶ方が良い、と書いてあっても、意味がわからなかったが、
    本著にあるように(あくまで私の理解だが)、困難な道と無難な道であれば困難な道の方が乗り越え甲斐がある、という区分なら、理解できる。無難ではないのだから、凸と凹があって、刺激と刺激に伴うレスポンスがあるよなぁ。何もなければ何もないままだから。
    結局は何を求めるかだと思うけど、どうしても得たいことがあるなら、覚悟決めて無難な道は選ばないほうが善きにしろ悪きにしろレスポンスが得られると理解した。

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    2024年05月19日
  • 織田信長

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    時代を超えた科学的精神

    坂口安吾による織田信長への短い評伝である。全体の構成はこれと言って整っていない。思いつく都度、順不同で書き散らしている感じ。従って未完であっても気にならない。書いてある出来事は当時史実と信じられていた伝統的なものであるが、その時の信長の精神の評価は時代を超えて現代でも十分に通用する。印象的な言葉が数多くある。ウヌボレと同量の怖れを持っていた とかである。何よりも印象的なのは、「時代を超えた科学的精神」を持っていた というところである。

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    2024年05月03日
  • 日本文化私観

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    爽快な批評

    作者坂口安吾が世間の凡百の日本文化論 芸術論を非難する。しかし、全面否定するのではなく、良いものは良い と自らの感性に托んで評価している。読んでいて実に気持ちの良い批評である。同時代人の難解 晦渋な小林秀雄と比べてみても、より一層現代の感性にあっているような気がする。

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    2024年05月02日
  • 正午の殺人

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    謎解きそのものは大したことない

    短編ミステリーである。種明かしされた謎解きそのものは大したことないが、確かだ という  思い込みを逆手に取ったストーリー構成はなかなかに面白い。部屋の配置やサイレンなど推理の分かれ道もある程度ある。数十年も前の作品だと思わせないところがいい。

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    2024年04月03日
  • 家康

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    坂口安吾の家康評価

    坂口安吾がみた徳川家康を、風呂屋談議風な口調で語りあげている。現在の目線から見るとやや時代遅れっぽい評価かもしれないが、少なくともNHKの大河ドラマ「どうする家康」のように史実を無視して、現代の価値観で描かれたものよりは遥かにマシである。
    小説家である自分自身と対比して評している箇所などはなかなか面白いと思った。

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    2024年04月03日
  • 桜の森の満開の下(乙女の本棚)

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    再読。
    高校時代に初読した時はちょうど手塚治虫の「火の鳥」を読んだ頃だった。山賊のイメージが『鳳凰編』大和の我王にダブる。

    鈴鹿峠に一人の山賊がいました。桜の季節、花の下では誰もが気が変になるのでした。山賊は街道で八人目の女房にする女を攫います。女が美しすぎたので夫を殺します。家に帰り着くと、女の言うままに七人いた女房たちを次々に殺します。女の言うままに都に住み始めます。女の言うままに殺した男女の首を持ち帰ります。女はその首を使って"首遊び"をするのでした。やがて山賊は都に住むことに飽き飽きして…。

    突然気になって再読したのは、たぶん、「鬼滅の刃」を見ていたからだと思い

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    2024年03月09日
  • 夜長姫と耳男(乙女の本棚)

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    恥ずかしながら、この年になるまで坂口安吾のことをよく知らなかった。数年前に『堕落論』を読んで興味は持っていたが。
    で、この話。なんか一周回って愛の話なんじゃないかと思った。相当いびつだし、登場人物の誰一人として思い入れはできないけど。ヒメの最期の言葉が呪いのように残っていて、そのせいかもしれない。
    『桜の森の満開の下』でも思ったけれど、絵本のようにうつくしいイラストが、作品をいい意味で読みやすく、イメージしやすくしていると思う。読む人を選ぶとは思うけれど、夜汽車さんのイラストも一見の価値ありなのでぜひ読んで!
    …落ち着いたら坂口安吾の他の作品にも手を出したい…。

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    2024年03月07日
  • 恋愛論(乙女の本棚)

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    少女の本棚の新刊!ぱっと目を惹くやわらかで可愛らしい桃色の背景、しかしよくみると肋骨に守られ頭蓋骨に頬ずりするかのような少女の様子が毒々しい素敵な装丁です。
    読むのはこれが初めて。恋愛とはなんぞや、と坂口安吾が訥々と説いていくのだけれど、これがもう名言の宝庫なのである。
    切支丹が渡来したころ、それまで「愛する」という概念がなかった日本国で、「神の愛」「キリシトの愛」を解釈するのは難儀なことであったという。困惑し苦心しつつもどうにか置き換えたのは「神のご大切」「キリシトのご大切」。
    すなわち、「余は汝を愛す」というのを、「余は汝を大切に思う」と訳したのだそうだ。
    私はこれまでもつねづね「愛する」

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    2024年03月03日
  • 恋愛論(乙女の本棚)

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    ここまで真面目に恋愛について考えたことなかったから、新鮮に読めました。
    言葉の表現が易しくて、わかりやすいのも好印象!
    このシリーズはかなり好き!

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    2024年02月28日
  • 堕落論

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    正直自分のいいまでの知識と、著者の知識の前提が違いすぎて面を食らったが、色々な視点を知ることができた。
    ちょこちょこ調べながら読むことで、全く知らなかった世界を知ることができた。
    いけないことにつながったからといって、その行動を禁止するのではなく、いけないことにつながらない工夫をして建て直すことが大事

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    2024年02月25日