坂口安吾のレビュー一覧
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時代を超えた科学的精神
坂口安吾による織田信長への短い評伝である。全体の構成はこれと言って整っていない。思いつく都度、順不同で書き散らしている感じ。従って未完であっても気にならない。書いてある出来事は当時史実と信じられていた伝統的なものであるが、その時の信長の精神の評価は時代を超えて現代でも十分に通用する。印象的な言葉が数多くある。ウヌボレと同量の怖れを持っていた とかである。何よりも印象的なのは、「時代を超えた科学的精神」を持っていた というところである。
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爽快な批評
作者坂口安吾が世間の凡百の日本文化論 芸術論を非難する。しかし、全面否定するのではなく、良いものは良い と自らの感性に托んで評価している。読んでいて実に気持ちの良い批評である。同時代人の難解 晦渋な小林秀雄と比べてみても、より一層現代の感性にあっているような気がする。
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謎解きそのものは大したことない
短編ミステリーである。種明かしされた謎解きそのものは大したことないが、確かだ という 思い込みを逆手に取ったストーリー構成はなかなかに面白い。部屋の配置やサイレンなど推理の分かれ道もある程度ある。数十年も前の作品だと思わせないところがいい。
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坂口安吾の家康評価
坂口安吾がみた徳川家康を、風呂屋談議風な口調で語りあげている。現在の目線から見るとやや時代遅れっぽい評価かもしれないが、少なくともNHKの大河ドラマ「どうする家康」のように史実を無視して、現代の価値観で描かれたものよりは遥かにマシである。
小説家である自分自身と対比して評している箇所などはなかなか面白いと思った。 -
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再読。
高校時代に初読した時はちょうど手塚治虫の「火の鳥」を読んだ頃だった。山賊のイメージが『鳳凰編』大和の我王にダブる。
鈴鹿峠に一人の山賊がいました。桜の季節、花の下では誰もが気が変になるのでした。山賊は街道で八人目の女房にする女を攫います。女が美しすぎたので夫を殺します。家に帰り着くと、女の言うままに七人いた女房たちを次々に殺します。女の言うままに都に住み始めます。女の言うままに殺した男女の首を持ち帰ります。女はその首を使って"首遊び"をするのでした。やがて山賊は都に住むことに飽き飽きして…。
突然気になって再読したのは、たぶん、「鬼滅の刃」を見ていたからだと思い -
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恥ずかしながら、この年になるまで坂口安吾のことをよく知らなかった。数年前に『堕落論』を読んで興味は持っていたが。
で、この話。なんか一周回って愛の話なんじゃないかと思った。相当いびつだし、登場人物の誰一人として思い入れはできないけど。ヒメの最期の言葉が呪いのように残っていて、そのせいかもしれない。
『桜の森の満開の下』でも思ったけれど、絵本のようにうつくしいイラストが、作品をいい意味で読みやすく、イメージしやすくしていると思う。読む人を選ぶとは思うけれど、夜汽車さんのイラストも一見の価値ありなのでぜひ読んで!
…落ち着いたら坂口安吾の他の作品にも手を出したい…。 -
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少女の本棚の新刊!ぱっと目を惹くやわらかで可愛らしい桃色の背景、しかしよくみると肋骨に守られ頭蓋骨に頬ずりするかのような少女の様子が毒々しい素敵な装丁です。
読むのはこれが初めて。恋愛とはなんぞや、と坂口安吾が訥々と説いていくのだけれど、これがもう名言の宝庫なのである。
切支丹が渡来したころ、それまで「愛する」という概念がなかった日本国で、「神の愛」「キリシトの愛」を解釈するのは難儀なことであったという。困惑し苦心しつつもどうにか置き換えたのは「神のご大切」「キリシトのご大切」。
すなわち、「余は汝を愛す」というのを、「余は汝を大切に思う」と訳したのだそうだ。
私はこれまでもつねづね「愛する」 -
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坂口安吾 安吾忌
こちらは初読、1952「夜長姫と耳男」
飛騨の匠の弟子の仏師、耳男。
乙女の本棚になるまで、知らなかった作品です。
耳男の語りの説話体。
長者に乞われて夜長姫の護身仏を彫る。
耳男は、夜長姫の何かが秘そむ無邪気な笑顔に囚われて、化け物を彫る決心をする。
蛇の生き血を飲みその死骸を吊るす。
それさえ美しいと思う夜長姫。
好きなものは、呪うか殺すか争うか。
なかなかの狂気と幻想の世界観。
飛騨という土地への坂口安吾の思い、飛騨の匠への敬意。命惜しまぬ作品へのリスペクト。
夜汽車さんの作品は、可愛さもあり、まるで乙女の童話に擬態しているけど、ストーリーは鳥肌もの。 -
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坂口安吾 安吾忌
久しぶりに読みました、1947「桜の森の満開の下」
ぞっとする程美しい。
幻想的でもあり、人智を超えた美しさ。
美しいが為に 恐ろしさは増す。
桜の下では、気が狂う。
鈴鹿峠に住み着いた山賊。
旅人から 美女を手に入れる。
その美女を手に入れてから 山賊の生活は 一変する。
エゴイストが更なるエゴイストに従属していく。
美女と桜に共通する恐ろしさに気づく。
何回か読んでますが、これも自分の体調?などで受け取り方が変わるんですよね。
今回は、しきみさんの美しい絵の数々ですが、
最も凄まじい女の“人の首の雛人形遊び”を もうちょい挑戦して欲しかったかも。
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「乙女の本棚」シリーズ、私の5冊目。このシリーズで大好きになってしまった夜汽車さんのイラストと、少し前に読んだ「桜の森の満開の下」で有名な坂口安吾のコラボであり、どんな作品なのか興味津々で読み進めていったが、正直、恐ろしすぎて、このイラスト無しではかなりキツかった。イラストが恐ろしさを妖しさという美しさに変換してくれて本当によかった。この作品も「桜の森の満開の下」も、残酷さと、魔性の女に魅入られるところが似ていて、坂口安吾の作風はこのようなものが多いのか気になった。決してもう一度読みたいと思えるわけではないのだが、心が凍っていく恐怖感は、他の作品ではまだ味わったことのないものであり、印象に残る
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戦後まもない頃、山奥の豪邸に集まった作家や画家や女優などなど。そんな彼らの間で次々と殺人が起こります。いったい誰が、どんな動機で、どのようにして行ったのか。探偵小説愛好家だった純文学作家・坂口安吾による推理小説の名作。
多人数でてきますが、個性の強いキャラクターばかりでした。アクやクセが強く、変人とくくってしまえそうだったりする人たちしかいません。そして彼らの関係が痴話がらみでフクザツです。そんな異様な小世界を設定したからこそ、8人も殺されるこの「不連続殺人」の、大いなるトリックを物語の中に隠せたのだと思います(このあたりは、巻末のふたつの解説と本文の読後感とを照らし合わせたうえでの感想です -
Posted by ブクログ
坂口安吾の世界観にとても惹き込まれた。限りある人生のなかで心をかきむしり続ける恋の不思議に触れたように感じました。
プラトニックか肉欲かという葛藤、人の浮気性、利己的か利他的か、人間のもつ苦しい業をここまで描くのかと驚きでした。しかもそれらを批判的ではなくて人間の美しさとして肯定的なところがどこかしら感じられました。読み終わって安吾の堕落論にみられる人間が持つ欲するものを欲する精神の悲しさと美しさがわかった気がしました。
個人的には『恋をしに行く』と『夜長姫と耳男』が好きでした。恋をしに行くは最後まで精神か肉体かの対立が明確で、それを踏まえて迎えるラストは清々しくもどこか虚しい。夜長姫と