坂口安吾のレビュー一覧
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坂口安吾のミステリー。
山奥に人が集められる。夏の長い休暇として、みんなで楽しくお泊り会。とはいえ、参加者にはそれぞれ思惑、事情があって参加するのだろう。そう思って渋っていた主人公も誘いに押し切られて参加を決意。
しかし、参加してみると、予想外のメンバーがいて不穏である。しかも、招待していないはずの人もいるらしい。誰が招待したのだ??
そこで始まる怒涛の殺人。脈絡がなく、不連続に見える。
作者は、発表当時、犯人を当てた人に賞金を渡すことにした。これは読者への挑戦状である。
それもあり、作者が各方面の読者に対して挑発的なコメントを残していて、これも面白い。ただし、犯人が分からないので悔しい。
未読の方は、ぜひ犯人をズバッと当てて坂口安吾の鼻を明かしてほしい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ坂口安吾の、戦前から戦後すぐに発表された作品の短編集。
『ラムネ氏のこと』と『故郷に寄する讃歌』以外の作品は、男女の恋愛(肉体の、または観念の)を描いている。
そこに描かれているのは、男を翻弄する女。
そして、女に翻弄されながらもしがみつくわけではない、けれどもふわふわと離れがたくそこにいる男との対比。
男の視点で、時に女の視点で語られるそれらは、安吾の人生のテーマなのかもしれない。
女性の経済的自立が難しかった時代、芸術だったり歌舞音曲を好み、コツコツ働くことの不得手だった女性は、「オメカケ」になるしかなかったのかもしれない。
親の遺産はもらえないなか、まずは食べること、そして終日を気ままに暮らす手段。
高等遊民の女性の話は聞いたことがない。
戦前の作品では、女性は「死」をほのめかす。
時に自ら死を選ぶ。
しかし、負け戦濃厚のなか空襲から逃げ惑い、家に水をかけ、穴を掘り、空を見上げながら夜を明かすような戦争の日々を体験した後の戦後の作品には、特に人生の目標があるわけではなくても、とにかく生き延びるというしたたかさが現れる。
でも、私が好きなのは『ラムネ氏のこと』だな。
これは時代性を問わず、最近の話としても通用するような、ちょっとした小話。
今後大きな辞書を見かけたら、ラムネ氏のことを調べてしまいそうだ。 -
Posted by ブクログ
かの著名な坂口安吾による本格探偵小説。
日本ミステリー史に輝く名作と謳われるだけのことはある。
タイトルが秀逸。『不連続殺人事件』
何が不連続なのか、非常に興味をそそられるタイトルである。
1947年の夏、県内有数の財閥・歌川多門邸で、
流行作家の望月王仁が殺害される事件が発生する。
歌川家には多数の人物が、
多門の息子である一馬の手紙により招待されていたが、
一馬によればその招待状は偽物であった。
招待客、使用人、家族を合わせ、
総勢29人の人々が滞在していた歌川邸では、
家族のみならず戦争中に疎開していた10人や、
その他の招待客らの間でも乱脈な性関係がなされており、
さらには複雑な憎悪が絡み合い、次々と犠牲者が生まれていく。
とにかく登場人物が多い。むしろ多すぎる。
なので最初は登場人物の把握だけでてんてこ舞いとなる。
が、やはり時代性というか、現代では考えられない思考の数々。
登場人物のほぼ全員がクズなのである。
クズにも様々種類があるが、この話で言えば色欲の方である。
性に関して奔放すぎる人物しか出てこない。
そして、あちらこちらで見受けられる血縁関係。
つまり、当主である多門の腹違いの子供の数々など。
この辺の清々しいまでに倫理観のない登場人物たちに関しては、
時代性というものが大きく関係しているのだなと、
当たり障りなく言えばカルチャーショックのようなものを受けた。
果たして現代の方が生きやすいのか、生きづらいのか、
そんなことまで考え込んでしまった。
とは言え、物語自体は秀逸。
章終わりごとに載せられている作者からの挑戦状。
これが斬新で、面白さの一役を担っている。
勿論、私は見事に的外れな回答を予想していたのは言うまでもなく。
現代のミステリー小説でもやってみてもらいたいものだ。
作者からの挑戦状。間違いなく跳ねるだろう。
それだけの揺るぎない自信を見せた坂口安吾に脱帽である。
巻末に収録されていた短編『アンゴウ』
たまたま手にした古本に残っていた暗号の謎を解く物語だが、
その結末には思わずホロっとさせられてしまった。