坂口安吾のレビュー一覧
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悪と美は横溢するが…
現代普通桜は怖くない。
しかし、孤独な山中の
無限の森の中で
美しいものも不気味だと
思わせられる筆力。
女の美しさがむごい要求を
通させる。
山賊単独の悪が翳むほどだ。
女の飽くことのない我儘を
許し続け、そしてやがて
山賊は自分自身と女を
同一視する。
ついには女を魔物と感じるが
滅ぼした相手は自分自身
だったかもしれない。
長く連れ添った者でも
どんな者たちでも
一瞬にして刀の露になり
何のためらいも悔悟もない。
無意味で奇怪なママゴトが
行われるだけだ。
読者はそれにつき合わされ
山賊の自意識にはむしろ
悪の意識がなく普通人のようだ -
Posted by ブクログ
ネタバレ戦後まもなくに出版された日本の推理小説の傑作。坂口安吾作。
犯人のトリックや動機は、アガサ・クリスティーの「ナイルに死す」をかなり参考にしている。ただし、事件の背後を取り囲む登場人物は、焼け野原になった日本の戦後の退廃的な雰囲気、投げやりな雰囲気を反映していて、アガサ・クリスティーの小説に出てくる人物像とはかなり異なる。
この本で最も印象的な点は、戦後まもなくという世相も反映してか、人が死んだときに他の人物が受けるショックの薄さである。
(それがあるから8人も人が死んでしまうのであろう。1人1人の死にその都度衝撃を受けていたら8人の死までは、なかなか到達しない。)
素晴らしい名作だが、もう -
Posted by ブクログ
いわゆる堕落と、坂口安吾の説く「堕落」は種類が違う。
坂口安吾の説く「堕落」とは、習慣や制度から逃れ堕ちること。例えば、所謂日本人然とした、苦労を厭わず、倹約に地道に努力することから逃れ、楽をしようとすること。家庭を持ち清廉潔白に暮らすのではなく、情欲を受け入れ過ごすことである。それは決してネガティブな行いではなく、それが人間の実質であり、それで人間が発展する。「堕落」は制度の母体なのである。
なぜ坂口安吾が「堕落」という言葉を使ったのか。それは、習慣に囚われた人々が、坂口らに対して向けた、「お前達は堕落している」といったレッテルに対して、「堕落こそ結構。それこそ人間の本質であり、中身の